からっぽ島開拓記~ナザリック風味~   作:甲斐太郎

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赤の開拓地編 その③

【観光名所?】

 

赤の開拓地には3つのオアシスがある。その内の最も緑の開拓地側に位置するオアシスにて1人、ビルドが斜面にカーブを描くように白い岩を設置しているのを見かけた俺は何をしているのかを尋ねるために彼の所に行くために斜面を登る。

 

すると上から勢いよく水が流れてきて、そのまま下のオアシスまで流されてしまった。仰向けでオアシスの水に浮いた状態になった俺。見ればビルドは流された俺のことには気づいていなかった。

 

ごめんね ももんがさん 

 

うぉーたーすらいだーを つくってたんだ

 

ちゃんと なめらかな すいりゅうに なるように

 

ちょうせい してたとこ それと これなら 

 

すけすけの しゃわーしつを つくっても もんだいない かなって

 

 

ビルドはそう言ってピラミッド建築に精を出すバードマンを見る。どうやら、俺たちに却下されてもなおビルドに大きな窓でスケスケのシャワー室を作って欲しいと直談判していたぺロロンチーノさん。相変わらずエロゲ脳の困った奴だなと思っていると、ビルドに構想を聞かされる。

 

つまり、このウォータースライダーとプールを合体させた、元々はオアシスのアクティビティは、水着を着用して遊ぶのが前提となる。

 

更衣室で水着に着替えた客がビルダー塩素の入った腰の高さのプールで下半身を消毒して、スケスケのシャワー室でそれを洗い流して、ウォータースライダーなりプールで遊ぶ形になるようだ。

 

ちなみにからっぽ島に住んでいる者の利用は無料。将来的には島外から来る観光客から入場料と、売店で水着販売やスライダーやプールでも使える浮き輪も売っていけたらいいんじゃないのかと提案される。

 

ここが きのうしはじめると

 

れすとらんとか きっさてんとか ふぁすとふーどのおみせとか

 

たべものかんけいの おみせの じゅようが でてくるよね?

 

 

「確かにな。ハーゴン教団およびAOG教団に支配された人々は料理すること自体も咎められていた。生きていくために食べるという行為は見逃されていたが、それでもたき火でただ焼くだけ。料理には程遠いものばかりだ。他の島にはない、からっぽ島だけでしか食べられない物を提供する飲食店。リピーターをがっつり得られるかもしれないな」

 

俺は早速、ギルドメンバーであり赤の開拓地の現場監督であるベルリバーさんと、ナザリックの副料理長であるピッキー、メイド長のペストーニャを呼び出して、ビルドの構想について説明し、意見を聞く。

 

ベルリバーさんはそうなってくると俺たちが食べる分とは別に、商業用の作物や畜産物を得られるようにしなければならないなという意見を出す。

 

ピッキーとペストーニャはそれぞれ、飲食店を出すことには反対しなかったものの、それぞれの料理に先任者を決めて運用させる方が効率的だという意見を出した。つまり、『ピッキーの酒場』のように、『○○の△△店』とした方が、その者もやる気になるだろうということだ。

 

とりあえず、チャコを呼んで赤の開拓地でこういったことをしていくので、将来的にはモンゾーラ島と野菜の取引がしたいと告げる。するとチャコは「からっぽ島にいる鶏や牛などの動物を2匹ずつモンゾーラ島に連れて行き、牧畜もさせてください!」と言いだした。今のうちに先行投資をしておけば、赤の開拓地の商業施設が本格的に運用し始めた時に強みになるということで許可を出す。

 

ペストーニャは一旦、会議の後で緑の開拓地に行き、5人のメイドを連れ帰ってきた。この5人のメイドたちが赤の開拓地に飲食店を出した際にそれぞれの店の店主となるようだ。中には、オッカムル島で釣り竿を思いついた意外性ナンバーワンメイドのフォスもいる。

 

俺はその5人のメイドたちにそれぞれ本を渡す。それは俺とビルドが試食会を重ねて太鼓判を押す料理の秘伝のレシピ帳であり、アインズ・ウール・ゴウンのギルドメンバーいえども見せることは許されない門外不出のものと命じた。

 

「……おい。なんだあれ?」

 

レシピ帳が手渡される現場を見ていたベルリバーさんが、全身の口を引き攣らせながら俺に尋ねてくる。彼はメイドたちが俺の命を聞いた瞬間には懐に隠してしまったレシピ帳が気になるのだろう。俺はにっこりと笑みを浮かべると、秘密ですと告げた。その次の瞬間にはベルリバーさんの「メラミ」で燃やされた。

 

「いぃやぁあああああ!あっつぅいーっ!!」

 

「おーい!お前らー、ギルマスがまた俺たちに秘密でなんかやったぞー!」

 

「「「「なにぃっ!?」」」」

 

ベルリバーさんの声掛けでピラミッドの建築をしていたぺロロンチーノさんやぶくぶく茶釜さん、やまいこさんたちが駆け寄ってきた。彼らは俺を消火することなく、ベルリバーさんの話を聞いて、俺を取り囲む。

 

「で、メイドたちに手渡したあれは何のレシピ帳なの、モモちゃん?」

 

「ビルド!スケスケのシャワー室を作ってくれて、サンキューなっ!夜、一緒に飲もうぜっ!」

 

「ギルドマスター権限で命じましたね、モモンガさん。ボクたちが何を言ってもメイドたちが見せるのを拒否するということは、それだけ重要なレシピだと」

 

「その質問をする前に消火してくださいっ!」

 

「「「「だが、断る!吐けーっ!!」」」」

 

「いやぁあああああー!」

 

俺は急遽、ビルドに緑の開拓地にレシピを渡したメイドたちのお店をこしらえてもらって、その店の前に大きなテーブルと椅子を人数分並べてもらった。そして、振舞わられる料理の数々に、皆が驚愕し、かぶりつき、涙を流して喜んだ。俺はそれを見ながら、ビルドと共に撤退する。

 

次は何で、こんなレシピを大量に持っていたのかを追及されると思ったからだ。

 

しかし、そうはならなかった。意外性ナンバーワンメイドのフォスがやってくれた。他のメイドたちがレシピ通りに忠実に再現する中、フォスは魚料理のレシピ本に書かれていた『白身魚のムニエル』だけでなく「魚の塩焼き」や、「刺身の盛り合わせ」、「焙った刺身を盛りつけしたサラダ」や「カルパッチョ」といった料理をポンポン思いついて作りだすという離れ業をやってのけた。

 

そんなフォスがヘロヘロさんたちにべた褒めされる姿を見て、レシピを渡された他のメイドたちが負けじと燃えた、そのおかげでギルメンたちに更なる追及をされることはなかったのだった。

 

 

【プレアデスとビルド】

 

ブループラネットとビルドが立地と景観を計算して作り上げた『森の庭園』の枯れ葉と雑草の掃除を終えた戦闘メイド「プレアデス」の面々はベンチに腰掛け、先日赤の開拓地にお店を構えることになった一般メイドのインクリメントのところでもらってきたドーナツ盛り合わせをお供に、お茶会を楽しんでいた。その楽しい雰囲気の中で1人、曇った表情を浮かべる者がいた。ヘロヘロが創造したソリュシャン・イプシロンである。

 

「ソリュシャン、いったいどうしたのですか?そんな浮かない顔を浮かべて」

 

プレアデスの長女であり副リーダーの立ち位置にいるユリ・アルファが尋ねた。それを聞いたソリュシャンは思いを吐露しはじめる。

 

「正直な話、ユリ姉さんやルプスレギナはあの人間のことをどう思っているのかしら?」

 

「ソーちゃんのいうあの人間って、ビルドのことっすよね?モモンガさまやヘロヘロさまの命の恩人って聞いているっす!空腹で行き倒れていた私を助けてくれたのもビルドっす!」

 

ドーナツをリスのように頬張りながら元気いっぱいに注げたのはワーウルフでクレリックの職業を持つルプスレギナ・ベータである。その発言を受けて、ユリは眼鏡をくいっと上げつつ意見を述べる。

 

「現在のからっぽ島において代え難い人材であることは間違いないですね。ソリュシャンが危惧しているのは、このまま放っておけばアインズ・ウール・ゴウンにビルドくんが参加する可能性があると思っているからかしら?」

 

「その通りよ、ユリ姉さん。例え、モモンガ様やヘロヘロ様と懇意にされているからといって、ただの人間種である彼を加えることは許されない。いえ、至高の御方方に仕える身として、許してはならないのよ」

 

ソリュシャンの言葉を静かに聞いていたエントマ・ヴァシリッサ・ベータは、勝手に近寄ってくる蟻と甘いお菓子のドーナツを交互に食べながら、ソリュシャンの意見に苦言を呈するように口を開いた。

 

「でもでも~、実際に至高の御方たちがそれを望んだら受け入れなきゃいけなくなるよね~。かといって、あの子を闇討ちしても返り討ちに遭うのは目に見えているよ?そこまで強くない印象だけど、あれは吹っ飛ばし効果と破壊力があるだけで攻撃力が低い槌という武器を扱っているから、あの程度で済んでいるのであって殺傷性のある剣をあの子が握ったらヤバヤバですわ~」

 

「「「え、そうなの?」」」

 

「……ユリ姉様やソリュシャンはともかく~、ルプーは一緒に見ていたはずだよね。モンゾーラ島にいたおっきな芋虫を倒すとこ。あの時は~、石の剣で、一緒にモモンガさまやヘロヘロさまが戦っていたけど、1人だけ火力が違ったもの。私はソリュシャンの言うような、ただの人間種じゃないと思うなぁ~」

 

エントマの考察を聞き、ユリは少し悩んだ後、眼鏡をきらりと輝かせた後で呟く。「これは、検証する必要がありそうね」と。

 

 

 

 

ギルドメンバーや守護者、プレアデスの武器や装備を作り、手に入れてきた鉱石をほとんど使い切ってしまったというビルドが素材島に行くと言うので、同行するモモンガの誘いを断るギルドメンバーの代わりにお供すると挙手したプレアデスたち。

 

しかし、素材島に到着して早々、ビルドとモモンガを見失うという失態を犯してしまった。

 

「とはいっても、船の上で移動中にモモンガさまから注意点として『俺たちと逸れる可能性が高い。お前たちは島の地下に行かずに表層で採取せよ』とのことだったから、これを機に検証に使う魔物を探しましょう」

 

「ユリ姉、凄いっす!これも計算済みだったんすね!」

 

「え?……えぇ、勿論計算通りよ」

 

お仕えすべき至高の御方と逸れたのにも関わらず、冷静さを失わないプレアデスの長女の姿に、次女のルプスレギナは「すごいっすー」と本音そのままで褒め称える。ソリュシャンとエントマはそのユリとルプスレギナのやり取りを見ていて同時に思った。「あ、これは違うな」と。

 

「島を探索した結果、あの王冠を乗せた大きなスライムが適任のようね。……ソリュシャン、大丈夫?」

 

「確かに同じスライム種でありますが、特になんとも思いませんわ、ユリ姉様」

 

「そう。では各々戦闘準備を。エントマは後方支援しつつ、討伐に掛かった事件の計測をよろしくね」

 

「は~い」

 

ユリはガントレット、ルプスレギナはフレイル、ソリュシャンは短剣と鞭、エントマは杖を構える。ユリは妹たちの準備が整ったことを確認し、王冠を乗せた大きなスライムに対して攻撃を仕掛ける。

 

 

 

「なかなかしぶとかったっすねー。攻撃方法は単調だったっすけど、体力が半端なかったっす」

 

「うーん、でも~。実入りが少ないですわ~。あの子が偶に口にする『レア度』のあるアイテムが皆無ですわ~。薬の葉も油もからっぽ島で採れるものばかり。これでどうやって、あの子を釣るの?」

 

「そ、それは……考えていませんでした。今から別の魔物を探しに」

 

「いえ、それには及ばないわ。ユリ姉様。実入りが少ないのであれば、これを盗られたことにすれば良い。ヘロヘロ様と再会した時にいただいた、このハンカチを」

 

「えぇー!?いいんすか?それはソーちゃんの大切なものっすよね?他にも私たちが持っているもので適当なものがあるっす!お弁当とか」

 

「ルプーのそれだとモモンガ様が自分の分を渡されてきそう。畏れ多くていただけないパターン」

 

「そ、それもそうっすね。でも、いいんすか、ソーちゃん?」

 

「すべては彼を見極める為よ」

 

かくしてビルドの本当の力量を確かめるため、プレアデスの作戦が決行されることとなった。

 

 

 

素材島にて素材回収マラソン2回目。2度目の上陸にも関わらず、モモンガ様を連れてどこかに去るビルドを足が自慢のルプスレギナが本気モードで追う。その間に、ユリ、ソリュシャン、エントマは例の大きなスライムを探して移動。見つけた魔物の背後に近づき、王冠にハンカチをひっかけて撤退した。そして、少し離れた位置から魔物を見守る。

 

しばらく3人で談笑して待っていると、空を滑空するビルドの姿が見えた。岩陰に隠れて様子を見ていると、上空から飛び降りたビルドは両手に1本ずつ大鉄鎚を持ち、口にも1本同じ大鉄鎚を咥えていた。そして、地面に降り立ちスライムの前に立ったビルドは静かに告げる。

 

おおかなづちさんとうりゅう すたーばーすとえくすとりーむ かけさん

 

 

赤いオーラを身に纏うビルドが技名らしきものを口にした後で繰り出す攻撃は一撃ごとが必殺クラスの攻撃力。大鉄鎚で叩かれる度にごっそり体積を削られて行く、スライムの姿にぞっとする面々。挙句、そのスライムがハンカチを残して消滅した後も攻撃は続いた。

 

ふっ また つまらぬものを こわしてしまった

 

 

そう言ってビルドはソリュシャンのハンカチを拾い上げると、きゅぴーんと目を光らせて物陰に隠れているはずの3人の下に駆け寄ってくる。うわわわーっ!?

 

 

 

モモンガと共に船着き場のある浜へ戻ってきたルプスレギナが見たのは、幼児退行を引き起こした姉妹たちの変わり果てた姿だった。

 

「「「ばぶー」」」

 

「な、いったい何があったっすかーっ!?」

 

からっぽ島に帰るまで、彼女たちはモモンガとルプスレギナの手厚い保育を受け、島につくと同時に正気を取り戻すと賢者のように悟った表情をして語った。

 

「「「わたしたちは何も見なかった」」」と。

 

 

 

後ろの方でビルドは手に入れた素材の山を見て、ほくほく顔だった。

 




誤字脱字修正、ありがとうございます。
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