「銀さん、その状況一体どうなってるんですか?」
永遠亭から一度引き上げて、万事屋に戻ろうとした時のこと。新八が銀時のことをじっと睨みつけながら言い放った一言。理由は単純で、
「何? 私がいるのが不満だって言うの? 輝夜姫よ? 高貴なる身分よ? 喜びなさい?」
「喜べるわけねぇだろ!! なんでアンタが銀さんに抱き付いて片時も離れようともしないんだよ!! もうわけわかんないから!!」
「落ち着け新八……俺にもわからねぇ……」
「諦めないでくださいよ銀さん!?」
もう考えることを放棄して白目状態の銀時と、律儀にツッコミを入れまくる新八。
「銀ちゃんこの小説だとどうしようもないナチュラル女誑しに変化してるネ。何アルか? 愛染香でも嗅いだアルか? ハーレム王に俺はなるとか気合い入れてるアルか? 正直言ってキモいアル」
「言われる筋合いのない罪を次から次へと押し付けてくんのやめてくんない? 銀さんのハートガラスだから。ハートブレイクしちゃうから」
ゲスを見るような冷たい眼差しを向ける神楽。かつて歌舞伎町でこれほどまでに女性に惚れられまくる坂田銀時を見たことがあっただろうか。普段は天然パーマのチャランポランでも、いざという時には輝く瞳がファンの間ではまことしやかに囁かれているのだろうか。
「とりあえず、そろそろ帰るか」
「えぇ、そうね。私たちの愛の巣へ♡」
「お前の家ここだかんな? 大人しくここに残れ?」
「愛する夫婦は常に一緒でしょう?」
「だからテメェと夫婦になった覚えはねぇっつってんだろ!!」
誰もがダメージを受けるはずの涙目上目遣い攻撃も、フランで慣れているため効力がない。というか、輝夜の場合は計算されてやっていることが銀時にも理解出来ているので、スルーすればそれで解決なのだ。
「本当に誘惑が全く効かない殿方ね……こんな人初めてだわ」
「テメェみてぇなストーカー女にゃ慣れてるからな。もちっと可愛げのあるやり方見つけて出直して来やがれ」
不満そうに呟く輝夜を軽く突き飛ばし、銀時は永遠亭から出ようとする。
ちょうどその時。
「待て、坂田銀時」
声をかけられる。
そこに居たのは、真面目な表情を浮かべている永琳だった。
「よぅ。もう身体の方は平気なのか?」
「おかげさまで……というより、私から一つ、貴方にどうしても聞かなければならないことがある。別に宴会の時でも構わないのだけど、はっきりさせておきたいと思って」
一度深呼吸をし、それから永琳はこう尋ねる。
「あの時、どうして手加減したの?」
『あの時』とは間違いなく、銀時が永琳にとどめを刺した時。第三者からしてみれば、あれは紛れもなく本気で戦っているように見えた。しかし永琳は、あの時の銀時を『手加減した』と称した。
銀時は頭をボリボリと掻きながら、
「別に大したことじゃねえよ。そこにいる姫さんの顔思い浮かべたら、重傷負わせるのに気が引けただけの話だ。別に俺達は異変を解決しに来ただけで、犯人ぶっ飛ばしに来たわけじゃなかったからな」
「……そうか」
その答えを聞いて、永琳は満足したようだ。輝夜もまた、坂田銀時という男にますます惚れ込んだようで、うっとりしたような表情で銀時を見つめている。
永琳は満面の笑みで、銀時に一言。
「姫様をよろしく頼む」
「いや遠慮する」
それはもうとても綺麗に寸分違わず間髪入れずに返された一言だった。
銀時の答えは最初から決まっていたのだ。
「何故よ!? 輝夜姫よ!? 絶世の美女よ!? こんなチャンス二度とないかもしれないのよ!?」
「るせぇ!! 美人だからって夜這いして許されると思ったら大間違いだからな!? つか夜這い通り越してストーカーだろうが!!」
「姫様……はしたない真似は……」
これには永琳も苦笑い。
「私たちは夫婦よ? そこにはしたないなんてものは存在しないわ!!」
「勝手に夫婦にすんな。テメェみてぇながめつい妻なんざこっちから願い下げだぜ」
「……銀さん、このままだと時間の無駄ですよ? そろそろ行きませんか?」
「時間の無駄ってなんでよ!?」
「……なんか、思ってたのと全然違うアル。すごくこう、さっちゃんみたいネ」
輝夜に対する印象がそこそこにブレイクしたところで、銀時達はその場から去ったのだった。
だが、彼らはまだ知らない。
宴会ではもっととんでもない修羅場が待ち受けているということを……。
※
さて、満を持して万事屋に帰ってきた銀時達だったのだが。
「で? なんでテメェは何食わぬ顔で座ってんだ? ヅラ」
なぜか勝手にお茶を飲んでいる桂が居た。
「ヅラじゃない、桂だ。八雲殿から宴会を開くという連絡を受けてな。そこでこうしてスタンバッていたわけだ」
「アイツから? もしかして今回はこっちの奴らを幻想郷に招き入れようってことか?」
どうやら紫は、銀時達が永遠亭に泊まっている間に、こちらの世界の住人に声をかけていたようだ。
「八雲殿曰く、前回の宴会にいたメンバーには声をかけたと言っていた。後、新八君の姉君にも」
「姉御も来るアルか!」
新八の姉ことお妙が来ることがわかって、神楽のテンションが上がる。
反対に、男性陣のテンションは微妙になる。
「前のメンバー全員来るっつったよな?」
「えぇ……ということは、月詠さんも、さっちゃんさんも来るって事ですよね」
「そしてお妙が来るってことは、九兵衛も来る可能性がある」
「「カルテット、揃ってしまった」」
お妙、月詠、猿飛、九兵衛の四人が揃った時、大抵ろくなことが起きない。
そして忘れてはいけないのは、前回メンバーということなので長谷川さんもいることなのだが、もはや彼らの頭の中から抜け落ちてしまっている。
「こうして酒を飲む機会などそうそうないだろうからな。俺も楽しみにしてるぞ、銀時」
「そうかい。まぁ勝手に楽しんでろよ、ヅラ」
「ヅラじゃない、桂だ」
横ではエリザベスが『俺も行くぞ!バリバリ!』というプラカードを掲げている。
「今回の宴会……果たして無事に終わりますかね」
「さぁな……少なからず、永遠亭で行われるって段階で、あの馬鹿姫が何かやらかさないか心配だ」
「それ以上に私としては、フランとかが心配アル」
「あぁ……確かにそうだね……」
新八と神楽は、今回の宴会は間違いなく荒れると確信していた。
二人は輝夜のゾッコンぶりを目の当たりにしてしまっている。当然、銀時に対して好意を抱いているフランが、黙って見ているわけがない。下手したら戦闘すらあり得るのではないだろうか。
そこにトドメと言わんばかりに、今回は猿飛や月詠もいる。
「……なんだか胃が痛くなったよ」
「どうした新八君? 胃薬でも飲むか?」
「いや、いいです……」
桂の気遣いが、心に染みてしまったという。
銀魂×東方project
銀色幻想狂想曲
第五十九訓 嵐の前はどう足掻いても単純に五月蝿くなる
さて、次回は波乱の宴会ですよ!