銀色幻想狂想曲   作:風並将吾

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第八十一訓 大切な人を想い続けるのはとても難しい

「あっ……」

 

 銀時が来店して来たのを確認すると、ミツバは藁をもすがる思いで彼の元まで歩み寄る。そんな彼女を見た銀時は、

 

「なっ……てめぇは……っ!」

 

 ものすごく驚いている様子だった。無理もないだろう。銀時は、彼女が死んだ姿を直接目の当たりにした訳ではないものの、それでもやはりこの世を去ってしまったという認識に変わりなかったのだから。

 

「お久しぶりです、坂田さん」

 

 あの時と変わらぬ笑顔で、むしろあの時以上の笑みで、ミツバは銀時に挨拶を交わした。

 

「ギン兄様?」

 

 銀時に抱きついているフランから、低い声が発せられる。名前だけしか呼んでいないのに、そこには様々な感情と意味が込められているように感じ取れた。

 

「そんなんじゃねえよ。コイツは沖田ミツバ。以前ちょっとしたことで出会った奴だ……だからそんな怒るなっての」

「わぷっ」

 

 少し乱暴にフランの頭を撫でる銀時。それだけでフランの気持ちは穏やかになった。それにしても、フランは名前を呼んだだけでそれ以外には何も言ってなかったはずなのに、銀時は彼女の言いたい事が分かったかのように振舞っていた。信頼関係がかなり構築されている証拠とも言えるかもしれない。

 

「銀時、ちょうど良いところに来てくれたわね」

「幽香に紫もか? 随分とまた珍しいメンツで歩いてるもんだな……それに、どうしてここに……」

 

 銀時が聞きたいのは、どうして沖田ミツバが幻想郷にいるのか、という事だった。彼女は一度死んだ身である。しかし、どう見ても今目の前に現れて『生きている』のだ。疑問に思わない筈がない。

 

「その質問については、『分からない』と言うしかありませんわ……今の幻想郷は、ちょっとした自然現象が発生している状況なので、断定するのが難しいのですわ」

「自然現象ですか? もしかして、季節関係なしに咲き乱れる花々と何か関係がある、と?」

 

 咲夜が尋ねる。

 しかし紫は、

 

「その辺りは混みいった話になります故、今はミツバさんの話が先ですわ」

 

 その明言を、避けた。

 確かに、異変解決者でもない人物を巻き込まないようにする配慮もあるのだろう。しかし、紫の真意はそこにはない。余計な一言を発することで、ミツバが傷付いてしまうことを避けたかったのだ。

 

「何か悩みでもあるってのか?」

 

 銀時が尋ねる。

 ミツバは少しの間だけ俯く。言葉を選び、そして銀時にすべてを打ち明けた。

 

「坂田さんがこの世界に来ているということは、あの人達もこっちに来ることが出来るということですよね? それはつまり……私はもう一度、あの人に会えるんじゃないかと思いまして……それで……」

「なるほどな……」

 

 ミツバが抱えている想い。

 それらを銀時は受け止めて、そして、

 

「偶然だったな。あの馬鹿どもなら、今日たまたまこっちに来てる」

「っ!!」

 

 その事実に気付いたミツバは、溜め込んでいた涙を溢さずにはいられなかった。つまりそれは、自分の想いを今度こそきちんと伝えられるということ。彼女に与えられた、小さな奇跡が確かにあったということ。

 

「今どこにいるのかまではわからねぇ。どのみちこっちに来てるんだ。必ず会える」

「そうですか……それなら、よかったです……っ」

 

 ミツバは少し報われたような気持ちになった。

 辛いだけではない。キチンと確かに神様は見ていてくれたのだ。

 そして彼女は決意する。

 この機会を決して無駄にしないと。

 たとえ自分がどうなろうとも、絶対に想いを伝えよう、と。

 

「ありがとうございます……坂田さん……」

「俺は何もしちゃいねぇ。ただ教えただけだ。そこから先は、あんたがやらなきゃいけねぇんじゃねか」

「……はいっ」

 

 これも、一つの愛の形。

 相手をしっかり想い続け、報われる日を待ちながら、最後の瞬間は自分の手で掴み取る。

 

「……良かったわね、ミツバ」

「……はい!」

 

 幽香の言葉に、ミツバは笑顔で返す。

 先程までの悩んでいた彼女の姿は、もうない。

 凛とした大和撫子がそこにはいた。

 

「そしたら坂田さん、お礼に団子の美味しい食べ方を……」

「いや、それはいいです」

 

 思わず顔面蒼白になり、しかも間髪入れずに断りを入れる銀時。

 

「どうかしたんですか? 坂田さん」

 

 あまりの変貌っぷりに、美鈴は尋ねる。

 

「まだ団子は来ていないぞ? どうせ食べるのなら、その美味しい食べ方を習ったらどうだ?」

 

 キョトンとした表情を浮かべながら、レミリアも追撃するように言う。

 

「団子の美味しい食べ方、興味あるのだー」

 

 ルーミアまで乗っかる形となった。

 

「ほ、ほらあれだ。団子はそのまま食べる方がやっぱうめぇだろ? シンプルイズベストって言うじゃん? 甘い団子が一番だろ? な?」

「やっぱり、坂田さんには美味しい団子を食べていただきたいですから……」

 

 そう言いながら、ミツバは銀時の分の団子を手に取り、その後で懐から何かを取り出す。

 その瓶のラベルに書かれていたのは、

 

「どくろ……?」

 

 フランの呟いた通り、髑髏マーク。

 下にはご丁寧に、『DEATHソース』と書かれている。

 

「……これ、まさかデスソースなのでは?」

 

 台所を任せられている咲夜は真っ先に気付く。それが大凡団子にかけるものではないことはもちろん彼女なら分かるだろう。

 

「なんかすごそうな名前だな!」

「ネーミングセンス皆無なシスコン吸血鬼は黙ってろ!」

「誰がネーミングセンス皆無だ! シスコンは認める!」

「そこは認めるのね……」

 

 幽香は溜息をついた。

 

「って、あれ!? いつの間にか紫がいねぇ!?」

 

 気付けば紫はその場から消え去っていた。恐らくみんながデスソースに目を向けた瞬間に、スキマを通って逃げたのだろう。

 

「ギン兄様? デスソースって何?」

「私も何かよく分からないのだー。でもすごく赤いのだけはわかるぞー」

「唐辛子とかハバネロなんかよりもめちゃくちゃかれぇソースだよ!!」

 

 それを、ほぼまるごと一本分。

 団子に染み渡らせるようにかけて、そしてミツバは笑顔で一言。

 

「さぁどうぞ坂田さん。召し上がれ♪」

「くえるかぁああああああああああ!!」

 

 以前は総悟のバックアップも兼ねていたせいで食べざるを得なかったが、今回は違う。このままだと銀時は生命の危機に瀕する。本能が告げているのだ、食べてはいけないと。

 

「せっかく用意してくれたのに食べないとは失礼だぞ、ギントキ」

「言ってることはまともだけど口元にやけてんぞ。のたうち回る姿想像して楽しんでんの丸分かりだからな?」

 

 レミリアがカリスマを発揮しようとして失敗している姿がそこにはあった。

 

「食べて……くださらないのですか……?」

 

 ミツバの目に涙が溜まっていく。

 

「……銀時。女を泣かせるのは良くないわよ?」

 

 幽香からの冷たい視線攻撃。

 

「銀時様。お覚悟を……」

 

 咲夜からの同情混じりの死刑宣告。

 

「ギン兄様……」

 

 辛いものだと分かったからこそ、フランは心配そうな眼差しで銀時を見つめる。

 

「美味しそうなのだー。銀時パクッといっちゃうのだー」

 

 イマイチよくわかってないからこそ、美味しいものだろほら食べろという態度のルーミア(尚、本人に悪気は一切ない)。

 

「銀時さん……これも修行です……!」

 

 何故か応援する美鈴。

 

「だぁー! ちくしょー!」

 

 周りに助けはないと判断した銀時は、一気に団子を口の中に入れ、

 

「…………ーーーーっ!!!!!!」

 

 どうなったのかは、ご想像にお任せします。

 

 

 

 

銀魂×東方project

 

 

 

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第八十一訓 大切な人を想い続けるのはとても難しい

 

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