「ねぇ銀時。どうしてアンタの周りには女の子がとても多いのかしら?」
文が増えたことにより、ますます霊夢の密着度は増していく。
もうほとんどゼロに近い。油断してるとまた発情してしまうのではないかという程。というか歩く度に擦りつけている。自重している様子はない。
「なぁ、新八……あれ、もうどうしようもないのか……? そろそろ見ていてげんなりしてきたぜ……」
「無理です……普段の霊夢さんならともかく、愛染香でやられてしまっている以上、僕等の話を聞かないですから」
「前の時もそうだったネ……あの時と違って、今回はまだ被害者一人で済んでるからマシアル……」
前回愛染香が事件に関わった時、吉原を取り巻く大事件にまで発展してしまっていた。それよりは『まだ』マシなのである。それでも十分とんでもないことになっているのに変わりはないのだが。
「アンタには私が……はぁん……いるんだか……らぁ……ほかの……ひと、にぃ……めうつりしちゃ……らめぇ」
「擦りつけてくんじゃねえよテメェは!! もういいから離れろ!!」
「いや、らぁ……まら、わたひ……もっと……♡」
「もっとじゃねえよ!! ざけんなよテメェ!?」
頑なに銀時から離れようとしない霊夢。
そんな二人を写真に収めまくる文(霊夢に渡すという条件の元、写真撮影を認められた)。
「魔理沙さん、香霖堂って後どのくらいでつくんですか?」
痺れを切らせた新八が魔理沙に尋ねる。
魔理沙は自我を失いそうになるのをなんとか堪えつつ、
「魔法使いの森が見えて来たらもうすぐだ。後一時間もすればつく筈だぜ……」
「あと一時間は、私達あの様子を見ていなければならないアルか……」
げんなりした様子で神楽が言う。
もういっそのこと自分達だけでも先に行ってしまった方が気分的にいいのではないかと思い始めていた彼らだったが、二人きりにしてしまったら、それはそれで霊夢が何をやらかすか分かったものではないので、そうすることが出来ないでいた。
出来ればもうこれ以上騒ぎは起こさないで欲しい。
三人の共通認識としてはそれだったが、そうは問屋が卸さないのが連鎖という物である。
「……ギン、にいさま?」
よりによって、ラスボスの御登場だった。
「ふ、フラン……?」
この登場は彼にとっても想定外だった。
魔法使いの森に行くまでに、紅魔館は存在しない。
なので、少なくとも彼女達の内の誰かに遭遇することはないだろうと考えていたからだ。
「フランちゃん! どうしてここに?」
内心冷や汗だらだら流しながら、新八が尋ねる。
フランは普段の様子からは想像もつかない程低い声で、
「お姉様に許可を取って、ちょっと辺りを散歩してたの。こうしてたら外の世界のことも知れるし、ひょっとしたらギン兄様にも会えるんじゃないかなって思って」
確かに、フランの期待通り銀時には会えた。
ぴったりとくっついて、身体を擦りつけている霊夢というおまけ付きで。
誰がどう見ても、ラブラブバカップルのそれにしか見えない姿を、よりによって銀時がやっていた。
「そ、そうアルか……」
「散歩するのは、凄くいいこと、だぜ」
「え、えぇ。流石はフランさんです、ね」
神楽、魔理沙の二人はもちろんのこと、あの文までもが余計なことを言わない始末。それだけ、今目の前に居る少女が纏っているオーラは、『少しでも冗談を言えば身体が吹き飛んでしまう』と思わせられるものだった。
「フラン、聞いてくれ。これはだな……」
「銀時は私のなのよ。アンタには渡せない。残念だけどこれは確定事項なの」
擦りつけるのは止めたが、それでも銀時を離そうとしない霊夢。
その目はマジだ。
「……笑えないよ、その冗談。そんなのいつ誰が決めたの?」
「今、私が決めたわ。銀時は私の。誰にも譲らない」
「テメェのもんになった覚えはねぇ。後離れろつってんだろうが」
ここぞとばかりにぐいぐいと銀時だったが、何処に力があるのか分からない程、霊夢の力はかなり強い。
振りほどけない。
「……ギン兄様、ちゃんと説明して欲しいんだけど……どうしてこうなってるの?」
「だから銀時は……」
「五月蠅い。私は今ギン兄様に聞いてるの。余計な口挟むな」
ドスの効いた声。
それはもう、愛染香の力でキャラ崩壊を起こしている霊夢ですら、押し黙ってしまう程の迫力。
作品一ヒロインをしているフランだからこそ出せてしまう、とんでもなくやばいオーラ。
「馬鹿な話かもしれねぇけど、信じてくれ……コイツは今、愛染香っつぅ惚れ薬のようなものを嗅いだせいでこうなっちまってる。フランの考えているようなことは何もねぇ」
「……」
フランは押し黙る。
銀時は固唾をのんで見守っていた。
いや、普通ならばこんな話誰も信用しない。
特に、相手に対して好意を寄せている人物であるならば尚更、目の前の事実を先に突きつけられてしまっている為、そこに付随する真実になかなか目を向けられないものだ。
「……そっか。そうなんだ」
しかし、フランは違った。
スッと、殺意が引いていくのを全員理解した。
「フラン……?」
「ギン兄様、嘘ついてないもん。見たら分かるよ。だから信じる。怒るのは違うなって思ったし」
彼女は銀時の言葉を信じた。
確かに、銀時にべったりくっついている霊夢を見過ごせない気持ちはあるものの、それ以上に銀時が言う言葉を信じて、どうにかしなければいけないという考えに至ったのだ。
彼女の銀時に対する感情は、彼らの想像を遥かに上回っているといっても過言ではないだろう。
「フランちゃん……」
その覚悟と気持ちの強さに、思わず新八は感銘を受ける。
「……仕方ないわね。さっきの発言、取り消すわ。けど、銀時を虜にするのは私よ。覚悟なさい?」
相変わらず銀時から離れないものの、霊夢は笑顔でそう告げる。
それに対してフランは、
「いいよ! だって私は、私の気持ちに嘘つきたくないもん! ギン兄様のことを愛している気持ちで、誰にも負けない自信があるから!」
笑顔でもう片方の腕に抱き着きながら、霊夢に対して宣戦布告をするのだった。
「……え、結局このままなの?」
板挟みになっている銀時がポツリとこぼす。
「銀ちゃん、今は空気を読むアル」
「流石にそれはないぜ……」
「坂田さんデリカシーって言葉覚えた方がいいですね……」
「銀さん……それは駄目ですよ……」
他の四人に駄目だしをくらう、
銀魂×東方project
銀色幻想狂想曲
第七十一訓 気持ちは大事にするべきもの
フランちゃんマジヒロイン……。