「あ、霊夢さん! こちらの掃除は終わりましたよ!」
「こっちもなんとかなったネ!……って、魔理沙アルか?」
掃除を終えた新八と神楽は、家主である霊夢に完了報告をする。そんな霊夢の横には、何故か既に白目を剥いている魔理沙の姿があった。
「魔理沙さん? なんでいきなり白目剥いてるんですか?」
気になった新八が尋ねる。
すると魔理沙は、
「新八!! 神楽!! 助けてくれ!!」
「「へ??」」
突然新八の肩を掴んだかと思ったら、そのままゆさゆさと揺らしつつ、涙目で助けを乞う。なんのとこだかさっぱりわからない二人は、
「と、とりあえず落ち着いてください! ってかさっきならなんで霊夢さんは黙ったままなんですか?」
落ち着かせる意味でも、話題を少し変える意味でも、疑問を解決する意味でも、全ての意味を込めて新八は尋ねる。
もしかしたら霊夢がずっと黙り込んでいるのと何か関係があるのかもしれない。
そして更に気になるのは、何故か銀時がこの場にいないこと。
「霊夢が……銀時に一目惚れしちまったんだぜ!?」
「「は???」」
更に意味がわからなくなっただけだった。
※
とりあえずこのままでは埒が開かなかった為、一旦話を整理することにした。
てゐによるジャスタウェイテロから始まり、爆風に混ざっていた煙を霊夢が吸い込んだ瞬間、銀時に対して一目惚れしてしまったこと。
新八と神楽は思い至る。
「新八、まさかこれって……」
「うん、多分そうだよ……」
「「愛染香」」
彼らも一度巻き込まれた、愛染香による被害。まさか処分した物が幻想郷に流れ着いているとは思わなくて、言葉が出なかった。
「やっばりそうだよなぁ……香霖堂にあったものに違いないとは思ってたんだぜ……」
「香霖堂ってどんな場所アルか?」
神楽や新八は、香霖堂がどんな場所なのかを知らない。そんな彼らに魔理沙は簡単に説明をした。そして何故愛染香が流れ着いてきたのかも、魔理沙の説明によって二人は理解する。
「となると、今現実的に出来ることは、霊夢さんを連れて香霖堂に行くことですね……そこに愛断香もあるならば、効果が打ち消せますし」
「ところで、霊夢はさっきからまだ黙りっぱなしアル。一体どうしたネ?」
未だにまだ言葉を発しない霊夢。
その手は何処かプルプルしてるようにも見える。
たっぷり間を空けたのち、霊夢はポツリと一言。
「……銀時、いないの?」
「「アンタが吹き飛ばしたんだろうが!!」」
寂しげに呟いた霊夢に対し、魔理沙と新八のツッコミがシンクロした。
「なんで吹き飛ばしたアンタが銀さんの安否心配してんだァアアアアアアアアア!!」
「それに霊夢、さっき自分で何ともないって言ってたくせに、無茶苦茶影響受けてるぜ!? 言い逃れなんて最早出来ない位銀さんにぞっこんなのが目に見えてるぜ!?」
もう何が何やらカオスな状況。
そんな中に、
「いってぇ……さっきは何しやがる……」
銀時が、頭を抑えながら帰ってきた。
「あっ……!」
真っ先に駆け寄ったのは、吹き飛ばした張本人たる霊夢。
いかにも心配していますと言いたげな表情を浮かべながら、彼女は銀時の傍にすり寄って、
「銀時♡」
その腕に、抱き着いた。
「何してんだ霊夢さぁああああああああああああん!!」
あまりにも流れるように行動したものだから、誰もが反応するまでに時間がかかってしまった。しかし、そこは流石はツッコミ役たる新八。真っ先に行動を起こすことが出来たのは彼のポテンシャルがあるからこそ。
「もう、どうしたのよ銀時? そんなに傷だらけで……」
「あ、いや、吹き飛ばしたのテメェだけどな?」
銀時も銀時で、どう反応したらよいか分からないと言いたげな表情。
霊夢は更に、
「あの時はごめんなさい……私がどうかしてたのよ……こんなに魅力的な死んだ目をしてるのに、見つめるなだなんて……」
「褒めるんだか貶すんだかどっちかにしてくんねぇ!?」
言ってることが支離滅裂となっていた。
「わ、私ったら……惚れた男性の前でなんてことを……」
「気をしっかり持つアル! それは愛染香が見せてるまやかしネ!!」
そう言って神楽が、霊夢と銀時を引き離そうとすると、
「私の銀時に触れるなぁあああああああああ!!」
ブチギレた。
「おいぃいいいいいい! なんかもうふ振り幅滅茶苦茶になってんぞ!!」
「こんなの、私達の手に負えないぜ……」
もう早くもリタイヤ気味の魔理沙。
「森にある店に行きゃ、確かあそこに愛断香もあった筈だ……」
その時、銀時は思い出したのだ。
香霖堂には、両方とも店に並んでいた。即ち、そこに行けば事態解決に向けた何かがあるかもしれない、と。
「そうだぜ! 流石は銀さん! こんな霊夢、いつまでも見ていたくねぇぜ……」
目がハートになって、だらしない表情を浮かべながら、銀時の腕に抱き着いている霊夢。心なしか、身体を摺り寄せている。そして、息が荒い。
「銀時……私……アンタの目を見ているだけで……はぁ……♡」
「なんだこいつ!? とんでもねぇ痴女に目覚めてんぞ!!」
「それ以上は勘弁してくださぁああああああああい!! タグを更新しなきゃならなくなってしまいますんで、霊夢さんやめてぇえええええええええええ!!」
「あっ……んん……♡」
「人の身体で何してんだこのアマァアアアアアアアアアアアア!!」
もう大パニック。
元を辿れば、すべててゐのせい。
確かに、博麗の巫女の地位は、最早地に墜ちたも同然な振る舞い。
「と、とにかくいつまでもこのままでいるわけにもいきません……さっさと森へ……」
と、その時だった。
「何処へ連れていこうとするの? 銀時は私の物なのよ? 引き離そうだなんて許さない……んっ……♡」
「ダークサイドに落ちるのかピンクサイドに落ちるのか、どちらか一方にしてくんねぇええええ!?」
一瞬黒いオーラが見えたと思ったら、すぐさまピンクオーラに目覚める霊夢。
「……駄目ネ。このままじゃ埒が明かないアル……」
「仕方ないぜ……もうどうでもいいから、さっさと森の方へ行くしかないぜ……このままでもいいから……」
考えることを止めた女子二人。
「……無理もありません。この際道中何が起きても構いません。むしろ後で黒歴史となってくれれば、霊夢さんも目が覚めるでしょうし……」
「ねぇ、俺は? 俺はどうなの?」
「死んでください」
「なんでそんなに辛辣ぅ!?」
ある意味最大の被害者たる銀時に対して、労いの言葉をかける者はこの場に存在しなかった。
だがこの時、一同は完全に失念していた。
確かに、事態解決を図るには手段を選んでいる時間はない。
それでも、道中で何が起きるか分からないのだから、慎重に行かなければならない。
そのことが頭から抜け落ちていた為に、この後どんどん状況がカオスになっていく……。
銀魂×東方project
銀色幻想狂想曲
第六十九訓 普段との反動が激しいと変な方向に暴走してしまう