からっぽ島開拓記~ナザリック風味~   作:甲斐太郎

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オッカムル島編 その④

増えたあらくれ炭鉱夫を元々町にいたミルズが指示運用し効率よく銅鉱石を掘る。しかし、その採掘音を聞いてAOG教団の息が掛かった魔物の群れが度々襲来するものだから中々作業が捗らない。

 

そこで俺たちナザリック勢の誰かを採掘場所での護衛として派遣されるのだが、装備の問題で出来るのは炭鉱夫が逃げるまで足止めする程度。肝心の新しい装備を作れるビルドは先日のビルダーの鐘事件以来、せっせと炭鉱の復旧作業に従事しており、俺たちとしても何も言えない。

 

あの後、ベルリバーさんが交渉した結果、ビルドの手で建設途中であったキノコ部屋に生えるキノコは食材として使っても構わないということで、メイドたちのレパートリーに焼きキノコという料理が加わったのだが、今の所そのキノコに手を出そうとする住民もメイドたちもいない。

 

皆があの日の選択を後悔していた。

 

だから、せめて自分たちの食い扶持が稼げるようになるまで頑張って、その結果を持ってビルドと仲直りをと考えているのだが、町のあちこちでお腹を空かせて蹲るメイドやあらくれたちの姿が目立ってきた。

 

かく言う俺も、姿形のない内臓が腹の虫の大合唱をかき鳴らす。空腹による飢餓状態では走ることも、武器を満足に振るうことも出来ないのである。最後の手段として、メイドたちをからっぽ島に送ろうとも考えたのだが、船着き場に船ごと船長はおらず、次に来る日も分からないと来ているのでその手は使えない。そんな俺の姿を見かねたベルリバーさんがいつもは下にいるのに階段から上がってきた。

 

「……本末転倒だろう、モモンガさん。ビルドはモモンガさんたちが憎い訳ではない。ただ何か行動を起こすときはメリットとリスクのバランスを鑑みて行動しろと言いたかったに過ぎない。まぁ、このことはユグドラシルの時から俺が口を酸っぱくして伝えてきたつもりだったのだがな」

 

ベルリバーさんはそう言って俺の前に収納箱を降ろす。中を確認すると町にいる全員が十分に食べられる1日分のキノコが入っていた。

 

ベルリバーさんは炭鉱の復旧活動をするビルドについて回っていたと話す。ビルドは復旧作業の傍ら行く先々で見つけたキノコを地面ごと持ち帰り、キノコ部屋に移植する活動も並行して行っていた。その成果がこの収納箱のキノコだという。

 

「これから、ずっとこの量のキノコを毎日収穫できる。どうせ、ここまで意固地になるモモンガさんたちのことだ。上のサボテン畑も手を付けていないのだろう?あれは高さに上限があるから、伸びきる前に収穫する方がいいんだとさ」

 

あんな物別れをしたにも関わらず、ビルドは俺たちのことを考えて行動してくれていた。そのことを知って無くなったはずの俺の涙腺が刺激されて、視界がぼやけてしまう。ベルリバーさんは俺の隣に座って空を眺める。そんな彼に俺は思わず、心のうちを吐露する。

 

「……くっ。俺は自分が情けないです、ベルリバーさん。ビルドは色んなことに気付いて、最善を尽くそうと考えているのに、俺は……何も」

 

「……俺は色んなことに悩んで、人の意見を聞いて、喧嘩を仲裁できる、そんなモモンガさんだからこそギルドマスターの地位を推したんだぜ。1人で抱え込まない、そんなモモンガさんだったからだ。困ったらヘロヘロさんやぺロロンチーノさん、ぶくぶく茶釜さんややまいこさんを、仲間を頼れ。これからは俺もいる。まぁ、鐘の件はあいつらが先に囃し立てたみたいだったから、説教代わりに噛みついておいた」

 

「ぺロロンチーノさんは焼き鳥の味がしたが、何か知っているか」とベルリバーさんに聞かれ、俺は思わず吹き出してしまった。

 

 

ビルド産キノコを焼きキノコにし、それとサボテンステーキを食べて満腹になった俺たちは、マッシモが率いるあらくれたちの護衛をする者と、いっかくうさぎを狩猟する班に分かれて活動する。

 

町に残る形となったメイドたちの中の1人が俺たちの力になれることはないかと考えた末に、釣り竿を閃いたと聞いた時は唖然としたが、船着き場に並んで座って釣り竿を垂らすメイドたちという光景に見慣れる頃には、俺たちの食時に焼き魚が並んでいた。

 

これで俺たちはいっかくうさぎから得られる肉と、メイドたちが釣ってくる魚と、ビルドが育てたサボテンとキノコという4つの食材を供給できることとなり、贅沢しなければ毎日食べていけることになった。

 

「ビルド、すまなかった。でも、これでこの町の食料自給問題は解決できた。……上に戻ってこないか?」

 

炭坑に行こうとするあらくれたちを引き留め、ベルリバーさんの仲介で久しぶりに町の方に上がってきたビルドを迎えて、俺を筆頭に皆で謝った。そして、この島ではまだビルドが食べていない焼き魚を提供する。焼き魚が刺さった串ごともらったビルドは、はむっと口をつけて、あっという間に食べ終えた。

 

そして、その場で深呼吸すると袋から収納箱を取り出して地面に置き、彼も頭を下げる。

 

ぼくのほうも いままで むきになってた ごめんなさい

かわりに ぼくが とってきた てつとどうをつかって そうびをつくっておいたよ

はい ももんがさん

 

ビルドはそう言って、木と銅と鉄と思われる金属を組み合わせた一本の杖を俺に差し出してくる。俺は所持していた魔導士の杖を傍にいたユリに渡し、それを受け取る。すると、からっぽ島で樫の杖を受け取った時と同様に魔法を閃いた。

 

ひとつふたつと言わずに、一気に四つも。

 

「メラミ、ギラ、ヒャド。それにザラキか」

 

メラミはメラの上位互換の単体攻撃魔法。ギラはメラの威力で広い範囲に火炎属性の攻撃が出来る魔法。ヒャドは新しい系統の魔法で氷結属性。それともうひとつはオーバーロードの俺らしい魔法のザラキ。確率で敵を即死させる魔法だった。

 

「ありがとう、ビルド。そして、本当にごめんな」

 

ううん でも これからは ちゃんと かんがえてね

 

俺はビルドのジト目での忠告を聞いて苦笑いする。

 

そんな俺を見たビルドはいつも通りのニコニコとした表情になり、収納箱から次々と装備を取り出していく。中でも驚いたのはぺロロンチーノさんとやまいこさんたちの要望を聞いて作ったと思われる弓と籠手を見た時だった。いっかくうさぎを倒した時に偶に出るわたを籠手の内側に縫い込むことで攻撃した際のフィードバックダメージを減らせる工夫がされている。

 

「う、お、えぇー!何この鏃、作り込みが半端ねぇ……」

 

ぺロロンチーノさんの言葉を聞いて、近寄って矢の鏃を確認すると普通の物から、分銅みたいな形になっていて当たったら痛そうな物や、捩じられていて貫通力を増加させたと思われるものもあった。

 

それ つくりかた めいどさんたちに おしえたから 

ほしくなったら かのじょたちに いってね

つくるの めんどい

 

見れば釣り竿を思いついたメイドが同僚のメイドたちに鏃の量産の指示を出している。鏃の材料となる鉄はゴルドンの力を復活させるのには不必要なので数が揃えられるようだ。

 

その他にも、鉄製の武器であるチェーンクロスと鉄の鞭、鉄の剣などを取り出す。防具はついに鎧の登場である。服の下に着こめる鎖帷子と身体に纏う鉄の鎧、それに木と鉄を組み合わせて作る鉄の盾まで。ぶくぶく茶釜さん専用の大盾も鉄をふんだんに使った大きく堅牢な鉄の大盾へと大幅レベルアップしている。

 

「下で過ごしている間、ずっとこれらを作っていたのか?」

 

そうビルドに尋ねると、彼は鼻の下を擦って照れるように、 ひまだったからね と呟いた。そして、別の収納箱を取り出した。皆が頭の上に疑問符を浮かべる中、ビルドはバーの店主であり、ペロの父親であるアーマンに向き直って告げる。

 

いままで またせたね すぐ やっちゃうから

 

そう言ってビルドは、この炭鉱の町の顔でもあるバーの再建に取り掛かる。鉄と銅のブロックで壁を作り、銅のテーブル、石の椅子を置き、酒樽にツタの実を突っ込んでルビーラにしつつ、それを銅のジョッキに注ぐ。部屋の隅に置いた樽の上にランタンを置いて灯を確保、壁にはダーツセットを三つ並べ、バーの看板を店内と表にひとつずつ設置すれば、炭鉱のバーが完成した。あらくれたちのやる気が大幅アップした。

 

「い、一瞬だった。何が起こったのか分からないレベルで、一瞬のうちにバーが完成しちゃった」

 

「材料さえあれば、作るのは一瞬でってマジか……」

 

住民どころか俺たちナザリックの面々もドン引きするレベルの早業だった。

 

しかし、ビルドの動きは止まらない。バーの壁を同じブロックで2段ずつ積み重ね天井を高くし4段目は銅のブロックを置いて屋根にしていく。その上にまた銅のブロックを置き、ガラス窓を置いて日当たりをよくした大きな部屋が出来上がる。シンプルキッチンの上にあった俺たちの部屋は取り壊され、新たに来たメイドたち用の部屋が作られた。元々あったメイドたちとペロの部屋と新たに作られたメイドの部屋はバーの上に出来た大きな部屋と渡り廊下的な感じで直結された。

 

「……あの大きい部屋って、たぶん僕たちの居住スペースですよね?あそこに行くには手前のスペースを歩いていけば入れるし、メイドたちの部屋を通っても行けると。……あの廊下はメイドたちが僕たちのお世話がしやすいように、かな」

 

「あらくれたちの宿は新たに西側の少し上がったところにあるスペースを使うみたいだな」

 

「下にある少年が使っていた部屋はそのまま俺が使わせてもらうことになっている。ふっ、個室だぞ」

 

その場にいた面々が「いつの間に」と言いたそうにベルリバーさんを見る。そんな中、ソリュシャンに抱きかかえられた状態のヘロヘロさんがあることに気付いた。冷や汗をだらだら流しながら、恐る恐るビルドを指さし、彼が背負っている大木槌が大木槌でなくなっていることに。

 

「本当だっ!大鉄鎚(おおかなづち)になってる!?」

 

「ぎゃー!!あの硬い岩を今までのブロックと同じように軽々と粉砕しているんですけど!?」

 

「あれでフルスイングされると、当りどころ悪いと死ねますね。フフフ……(ガクガクブルブル)」

 

「君たち、一体何をしてビルドにそんなことをされたんだ?普通に過ごしていれば、そんな事態にはならんだろ?」

 

俺、風のマント初使用時にビビッていたところをフルスイングされる。ぶくぶく茶釜さん、アウラとマーレと一緒にモンゾーラ島にて2度フルスイングされる。ヘロヘロさん、からっぽ島にてクッション代わりに落とされる際にフルスイングされる。ぺロロンチーノさん、肉を横取りしようと襲撃した際にフルスイングで撃墜される。

 

「うん、ちょっとノーコメントで」

 

俺はそうやってお茶を濁したが、今後仲間になるギルドメンバーたちやNPCたちが彼の大鉄鎚の犠牲にならないことを祈るばかりだ。

 

 

 

ところで、ビルドがバーを完成させたことによってやる気が大幅アップした炭鉱夫のあらくれたちの頑張りもあり、顔だけカッパーマン?だったゴルドンはめでたく全身が銅の身体を持つカッパーマンへと進化したのだった。しかし、それは新たな苦行のはじまりで……。

 

【ぺロロンチーノに言われた通り、先に申告するが……。次のシルバーマンになるには6000個の銀鉱石が必要になる】

 

「「「「6000個の銀だと!?」」」」

 

聞いたことのない桁に俺たちは頭痛が痛いとそれぞれ米神と思われる場所を押さえる。しかも、装備が改修されて戦力が大幅にアップした俺たちに護衛されながら、炭坑内を隅から隅まで探索したビルドとあらくれたちを以てしても、銀自体を見つけ切れていないのである。それなのに銀をただ要求してくるゴルドンに非難の眼が向けられそうになった時、ビルドとマッシモが告げた。

 

もしかして おおかなづちでも こわせない がんばんのさきに あるのかな?

あそこだけ へんに かたいから きになってたんだよね

 

『確かにあそこの地面から銀の欠片っぽいものも見つかっているから、可能性はあるかもな。……いや、ペロへの土産にしようと隠してたわけじゃなくてな!量が少なくて、確信が持てなかったんだぞ。……本当だぞ』

 

マッシモの呟きは住民やナザリック勢からのジト目、攻撃の中に消えていった。しかし、彼の発言で確信が得ることが出来、銀の鉱脈探しに発展するかと思われたのだが、ゴルドンがペロのバニー姿を見ないと元気が出ないというしょうもない理由で動かない。それを聞いて炭鉱夫のあらくれたちも同調したもんだから手に負えない。

 

今までビルドが下で町の住民たちと離れた生活をしていた弊害もあってか、山ほど舞い込んでくるお願いを消化している最中だ。あらくれたちのリラックス空間のジムとペロの個室を作り、ようやくバニー姿となったペロを見て雄叫びを上げる男たちを見て女性陣の眼が痛い。

 

何せ、喜ぶ男の中にぺロロンチーノが交ざっているのだから。

 

さらに炭鉱夫のあらくれたちのやる気を更に出させるため、ビルドはゴージャスプールという銀を素材とするブロックを大量に使う、訳の分からないものを作ることをお願いされるのだった。バニー姿のペロによるハッスルダンスとやらを見るために。

 

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