さて、逃走している銀時は、やっとの思いで輝夜を振り切ることが出来た。代わりに彼は、博麗神社近くの森で一人という状況が生み出される。
「あの阿婆擦れ……マジでしつけぇ……っ」
それだけ銀時に対する想いが強いことの表れであるし、銀時もそのことには気付いているのだが、だからと言って受け入れなければならない義理はない。元より彼は、押しの強すぎる女性があまり得意ではないのだ。だからフランは彼にとってちょうどいい塩梅で、案外馬が合っていると言っても過言ではないのかもしれない。
「まぁ、アイツらなら勝手になんとかすんだろ……」
やることもないし、戻った所で輝夜に確保されるだけなのではないかと考えた銀時は、森の中を歩くことにする。所々、何故か妙に弾幕を受けた後が辺りに広がっているが、銀時はあまり気にしないことにした。
ここは幻想郷。ここで弾幕ごっこが繰り広げられていたとしても別に何らおかしな点はない。
「誰かが勝手に暴れたんだろう」
結論としてそれは間違っていないのだが、銀時に知る由はなかった。
「あー、銀さんだー」
ちょうどその時、銀時は懐かしい少女の声を聞くこととなる。
闇の中から現れてきたのは、
「ん? あぁ、ルーミアじゃねえか」
金髪を揺らしながら嬉しそうにふよふよ浮いてきたのは、ルーミアだった。
彼女は銀時を見つけるなり、嬉しそうに抱き着いていた。
「んー、銀時のにおーい。久しぶりなのだー」
「何人の匂い嗅いでんの? そんなに俺から甘い匂いすんの?」
「銀時の匂いがするぞー?」
「俺の匂いって何?」
いささか悩みどころではあるものの、あまり気にしてはいけない気がして銀時はスルーすることにした。
「銀さんってばあんまり普段会えないから、こうして会うのは貴重なのだー」
「まぁ、確かに普段なかなか遭遇しねぇな……」
ルーミアの言う通り、銀時は彼女とあまり遭遇することはない。
彼女自身が暗い所によく現れるからというのもあるが、銀時も銀時で、幻想郷に来る時には大抵異変絡みであることが多いので、こうしてゆっくり話すこともあんまりなかったのだった。
「つっても、俺から見たお前って、なんかいつも腹減らしてる奴って感じなんだよなぁ」
「そーなのかー」
特に気にした様子もなく、間延びしたような喋り方は相変わらず。
先程まで輝夜に追い掛け回されていたものだから、こうして彼女と話していると少し癒されるような気持ちに銀時は陥る。別に彼はロリコンではない。これは重要事項である。
とりあえず二人は歩きながらどうでもいい話を続けていた、のだが。
「……すみません、そこの貴方」
「ん? 俺か?」
前から歩いてきた人物に話しかけられる。
緑色の髪、紅白のリボンがついた帽子、青と白のシャツに紺色のスカートを履いた少女が立っていた。
「もしかして……最近噂の坂田銀時さん、ではありませんか?」
そんな少女から、銀時の名前が出てくる。
「え、俺そんなに噂になってんの?」
「ここ最近の銀さんの活躍は新聞にもなってるし、私も知ってるのだー」
「なるほどな……あのマスゴミの影響か……」
ポツリと呟きながら、今頃飛び回っているであろう射命丸文のことを思い出す。
そんな彼の思考とは関係なく、
「二つ程、伺いたいことがあります」
右手に持つ笏を構えながら、彼女は銀時に尋ねる。
「その前に名前を教えろ。こっちだけ知られてるってのはあまり気分がよくねぇ……」
「……確かにそれもそうですね」
ごほん、と一度咳払いをし、それから彼女は自己紹介をする。
「私は四季映姫・ヤマザナドゥ。こう見えても閻魔を勤めております」
「え、えんま?」
銀時の目が丸くなる。
隣に居るルーミアは、どうやら名前を聞いたことがあるようで、少しだけ怯えている様子を見せている。
別に今のところ彼女に悪い所はないので、特に裁かれるとかはないのだが。
「そんな閻魔様が、俺に一体何の用なんだ?」
とりあえず話の先を促すことにする。
映姫は銀時の瞳をしっかり見て、
「小野塚小町、という方を見かけませんでしたか?」
「こまち? 米の名前か?」
「それはあきたこまちです……小野塚小町は私の部下で……」
呆れた口調でツッコミを入れた後に、彼女は小町の容姿や性格について説明する。
しかし、当然のことながら銀時はまだ彼女に会ったことはなかった為、
「いや、しらねぇな」
と答える他なかった。
「そうですか……それなら仕方ありませんね」
「もう一つって何なのだー?」
今度はルーミアが尋ねる。
映姫はこう言った。
「貴方はどうして、そんなにちゃらんぽらんなのですか?」
「「……へ??」」
思わずルーミアと銀時の声が重なる。
何故か彼女の口から告げられたのは、銀時がちゃらんぽらんであるという事実。
「新聞記事を読んでいる内に、私は段々腹が立ってきてしまったんです……どうしてこの方はこんなにも、女癖が悪くてちゃらんぽらんなのか、と……だから私は決心しました……なんとしても貴方を正しき道へと誘う為に、説教しようと!!」
「テメェは俺の先生か何かかよ!!」
ただ単に説教しにきただけだった。
「大体貴方は、こうしてまた違う女の子に手を出そうとしているじゃないですか!!」
「違うからね? ルーミアとはたまたま会っただけだからね?」
「それなのにそんなに仲睦まじく抱き合っているのですか!?」
「これはルーミアが抱き着いてきただけだからな!? 俺何もしてねぇよ!?」
「ルーミアさん、離れていてください。私が直々にこの方に判決を下します」
「下されるようなことなんざ何もねぇけど!?」
こうなってしまっては、映姫は止まらない。
彼女は根が真面目過ぎるのだ。
よって、銀時のようにちゃらんぽらんな男を見ると、思わず説教せずにはいられない。
今起きている異変は、放っておいてもとりあえずは収まる。
だからこそ彼女は、異変解決よりも、『小野塚小町を見つけること』と『坂田銀時を更生させること』を優先しようとしているのだ。
そして今、先に銀時を見つけた。
説教、開始だ。
「……今日も平和だなー」
銀時が映姫に説教されている様子を、ルーミアは楽しそうに眺めていたのだった。
今回の異変、現状割と平和そうである。
銀魂×東方project
銀色幻想狂想曲
第七十七訓 ちゃらんぽらんな男は説教されやすい
ただの説教回でした()
花映塚の異変って、実は放っておいてもどうにかなってしまうから、オリジナルエピソード満載となるんですよねー。