銀色幻想狂想曲   作:風並将吾

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第六十五訓 人の話はきちんと最後まで聞くべき

「なるほど。それで万事屋がここに至ってわけか! いやぁそれにしても、衣装一つでここまでかわるもんだなぁ!」

 

 ここで燕尾服を着ている背景を説明し終えた銀時は、近藤に背中をバンバン叩かれていた。

 

「そうなると、新八君たちもここに?」

 

 辺りを見渡しながら山崎が尋ねる。紅魔館2ndGの間取りが珍しいのだろう。歌舞伎町で洋風の建物というとなかなか見られないので、貴重な経験であることは確かである。

 

「あぁ。新八は屋敷の中掃除してるし、神楽は今頃主人の妹の遊び相手になってんだろ」

「へぇ……給仕服着てご奉仕する雌豚たぁ、なかなか粋な趣味してますね、旦那」

「いや俺の趣味じゃねえから。主人命令だから」

 

 さすがと言うべきか、沖田の言葉は毎度ながらど真ん中ストライク球速160km級の物だった。

 

「まぁ、テメェがここにいるなら話ははえぇ。最近この屋敷に妙な大名行列が出来ていたって通報があってな。テメェも関与してんのか?」

「あー……」

 

 土方の言葉を受けて、銀時は思い至る。

 春雪異変が終わった時、確かにここで宴会を行なった。その時に万事屋銀ちゃんからここまで来たものだから、その姿はさぞかし目立ったことだろう。事実、その列を辿って月詠は銀時が関与していることに気付いているのだから。

 

「ありゃ宴会の為に集まってただけだ。たまたまテメェらが知らねぇ奴らが次から次へと来てたもんだから、それで物珍しさに駆られたんだろう?」

「宴会? 女子ばかりの宴会にテメェらも参加したのか!?」

 

 真っ先に反応したのは近藤だった。

 

「まぁな……関係者なんだから仕方ねぇだろ」

 

 頭をボリボリかきながら、面倒臭そうに答える銀時。早い所仕事に戻りたいのか、それとも単にここから離れたいだけなのか。

 

「つーことは、桂がいたかどうかについては……」

「あ? 桂ぁ? 今はどこにいんのか俺もしらねぇぞ?」

 

 土方の質問に対して、銀時は答える。これは正直なところだ。何せ彼は神出鬼没。いつ何処にスタンバッているのか銀時にも予想出来ない。

 

「もういいか? はえぇ所俺も持ち場に……」

 

 そう言って銀時が中に引き返そうとした、その時だった。

 

「ギン兄様ー!」

 

 館の奥から、可愛らしい女の子の声が聞こえてきたかと思いきや、後ろからギューッと抱き着いてきたのだ。それはもう誰から見てもハートマーク飛んでるんじゃないかと思われるほどのラブラブっぷり。

 そうーーフランが銀時に抱きついたのである。

 お巡りさんの前で。

 

「……総悟、手錠」

「縄なら持ってやすぜ。縛り上げますか?」

「やれ」

「いやおかしいだろ!? 何テメェら普段は見せねぇコンビネーション発動してんの?!」

 

 土方と沖田による、普段は見せない絶妙なコンビネーション技。銀時は両手をあっという間に縛り上げられてしまっていた。

 

「万事屋……いつか本当にやるとは思ってたが……まさかこんな幼気な女の子を洗脳するとは……そこまで溜まってたのか……気付いてやれなくてすまねぇ……」

「何変な勘違いしてんだゴリラァアアアアアアアア!! ちげぇよ!? こいつさっき言った主人の妹!!」

「分かりやした、旦那。話は署でゆっくり聞きやすぜ」

「現行犯でもなんでもねぇから!! せめて任意同行の確認ぐらいしろっての!!」

 

 有無も言わさぬ沖田の行動。

 土方と近藤は、冷たい目で銀時を見つめている。

 山崎は、

 

「もう大丈夫だよ。悪いお兄さんは、僕達が捕まえたからね」

 

 と、銀時に抱きついてるフランに対して優しく接していた。

 しかし、当の本人であるフランはと言うと、

 

「お兄さん達、だれ?」

 

 キョトンとした表情を浮かべながら、そう尋ねる始末。

 

「俺達は真選組。江戸の風紀を取り締まる警察だ」

「悪いやつから江戸を護るのが俺達の仕事だ! もう大丈夫だよお嬢ちゃん。この天然パーマの溜まっちゃったお兄さんは捕まえたからな!」

「だから溜まってねぇし、悪いこともしてねぇっつってんだろうが!!」

「往生際が悪いですぜ、旦那。悪いことしたやつはみんなそう言うんでさぁ」

「話を聞きやがれドSデカ!!!」

 

 銀時大パニック。

 真選組によって銀時が連れ去られそうになったと分かった瞬間、

 

「……あれ?」

 

 山崎が、真っ先に変化に気付いた。

 先ほどまで本当に甘えているだけの幼い少女にしか見えなかったフランが、まるで冷酷な殺人鬼へと豹変したかのような、そんな変化。

 

「こ、近藤さん……これ、もしかして俺達……勘違いしてるだけなのでは……?」

 

 恐れをなした山崎が、近藤に提言する。

 近藤が反応をする前に、

 

「……ギン兄様を虐めないで。もしこれ以上虐めるならば……」

 

 口元を歪ませて、怒りの眼差しを四人に向けて、そして言い放つ。

 

「コワシチャウヨ?」

 

 背筋が凍る想いをする。

 沖田ですら、思わず銀時を縛っていた縄を落としてしまったほどだ。

 近藤達は、形容し難い恐怖に襲われたのだ。そう、彼女はまだ何もしていない。なのに悟ってしまった。

『この少女に歯向かってはいけない』と。

 

「おいフラン。助けてくれるのはありがてぇけど、そんなに怖がらせるんじゃねぇっての」

「ふにゃっ」

 

 そんなフランの頭を、銀時は少し乱暴に撫で回す。それだけでフランのご機嫌は一瞬にして戻り、再び銀時に甘え始めた。

 

「……万事屋。その子は一体何者なんだ?」

 

 近藤がようやっと絞り出したのは、そんな一言。

 その質問に対して、銀時は平然と答える。

 

「だから言ってんだろ? 屋敷の主人の妹だって。ただしコイツは吸血鬼だけどな」

 

 

 

銀魂×東方project

 

 

 

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第六十五訓 人の話はきちんと最後まできくべき

 

 

 


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