慧音に言われた通り、銀時達は現在迷いの竹林を歩いていた。名前に『迷いの』とつく通り、竹林以外には何もないような場所。道標となり得るものも存在しない為、自分達が何処に向かっているのかをきちんと確認しなければならないような場所となっていた。
「本当、竹ばっかだなぁここ」
ぽつりと銀時が呟く。
「しかし、竹の中を歩いていると、本当に今回の異変が始まる前に言ってた『竹取物語』が浮かびますね」
「あ? あぁ、あれか」
新八の呟きに銀時が反応した。
「ギン兄様、『たけとりものがたり』ってなぁに?」
相変わらず銀時の腕に抱き着いているフランが尋ねる。後ろではそんな二人に対して殺気に近い何かを送っている霊夢が居て、慌てている魔理沙が居たが、彼が気付くはずもない。
「ちょっとした昔話だ。竹の中からお姫様が出てきて、おじいさんとおばあさんが育ててたんだけど、如何せんそのお姫様がすげぇ美人で、言い寄ってくる輩が居たんだ。お姫様は無理難題吹っ掛けてそいつらを追っ払ったわけだが、そんなある日、満月の夜に月の使者が迎えに来て、お姫様はソイツらと一緒に月に帰っちまう、って話だ」
「あ、それなら私も寺子屋で聞いたことあるぜ! 竹の中からお姫様ってなかなかすげぇ展開だぜ!」
どうやら魔理沙は、慧音より既に教えてもらっていたようだ。何かで読んだことがあるのか、霊夢も首を頷かせていた。
「……まさか、今回の異変、そのかぐや姫が関係している、とか?」
咲夜の言葉に、
「……確かに、そう考えれば辻褄が合うのかもしれないな」
と、意外にもレミリアが同意した。
「お姉様? どういうこと?」
これにはフランも尋ねる。
レミリアは、そんなフランの頭を優しく撫でながら、
「それを説明する前に、まず一つ質問をしよう。『何故異変が起きたのが今夜だったのか?』」
「それは……幻想郷が満月だったからじゃないアルか?」
「その通りだ。それから次の質問だ。『満月に異変を起こす理由は何か?」
この質問には、一同少し頭を捻る。
そして最初に答えたのは。
「満月が、異変を起こした犯人達にとって不都合だったから、かしら」
「流石はレイムね。正解よ」
「……なる程。そこで『竹取物語』なんですね」
それらの質問を踏まえた上で、最初に真相に辿り着いたのは新八だった。
銀時も、何かに思い至ったようだ。
「つまり、今回の異変の犯人は、満月であることが気に喰わねぇ、もしくは都合が悪いってわけで、月をごっそり偽物にすり替えちまったってわけか。そして、かぐや姫を照らし合わせたとすれば、満月の日に月の使者がこっちにこねぇようにする為、ってわけか」
「大当たりだ。流石はギントキ」
「ギン兄様頭いいー!」
思う存分銀時に抱き着きながら、フランがにこにこしている。彼女からしてみれば、銀時がこうして活躍している所を見るのが凄く嬉しいのだろう。
何処まで彼女は銀時のことが大好きなのだろうか。
「見えてきたぜ、今回の犯人。ってことは、私達はそのお姫様をぶっ倒せばいいってことだな?」
「ところがそうもいかないかもしれないのよ。お姫様だけで、果たしてそれだけのことが為せるかしら?」
霊夢の疑問は最もだった。
確かに、これだけのことを為せる時点で十分ただものではない。だが、それだけの力を一人で持ち得るのか。中にはそういう者もいるだろう。しかし、複数犯である線を消してはならない。
「いずれにせよ、会ってみなきゃわからねぇことだろ? 推論いつまでもグダグダ話しているより、まずは犯人引きずり出そうじゃねえか」
木刀を握り、銀時が改めて決意表明をする。
一同はその言葉に力強く頷き、第一歩を踏み出そうとしたところで、
「ぎゃあああああああああああああああああああああああああ!!」
落ちた。
新八が、落ちた。
華麗に、綺麗に、無様に、落ちた。
「……何やってるアルか?」
落ちた先を見ながら、神楽が冷たい視線を向ける。
それに対して新八が一言。
「こんなところに落とし穴があるなんて予測出来るかぁあああああああああああああ!!」
ごもっともである。
と、そんな時だった。
「キシシシシシシ! 引っかかった引っかかった~!」
癖のある黒髪に、ふわふわなうさ耳とうさ尻尾、袖に赤い縫い目のあるミニスカート型のワンピースを着た少女は、まるで悪戯好きな子供のように楽しそうに笑う。
「なんだアイツ。凄い癇に障るネ」
「見たところ兎のようだな……しかもああ見えて実はなかなか年上だぞ」
「マジで?」
レミリアの言葉に、銀時は目を丸くする。
今回、年齢詐欺がこれほどまでに似合う人物に出会ったのだ(今銀時に抱き着いているフランは、本来495歳なのだがとてもそうは見えない程幼い)。
「私は因幡てゐ! ここには私が仕掛けたトラップがたくさんあるんだ~! あんた達に抜けられるかな~?」
凄く、純粋に楽しそうに、そして愉快そうに、彼女は笑う。
そうして彼女は、銀時達の前からあっけなく走り去る。
「おいゴラまてぇ!」
銀時が真っ先に追いかけようとしたが、
「あ、銀さん! そこは危ないぜ!」
という魔理沙の忠告も、時すでに遅し。
銀時の足にワイヤーのような何かが引っかかったと思ったら、次の瞬間には、
「グァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
竹林に宙ぶらりん。
「キシシシシシシシシ! まーた引っかかったー!」
その様子を、わざわざ立ち止まって確かめるてゐ。
ここまで来ると最早愉快犯である。
「それじゃあ楽しんでいってね~!」
と、てゐがその場を立ち去ろうとした次の瞬間である。
「……え?」
先程までてゐが進もうとした先には、誰も居なかったのだ。
しかし、今はどうだろう。
「どうかなさいましたか?」
平然と、何食わぬ顔で、進路を阻むメイドが居た。
「い、いつの間に!?」
慌てて別方向に走り去ろうとしたてゐだったが。
「なにぃ!?」
更にそれを見越したかのように、咲夜がにっこりと笑いながら立っている。
「……毎度思うんだけど、咲夜の能力ってチートよね」
「霊夢の夢想天生には言われたくねぇぜ……」
ここに居る人間達は、チートの塊となり得る者が多すぎる。
そのことを改めて認識した魔理沙なのであった。
結局、咲夜の能力が功を為し、てゐは呆気なく確保されることとなる。
※
「……あそこに居るのって、もしかして」
迷いの竹林を歩いているアリス達は、一匹の兎を取り囲む人物達に見覚えがあった。
「……幽々子様、あれではどちらが敵なのか分かりませんね」
「そうねぇ……最早あれは虐めの現場でしかないわねぇ」
相変わらずにこにこしながら答える幽々子と、なんだか可哀想な者を見る視線を送る妖夢。
彼女達の視界に映るのは、
「さぁて、お仕置きの時間だなぁ、兎さぁあああああああああん?」
「きゃあああああああああああ! よってたかって私をどうするつもりだ天然パーマぁああああああああ!!」
「先に仕掛けたのはそっちですからね……覚悟はできているんですよね?」
「眼鏡の癖に生意気だぞ!! 大体一番最初に罠にはまった情けない奴じゃないか!!」
「ギン兄様を傷つける奴は、私が許さないよ?」
「一番怖いよ!? 愛が重すぎるよ!?」
「妹がしたいことならば、私が協力しない筈ないな?」
「ちょっとは自重してよシスコン!!」
「御嬢様の為ならば何なりと」
「止めなさいよメイド!!」
「いい加減覚悟を決めるネ。命乞いなんて情けないアル」
「命乞いしたくもなるよ!? 絶対次は後悔させてやるからな!!」
「悪戯するのも大概にした方がいいぜ! マスタースパークぶっぱなしてやるぜ!」
「いい笑顔でどんな宣言してるの!? マジ勘弁して!!」
「……諦めなさい」
「その一言が一番つらいよ!!」
間違いなく、リンチのそれだった。
「……とりあえず、彼らを止めましょう。そうしなければ犯人の居場所も聞けないわ」
溜め息をつきながら、アリスが先陣を切るのだった。
銀魂×東方project
銀色幻想狂想曲
第五十二訓 やられたらやり返すのもいいけれど方法を間違えればただのリンチにしかならない
どうしてこうなったんでしょうか(しろめ