からっぽ島開拓記~ナザリック風味~   作:甲斐太郎

28 / 46
終わらない戦いの島編 その②

褐色の全身鎧を身に纏った魔法も使う剣士に捕まり、牢屋に放り込まれた艶やかな黒髪が特徴の美女ナーベラル・ガンマは同じ牢屋の床に無造作に転がされた創造主である弐式炎雷に縋りついた。幸い、気絶はしているものの怪我は治療が施されている。命に別条がないことを悟ったナーベラルはほっと息を吐いた。

 

「なんでこう、俺たちの弱点を的確についてこれるのかなぁ」

 

「くそぉっ。いくら俺でも、あんなメイド服認めねぇ」

 

「牢屋に捕まっているのに。本当にぶれないな、ブリムさんは」

 

ナーベラルは己の目を疑う。

 

同じ牢屋の奥に大人しく座っている異形の者たちには見覚えがあった。元々は創造主である弐式炎雷と同じギルドに属していた至高の41人のギルドメンバーの方々。

 

元々は鋭角なフォルムの外装を持つ半自動人形のホワイトグリントならぬホワイトブリム。

 

そして、弐式炎雷と同じ忍者という職を持ち、ギルド内において偵察任務をこなしていたフラットフット。

 

その両名が牢屋の中にいたのである。

 

「はっ!?し、失礼しました。ナーベラル・ガンマ、御身の前に」

 

「うん?誰かと思えば、弐式さんとこのナーベラルか」

 

「君たちはどうやって釣られたの?」

 

「え、釣られ?も、申し訳ありません。浅はかな私の頭脳では至高の御方の質問に正しい返答が思い浮かびません。死んで償います」

 

「「はぁっ!?やめ、ちょっ!?弐式炎雷、さっさと起きろっ!!」」

 

「げふっ!?」

 

質問に答えられなかっただけで自死しようとしたナーベラルをなんとか宥めたホワイトブリム、フラットフット。弐式炎雷は2人に負傷したところを蹴られて飛び起きた。その後、3人は牢屋の床に円になるように座り、情報のすり合わせを行う。

 

「はぁ!?お前ら、自分の欲望に忠実すぎるだろっ!?」

 

「まさか、弐式炎雷が捕まった武人建御雷さんを助けに忍び込んだなんて。意外だわー」

 

「でも、負けて捕まっては本末転倒だろ?」

 

「ぐぬぬぬ……」

 

3人が捕まった経緯は、ムーンブルク軍との戦闘でジャスティス軍のタブラ・スマラグディナとディザスター軍の武人建御雷とコキュートスが漆黒の全身鎧の剣士に負けて、捕えられた頃まで遡る。

 

ジャスティス軍の陣地で『タブラが捕まった』との知らせを聞いた総大将のたっち・みーはすぐに救援に向かおうとしたのだが、参謀となっていた領域守護者の恐怖公の進言で気持ちを落ち着かせた。その後、ユグドラシル時代に偵察任務を主にしていたフラットフットにムーンブルク軍の様子を探るように頼んだ。

 

ユグドラシルとは違う世界に迷い込み、そこで出会った仲間たちを失う訳にはいかないと、フラットフットは走った。その途中、木に貼り付けられていた紙に描かれていた“とあるイラスト”に目を奪われ、不用意に近づいた結果、落とし穴に引っかかった。穴の上を見上げたフラットフットを見下ろす、漆黒の剣士。抵抗は無意味と考えたフラットフットはすぐに降参した。

 

ホワイトブリムは偵察に赴いたまま帰ってこないフラットフットの様子を見に行く途中、金髪の子どもがマネキンに着せている金色と銀色のみで構成されるミニスカメイド服を見て憤慨し、襲い掛かったところを漆黒の剣士に取り押さえられた。色々と蔑んだ眼で見られた。

 

 

 

「いや、俺はちゃんと戦った結果が捕縛だっただけで、お前らとは状況が丸っきり違うだろ」

 

「いや、異形種は捕まったら同じだよ。どうするのさ、これから。いつ処刑されてもおかしくないんだぜ?」

 

「しょ、処刑!?そ、そんなことはさせません!わ、私が皆さまのお命を救えるように嘆願致します!この身を穢されてでも!」

 

「ナーベラル」

 

「ひぃっ!?も、申し訳ございません。でも、でもぉ……」

 

ナーベラルの身を売る発言を咎めるように低い声で名を呼んだ弐式炎雷。その雰囲気にびくつき、涙目で震えながらも弐式炎雷をはじめとした至高の41人のメンバーであるフラットフットとホワイトブリムの命をどうにか救える方法がないかと一所懸命に考えるナーベラルを見て、3人はどんな要求をされても受け入れることに決める。

 

そんな3人の決意を知ってか知らずか、漆黒の剣士が牢屋の鉄格子を挟んだ向こう側に現れた。

 

「すまないな、こんな狭い所にしか案内できず。先に捕虜として捕えた者たちに名は聞いている。単刀直入に言おう、私の仲間になれ」

 

「「「分かった」」」

 

「ふっ、断るか。当然だな、しかし、いいのか?君たちがこと……え?」

 

「何だよ、俺たちが断る前提だったのか?」

 

「俺たちにとって姪みたいな存在が、こんな俺たちのために体を張ろうと言うんだ。守るだろ、普通」

 

「自軍の総大将の首を獲ってこいと言われてもやってやるぞ?」

 

弐式炎雷、ホワイトブリム、フラットフットの言葉を聞いていたナーベラルは、彼らの後ろで頼れる背中を見ながら涙を流す。そして、己の弱さに下唇を噛みしめる。命を創造された者が、創造主を危険に晒すなどあってはならないことなのに。庇われていることが嬉しくてたまらない。そんな複雑な感情に翻弄されたナーベラルがボロボロと涙を流し続ける。

 

「あー……。どうしよ、小太刀の実演販売とか。メイド服改造キットとか用意してたのに」

 

「「うん?」」

 

耳の良い弐式炎雷とフラットフットは漆黒の剣士が呟いた言葉を聞き逃さなかった。『小太刀の実演販売』と『メイド服改造キット』?自分たちが置かれている状況と漆黒の剣士の発言が合っていない。重要な何かを見落としている気がすると3人が思った、その時。

 

「あっはっはっは!人生はうまく行かぬことばかりだぞ、殿」

 

壁を挟んだ向こう側から快活な笑い声が聞こえた。ガシャッガシャッと金属が擦れる音が聞こえ、弐式炎雷、フラットフット、ホワイトブリム、ナーベラルが捕らえられている牢屋の前に赤い武者鎧姿に長刀を腰に携えた武人建御雷が現れ、漆黒の剣士の横に並び立つ。続けて、タブラ・スマラグディナも現れる。呆然とする4人の前で、武人建御雷とタブラは漆黒の剣士に馴れ馴れしく話掛け、漆黒の剣士も昔馴染みのように笑って返す。

 

「どうだ、某の言った通りだっただろう。己1人だけだったら、断る可能性があったかもしれんが、可愛い愛娘やメンバーの娘が一緒に捕まっていれば、その娘を守るために自分たちの身を差し出す。そんな気のいい奴らだって」

 

「そんなこと、俺の方がよく知っていますよ。だって、俺は前の世界で皆さんを纏めていた者ですよ?まぁ、皆さんの意見に圧されることの方が多かったですけど」

 

「そんなことありませんよ。貴方が私たちのリーダーだったから、世界ランキング9位まで上り詰められるギルドに成長したんです」

 

タブラの言葉がもう決定的だった。牢に捕らえられた全員が鉄格子に詰めかけて、漆黒の剣士に向かって手を伸ばす。漆黒の剣士はゆっくりとした動きで兜を脱ぎ、その素顔をその場にいる全員に見せるのだった。

 

 

 

牢屋の横に設けられた居住空間に移動する。今回、仲間に加わった弐式炎雷さん、フラットフットさん、ホワイトブリムさん、そして戦闘メイドプレアデスの1人で弐式炎雷さんの娘であるナーベラル・ガンマは、案内された空間を見て腰を抜かした。

 

床はふかふかの絨毯。壁は一面が大理石。椅子は皮張りの高級ソファが並び、部屋の奥にはバーカウンターが設置されている。部屋の中央にある大きなテーブルに備え付けられた椅子に腰かけて談笑するギルドメンバーとは別の存在があった。

 

褐色の全身鎧を身に纏った剣士と一見すると金髪の子ども。俺は2人のところに歩いていき、今回仲間になった4人に紹介する。

 

「察している者もいたと思うけれど、こっちの褐色の全身鎧を着ているのはデミウルゴス。そして、こっちの金髪の子がビルド。俺たちの認識で言う人間種だが、その強さは折り紙付き。気になるなら、どのくらいの強さだったのかを知る弐式炎雷さんに聞くように」

 

視線が弐式炎雷さんに集まる。当然のことであるが、武人建御雷さんもタブラさんもビルドとは戦っていないので、彼の事は物作りが得意な少年程度にしか思っていない。今回仲間になった面々で唯一、武人建御雷さんとコキュートスを救うためにムーンブルク城に侵入してきた弐式炎雷を囲んだ際、彼が戦う相手として選んだのが不運にもビルドだったってだけ。ビルドの強さを体感した唯一の証人が声を荒げる。

 

「いやいや、何か混ざっているだろ?ただの人間じゃねぇって。あの一撃、マジで身体の骨が全部砕けたかと思ったぞ?」

 

「「え、そんなに?」」

 

「撃たれ弱くなったんじゃないですか、弐式炎雷さん。俺たちも結構、ビルドにはフルスイングされているんですよ?」

 

「嘘だっ!?」

 

誰も俺の気持ちを分かってくれないと雄叫びを上げる弐式炎雷さん。その時、『ドゴン』という音が鳴り響き、音の発生源を見ると壁の大理石に人の形で穴が開いていた。褐色の全身鎧を身に纏うデミウルゴスがそっと世界樹のしずくが入ったボトルを俺に手渡してくる。視線をスライドさせると大戦槌を背負いなおすビルドの姿があった。

 

「まぁ、あんな感じですね。弐式炎雷さん、ナーベラルを救出に行きますよ」

 

「な、ナーベラルぅううう!?」

 

残った人員の様子を見ると、『あいつ、やべぇわ』と言わんばかりの引き攣った表情でビルドを見ていたのだった。

 

 

 

【フラットフットを釣ったアレ】

 

ビルドのフルスイングの洗礼を受けたナーベラルを介抱する弐式炎雷さんを横目に、俺はフラットフットさんとホワイトブリムさんに向き直る。

 

「ホワイトブリムさんは分かるんですよ。明らかにド派手なメイド服はホワイトブリムさんの理想とするメイド服からかけ離れていて、メイド服を使った表現は自由だと常々言っいたホワイトブリムさんでも耐えられるものじゃないってことは。問題はフラットフットさん、貴方が釣られたイラストだ。ビルドに尋ねても、見せるのは恥ずかしいと言って見せてもらえなかった。どんなイラストだったんですか?」

 

「黙秘権を行使する」

 

俺の問いに即答するフラットフットさん。弐式炎雷さんとナーベラル以外のメンバーの視線が彼に注がれる。

 

「フラットフットさん。貴方が貧乳好きで足裏好きだっていう性癖は分かっていますから。そんなの今更じゃないですか。で、どんなイラストだったんです?」

 

「黙秘します」

 

頑なに口元を真一文字に結び、話すことを拒否するフラットフットさん。何かを察したのか、タブラさんと武人建御雷さんも彼を囲むようにして、近づいてくる。フラットフットさんを見れば、そのイラストを思い出したのか、頬を染め赤く……いや、青くなっている。あれ、思っていた反応と違う。これは……。

 

「フラットフット、お前。その様子はドストライクのジャンルだと思ったら、対象がショタだった時の反応じゃないか?」

 

「ぬがぁああああ!?ばらすんじゃねぇよっ、ホワイトブリムぅう!!」

 

「……ホモ?」

 

「俺は胸が無いのが好きであってホモでもペドフィリアでもない!」

 

そう力強く宣言したフラットフットさん。彼にどんなイラストだったのかを尋ね続けても、彼は答えてくれなかった。

 

 

 

 

「ほぅ……よく、特徴を掴んで書けていますね。ビルドくん、これのどこが不満なんですか?」

 

あにきや ぺろろんちーのさん へろへろさんは はいしょくが むずかしくて

 

いっけん おなじいろに みえても しつかんって いうのかな

 

ところどころ ちがくって あにきなんかは とくに めのいろとか にゅうとうのいろとか 

 

あと みるたびに おおきさが かわるから ここだけはかけなくて ぼやかすしかなくて

 

 

「なるほど。ビルドくんが、モモンガ様の絵だけが上手なのは、そういったことも関係しているという訳だね。モモンガ様の高貴な白は、陶器にも似た美しさを感じ取ることが出来る。下手に手を付けず、ノートの白さを十二分に使うことで、あのように多様なポーズを取るモモンガ様を描くことが出来ると。ビルドくん、良ければからっぽ島に帰った後で構いませんので、モモンガ様と私のツーショットの立ち絵なんかを書いていただけるととても嬉しいのですが?」

 

うん でみさんの たのみなら よろこんで

 

 

「それにしても、よく書けていますよ。この……

 

 

 

 

 

 

 

 

“マーレ”の入浴シーン」

 

そうかなぁ?

 




誤字脱字修正ありがとうございます。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。