銀色幻想狂想曲   作:風並将吾

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第八十三訓 時には信じることも大切

「はぁ……はぁ……」

 

 息を切らせながら霊夢は人里を歩いていた。

 結局、てゐを攻撃しまくっていたことにより(てゐ本人にほとんど当たっていないが)、周囲の幽霊を成仏させまくっていたのだが、当の本人である霊夢はまったく気付いていない。

 とりあえずある程度暴れ回った為に落ち着くことは出来た。先程まで彼女の頭の中を占めていた怒りの感情は、今はなりを潜めている。

 

「まったく……どうしてこうなったのよ……」

 

 呟いた後で、霊夢は深呼吸をする。

 ここまであまり休憩をしてこなかったこともあり、彼女の身体は休息を欲していた。そんなわけで霊夢は、人里から少し離れた所にある森へ向かって足を伸ばした所で、

 

「……え?」

 

 その森の中で、桂と妖夢が戦っている場面に遭遇した。

 

「なっ……!」

 

 戦っている相手は、霊夢にとって今まで見たこともないような相手ばかり。

 二足歩行の動物達。

 加勢しに行こうとして、

 

「……すごい」

 

 二人の太刀筋に、感激すら覚えていた。

 桂と妖夢の太刀筋は、真っ直ぐで美しく、迷いがない。そして、互いに背中を任せていることもあり、死角が存在しない。斬り伏せる度に相手の姿が消えることから、その相手が幽霊であることが確認出来た。

 霊夢はそこで、自分が森の中で行ってきたことを客観的に思い出して、そして、

 

「なるほど。そういう異変だったわけね……」

 

 今回の異変がどのようなものなのかに到達した。

 

「流石は霊夢ね。すぐに辿り着くのは流石ですわ」

 

 そんな時、彼女の背後より声が聞こえてくる。

 現れたのは、不敵な笑みを浮かべている紫だった。

 

「何よ、八雲紫。随分と思わせぶりな登場じゃない」

「お褒めの言葉、光栄ですわ。今回の異変、貴女は以前の一件における羞恥心で気付いていないようでしたけど、ようやっと貴女らしくなってきたようで安心ですわ」

「……いつまでも恥ずかしがってばかりいられないって思っただけよ。それ以上でもそれ以下でもないわ」

 

 未だに顔は紅いままではあるものの、一しきり暴れたことにより、どうやら彼女の中でやっと気持ちの整理がついたようだ。

 そんな彼女は、すぐに紫に問う。

 

「今回の異変、アンタも一枚噛んでいるわよね?」

「……どうしてそう思うのかしら?」

 

 訝し気な目で霊夢を見つめながら、紫は尋ねる。

 対して霊夢は、何を言っているんだといわんばかりの表情で、

 

「あそこで二人が戦っている敵。あの敵は今まで幻想郷に居なかった存在ばかりよね。そして今回の異変は、幽霊が絡んでいる。本来の異変は、『幽霊が溢れて草花に乗り移ることによって、季節混じりの花々が咲き乱れてしまう異変』。違う?」

「……お見事ですわ。流石は博麗の巫女、と言うべきかしら?」

「感心している場合じゃないわ。今回はその『幽霊』という部分に注目しなきゃならないじゃないの。どう見てもあれ、私達の世界に存在していた幽霊じゃないわ」

 

 霊夢は核心に近い言葉を投げかける。

 

「……多分、銀時の世界に居た者達よね。あそこに居る幽霊」

「……」

 

 紫は言葉を発しない。

 彼女はとっくに気付いていたのだ。

 既に、幻想郷と歌舞伎町の境目は、なくなり始めているということに。

 

「元を辿ればアンタが銀時を幻想郷に招き入れたことが発端だった。幻想郷においてまったく未知の人物である坂田銀時がこっちに来たことで、少しずつ世界の境界が崩れ始めていた。そしてアンタは、幻想郷と歌舞伎町を繋ぐ境界を創り出し、次第に彼の知人達がこっちに足を運ぶようになった。けど、影響は確実に広がっていた」

「……そうですわね。その最たる例が、永夜異変における、謎の刀を持った人物」

 

 春雪異変において、彼女達は名前こそ知らないが、『紅桜』が西行妖に同調する出来事が発生していた。だが、本来そんなことはあり得なかったのだ。何故なら、『紅桜』も『岡田仁蔵』も、幻想郷には本来登場する筈のない存在。そんな彼らが現れてしまった理由は単純だ。

 

 ――坂田銀時が、幻想郷を訪れたから。

 

「八雲紫。このままだと幻想郷はいずれ大変なことになる。アンタもそのことに気付き始めているんじゃない?」

「……それでも私は、今の状況を崩したいとは思いませんわ」

「……それについては私も同意するわ。だって、彼が来てからの幻想郷は、間違いなく良い方向に変わり始めている……柄にもなく『楽しい』と思っているのも否定しないわ」

 

 霊夢は、決意に満ちた表情を紫に見せる。

 そのうえで、彼女は宣言した。

 

「だからこの異変、ちゃっちゃと解決しちゃいましょう? 多分放っておいても解決するとは思うけど、いつまでも幽霊がはびこるような状況を作っていては、また別の幽霊を呼び寄せかねないわよ。あの幽霊が現れているのも、幻想郷中に幽霊が蔓延っているからでしょう? なら、その幽霊たちの数を少しでも減らせば……」

「……」

「……どうしたのよ? 何か迷いでもあるの?」

 

 珍しく、幻想郷に関わる事象を解決しようとするのを、紫は躊躇っていた。

 紫は幻想郷を取り巻くすべてを愛している。だからこそ今の状況を見過ごすわけがないと霊夢は考えていた。

 しかし、紫は返答していない。

 

「……いえ、なんでもありませんわ」

 

 言葉ではそう告げる紫。

 霊夢もまた、その返答を聞いてからは追及することはなかった。

 しかし、紫は間違いなく迷っていた。

 理由は――沖田ミツバの存在だ。

 彼女は今、自身のやりたいことをやり遂げようとしている。そんな中で、今の異変が解決した場合、果たして彼女は本当にこの幻想郷に留まっていられるのだろうか。

 幻想入りをして第二の人生を歩んでいるパターンであるならば、構わない。ならば今の異変をさっさと解決したほうが、彼女の為にもなるからだ。

 そうではなく、桂や妖夢が戦っている者と同じく、幽霊としてこの世界に顕現しているだけの場合、果たして彼女はいつまでもこの場所に留まっていられるのだろうか。本人のあずかり知らぬ所で、存在が消えてしまうのではないか。

 

「……らしくありませんわね」

 

 ガラにもないことを考えている自覚は、紫にもあった。

 心配せずにはいられない状況であることも理解している。

 しかし、紫はそれらの不安を振り切った。

 

「信じる心も大切、よね」

 

 いつしか、銀時がフランに対して告げた言葉。

 それは、『不安というのは信じきれていないからこそ発生するもの』。

 彼女はミツバを信じることにした。

 そして、幻想郷の為にするべきことを、改めて認識した。

 

「いきますわよ、霊夢。この異変、なるべく早く終わらせますわ」

「……いい顔してるじゃない」

 

 彼女達はこうして、今回の異変を終わらせるべく動き回ったのであった。

 

 きっと大結界異変の終結が早まったのは、彼女達のおかげなのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

銀魂×東方project

 

 

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第八十三訓 時には信じることも大切

 

 




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