「な、なんだお前達は!」
チルノは思った。
多分、絶対に敵に回してはいけない人たちがやってきてしまったと。
「どうしたの? 何人来ようとも、最強の貴女が一緒なら大丈夫な筈でしょ?」
「あ、あわわわわわわ……」
メディスンは残念ながら新参者。
今自分達が対峙している人物達がどのような存在なのかを理解していない。
一方で、大妖精は痛い程理解している。
「失礼ながら銀時様。これは一体どのような状況で?」
咲夜が銀時に尋ねる。
銀時は頭を掻きながら、
「いやな? まーたこの面倒な奴が『あたいさいきょーだからぶったおす!』って言ってきたわけよ」
「ほほう? 私を前にして最強を謳うか?」
ニヤリと口元を歪ませるレミリア。
「ギン兄様ーっ!」
後からフランや美鈴もついてきたようだ。
フランは銀時を確認すると一目散に駆け寄り、抱き着いてきた。
つまり、銀時は金髪幼女二人に抱き着かれているという何とも美味しい状況である。
「……これ、チルノちゃん、逃げた方がいいよ。絶対。確実に。私達、こr……」
「さ、さいきょーのあたいに、にげの一歩は存在しない!!」
引くに引けなくなったチルノは、特攻に走る。
メディスンもまた、チルノに続いて、
「うぉおおおおおおおおおおお!」
特攻。
「「……いこうか」」
銀時に抱き着いていたフランと、隣に控えていたレミリアは、二人並んで前に出る。
そして、二人して。
「「くらえ!!」」
圧倒的物量の弾幕をぶつけ、チルノとメディスンをブッ飛ばしたのだった。
「ぎゃあああああああああああ!」
「なんでぇえええええええええ!」
「あああああ! 二人ともぉおおおおおおおおおおお!!」
遥か彼方までブッ飛ばされたチルノとメディスンを追って、大妖精も飛び去っていく。
結果、銀時とルーミアは何もせずとも、勝手に勝利を掴んだのだった。
……チルノ、今回は出番そこそこ長かったのに、結局最後は呆気なく終わる悲しい存在であった。
「お久しぶりですね、銀時さん。と、その子は……?」
美鈴は、不思議そうな表情でルーミアを見る。
その視線に気付いたルーミアが、
「私はルーミア。今ちょうど銀さんと甘味処に行くところだったのだー」
「えっ……ギン兄様まさか……デート……?」
真っ先に反応を示し、そしてショックを受けているのはフランだった。
しかし、
「ううん、ちょっと疲れたことがあったからねー。みんなで一緒に来るー?」
意外にも、デートを否定したのはルーミアだった。
彼女はなんとなく、フランが落ち込んでいるのが分かったのかもしれない。
「いいのか? 私達も一緒して」
「みんなで甘いもの食べた方が美味しいと思うのだー。ね? 銀さん」
「あぁ。それもそうだな……暇なら一緒に来るか?」
さり気なく銀時にも話題を振ることで、完璧な対応を取るルーミア。
普段何も考えていないように見えて、実は凄く計算高いのではないだろうか。
「それじゃあご一緒させてもらおう。フラン、咲夜、美鈴。それでいいか?」
「どの道人里へ行くことになりますので、私は構いません」
「私も大丈夫です!」
「わぁ……っ! ギン兄様とお出かけ出来る!」
咲夜、美鈴の二人は返事をする。
フランは目を輝かせ、銀時の腕に抱き着いていた。
最早定位置となっているその場所。
「ありがとう! ルーミア! 私はフラン! よろしくね!」
「よろしくなのだー、フラン」
フランとルーミアが、互いに自己紹介をする。
どうやら二人とも、割とすんなり打ち解けたようだ。
「はぁ……あんなに笑顔を振りまくフラン……天使か……天使だな。崇めなければ」
「待てやシスコン。妹を偶像崇拝するんじゃねえって」
「妹様を崇める御嬢様……あぁ……素晴らしい……っ!」
「って、こっちもトリップしてんじゃねえか!! 駄目な主従関係だなおい!!」
「あはははは……」
両者揃って鼻血を出しているレミリアと咲夜。
美鈴はただ、乾いた笑いを浮かべる他なかった。
※
「なる程……それで銀時を探している、と?」
「えぇ……」
甘味処。
椅子に座って団子を食べながら、幽香、紫、ミツバの三人は会話をしていた。
話題は、『どうしてミツバは銀時を探しているのか』という点。
「基本的に坂田さんは、歌舞伎町からこちらまで『スキマ』を通ってきているだけですわ……異変が起きた時はともかく、普通にしている時はしばしば遊びに来る程度ですから、私にも今何処に居るのかまでは……」
「そうでしたか……」
紫の言う通り、基本的には銀時の思うままにこの世界に足を運ぶ。
即ち、紫は銀時達の動向を逐一確認しているわけではないということ。
ただし、彼がこっちの世界に来ていることは事実なので、待っていればいずれ何処かで会えることは確かだ。
「それにしても、会いたい人達の架け橋になるかもしれない、ね……最初は銀時の交際相手か何かだと思って疑ってしまったわ。ごめんなさいね?」
「いえ。坂田さんには色々お世話になりましたが、私は、その……」
顔を赤くし、少し顔をそむけるミツバ。
そんな彼女の様子を見て、幽香と紫は確信した。
「なる程……そういうことですわね」
「なかなか可愛い所もあるじゃないの」
「なっ……」
一気に顔が赤くなった。
しかし、その後でミツバは寂しそうな表情を浮かべる。
「けど、あの方にお会いして……私はどうしたらいいのか分からないのです」
「……どういうこと、かしら?」
紫は尋ねる。
「かつてあの人は、私の為に私を遠ざけました……私も、あの人に想いを伝えることのないまま、この世を去ってしまいました……だから私は、これが最後のチャンスなのかと思いました」
胸に手を当てて、それからミツバは二人に言う。
「私は……『生きている』んですか?」
その問いに、紫と幽香は答えることが出来なかった。
彼女達の目には、『沖田ミツバは生きている』としか映っていない。
だが、ミツバは一度、間違いなく死んでいる。
確かに、この幻想郷には外の世界での死者が第二の人生を歩むパターンも珍しくはない。
ミツバのその一人だと、紫は信じたかった。
しかし、今幻想郷に起きている『異変』が、思考にブレを生じさせてしまう。
「分からないんです……この地に立った時、私はたぶん、神様が与えてくださったチャンスなのかもしれないと思いました。ですが、私は『死んだ』記憶もしっかり持ってます……『死んだ』のに、『生きている』……私は幽霊なのかもしれない、と……」
「……それと、貴女の迷いに、何の関係があるのですか?」
答えない代わりに、紫はミツバにその先を考えさせないようにした。
「え……?」
「愛や恋に、生死など関係ありませんわ。相手を想い続けることに罪はありません。それに、言葉にしなければ伝わらないことだってたくさんあります……なら、伝えなければいけないのではないですか?」
「……そうね。貴女が迷う気持ちも理解出来るけど、それ以上に、ただそうやって迷ってばかりでチャンスを逃す方が、余程辛いことだと思うわ」
「あっ……」
紫や幽香の言葉が、ミツバの心に沁み渡る。
ミツバの抱いていた迷いは、彼女達によって少しずつ解されていく。
「……分かりました。私、もう迷いません。あの方にお会い出来たら、必ず……っ!」
ミツバは決心する。
自身の想いを、もう一度相手にきちんと伝える為に。
たとえその結末がどうなろうとも、後悔だけは決してしないように。
「うーす。団子もらえますかー?」
ちょうどその時、彼女の決意を後押しする様に、坂田銀時が訪れた。
銀魂×東方project
銀色幻想狂想曲
第七十九訓 想いは言葉にしないとなかなか伝わりにくい