銀色幻想狂想曲   作:風並将吾

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第九十二訓 ゴリラを撃退するのはゴリラ

 閑話休題。

 とりあえずスナックお登勢にいた所で、銀時が冷たい目で見られるだけだと判断したのか、外に出ることにした。とはいえ、目的地があるわけではないのでただ街中をぶらぶらと巡るだけになってしまっているのだが。

 

「あ、そうだ。スナック繋がりで姉上が働いている店を見てみます?」

 

 道中で提案したのは新八だった。

 キャバクラという点ではグレーゾーンではあるものの、身内が働いている点ではぎりぎりセーフと言った所だろうか。

 

「新八のお姉さんの働いている店?」

 

 反応を示したのは霊夢だった。

 スナック繋がりということで、酒が飲めることを期待しているのかもしれない。

 

「お妙の所か? まぁ別にいいけどよ……」

 

 どうにも、前回の宴会を思い出して銀時は若干渋っている様子だ。

 そもそもお妙が居るとなると、何かしら起きるのではないかという予想が出来てしまうので、気持ちあまり足が進まなくなるのも当然なのかもしれない。

 最も、歌舞伎町という段階で問題なんて起きない筈がないのだが。

 

「ギン兄様、本当に大丈夫?」

 

 先程から、銀時の腕をしっかり抱きしめつつ、心配そうな表情を浮かべるフラン。

 恐らく、銀時がひもじい生活しているのではないかと不安になっているのだろう。

 何せ、三ヶ月分の家賃を払えないという実態が明らかになってしまっているのだから……。

 

「やめておいた方がいいわよ、フラン……銀時のそれは自業自得だから……チャランポランが招いた末路よ」

「人のこと既に終わってる奴呼ばわりすんじゃねえよ人形遣い」

 

 アリスからの辛辣な一言。

 この中では割と常識人枠に入るアリスからしてみれば、銀時の行動はとても残念に見えるのだろう。

 

「まぁまぁ、今は新八の姉さんが働いてる場所行こうぜ。そこで酒盛りだーっ!」

「昼間っから飲む気満々じゃないですか!!」

 

 既に盛り上がっている魔理沙を相手に、新八は思わずツッコミを入れる。

 

「姉御の働きっぷりを見られるのはいいことアル!」

 

 割とノリノリな神楽。

 という訳で、彼らはお妙の働くキャバクラへ行くことに。

 程なくして辿り着いた彼らを待ち構えていたのは……。

 

「お、た、え、さーんっ!!」

「いい加減にしろっつってんだろゴリラァアアアアアアアアアアアア!!」

 

 お妙に飛びついている近藤を、お妙が蹴り飛ばしている姿だった。

 

「あっ……」

 

 もう働いている所を見るとかそういう所ではなく、ゴリラのストーカー現場を目撃してしまった一同。

 というか、ゴリラを撃退するゴリラを目撃してしまった一同。

 

「真昼間っから仕事サボってこんなところで何油売ってんだゴラァ!!」

「常に仕事してますから!! お妙さんの身辺警護をしっかりとやらせていただいてます!!」

「それがストーカーだっつってんだろうがぁああああああああああ!!」

 

 蹴っ飛ばし、投げ飛ばし、近藤を撃退しようと試みるお妙。

 しかし近藤はしつこい。

 

「……何、あれ?」

 

 冷たい眼差しを向けるアリス。

 フランは目を丸くして珍しいものを見るような目線を向けている。

 魔理沙と霊夢は、何も言えない様子だ。

 

「姉上……近藤さん……何してるんですか……」

 

 頭を抱えているのは新八。

 

「おおーっ! 流石は姉御! 今日も冴えわたってるネ!」

 

 目を輝かせながら応援しているのは神楽。

 

「おーい、その辺にしとけー」

 

 そんな中割って入る銀時は、流石なのかもしれない。

 

「おお、万事屋じゃねえか! 俺は今、お妙さんへのアプローチに……」

「テメェはどっかぶっ飛んどけぇえええええええええええ!」

「あぎゃあああああああああああああああ!!」

 

 どこかから取り出した金属バットで、お妙は近藤のケツをぶん殴った。

 近藤は遥か彼方に飛び去っていった――。

 

「あ、飛んで行ったわね……」

 

 霊夢は近藤が飛んで行った方を見ながら、ポツリと呟いた。

 

「あら、貴女達久しぶり……と、見かけない顔もいらっしゃるわね……」

 

 霊夢と魔理沙は、お妙と会うのは初めてのことではない。

 アリスやフランも、宴会で顔をちらっと覗く位はしていた。

 だが、こうして面と向かって会話をするのは初めてのことだろう。

 とりあえず自己紹介を簡単に済ませ、

 

「そう。けどごめんなさい。まだ今日は開いてないのよ……基本、うちは夜からの営業だから」

 

 確かに、現在時刻は昼。

 スナックやキャバクラ系の店は、基本的に夜からの営業となる。

 今は準備しつつ近藤を撃退するのに時間を取られていた、というべきだろうか。

 

「この店ではお酒が飲めるって聞いたぜ?」

 

 魔理沙が尋ねる。

 

「そうね。もしよければ、今度遊びにおいで」

「本当か!? 霊夢、アリス、フラン! 次の機会に遊びに来ようぜ!」

 

 魔理沙はノリノリだった。

 みんなで酒を飲んで楽しめることがいいのかもしれない。

 

「ギン兄様も一緒に行こうね!」

「あぁ、そうだな」

 

 頭を撫でつつ、フランの言葉に答える。 

 そんな様子を見て、お妙が一言。

 

「相変わらずその子には甘いのね。一体どんな風の吹き回しかしら」

「……そうかもしれねぇな」

 

 無邪気に甘えてくるフランを相手に、銀時が甘くなっているのは否定出来なかった。

 

「本当、若干嫉妬しちゃう位ね」

 

 本心なのか茶化しているのか、霊夢がそんなことを言ってきた。

 

「霊夢、前まで銀さんの顔見るだけで逃げt……」

「魔理沙? 後でO☆HA☆NA☆SHIがあるからよろしくね?」

「むっちゃいい笑顔で死刑宣告するのは止めるんだぜ!?」

 

 『O☆HA☆NA☆SHI』がただの話し合いで終わるわけがないのは、既に明らかになっている。

 この後果たして魔理沙は生き残ることが出来るのだろうか。

 

「まぁ、そういうことなら仕方ないですね……姉上、また今度遊びに来ますね」

「そうね。今度は大勢のお客さん連れて遊びにいらっしゃい」

 

 新八の言葉に対して、お妙がにっこり笑顔で答える。

 確かに、幻想郷に居る女性達を全員連れてきたとすれば、相当儲けが来ることだろう……来るかどうかは別として。

 とりあえず、次なる目的地へと足を運ぶ為に、一同はその場を後にするのだった。

 

 

 

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