銀色幻想狂想曲   作:風並将吾

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第七十六訓 人はヤケになると何をしでかすか分からない

 メディスン・メランコリーは、人形解放の為に動くことを決意した。

 金髪のショートボブ、蒼い瞳をした少女で、赤いリボンを蝶々結びに結んでいる。上が黒で下が赤のロングスカートを履いた彼女の周りには、同じような容姿の小さな妖精みたいな存在が飛び回っている。

 

「私は! 人形の待遇改善を要求する!」

 

 誰に叫ぶのでもなく、彼女は叫び続けていた。

 妖怪としては生まれたばかりのメディスンは、幻想郷については疎い。そんな彼女が活発的になったのは、今回の異変がまさしく絡んでいるとも言えるだろう。

 普段とは違い、溢れ出てしまった幽霊の一部が花々に乗り移り、成長を続けているような異変なのだ。自然の力が強くなっていることを象徴している。メディスンが住んでいる無名の丘に咲き誇る鈴蘭の毒もまた、その強さを強烈なものとしていた。別にこれが強くなかったとしても外に出ること自体は不可能ではないのだが、元々彼女は外を知らなすぎて出るつもりがなかった。

 しかし、今の自分はいつもよりも強い。メディスンにはその理由がわからなかったが、動くには十分過ぎるハッスル具合だったのだ。

 

「動くなら今……今しかない!!」

 

 決意を秘めた少女は、一人森の中で宣言する。ちょうどそんな時だった。

 

「なんだかよく分からないけど、さいきょーのあたいも協力するぞー!!」

「チルノちゃん!?」

 

 バカと大妖精が現れた。

 

「貴女は一体……?」

 

 当然、見知らぬ人物の登場にメディスンは尋ねる。

 チルノは胸を張りながら、

 

「あたいはチルノ! こっちは大妖精! どうせあばれるなら、みんなであばれたほうがいいでしょう!」

 

 メディスンの目的を一ミリも聞いてないような反応の仕方をしているが、チルノとしてはこれでも一応メディスンのことを応援するようだ。というか本当に全く聞いていないのではないだろうか。

 

「なにかあれば、さいきょーのあたいがたたかう! ちょうどぶっとばしたいえいえんのライバルもいるからな!」

「それってあのお侍さんのこと……?」

「もちろんだ!」

 

 大妖精の質問に対して、チルノは瞳を燃やしながら答える。

 

「今のあたいはいつも以上にさいきょーな気がする! だからあたい達であばれよう!」

「うん! なんだかいけそうな気がする!」

「えぇー!? 理由も分からず協力しあえちゃうの!?」

 

 手をがっしりと握り合っているチルノとメディスンを見て、大妖精はツッコミを入れざるを得なかった。

 こうして、目的がよく分からないがとりあえずなんか暴れる二人と、そんな彼女達を見守る苦労人が一人という、なんともカオスな状況が出来上がったのだった。

 

 ※

 

 博麗神社から人里へ向かう森の中。

 博麗霊夢は未だに逃げ回っていた。

 

「はぁ……はぁ……」

 

 雑念を振り払うように、何もないところに弾幕を撃ち続けている。当然、目標なき弾幕は至る所に着弾しては姿を消す。

 ちなみに、被弾した木々花々に関しては、何故か妙な呻き声が聞こえたような気がしたが、今の霊夢の耳に入るわけがなかった。

 

「もう……何日も経つのに……顔合わせ出来ない……無理……」

 

 自身のキャラ崩壊っぷりはもちろんのこと、銀時に対して行った様々なこと。あれではまるで痴女だ。しかも中途半端に気になっている相手であったことがタチの悪さをさらに演出し、それも霊夢にとって羞恥心を駆り立てる理由になっていた。

 

「因幡うさぎ許すまじ……見つけたらただじゃおかないわよ……」

 

 全方位にとんでもなく強い殺気を放つ霊夢。その強さは、

 

「ひぃっ!」

 

 すぐ近くで遊んでいた哀れな兎を炙り出すことに成功するほどだった。

 

「…………もしかして、そこにいるのかしら?」

 

 霊夢の目から光がどんどんなくなっていく。やがてそこに秘められたのは、怒りの炎。

 

「い、いや、あの、その……っ!」

 

 てゐ、大困惑。

 

「アンタのせいで私がどんだけ恥ずかしい想いしてんのかわかってんでしょうね!?」

「ひゃああああああああ!!」

 

 木陰に隠れていたてゐ、逃亡。

 

「待ちなさい!!」

 

 札と赤青弾の混合弾幕を放つ霊夢。およそ遠慮ない弾幕だが、周囲に着弾するにつれて不思議な呻き声が響くのは変わらない。

 

「ひぃ! なんか聞こえる! ヤバイって!」

「問答無用!!」

「あの時のことなら謝るけど、今は話を聞いてってば!!」

 

 てゐは必死に今起きていることをなんとか霊夢に伝えようとするも、霊夢は話を全く聞いてない。怒りによって周りの声が聞こえていないという状況。

 普段は感情の起伏が少ないだけに、怒らせるとどれだけ厄介なのかが窺いしれる瞬間である……。

 

 尚、霊夢のこの行動は、地味に異変解決を早めることになったことなど、誰も知る由がなかったのである。

 

 

 

 

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第七十六訓 人はヤケになると何をしでかすか分からない

 

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