銀時がスキマに落とされたことにより、結局チームは二分割されることとなった。
冥界組と紅魔館組が合わさり、万事屋組と異変解決組が合わさる形となる。
そしてまずは、冥界+紅魔館組から。
「まったく紫ったら、面白いことしてくれるじゃないの……ふふふ」
笑ってはいるものの、内心何してんだゴラァ的な思考でいっぱいと思われる幽々子。昔ながらの友人であるからこそ、行動がなかなか読めなかったのは彼女も同様だったようだ。異変の時の意趣返しと言われてしまえばそれまでなのだが。
フランは終始不機嫌そうだ。と言うか、不機嫌の中に心配も混ざって、かなり複雑な表情を浮かべている。先程から声を発しようともしていない。余程銀時と離されたのがショックだったのだろう。
「ふ、フラン? そう気を落とすなって……ギントキだって無事さ。スキマ妖怪だってそこまで馬鹿じゃない。変な所に落とす真似はしない筈だ」
実際はとんでもない人のところに落とされているので、ただの気休めにしかならない言葉をかけるレミリア。しかしフランは姉の言葉ですら聞き入れていない。まさしく重傷と言うべきだろう。
「さ、咲夜ぁ……何とかならないか……?」
結局、妹のこととなるとなかなか上手くいかないのか、すぐにレミリアは咲夜に助けを求める。
「申し訳ありません、御嬢様……今回ばかりは、銀時様でなければどうしようもないかと……」
「うぐぐ……」
咲夜の言う通り、フランにとっての唯一の特効薬は『銀時と一緒に居ること』なのだ。なので、誰が今何を言った所ですべて無駄に終わってしまう。恋する乙女は何処までも複雑なのだ。
「銀時さんを助ける為にも、私が何とかしなければ……っ!」
その一方で、妖夢は気合いを入れ直していた。と言うか、最早それは空元気と言っても過言ではないのかもしれない。先程から意味もなく剣を振りまくっている辺り、体力消費が激しいことだろう。ハッキリ言って、意味があるのかすら怪しい。
「あまり体力を消費しない方がいいわよ、妖夢。後危ないから止めなさい」
「申し訳ありません……」
幽々子に言われてしまっては、剣を納めざるを得ない。
仕方なく妖夢は刀を納めようとして、
「……敵襲です」
すぐにそれを取りやめて、真剣な眼差しを無の空間に向けた。
「流石は冥界の剣士だな。相手の視線には敏感と言った所か」
レミリアは素直に感心する。
前回の異変において銀時に半人前を指摘された彼女だが、それでも彼女の剣技は常人のそれを遥かに上回っている。即ち、実力で言えば指折りなのだ。
彼女の言葉を受けて、他のメンバーも警戒態勢を取る。
そうして、闇の中から現れてきたのは、
「貴方達は侵入者と捉えていいんですね?」
白いブラウスに赤いネクタイを締め、紺色のブレザーを着ている少女。薄紫色の髪の毛は、かなり長く腰よりも下まで伸びていて、頭には少しヨレたうさ耳をつけている。何より彼女の瞳は、紅く染まっていた。
「そうねぇ。だけど最初に仕掛けてきたのはそちらの方よ? だから私達が乗り込んできたのだから」
幽々子は笑顔を絶やすことなく、彼女にそう言い放つ。
少女は幽々子を睨み付けながら、
「鈴仙・優曇華院・イナバ。貴女達の侵入をこれ以上許すわけにはいきません。どうぞごゆっくり、狂気の世界をご堪能ください……っ!」
瞬間、彼女の身体は分身した。
「……なる程。狂気の世界と言ったのはこういうことか」
レミリアは冷静に分析する。
鈴仙の能力は、『波長を操る程度の能力』を軸として、『狂気を操る程度の能力』を発動している。光や音、すべての波長を狂わせてしまえば、相手は感覚を失い、狂気に陥るという寸法だ。
平然としているものの、レミリアにもその効果は及んでいる。
事実、この場に居る誰もが、『鈴仙は何人も居る』ように見えている。
「どうしたんですか? 動かないのであればこちらから……」
「禁忌『フォーオブアカインド』」
静かに、そしてこのメンバーとなってからは久しぶりに、フランが声を発する。
その声はとても冷たく冷静で、そして明確な殺意が込められていた。
「っ!!」
その殺意は、鈴仙にも当然伝わってくる。
しかし、彼女はそれでも挫けるわけにはいかない。
「……ギン兄様のところに行くんだ。邪魔をするなぁ!!」
四人に分裂したフランは、無数の弾幕を張り巡らせる。
それはたとえ、相手が何人に分裂しようがどうでもよく、『当たればいい』と考えている程、とんでもなく雑で、かつ、確実に相手を仕留めに行っているものだった。
だと言うのに、
「何処を狙っているのですか?」
鈴仙には全く効いていない。
「うあぁあああああああああああああああああ!!」
フランは辺り一面に弾幕をばらまく。
しかし、鈴仙に当たった所で分身が消えるだけで、本体に当たっている様子はない。
「下手な鉄砲数撃ちゃ当たる、とはよく言った物ですね……しかし、本当に下手な鉄砲は、いくら撃った所で当たるわけがないんです」
幻覚のすべてが、フランに向けて指を差す。それはまるで手を使って拳銃を作るように。
「ですから、貴女はそこで眠っていてください。正直言って厄介です……っ!」
その幻覚すべてから、銃弾型の紅い弾幕が放たれた。
「させません……っ!」
真っ先に動いたのは咲夜だった。
咲夜は自身の力で時を止め、ナイフを弾幕すべてに向けて放つ。
瞬間、弾丸とナイフがすべてを打ち消し、辺り一面に散らばっていった。
「……貴様、よくも私の妹に銃弾を向けたな」
レミリアの目は、鈴仙を確実に射抜いていた。
「神槍『スピア・ザ・グングニル』!!」
グングニルの槍。
北欧神話に伝わる伝説の槍を、弾幕の光を以て再現する。
彼女の槍先にあるのは、妹を傷つけようとした不届き者。
その者の心臓を射抜くには、まさしく都合のよい代物だった。
「戦いにおいて、面倒な相手を倒すのは先決です……っ!」
しかし、鈴仙もそれを見て尚、崩れることはない。
「狂符『
彼女は無数の弾丸を放ち、槍のすべてに向ける。
光の槍は、無数の弾丸に打ち消され、霧散した。
「ほう……これほどとは」
「けれど、貴女もまだ甘いわね」
幽々子が、扇子で口元を覆いながら、鈴仙の負けを宣告する。
鈴仙はその言葉を聞いて、
「何処が甘いのです? 私の狂気に、貴女方は確実に陥っています……現状を打破出来るなど……っ!」
「えぇ、確かに、『目で物を見ている私達』には、貴女を倒すことは出来ないでしょう。ですが……」
そこで言葉を止め、そして幽々子は宣言する。
「『目で見ていなければ』話は別でしょう?」
「なっ……!」
瞬間、鈴仙の身体に強烈な痛みが走る。
今までの攻撃を当てることは出来なかったのに、今回の攻撃は確実に当てられた上、留めの一撃となった。
鈴仙はその攻撃が何故当たったのか分からなかったが、
「……剣士たる者、敵の気配を察知する物。貴女の気配を最初に察知したのは私です。私に貴女が倒せない筈が、ない」
カチャン、と鞘に納めながら語ったのは、妖夢だった。
そう。彼女は最初から分かっていたのだ。
敵が一体何処にいるのか、ということを。
「そん、な……」
鈴仙はその場に倒れた。
「安心してください。峰打ちです……余計な殺生をするわけにはいかないので……それに、銀時さんも待っていますから」
その名前が出た瞬間、フランは正気に戻る。
「ギン兄様……待ってて……私が……私『達』が必ず助けるから!」
「……そうだな。必ず、私達で迎えに行こう」
レミリアは、フランの言葉を聞いて少し嬉しそうにする。
そうして彼女達は、先を急いだ。
銀魂×東方project
銀色幻想狂想曲
第五十四訓 狂気を招くような奴には無闇に近づかない方がいい