数分前。
銀時が美鈴と戦っている隙に館の中に入った魔理沙と霊夢の二人は、中の広さと色鮮やかな紅に目をやられていた。
「なぁ霊夢。銀さん大丈夫かな?」
「……平気よ。あの男なら、なんとなくそんな気がするわ」
魔理沙の言葉に対して、霊夢は何故か自信を持ってそう返すことが出来た。出会ってからまだ数時間しか経っていないというのに、なんとも不思議な感覚を覚えるのだ。
「私もそんな気がするぜ!」
それはもしかしたら、魔理沙も同じなのかもしれない。
「にしても、この館広すぎるわね……流石に手分けをして探した方が良さそうね」
「だなぁ。なら私は下行ってみるぜ?」
「なら私は上ね」
この割り振り方について、たとえ魔理沙が上で、といったとしても、霊夢はその意見を捻じ曲げて上に行こうとする自信があった。何故ならば、彼女の勘が『首謀者は上にいる』と語りかけていたからだ。
兎にも角にも、霊夢と魔理沙は一時的に分かれて行動することになる。
「……」
歩きながら、霊夢は出会ったばかりの男について考えていた。
坂田銀時。
八雲紫から聞いた情報では、別の世界から連れてきた侍ということだ。そして、かつての名前が『白夜叉』という。霊夢に与えられた情報としてはその位しかなかった。
そして、大凡その話は当てはまっていたことだろう。道中で見た銀時の身のこなしを見るに。少なからず足手まといになることがないのは確かだった。
「侍、か……面白い人間もいたものね」
実際に話した時には、彼のちゃらんぽらんな部分が強調されていたが、いざという時にやる男であるというのは確かだったと霊夢は考える。
「人間にもいろんな奴がいるわよね……例えば魔法使いだったり、たとえば……」
進めていた足を止め、何もない空間に向かって弾幕を放つ。
その弾幕を打ち消すように、無数のナイフが追撃した。
「そんな風に陰から様子を伺ってる、ストーカーみたいなメイド、とかね」
そして姿を現す。
「よくお気付きになられましたね」
「私、勘はいい方なのよ。それで何となく奇襲をかけられるんじゃないかと思っただけ」
「なるほど。最早未来予知の類まで来ているのではないかと内心ヒヤヒヤしましたよ」
「よく言うわね。そんなこと微塵も考えてないくせに」
現れたのは、一人のメイド。
銀髪の三つ編みをして、青と白のメイド服を着用した、容姿端麗な少女。
客人を歓迎するかのような声色で、
「初めまして。私は紅魔館のメイド長を勤めさせて頂いております、十六夜咲夜と申します。以降お見知り置きを」
「私は博麗霊夢。この異変を解決しにきた巫女よ」
「巫女の客人は大変めずらしいですね。ですが残念です。本来ならば精一杯もてなして差し上げたいところですが、生憎御嬢様を含めまして、本日の紅魔館は忙しいですので、即刻お引き取り頂けないでしょうか?」
「そんなに忙しいなら手伝うわよ? けど私は慣れてないから、もしかしたらお邪魔してしまうかもしれないわね。そうなってしまったらごめんなさい?」
「邪魔をするなら容赦はしないわよ。覚悟はよろしくて?」
ナイフを構え、
その眼力は、邪魔者を排除するのに遠慮なんてものは存在しないような、そんな目つき。
「忠誠心は大したものね。けど、それだけで勝てるかしら?」
「それはこちらの台詞です!」
咲夜と霊夢、二人の弾幕ごっこがここから始まるのだった。
※
「で、本来ならば二人が戦うわけだけれど、期待を裏切って私達の出番ってわけね」
「いきなりメタい発言はやめるんだぜ!?」
所変わって図書館。
霊夢と別れてから地下へと進んでいった魔理沙は、途中で大きな図書館に辿り着いていた。
そこに広がっていた魔法の本を読み漁っていた所で、図書館の主――パチュリー・ノーレッジと相対した。
「ていうか、どうやってその様子を確かめているんだ? 霊夢が何してるのかなんて全然分からないぜ?」
「そりゃそうでしょうね。私はこの水晶玉を使って、少し先の場所で起きている出来事を見ているだけなんだから……にしても、貴方侵入者でしょう? ちょっとは焦ったらどうなのよ」
「ここにある本が面白くてそれどころじゃねえぜ! なかなかいい本揃ってるな!」
「そ、そう?」
蔵書量を褒められたのか、心なしか少し照れている様子のパチュリー。
そんな彼女に対して、魔理沙が一言。
「んじゃ、この本借りていくぜー!」
何冊か持って、図書館を後にしようとする魔理沙。
「えぇ……って、させるわけないでしょ!」
「げっ!」
逃げようとした
流石に魔理沙は左右にステップを踏んで避けたが、その弾幕は地面を軽く焦がしていた。
「ひぇ……当たったら一たまりもないぜ……なにすんだよ!」
「それはこっちの台詞よ。人の本勝手に持ち出そうとして」
「だから言ったじゃねえか。借りていくって」
「返却するのはいつよ?」
「え? 死ぬまでだけど?」
「人はそれを泥棒って言うのよ。知らなかったのかしら?」
「いやいや、流石に人のもの盗んじゃいけないこと位私でも分かるぜ? 馬鹿にしてるのか?」
「えぇ。大いに馬鹿にしてるわ。貴女がやっているのは盗みそのものよ?」
「だから言ってるじゃねえか。借りていくだけだって」
「自分で言っていて矛盾に気付かないの?」
問答をしている途中で頭を抱えるパチュリー。
「どうした? 頭痛いのか?」
「えぇ、頭痛がするわ……」
「大丈夫か?」
「原因が分かってるのに、対処のしようがないのがこれほど辛いとは……」
「医者呼ぶか!?」
「呼んで頂戴。出来れば思い切り腕の良い、馬鹿を治す為の医者をね。そして貴女が受診なさい」
「遠回しに人を馬鹿にするのはよくないぜ!?」
「さっきの問答をしておいてまだ言うの?」
最早戦う気も失せている様子のパチュリー。
いつまでも問答をする気が失せたのか、手持無沙汰になって水晶玉を覗きこむ。
そして、彼女は見てしまった。
「……まずい」
「え?」
その呟きを、魔理沙は聞き逃さなかった。
だからこそ、魔理沙は尋ねる。
「何がまずいんだ?」
顔色がどんどん悪くなっていくパチュリー。
それは体調不良が原因などではない。
水晶玉が映し出している光景が、彼女の心を掻き乱しているのだ。
「魔理沙、とか言ったわね……この館に来たのは、貴女の他には誰が居る?」
「え? 霊夢と……銀時の二人だな」
「一人は巫女。もう一人は着物を着た男。それで間違いないわね?」
「あぁ、間違いないぜ。けどそれがどうしたんだ?」
確認を終えたパチュリーは、言葉を発することなく、水晶玉に映し出された光景を魔理沙に見せる。
そこに映し出されていたのは、
「銀時と……もう一人?」
「この館の主、レミリア・スカーレットの妹――フランドール・スカーレット。『ありとあらゆるものを破壊する程度の能力』の持ち主よ」
銀時とフラン。
一人の人間では、とても背負いきれない程過酷な戦いが繰り広げられていた。
「侵入者を助けるのは不本意だけど、それ以上に彼女が能力を暴走させることの方が危ない……」
「お、おい。どういうことなんだぜ?」
困惑する魔理沙。
事情が呑み込み切れておらず、パチュリーに尋ねるしかなかった。
「貴女、仲間を助けたいならば、私と一緒に来なさい……私も、友人の妹を助ける為に、動くわ」
「お、おぉ……」
パチュリーと魔理沙。
本来ならば敵対する筈の二人が、違う目的で、同じ目的地まで向かうのだった。
※
「博麗の巫女が止めに来たか……」
一人、部屋の中で椅子に座っている少女が居た。
ウェーブのかかった明るい青髪、白が強調された桃色のナイトキャップ、それと同じ色を基調としたドレス。そして真紅の瞳。
紅魔館の主人――レミリア・スカーレットは、この屋敷で起こる運命を読み取っていた。
彼女の能力は、『運命を操る程度の能力』。
運命を操る過程で、彼女はこれから起こる『運命』を覗く。
「……っ」
そして、一つの運命に、驚愕し、興味を示した。
「なる程……あの男。なかなかのやり手だ。弾幕を出すこともなく、そんな運命を辿るとは……面白い」
とある男の運命。
彼女が興味を示したのは、間違いなく、
「だが、今は博麗の巫女か……もう一人は放っておいても構わないだろう。パチェがどうにかしてくれる筈」
椅子から立ち上がり、来るべき敵を待つ。
「久方ぶりに面白い一夜になりそうだ。我が野望、打ち砕けるものなら、打ち砕いてみせよ――人間」
館の主人は、誇り高き吸血鬼として、来訪者を待つ。
銀魂×東方project
銀色幻想狂想曲
第六訓 人の運命を無闇に読み取るものじゃない
こんにちは。
風並将吾です。
今回の話では銀時は登場しておりません。
主に彼が戦い始める裏の出来事を描写させて頂きました。
銀時とフランの戦い、霊夢と咲夜の戦い、そしてレミリアの登場。
見所はたくさんありますね……作者頑張ります(震え声)。
一応今後の予定みたいなものをお伝えさせて頂きますと、『紅霧異変篇』が終わりましたら、何話か短編を書いていきたいと思います。
異変の話を交えつつ、銀魂のネタを少しずつ盛り込むことが出来たらなぁ……って思っております。
それでは次回もお楽しみに!