銀時達が騒いでいる裏では、新八にもちょっとした出来事があった。
「あ、あの!」
「ん?」
神楽やお妙、九兵衛と一緒に食事を堪能していた新八の所に、一人の少女が声をかけてくる。その姿を見た新八は、異変の時に出会ったことを思い出し、
「リグルちゃん!」
そう呼びかけたのだ。
声の主はリグル・ナイトバグ。
「おぉ! あの時の男の子っぽい女の子アルか!」
「そ、それは勘弁してくださいよ……」
神楽の一言で、異変の時を思い出したリグル。
顔を真っ赤にして、新八の影に隠れてしまう。
「あら、新ちゃんってばその子と知り合いなの?」
意外そうな表情を浮かべたのはお妙だった。
「えぇ。つい先日会ったばかりなんですけどね。銀さんってば最初に男の子と勘違いしちゃってて……こんなに可愛いのに……」
「あうぅ……」
新八の一言に、ますます顔を赤くしてしまうリグル。恥ずかしさと嬉しさがごちゃ混ぜになって、とんでもないことになっているに違いない。
「ほぅ……新八君もなかなかにやり手だな」
その様子を見て、九兵衛が謎に感心していた。
「幻想郷に来てから、銀ちゃんも新八も、何か妙に女の影がちらつくようになったネ。特に銀ちゃんはハーレム作り放題で、ドキドキウハウハトラブルモードアル」
「いや、なんかもう言葉くっつけ過ぎて意味わかんなくなってるからね、神楽ちゃん」
やんわりとだが、ツッコミを入れることを忘れない新八。
彼はやはり性根からのツッコミ役と言った所だろうか。
「それで? 新ちゃんにわざわざ声をかけにきたってことは、もしかして……」
「え、ええと! あの、お見かけしたので声をかけたかったから……です……」
尻込みしていくリグルの声。
そんな彼女を見て、お妙と九兵衛が一言。
「「可愛い」」
「はうぅ!?」
もう沸騰寸前となっているリグル。
このままだとショート寸前になってしまうことだろう。
「だ、大丈夫? リグルちゃん」
そんな彼女の頭を撫でる新八。
それは……トドメでしかない……。
「あ、あわわわわわわわ!」
もうまともに喋ることが出来ないリグル。
控えめに言ってかなり可愛い。
「……何やってるんだか」
そんな様子を眺めるアリスは、パチュリーと一緒に魔法談義に盛り上がっていたという。
※
「キシシシシ!」
宴もたけなわ。
もうじき終わろうとしている時に、一人怪しく笑う少女が居た。
因幡てゐ。こういう時に何かしらを仕掛けようと企む少女である。
「まーた何か企んでるんですか?」
そこに話しかけてきたのは鈴仙だった。
彼女は何かとてゐの悪戯に嵌められることが多い。
だが今回てゐが標的として選んでいるのは……。
「眼鏡の反応、すっごく面白いんだもの! 何回トラップを仕掛けても面白いんだよ? キシシシシシ!」
それはもう嬉しそうに語るてゐ。
そんな彼女に対して、鈴仙が一言。
「もしかして、新八さんに惚れてる?」
「ばっ……!?」
珍しく、てゐは動揺した。
「惚れているんじゃない! 面白がってるんだ! 興味津々なだけだ!」
「それを世間では惚れているって言うんじゃないですか……」
呆れた口調で鈴仙は呟く。もちろんてゐには聞こえていない。
「これはもしかして……スクープの予感ですか?」
そこに現れてきたのは、常に野次馬精神を忘れないマスゴミこと、射命丸文。
カメラ片手にニコニコしながら近づいてくる。
「烏天狗ですか……何か特ダネでも掴みに来たんですか?」
鈴仙は呆れたような口調で彼女に話しかける。
「もちろん! 本来ならば坂田さんを中心にするつもりでしたが、彼に関しては粗方撮り終えたのと、そろそろ新ネタも入れなきゃなって思った所に、志村さんの話題が来るじゃありませんか!」
「余計なことすると、トラップ地獄に陥れちゃうぞ? キシシシシ!」
悪戯っ子の表情で睨み付けるてゐ。
文はそんな視線をスルーしつつ、
「志村さんってば、さっきから一人の女の子に夢中ですからねー。早くしないと取られちゃうかもしれませんねー」
半ば棒読みで、流し目でてゐのことを見つつ、そそのかすように言い放つ。
てゐは最初こそ我慢していたが、
「うぅ……分かったよ! 行ってくる!!」
次の瞬間にはその場から離れて、新八にちょっかいを出しに行く姿が確認された。
「……何が目的なんですか」
「え? 特ダネですよ☆」
「……本当ブレないですね」
「それが新聞記者ですから♪」
射命丸文。
本日も特ダネを手に入れる為に燃えていた。
※
宴会も終わり、それぞれ帰路についていく。
そんな中、輝夜は月を眺めながら、
「……はぁ」
小さく、溜め息をついた。
「どうされましたか? 姫様」
彼女に声をかけてきたのは、永琳だった。
「旦那様ったら、どれだけアピールしても全く振り向いてくれないのね……」
「あぁ……彼は中々に骨が折れそうですね。少なくとも、私達がお会いしたことのないタイプです。だからこそ、姫様は燃えているのではないですか?」
「もちろんよ! あっさり叶う恋なんてするだけ無駄だもの! たとえ吸血鬼の妹が相手だろうと、手を伸ばし続けるだけよ!」
やる気十分というところ。
輝夜は両手を握り締めて、やる気を見せている。
永琳は、そんな彼女を見て微笑んでいた。
「……けど、彼は本当に、危ない人ね」
「危ない、ですか?」
輝夜の言葉に秘められた真意を測りかねて、永琳は尋ねる。
輝夜は物惜し気に月を眺めながら、
「彼、守りたい物の中に自分を入れていないわ。だからこそ、前回の異変では自分が倒れるかもしれない可能性を考慮せず、私の無理難題を解決しようと試みたのだから」
「……宴会での話を聞く限りですと、それ以外にも坂田銀時さんは身体を張って異変を解決されたみたいですね」
「そこなのよ。旦那様の心配点。きっとこのままだと……」
言葉にすることを少し躊躇ってしまった輝夜。
しかし、やはり形にしなければならないと考え、そして告げる。
「彼の命一つで、幻想郷の未来が変わってしまう」
「……お気付きになられていたのですね」
「今回の異変で嫌と言う程にね。あの八雲紫ですら信用する男よ? 魅力があるだけでなく、同時に危険性も孕んでいることは重々承知よ。きっと幻想郷の崩壊は、彼の死とほぼ同じなんでしょうね……」
立ち上がり、月を眺める輝夜と、そんな彼女の隣に控える永琳。
「だけど、どうしてかしら……彼には『蓬莱の薬』を使わないで欲しいと思ってしまう。一生添い遂げるのなら、この薬を飲んでもらわなければならないのに……人としての彼に、ここまで惚れこんでしまったのかしら」
「……侍という存在の生き方に、心奪われたのですね」
「……最後まで美しく生きようとする、旦那様の決意……あのお方を選んで私は正解でしたわ」
「願わくば、姫様の恋が成就することを祈っております」
「手伝いなさいよ」
「厳しいかと」
「それもそうね……」
彼女達の会話は、一度そこで途切れる。
そして、
「……永遠がいいとは限らないものね。旦那様を見ていると、終わりがあるからこそ美しいと感じるようになったわ……また一つ、勉強になったわ」
「……」
これに対して、永琳は何も言葉を返せない。
永遠を手にしてしまった彼女達は、坂田銀時という男の生き様に惚れ、美しいと感じ、そして眩しすぎると感じていた。手に入れたいのに、手に入れられる気がしない。そんな気持ちの揺れ。
「まぁ、私は旦那様のこと諦めてないけどね!」
「……本当、惚れこんでおりますね」
「ぞっこんよ!」
「そうですか……」
輝夜はこれからも、銀時にアタックし続けることだろう。
それがたとえ、叶うか叶わないか分からないものだったとしても。
これを以て、異変終了となった。
銀魂×東方project
銀色幻想狂想曲
第六十三訓 終わりがあるからこそ美しいと感じる
と、いう訳で、次回からはポロリ篇その参をお送りいたしますー。
最初にだれを中心に持って行こうか、正直かなり悩んでおります(しろめ