「なる程。それで私達のところに来たという訳か。その勘は正しい。確かに私達ならばお前達とは違う見方で今回の異変について語ることが出来る」
銀時達が訪れたのは紅魔館だった。妖怪がたくさんいるところとして思いついた場所としては、まさしく絶好の場所と言えるだろう。何せ人間は咲夜しかいない。他のメンバーは皆妖怪だったり魔法使いだったり、小悪魔だったりするのだから。
銀時達はすぐさま客間に案内され、現在レミリア・咲夜の二人が銀時達の相手をしている所だった。
「そして結論から言うと、あの月は偽物だ。本物の満月ではない。フランもパチュリーも、美鈴も小悪魔も同じことを言うだろうな」
「私にはただの満月にしか見えないのですが、どういった違いがあるのでしょうか、御嬢様……」
咲夜も人間であるが故、見方としては霊夢や魔理沙、銀時達と同じになる。即ち、天に昇る月に関しては普通の満月という風にしか捉えられない。
どうやら妖怪達には偽物の月であるということが理解出来るようだ。
「あの月は、限りなく本物に見せるように細工が施されている。まるで、何かから隠すようだ」
「隠す、か……」
満月を隠す。
ポツリと呟いた銀時は、そうする意図を考える。しかし、今のままでは判断材料が少なすぎて思考するにも難しいものがあった。
「月がああなっていることそのものについて、人間に何かしらの害が及ぶことはない。だから気付かなくても問題はない。だが、私達妖怪の中には、月の光や状態によって、大きく影響される存在も居る。そう言ったことから、自然の変化には敏感なのだろう」
元々、妖怪信仰自体が自然と絡むことが多い。それ故に、妖怪からしてみても自然現象については目が行きやすいのだろう。それが吸血鬼にも値するし、鬼にも値するし、それ以外の妖怪にも当てはまる。
「そうすると、解決するにはやはり犯人を見つけるしかないってことですか?」
新八が尋ねる。
「そうなるだろうな。異変解決は博麗の巫女としての仕事だろう? もしよければ咲夜を同行させることも出来る」
「えぇ。御嬢様の命令とあらば、何なりと」
レミリアの提案により、咲夜もついて行ってもよいと言うお言葉を頂ける。
それは霊夢達にしてみても、かなり助かることだった。実際、異変解決には人手が多いに越したことはない。それは前回、及び前々回から感じていることだった。
「メイドが来てくれるなら凄く助かるアル!」
「よろしく頼むぜ! 咲夜!」
神楽と魔理沙は喜んで迎え入れる。新八についても目を輝かせている程だ。
霊夢と銀時は、やけにあっさりと人手を貸してくれたレミリアに訝し気な表情を見せる。
「なんだ? そんなに気になることがあるのか?」
「いや、なんつーか、嫌にあっさり、かつ素直に人手貸してくれたもんだからよ」
「何か裏でもあるのかなーって思っただけよ」
「なんだお前達……少しは私のことを信用してくれていいんじゃないか?」
溜め息を吐くレミリア。
やれやれと首を振りながら、
「まぁ、私としてもこんな夜は早く明けて欲しいと思っているんだ。偽物の月がいつまでも昇り続ける夜なんて気味が悪い。それに、時間の感覚が狂うからどうにかして欲しいとも思う訳だ」
「……まぁ、筋は通ってるわね」
霊夢は渋々と言った感じではあったが、納得したようだ。
「まぁ、そういうことなら、夜明けまでには何とか終わらせてきてやるからよ」
「あぁ、そういうことなら、夜明けなんて異変が終わるまで訪れないから安心よ」
「は?」
レミリアの言葉に、銀時はポカンと口を開ける。
それは新八や神楽も同様だった。
「何せ今宵の月、何者かが固定してしまっているせいで『朝が来ない』ようになっているんだ」
「うっそ!? だからずっと夜のままだったというわけだぜ!?」
魔理沙が驚く。
「つまり、月が元に戻った所で、夜が明けなきゃ意味がねぇ、と?」
「そういうわけだ。まぁ、そっちについては安心して欲しい。私やパチュリーの方で何とかしてみる」
魔法使い、パチュリー・ノーレッジ。
もしかすれば彼女の力が、今回の異変において重要な働きをするのかもしれない。
「んじゃま、早速出発とすっか?」
銀時は一同に声をかける。
しかし、どうにも彼らは動く気配を見せない。
「おい? 何ボサッとしてんの? 異変解決しに行くんじゃねえの?」
「いや、その前に銀さん……アンタずっと違和感に気付いてないんすか?」
新八が目を丸くする。
「そりゃ出発するけれど……」
「その前に……銀さんは自分が置かれている状況を理解した方がいいぜ?」
霊夢と魔理沙が銀時に妙なアドバイスをする。
「何って……?」
「銀ちゃん、もしかしてわざとやってるアルか? というか、自然過ぎて慣れてるアルか?」
「さらに言うと、なんでレミリアや咲夜もスルーしてるのよ……いつ指摘すればいいのか分からなかったわよ……」
霊夢がポツリと呟いた。
「それなら僕が……ごほん」
新八が咳払いをした後で、一気に言い放つ。
「シリアスな話をしているのに、銀さんから片時もフランちゃんが離れていないんですけどぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
冴え渡る新八のツッコミ。
そう、ここまで彼らは凄く真面目な話をしていたのだ。
そんな中で、銀時にずーっと抱き着いているフランが居たのだ。
しかも声を出さずに、銀時の胸に埋もれて、嬉しそうに身体を震わせている。
「ギン兄様……ギン兄様成分が足りなかったの……もっと補充させて……っ」
「ギン兄様成分ってなんだ!? 天然パーマから摂れるものなんて糖分しかねぇぞ!?」
「誰が糖尿病だコノヤロウ!!」
「自覚あんなら自重するネ!! いちご牛乳片っ端から捨ててやるアル!!」
「やめろぉおおおおおおおおお! んなことしたらテメェの飯抜きだからなぁああああああああ!!」
「元々給料も碌に支払ってねぇくせに今更何を言っても無駄アル!!」
先程までのシリアスムードから一転。
場は一気にコミカルモードへ。
「もう駄目だ……我慢の限界だ……カリスマモードがそろそろ切れる」
「カリスマモードって何だぜ!? 今までそれで何とか取り持ってきたってことなのか!?」
身体をぷるぷる震わせているレミリアに対して、魔理沙が真っ当なツッコミをする。
「御嬢様……あぁ……とても可愛らしい……」
「ちょっと、咲夜。アンタ鼻血出てるわよ。メイド服が真っ赤に染まるわよ」
「御嬢様の可愛らしい姿が見られるなら……本望です」
「こっちが本望じゃないから。これから異変解決しに行くってのに、鼻血で人手なくなったら困るから」
霊夢はえらく現実的な理由で、咲夜を戻そうと必死になっていた。とはいえ、彼女はレミリアの可愛い姿を見たら、無条件で鼻血が流れ出てしまう特殊体質を持っている。そう簡単に上手くいくとは思えない。
「ギン兄様、異変解決ならフランも一緒に行く!」
「フラン!?」
驚きを見せたのはレミリアだった。
自分の妹が異変解決をする為に外へ出ようとしているのだ。前回は自身が関与していなかったからまだしも、今回に関しては目の前で言われたものだから、流石に止めようとして、
「もう前見たいに、ギン兄様が傷つくところを見たくないから、私も戦うの!」
「フラン……」
銀時を抱きしめる力が少しだけ強くなる。そしてその身体は、少しだけ震えていた。
彼女は前回の異変の時、銀時の身体が冷たくなっていくのをその目でしっかりと見てしまっている。それはつまり、銀時が傷つくところを目撃してしまっていることを指す。
だから彼女は、異変に巻き込まれることで銀時が傷ついていくのを恐れているのだ。
もう、壊したくないから。
大切なものを、手放したくないから。
「……分かったわ、フラン。でもその代わり、私も一緒に行くわ」
「お姉様?」
「なっ……テメェも来るのか!?」
一番驚いたのは銀時だった。
てっきり自分は紅魔館に居続けるものとばかり考えていた為、その言葉が出てくるのが予想外だったためだ。
「当然じゃない。妹が頑張るって言ってるのよ。姉として大事な妹を守る為なら、何だってしてやるわ」
「……流石だな、シスコン。妹に甘い」
「アンタも大概だろう? フランに甘い」
「そりゃな……背負った荷だからな。そう簡単に降ろしてぇとは思わない」
銀時とレミリアは、互いの言葉に笑い合う。
大切に想う気持ちに優劣はない。むしろ、重なれば更に大きくなる。それを確かに感じたからだ。
「ギン兄様……お姉様……」
フランは、二人からの愛を存分に受け止めていた。
その性質が違うことは、なんとなく感じているだろう。
「それじゃあ、そろそろ出発するわよ」
霊夢の掛け声の元、一同は紅魔館を発つ。
どう考えても戦力過多だが、気にする必要はないだろう。
銀魂×東方project
銀色幻想狂想曲
第四十九訓 人手は多いに越したことはない
永夜抄ってなかなかに戦力過多な気がするんですよね(しろめ