からっぽ島開拓記~ナザリック風味~   作:甲斐太郎

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オッカムル島編 その⓺

『???? 1個 オリハルコン 10個 ミスリル 20個 赤い石 50個 金 500個 銀 250個』

 

この材料で作れるもの、なーんだ?

 

答えは、この世界の『血ヲ啜リ肉ヲ喰ウ』でした。分かった人はいたかな?

 

 

【オッカムルにはオリハルコンもミスリルも赤い石と呼ばれる鉱物もないぞ?金や銀は頑張ればいけると思うが……】

 

気を遣って教えてくれたゴルドンには悪いが、俺たちは『血ヲ啜リ肉ヲ喰ウ』を現在の所は作るつもりはない。材料がないっていうこともあるが、俺たちは使うために魔物を倒したのではなく、その武器がギルドメンバーの魂と呼べるものだったから、ただ取り返したかっただけなのである。

 

 

俺たちは現在、銀が取れるだろうと予測される炭鉱の奥深くに向けて進行中である。それを切り開くのはカッパーマンとしてオッカムル島の守護者としての力の一部を取り戻したゴルドンに騎乗したビルドである。

 

ビルドの持つ大鉄鎚でも破壊できない岩盤を次々と粉砕していくゴルドンの後に続く形で俺たちは下層に向かっているのだ。そうして、最後の岩盤を破壊し終えたゴルドンは力尽き、四つ這いになって倒れ込んだ。

 

見れば、神秘的な雰囲気で冷たい感じを受ける炭鉱の下層に到着していた。昔使われていた昇降機の残骸のところを基点にして、炭鉱の採掘作業がはじまる。とはいえ、まだどこに銀の鉱脈が眠っているか分からないので、最初のひとつを見つけるまでは全体行動を取ることとなった。

 

長らく人の手が加えられていない地底の奥底ということもあり、視界が悪かったがビルドが壁掛け松明に火を灯してくれたおかげで活動するには十分な明るさを得ることが出来た。そんな中、ビルドはゴルドンのように話す魔物と出会う。それは煌びやかな宝石を集める習性を持つおどるほうせきという魔物だったが、光物好きな弟たちがこの炭鉱の下層で迷子になっているらしい。

 

魔物からの依頼でも快く引き受けるビルドにほっこりしながら炭鉱の奥へと進むとAOG教団の魔物に囲まれた一回り小さなおどるほうせきを見つける。魔物の討伐事態はそこまで大変ではなかったが、魔物に囲まれていたおどるほうせきの話を聞いて見上げた先には銀の鉱脈があった。

 

「光物が好きと言っていたが、それなら全員で手分けしておどるほうせきを探せば、そこに銀鉱脈があるっていうことだな!」

 

と、マッシモがあらくれ炭鉱夫に指示を出す。すると一斉に、あらくれたちは各地に向かって走り出した。それに慌てたのはナザリックの面々である。散らばったあらくれたちを追って、皆いなくなってしまった。

 

俺は残ったビルドと一緒に行動することとなった。彼もまたおどるほうせきを探しつつ、消えている壁掛け松明に火を灯す作業をしていく。俺はそんなビルドの護衛をしつつ、一緒に進む。

 

うん このかべのむこう さきがあるや

 

「そうなのか?」

 

俺がビルドから受け取った松明を使って壁を照らすと、確かに壁と色が違っていた。暗いと一緒に見えて困る。俺は大鉄鎚を使って穴を掘るのを待つ。そして、出来た穴から中に入って辺りを見渡し、奥の方にでっぷりと太った大きな肉体を持つ醜悪な魔物がいることに気付き声を失った。

 

その魔物がその手にしているものが、ギルドメンバーの1人である武人建御雷さんの武器である『建御雷8式』であることに気付いたからだ。しかも、その魔物はそれで岩を切りつけたり、壁に突き刺したり、綺麗な波紋を舐めたりしている。

 

「……くっ」

 

俺は右手に持つ杖がミシミシいうくらい強く握りしめて耐えた。今、あいつの存在を知っているのは俺とビルドの2人だけだ。この炭鉱内には他にも仲間がいる。その彼らと合流して戦う方が無難だった。俺は踵を返そうとしたのだが、ビルドがそんな俺のマントを引っ張って止める。

 

 

あれも ももんがさんの なかまの たいせつなぶき なんでしょ

 

とりもどそうよ たぶん あかいどらごんの ときのようには くせんしないよ

 

「どうして、そんなに自信が持てるんだ?正直、『建御雷8式』の攻撃能力と範囲は想像を絶すると思うぞ?」

 

つかいては ももんがさんの なかまのひとじゃ ないじゃない あいつは ただたんに ふりまわすだけ

 

それに あのぶきに ももんがさんが ふれたら こわれて かけらに なるんでしょ?

 

ぼくと ももんがさんだけで じゅうぶんに やれるとおもうよ

 

だめだったら にげて べるりばーさんに おこられればいいだけの はなしでしょ?

 

 

「……。はぁ、ベルリバーさんの説教は淡々とした口調だから地味にきついんだぞ?いいだろう、やるか!」

 

よし そのちょうしっ!

 

俺とビルドは『建御雷8式』を装備した醜悪な見た目の魔物に襲い掛かった。

 

 

 

 

モモンガは 『建御雷8式』の 欠片を手に入れた

 

 

 

 

戦闘の余波を受けて砂に埋まってしまった坑道。

 

幸い、天井に大穴が開いて、上の階層の空洞と合体したおかげか空気が無くなってビルドが死んでしまうようなことはなく、結構のんびりしていた。からっぽ島で出会った時以来のビルドと2人きりの夜。

 

俺はこれまでのことを思い返し、ビルドと思い出話に浸る。ヘロヘロさんから油を抽出しようとしたこと、メイドたちから至高の41人の自慢話を聞かされて遠い目をしていたビルドのこと、モンゾーラ島での冒険と建築、からっぽ島での開拓で俺たちの知らないところでブループラネットさんと喧嘩したというビルドの話を聞いて笑う。

 

「そういえば、ビルドは何故、俺の名前を知っていたんだ?」

 

うん? どういうこと?

 

はじめてあったとき かかえていたこんぶを ぜんぶ ほっぽって

 

「おれは わるいすけるとんじゃない ももんがだ」って いったのは ももんがさんのほうだよ

 

 

俺はビルドの話を聞いて恥ずかしくなって両手で顔を押さえた。俺がビルドに抱いていた疑惑は100%、俺の勘違いだったのだ。この秘密は墓まで持って行かないといけないと大きく頷いたところで、俺たちはビルドが念のために持ってきていたわらベッドを使って休む。

 

翌朝、というか体感で起きた俺たちはからっぽ島から唯一持ち込めた焙りコンブで腹を満たし、外に出るために穴を掘る。天井を見て、微妙なバランスで保っている砂のところは回避するようにして、硬い岩を掘るようにビルドが大鉄鎚を振るう。そうやって慎重に掘り進んでいったところ、明るい陽射しが差し込んだ。

 

「おぉ、地上まで出てこれたな。やったな、ビルド。……どうした?」

 

穴の外を警戒するように見ていたビルドが嬉しそうに外に駆けだした。後を追って外に出るとビルドが何かを採取し、それを天高く持ち上げている。それは小麦だった。硬い岩壁の間を流れる小川のほとりに自生した小麦の群生地に俺とビルドはたまたま辿り着いたのである。

 

 

これで こむぎをつかった おさけが つくれるー

 

「おぉっ!?っていうか、ビルド。あの時の俺たちの話を聞いていたのか」

 

ずっと きになってた しゅわしゅわの おさけだって きいて のんでみたかったんだ

 

 

そう言って全部生えていた小麦をすべて刈り取ったビルドは、上の方から小麦が生えているのを分からないようにするために黄色岩を使ってカモフラージュ用の壁を作っていく。ビルドはいたずら小僧のようなニシシッと笑って人差し指を口に当てて、俺を見る。

 

みんなには ないしょ ぼくと ももんがさんだけの ひみつ

 

そう言ってビルドは袋から酒樽を取り出して小麦を投入した。酒樽からごとごとと音がして、何かが回転する音が聞こえてくる。ビルドが酒樽をこんこんと手で叩いて、満面の笑みを浮かべる。

 

また袋の中からコップを取り出したビルドは酒樽から黄金色の液体を注ぐ。シュワっとはじける白いきめの細かい沫が金色の液体を隠す。これがビールかと、俺は恐る恐るビルドからコップを受け取り口に付ける。

 

芳醇な麦の香り、ないはずの舌や喉を強い炭酸が刺激する。ごくりと飲めば、すかっとしたキレのある味に、体が次を寄こせと命令してくるような感覚に俺は酔いしれる。そして、あっという間にコップに入った分のビールを飲み干した。

 

 

「っあー!!うまいっ、たまらん!おかわり!」

 

ももんがさん これ ひやしたら もっとおいしいかも

 

「そうだな!よし、ヒャド!」

 

 

小川の一部を凍らせた俺は2杯目のビールが入ったコップをその凍らせた小川のほとりに置く。しかし、辛抱堪らんと冷えるのを待つ前に飲んでしまった。そうやって一樽分を2人で飲み干した俺とビルドは小川のほとりで空を見上げる。

 

心地よい酔いと暖かな日差し、冷たい地面も相まって俺たちはそこで暢気に昼寝をするのだった。ちなみにだが、俺たちが小川のほとりで寝ている姿を結成された探索チームに属していたユリが、銅鉱脈がある場所に向かう途中にある上層の炭鉱と炭鉱を結ぶ小さな橋の上から見つけてくれたおかげで、俺たちが昼寝から目覚めると炭鉱の町の中で驚いたのは言うまでもない。

 

 

 

俺たちが炭鉱から帰ってこなかった昨日、炭鉱の町は上から下まで蜂の巣を突いたような騒ぎになっていたらしい。

 

ベルリバーさんが作戦指揮を執り、探索チームがすぐに結成された。俺たちが行方知れずとなった下層で、大量の土砂によって埋まった坑道を見て、誰もが最悪を想定したという。

 

その土砂をどかそうにも削れば削った分だけ大量の土砂が上から落ちてくるため、土砂の搬出は諦めて迂回路を探した。しかし、行方不明になったと思われる場所の反対側も大量の土砂によって埋まってしまっていて、ぶくぶく茶釜さんとやまいこさんたちはボロボロ涙を流したとのこと。

 

「(……俺たちが暢気にビールを飲んでいたってばれたら殺されるな)」

 

俺はベルリバーさんの説明を聞きながら真顔になった。

 

事の重大性を知ってかビルドは唐突に『記憶が曖昧で』と話す。つまり、坑道が土砂に圧し潰される原因となった『建御雷8式』を持つ醜悪な魔物との戦闘ごとなかったことにしようとしていることを瞬時に悟った俺は、ビルドの策にのっかることにした。

 

「すみません、ベルリバーさん。土砂によって退路が断たれた俺たちは、もう死に物狂いで掘りながら上へ上へと進んだんです。どこをどう通って、地上に出たのかも今になってはわかりません(俺たちが出て来た穴は小麦を隠すために証拠隠滅のために埋めたので)」

 

「いえ、2人が無事でよかった。町の住人やメイドたちも一報を聞いて安心していましたよ。今は体力の回復に努めてくださいね」

 

そう言って、救護所から出て行こうとしたベルリバーさんだったが、扉の所で立ち止まると振り返って告げた。

 

 

「ただし、口止め料のビールはちゃんと持ってきてくださいね。貴方たちの下手な演技に付き合ったんだから」

 

 

そう言って出て行くベルリバーさん。俺とビルドはそのままわらベッドに倒れ込み、叫ぶ。

 

ベルリバーさん、おっかねぇー!!と。

 

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