突発的に始まった宴会から一夜明け、翌日。飲んで食べてたくさん騒いだ銀時達は、どうやら部屋の中で雑魚寝状態となっていたようだ。かといって別に物が散乱しているわけではないだけ、彼女達のモラルはある程度守られていると言っても良いだろう。
ところで、そんな中銀時はどうしているのかと言うと、
「ん……」
床の上で爆睡していた所で、ちょうど目が覚めたようだ。
何やら自身の身体に、別の重みがあることに気付く。もしかしたら誰かが乗っかっているのかもしれない。そう思った銀時が、視線を下に向ける。
「……え」
そこには、あられもない姿を見せている幽香の姿があった。
元々スタイルの良い彼女が引っ付いて寝ていることにより、銀時の腕に二つの豊満な感触が感じられる。有体に言ってしまえば、興奮する。
「まじでかぁああああああああああああ!?」
思わず叫んでしまう。
当然だろう、これだけの別嬪さんが隣に居て、しかも抱き着いて寝ていると分かれば。
銀時は男なのだ。これでアームストロング砲の準備が整わないわけがない。
だが、幸せな時間というのはあっという間に崩れ去っていくもので。
「銀時ー、今日は魔法の森に……」
起きて支度を済ませていたらしいアリスが、銀時と幽香の朝ちゅん現場を目撃してしまった。
「え、いや、あの、その、ち、ちがうんだ……」
汗が止まらない。
誰がどう見たって誤解されること間違いなしな光景。もし最初に見つけたのが文だったら、写真を撮られまくっていたことだろう。アリスだったのは不幸中の幸いだったのかもしれない。
「……懲りないわね。急いで準備なさい」
「……え?」
殴られたり、何かされるのではないかというのを覚悟していた銀時にとって、アリスがとった『スルー』という対応に目を丸くしてしまった。ただし、言葉ではちゃんと『懲りないわね』と言っていることから、誤解していることには違いない。
「いや、だからアリス、話を……」
「は、や、く、じゅ、ん、び、し、な、さ、い」
「はい」
重々しい口調で言われた銀時は、思わず背筋が伸びる。
やっぱり怒っていることに変わりはなかったようだ。
※
「いやぁ~、銀さんも隅におけないぜ! フランや霊夢だけじゃなくて、幽香まで虜にしちまうなんて! 流石は色男だぜ!」
アリスに言われた通り、速攻で準備を終えた銀時は、途中で合流した魔理沙と共に魔法の森への道を歩いていた。アリスは、銀時・魔理沙コンビより少し進んだ所を歩いている。背中を見るだけで、今の彼女がどれだけ怒っているのかが窺えた。
「流石にフランについては分かるが、霊夢や幽香について言われるのはよく分からないんだが……」
「あれ? 銀さんって鈍感系主人公なのか? てっきりぐうたらハーレム系主人公だと思ってたぜ」
「ぐうたらハーレム系になりてぇよ……銀さん彼女出来たことねぇんだぞ? 紹介しろよ魔理沙。テメェなら知り合いの一人や……一人、いるだろ?」
「それ一人しかいねぇぜ!? 後、ナチュラルに私を候補から外しているよな!?」
「いや、だって火力だぞ? 中華料理と同じこと宣言してる奴を彼女にしろと?」
「私の弾幕を中華料理と同じにするのは勘弁だぜ!?」
そのやり取りが面白かったのか、前を歩くアリスの肩が震えていた。笑いをこらえているのが見て分かる。
「おいアリス! 何笑ってんだ!!」
「……え? だって、魔理沙の魔法が、炒飯だって……」
「誰もそんなこと言ってねぇぜ!?」
「たくさんの具材を最大火力で一気に調理する……いいじゃねえか魔理沙。弾幕は火力が命なんだろ?」
「もうそれ私のキャラ付けだと思ってる気がするぜ!? 最近そればっかりじゃねえか?!」
「だって初登場時もぶっぱなしてたろ? てっきりテメェはそういうキャラなんだとばかり……」
「そこまで言われ続けると、流石の私も気になるからな!?」
そうして馬鹿らしいトークを続けている内に、どうやら一同は魔法の森へ到着したようだ。普通の森と違い、木々が不ぞろいに生えており、所々謎のキノコが繁殖していたり、日が届かないことから薄暗さも感じる。ここだけ俗世と離れているのではないかと思わせられる程、不気味さを感じられた。
「……魔理沙とアリスは、こんな森の中に住んでるのか?」
「えぇ、ここは魔法の森だから。私達魔法使いにとっては、都合がいいものが結構多いのよ」
「そうだぜ。生えているキノコとかは魔法の実験にも使えたりするんだぜ?」
「へぇ……」
先を歩くアリスが森の奥へと進んでいく。
魔理沙と銀時も、アリスの後をついて行く。
「そういやアリス、今日ってもしかして香霖のところ行くのか?」
「香霖?」
魔理沙から出てきた名前に聞き覚えのなかった銀時は、思わず聞き返す。
その質問にはアリスが答える。
「昨日言ったでしょ? 外の世界から来たものが置いてある店の店主よ。森近霖之助って言うのよ」
「香霖はすげぇんだぜ? 私の魔法も、一部は香霖が作ってくれた機械を利用してるってわけだぜ」
「火力厨にさせた張本人ってわけか……」
「火力厨ってなんだぜ!?」
与えられたレッテルはともかく、香霖が何者なのかを理解した銀時。
霖之助の元へ向かうことを把握した銀時は、アリスと魔理沙の後についていく。
「あ、そういや博麗神社完全に放置していったけど、大丈夫なのか?」
近づいていくにつれて、思い出したかのように銀時が言う。
「大丈夫じゃない? どうせ霊夢が片付けてくれるわよ」
「ほかの奴らもいるわけだし、へーきへーきだぜ。まぁ、フランだけどうなるか分からないってところだけど」
「あー……」
今頃フランが、銀時のことを探しているのではないかと予想している。
一応、魔法の森に行くことは昨日の内に伝えているものの、もしかしたら追いかけてくる可能性すらある。それだけ、最近のフランは銀時にべったりなのである。
「ま、心配するだけ無駄よ。彼女達は彼女達なりになんとかするだろうし」
「そうだな……」
アリスの言葉に耳を傾け、銀時は更に歩く。
しばらくして、一軒の小屋が見えた。
「ここか?」
「えぇ。ここよ」
どうやら目的地に着いたらしく、アリスは扉に手をかける。
「香霖ー! 入るぜー!」
アリスが開けるのとほぼ同時。
魔理沙は元気よく声をかけ、中に入っていく。銀時も後から入っていく。
そしてそこにいたのは、
「おや? 君が魔理沙の言っていた坂田銀時さんかい?」
白髪のショートボブ、金色の瞳、黒と青の左右非対称の和服を着ており、下だけ黒縁となっている眼鏡をかけた青年――森近霖之助が現れた。
銀魂×東方project
銀色幻想狂想曲
第四十六訓 魔法の森へようこそ