新八のおかげでなんとか落ち着きを取り戻した少女は、自分の名前を告げる。彼女の名前はリグル・ナイトバグ。中性的な顔立ちをしているせいで、よく男の子と勘違いされるという。一瞬、新八の脳裏にとある人物が浮かんだものの、性格や特徴等全然違っていたため、すぐに霧散した。
「ねぇアンタ、今起きている異変について何か知らない?」
落ち着きを取り戻したリグルに対して、霊夢が尋ねる。しかしリグルは首を横に振り、
「いえ、私は何も知らないです……ごめんなさい」
と、逆に謝られてしまった。
「まぁ見た感じ、夜が長くなったことにより活動時間が長くなっただけみたいだな」
レミリアが解説する。自然条件に左右される妖怪も多いため、このような推論が建てられても不思議ではなかった。例えば前回の異変の時に登場したレティについては、雪女であるがゆえに冬ならば活動的になるも、それ以外の季節は基本的に静かに過ごしている。今回の場合は時間に関係しているのだろう。
「謝らなくても別に平気だ。そのくらい予想出来ている。それに、そう簡単に異変が解決してしまっては面白くないからな」
ニヤッと不敵な笑みを浮かべながらレミリアは告げる。確かに、これほどの異変を起こした犯人であるならば、そう簡単にボロを出すこともないだろう。まして一介の妖怪に場所を知られるような相手ではないはず。
「私としては早い所異変解決して、ゆっくり布団で寝たいのだけど……」
「同感だな。めんどくせぇことはちゃっちゃと済ませて、ゴロゴロ寝転がりてぇぜ」
「フランもギン兄様とゴロゴロする!」
「お? ゴロゴロすっか? 惰眠を貪るか?」
「何ナチュラルに一夜を共にしようとしてんのよロリコン変態天然パーマ」
ものすごい冷たい視線をぶつける霊夢。そこには蔑む物の他にも、別の何かが含まれているように見えなくもない。
「いやその反応おかしくね? フランがやりてぇって言ってんだぞ?」
「アンタ妙にフランに甘いわよね?」
「私もフランに甘いぞ! ベタ惚れだぞ!」
「シスコン吸血鬼は黙ってなさい。さっきまでのカリスマぶりを発揮しなさいよ。ボロ出まくりで見る影もないわよ」
シスコンと天然パーマの相手をしていることで、霊夢の顔に青筋が入る。もうそれだけ怒り心頭なのだろう。
「霊夢、少し落ち着いた方がいいぜ? カルシウム足りてない気がするぜ?」
「そうね。落ち着く為にも弾幕ごっこに付き合いなさいよ魔理沙。主にサンドバッグになって頂戴」
「それ弾幕ごっこじゃないぜ!? 一方的に蹂躙してるだけで、私にとっちゃただの地獄でしかないんだけど!?」
何かと毎回辛い役回りをさせられる魔理沙なのだった。
ちなみに咲夜は、相変わらず鼻血を垂れ流している。
「なんだか愉快な人達ですね……」
これにはリグルも苦笑い。
「けど、いい人達ですよ」
新八は言う。
彼は共に行動しているからこそ、彼らの良い所も悪い所も理解している。
「リグルちゃん、さっきは本当にごめんね。天然パーマにはキツく言っておくから」
「あ、いえ、大丈夫です。誤解が解けたのならそれで……」
あたふたとリグルは顔を赤くしながら言った。
「こんな可愛いのに、男の子だなんて言うとは……」
「か、かわ……!?」
一気にリグルの顔が赤くなった。それはもう沸騰しているんじゃないかと思われるほど、全身まで真っ赤になっているような。
「おい銀ちゃんの次は新八かヨ。懲りずに良くやるネ。うちの男性陣は揃いも揃ってロリコンかゴラァ」
神楽は何故か妙なところで怒りボルテージをマックスにしていた。
「いやそれおかしくない!?」
流石に新八も黙っているわけにはいかなかったようだ。
そんな二人のやりとりを見ていたリグルが、
「あ、あの……!」
新八に近付き、声をかける。
「な、なに、かな?」
思わず新八は身構える。
先程は頭を撫でた新八だったが、心も身体もただの童貞なのだ。女の子に耐性があるかと聞かれればそんなことはない。
「も、もしよろしければ、また、声をかけてもいいですか……?」
それは恐らく、リグルにとっては精一杯の言葉だったのだろう。その言葉を伝えるだけでも、彼女の身体は震えていて、かつ、顔は赤く染まっている。
新八は笑顔で、
「勿論ですよ。僕の方こそよろしくね、リグルちゃん」
と、言葉を返した。
「あ、ありがとうございます……!」
リグルは満面の笑みでそう返したのだった。
銀時が吸血鬼姉妹+霊夢と愉快な仲間達(鼻血を出してる咲夜と、とばっちりを受けてる魔理沙)とラブコメをしている間、新八はある意味別のラブコメを繰り広げていたのだった。
眼鏡のくせに生意気だ。
「いや最後おかしくね!?」
お後がよろしいようで。
※
リグルと別れた銀時達は、夜の幻想郷をどんどん進んでいく。その途中、彼らは人里まで辿り着いた。
「……おや? こんな夜中に大勢でどうしたんだ?」
人里の入り口で立っていたのは、寺子屋の教師を勤めている慧音だった。
「ちょっくら異変解決にな。犯人探ししてる所だ」
銀時がそう告げる。
すると慧音は、視線を月に向けて、
「あの月のことか……?」
と尋ねた。
これには、万事屋メンバーは驚きを隠せずにいた。
今回の異変は、妖怪ならばすぐに気付けるが、人間には判別が難しい物のはず。それを慧音は悟ったと言うことは……。
「あぁ、すまない。そういえば言ってなかったね。私は半妖なんだ。それで、満月の夜にはいつもの数倍妖力が勝るから、それで分かったということだ」
慧音は半妖。半分人間で、半分妖怪。満月の夜になると妖力が増し、恐らくこの幻想郷の中で分からないことがない程の知識を一気に得る。
「……ならば、アンタなら分かるか? 今回の異変の犯人」
レミリアは真剣な目つきで尋ねる。
慧音は彼女のことをじっと見つめ、その後で、
「あぁ。分かる」
と、肯定した。
「! では、犯人の居場所も分かる、と?」
今度は咲夜が尋ねる。
慧音はやはり同じように見つめながら、
「迷いの竹林に行くといい。そこに恐らく、今回の異変の主犯がいるはずだ。私は夜に暴れる妖怪が人里に入らないように見張るから、貴方達で解決してくれるとありがたい」
慧音には慧音のやらなければならないことがある。彼女は人里に住む者を愛している。だからこそ彼女は、人々に害をなす者共を倒す為に、自ら見張りをしているということだ。
それを察した銀時は、
「任せろよ。依頼とあらばどんなことでも引き受ける」
「それが万事屋ネ」
神楽も自信満々に言う。
「戦力ならば私達がいるから問題ないぜ!」
「むしろ戦力過多もいいところなのだけどね……」
魔理沙は元気よく、霊夢はやれやれと言った形で同調する。
「ギン兄様のため、お姉様のため、みんなのため、私も戦う!」
フランは、銀時に抱きつきながらも、やる気満々の宣言をする。
「僕もお手伝いさせていただきます。このまま放っておくわけにもいきませんからね」
新八も笑顔で言った。
彼らは皆、やる気十分だ。
「……なんだろう。貴方達ならやってくれると信じられる。任せてもいいと思える」
慧音の言う通り、銀時達の言葉はとても力強かった。だからこそ慧音は、
「……異変解決、お願いする」
彼らに異変解決を依頼したのだった。
※
「……私もそろそろ、動かなくてはいけませんわね」
スキマの中で呟いたのは、八雲紫。
幻想郷で異変が起きていることは、勿論彼女も把握している。
だからこそ彼女は、
「……藍、橙。留守の間、お願いしますわ」
「「はい」」
二人の式神にそう告げると、紫は異変解決に向けて、独自で動き始めた。
銀魂×東方project
銀色幻想狂想曲
第五十一訓 何かに向けて行動する時には大体目的がある
意外にも新八がリグルちゃんを落とした回になります!!