銀色幻想狂想曲   作:風並将吾

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第五十七訓 明けない夜などない

「ギン兄様!!」

 

 真っ先に反応を示したのはフランだった。彼女からしてみれば、突然引き離された大切な人との再会。モチベーションを爆上げさせるには十分過ぎるものだった。

 

「坂田銀時……異界の侍……姫様が仰っていた、重要危険人物……」

「あのお転婆娘にそんなこと言われてたのかよ。謙遜しちまうぜ」

 

 永琳のつぶやきに対して、銀時は可笑しそうに言葉を返す。

 銀時が次々と異変を解決していたこと自体は、人里にて薬を配布することのあった鈴仙より伺っていた。それを受けて、輝夜はどうやら銀時のことを要注意人物として捉えていたようだ。

 

「なによ、銀時。かぐや姫に会ってきたの?」

 

 霊夢が尋ねると、

 

「まぁな。紫に落とされた先にいたのがたまたま姫さんだったってわけだ。ソイツと話つけて、本物の月を持って来れば明けない夜を明かしてくれるって約束してきた」

 

 銀時は木刀を永琳に向けながら答えた。

 

「さて……これだけの戦力を前にして、テメェはまだ抗うか? やろうってんなら相手になるが」

 

 挑発するように銀時は尋ねる。

 既に今回の異変解決に向けて動いていたメンバーはほぼ全員揃っているこの状況。一人を相手するならまだしも、これだけの人数を相手にするにしても、永琳一人では中々に骨が折れることだと思われた。

 しかし、永琳は引かない。

 

「……私は引くわけにはいかない。確かに、これだけの人数を相手にするのは無理かもしれない。けど、姫様を守る為、私は私の最大限を……出す!!」

 

 永琳は弓を捨て、両手を前に突き出す。

 自身の持ち得る最大の力を利用して、辺りに居る敵を一掃しようと試みる。

 

「何か……来る!」

 

 真っ先に感知したのはレミリアだった。

 大いなる力に対して敏感なのは、吸血鬼故の行動だった。

 

「天網蜘網捕蝶の法!!!」

 

 瞬間、辺り一面に弾幕とレーザーが放たれる。

 それはまるで、蜘蛛の巣を彷彿とさせるような、網目状になって広がる捕縛型の弾幕。

 

「銀さん!!」

 

 新八は叫びつつ、迫りくる弾幕を避ける。

 他のメンバーも同様で、各自迫る弾幕を避けるのに精いっぱいだった。

 ただ、一人を除いて。

 

「ギン兄様!!!!」

「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

「なっ……?!」

 

 あろうことか、蜘蛛の巣を潜り抜けようと試みる男。

 彼は獲物などではない。この巣における、狩人。

 坂田銀時は、自身の刃を利用して、迫りくる蜘蛛の糸(レーザー)をぶった切る。

 

「これで、終わりだぁあああああああああああああああああ!!」

「……っ!!」

 

 銀時から繰り出される、無数の斬撃。

 木刀による打撃は、永琳の体力を根こそぎ奪い去っていく。

 

「ぐ、がっ……!」

 

 やがて永琳は完全に沈黙し、弾幕も綺麗さっぱり消え去った。

 瞬間、辺り一面は一気に部屋に戻り、荒れ果てた襖や切り刻まれた畳が露わとなった。

 

「……はぁ、はぁ……」

 

 怪我はない。

 ただし、相当体力を奪われたことには間違いない。

 銀時の息は荒く、肩で呼吸をする形となる。

 

「ぎ、ギン兄様ーっ!」

 

 そんな銀時に、フランは思わず抱き着いた。

 銀時は多少よろけながらも、彼女のことを優しく受け止める。

 

「……結局、最後は貴方が決めるのね。うふふ」

 

 近寄りながら、笑顔で賛辞の言葉を述べる幽々子。

 

「お見事です、銀時さん……いつか私にも、貴方の剣術を教えてください」

 

 頭を下げ、何故か修行の約束を取り付けようとする妖夢だった。

 

「ちぇー、結局かっこいい所銀さんに持っていかれちまったぜ。なんだか味気ないぜ……」

 

 若干口を尖らせるも、嬉しさを隠すことのない魔理沙。

 

「よくやったな、ギントキ。流石は私の見込んだ男だ」

 

 カリスマ性を発揮するレミリア。

 

「流石は銀時様。感服いたしました」

 

 頭を下げながら言葉を述べるのは、咲夜だった。

 

「ここまで来るとむしろ天晴ね……」

 

 何と言ったらいいのか分からない表情を浮かべるアリス。

 

「……まったく、主人公として美味しい所を持って行くなんて。私の分も残しておきなさいよね」

 

 不敵な笑みを浮かべる霊夢。

 皆が同様に賛辞の言葉を述べていた。

 

「銀ちゃん、お疲れ様アル」

「銀さん、これで月は……」

「あぁ、恐らく元に戻った筈だ」

 

 一同は揃って、天井を見上げる。

 戦いの激しさを物語るように、天井には穴が開いてしまっていたが、そこから差し込んでくる月の光は、まさしく本物の満月の光。

 彼らの戦いを祝福するかのように、優しく光が包んでいた。

 

 

「……と、いう訳で。今回貴女が起こした異変については、まったくの無意味だった、ってことですわ」

 

 月を見上げながら、八雲紫が言い放つ。

 輝夜は、ポカンとする自身の表情を隠すことなく、それから一言。

 

「じゃあ、ここには月の使者は、来ない……?」

「そう言ったではありませんか。幻想郷と貴女が元居た場所は、そもそもが違う世界なのです。なので月から使者が来るということもありませんわ」

 

 そう。

 輝夜達が今回異変を起こした最大の理由が、『満月の日に使者が訪れて、輝夜を連れ去るのを防ぐ為』だったのに、その大前提が崩れていたとなると。

 

「そんなの……ただの力の使い損じゃない!!」

 

 珍しく、輝夜が叫び声をあげた。

 

「まぁ、その事実を知らなかったのですから仕方ありませんわね……長年生きてきたけれど、幻想郷に来てから『月の使者が来た日と同じ満月の日』が来たのは、今回が初めてでしたから……勘違いはよくあることです。なので貴女方は別に悪いわけではありませんわ。異変を起こしたことについては問われるかもしれませんが」

「しかし、夜が明けなかったことに関しては私達のせいではないわ。元々住む妖怪達が勝手にやったことでしょう?」

「……それについては反論しようがありませんわ。しかもたちの悪いことに、一人だけでなく、『満月でなければ困る妖怪達』が集団で行った結果、歪な永遠が訪れてしまっただけのことですから……」

 

 これには紫も困っていた。

 彼女はあくまで境界としてのスキマを生み出す能力が基本となる。永遠を元に戻すことについては専門外なのだ。

 故に、彼女が今回の異変において動いた最大の功績は、『異変を起こした犯人の認識を正す事』だった。そのうえで、『夜を元に戻すことを約束させる』ことを行ったのだ。

 結果、紫の思惑通りに動くこととなった。

 

「はぁ……仕方ないわ。彼も私の出した無理難題を、あっさり解決してしまったみたいだし……約束は守らなきゃいけないわね」

 

 溜め息を吐き、その後で目を閉じる。

 紫は、そんな輝夜の姿をじっと見つめていた。

 

「明けない夜に終焉を。偽りの月は破壊され、元の月に戻った。そして夜明けは訪れる……偽りの永遠に幕引きを。『永夜返し』」

 

 瞬間、今まで夜だった時間が、急速に朝へと変化し、そして夕方へと姿を変える。

 時間にして、既に夕方から夜までの間に移行していたということが証明された。

 

「……これで、今回の異変は完全に終わりよ。満足かしら? スキマ妖怪」

 

 不機嫌そうに輝夜は尋ねる。

 

「そうですわね。これでようやっと宴会が楽しめますわね」

「相変わらずそういう行事好きねぇ……けれど、今回の宴は、存分に楽しめそうね」

「あら、どうしてかしら?」

 

 不思議そうに尋ねる紫。

 そんな彼女に対して、輝夜は今回で一番の笑顔を見せながら、答えた。

 

「だって、今回の宴には、私の心を射止めた坂田銀時(だんなさま)が来るのだから」

 

 後にこの一言が、新たな異変(しゅらば)を生むことになろうとは、誰もが予想していなかっただろう……。

 兎にも角にも、長かった夜は、ようやっと終わりを迎えたのであった。

 

 

 

銀魂×東方project

 

 

 

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第五十七訓 明けない夜などない

 

 




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