からっぽ島開拓記~ナザリック風味~   作:甲斐太郎

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AOG教の再襲撃。そして……

ギルメンによる自分が創造した子供たちの自慢合戦が行われて数日後の朝、沖合から連続して爆発音が聞こえた。聞きなれない音に思い思いの時間を過ごしていた面々に緊張が走る。

 

種族がバードマンで空を飛ぶことが出来るペロロンチーノさんと死獣天朱雀さんがその場で羽ばたいて、瞬く間に大空へと躍り出る。そして、目を細めて遠くまで見通して叫ぶ。

 

「四方から多数船が接近中!」

 

「だが、少年が作った『衝撃で起爆する魔法の玉』に引っ掛かって、半数近くが黒煙をあげておるのう」

 

地面に降り立った2人から報告を聞いてウルベルトさんが「機雷も作ってんのかよ」と遠い目をしていたが、俺は構わず招集をかける。一般メイドはすでにペストーニャの指示で地下シェルターへの避難が完了している。

 

からっぽ島の表層に残っているのは、この日の為に準備をしてきたアインズ・ウール・ゴウンの面々ばかりだ。俺はニヤリと笑うと告げる。

 

「赤の防衛拠点の指揮はベルリバーに任せる。戦闘班はヘロヘロ、やまいこ、バルバ、武人建御雷、弐式炎雷だ。上手く使って魔物を殲滅せよ!青の防衛拠点の指揮は死獣天朱雀、貴公に任せる。戦闘班はたっち・みー、ウルベルト、源次郎、フラットフット、ぶくぶく茶釜だ。この島を狙ったことを後悔させてやれ!ペロロンチーノは空中からの狙撃、及び大砲の玉の処理をルベドと共に行え。もしもの場合に備え、ペロロンチーノの判断で、ルベドの力を解放するコード『失墜する天空』の使用を許可する。ぷにっと萌えはからっぽ島全域の情報を集め、残りのメンバーを采配し適切な処理をせよ!ニグレド、オーレオール・オメガは船着き場で転移魔法を使って、魔物の上陸を阻止せよ!そして、ナザリックの子らよ、お前たちはこれまでに色々なことを学んできた。俺の指示が無くとも動けるはずだ。お前たちは各々の判断でからっぽ島の各所に散り、魔物の軍勢を倒し殲滅せよ!」

 

俺の突然の魔王ロールにきょとんとしていた面々だったが、徐々にそういうことかと理解した面々がその場に跪いて俺に向かって頭を垂れる。それを見て階層守護者たちや領域守護者たち、セバスや戦闘メイドたちが一斉に跪いて首を垂れる。そして、各々が思い思いの口上を口にする。

 

「盟主モモンガの御心のままに。敵を内陸部に入れずに殲滅すことをここに誓おう!」

 

「前の時の様な失態は犯さないよ~」

 

「ここを狙ったことを、ボクが後悔させてあげるよ」

 

「まさか、この世界で『血ヲ啜リ肉ヲ喰ウ』を手にすることが出来るなんて。感謝するぜ、魔物共ぉおお!!」

 

「あーっはっはっは!斬り放題だ!!往くぞ、コキュートス!」

 

「おいおい、ギルマスの言葉を聞いていなかったのかよ。まぁ、いっか。俺は先に行くぜ」

 

赤の防衛拠点で指揮を執るベルリバーさんを筆頭に、ヘロヘロさんたちが武器や防具を身に纏い、動き出す。弐式炎雷さんが他のメンバーが追随できない速さで走り出すと、それを追ってナーベラルが走っていく。

 

赤の防衛拠点の構成メンバーを見て回復要員が必要だと判断したのか戦闘メイドのプレイアデスの次女であるルプスレギナと領域守護者の恐怖公も赤の防衛拠点に向かって動き出す。

 

戦闘メイドのユリはソリュシャンとシズの手を引き、からっぽ島全体の情報を統制するぷにっと萌えの下に行き、薬草を2つの防衛拠点に運ぶ役目を自ら進言し承っていた。

 

「やれやれ、ワシのような老骨に任せられるとは。まぁ、全力を尽くそう」

 

「先日は子どもたちに不甲斐ない姿を見せてしまったばかりだからな、名誉挽回と行かせてもらおう」

 

「はっ!お前らは後方でのんびりしていなぁっ!俺が全部、燃やし尽くしてやるぜぇ!」

 

「はっはっは。楽が出来そうじゃないか。けど、防衛拠点の装備も使わせてくれよ?」

 

「弐式炎雷も行ったし。俺も先行するよ。じゃあ、またあとでな」

 

「うおー……すごい濃い面子だぁ。私の出番あるかなぁ……」

 

高笑いするウルベルトさんを筆頭に青の防衛拠点に向けて歩き出す面々。防衛拠点の設備に熟知した死獣天朱雀さんと源次郎さんがいるのでよほどのことがない限り、問題はなさそうだ。戦闘メイドのエントマも源次郎さんの後を追って青の防衛拠点に向けて歩き出す。蟻の魔物を引き連れて。

 

そんな彼らを見送ると弓を担いだペロロンチーノさんが近づいてきて尋ねてくる。

 

「確か空を飛ぶ魔物も現れたんだよな、モモンガさん?」

 

「ええ。ムーンブルク島ではどんなに高い壁も乗り越えられて大変でした。けれど、どの魔物も建物を越えるために少し浮かび上がる程度で、速さはそこまで重視していません。ペロロンチーノさんとルベドの敵ではないでしょう」

 

「そういや、ルベドの力を解放するコード『失墜する天空(フォールンダウン)』って何?最近はからっぽ島の上空をメロンか羊を抱えて飛んでいる姿しか見て無いんだけれど?」

 

「儀式をしたビルドの話では、完全にはこの世界に適応する身体には出来なかったみたいなんですよ。普段はのんびりモード、戦闘時はユグドラシルモードになるみたいです。ただ敵味方の判別が難しくなるみたいでフレンドリーファイアが予想されるので切り札ってことです。それからのんびりモードのルベドの攻撃方法はムーンブルク島でビルドが作った手投げ爆弾で空襲する形なので誘導をお願いしますね」

 

「戦い方が大分、現代っぽくなってきたなぁ。よっし、任せとけ!って……肝心のルベドは?」

 

「ペロロンチーノさま、しろじいの神殿の上辺りにルベドはいるでありんす」

 

「さすが俺の娘!最高っ!シャルティア、俺は上で戦うから、お前はモモンガさんの護衛をしっかりとするんだぞ」

 

「は、はいでありんす!命を賭してモモンガ様をお守りするでありんす!」

 

鼻息を荒くして、胸を張って答えるシャルティアを見て、ペロロンチーノさんは満足そうに微笑み羽ばたいて大空に飛んでいく。そして、ふわふわと浮いていたルベドを回収し、緑の開拓地方面へと飛んでいった。

 

それを見計らうようにして俺に話しかけてきたのは、特殊的な立ち回りをするニグレドとオーレオール・オメガである。

 

「「モモンガ様」」

 

「分かっている。船長には島の影に船を隠すように伝えてある。お前たちは全力で役割を全うしろ」

 

「「はっ!」」

 

俺は護衛を言い渡されてやる気に満ちているシャルティアを連れて、しろじいの神殿へと向かう。からっぽ島においてしろじいの神殿が一番の高台に位置し、戦況を見渡すのに丁度よいのである。

 

それに今回の戦いは俺たちの勝ちが決まった出来レースでもある。からっぽ島における破壊神が駆る巨神が控えているのだから。

 

 

【赤の防衛拠点の場合】

 

岸から離れたところまで浅瀬が広がる赤の開拓地の東側に位置する海岸線。そこに設けられた防衛設備は飛行型の魔物を地面に引き摺り落とすバギバキューム以外はトリッキーなものばかり。

 

「これ説明書なかったら俺たちもヤバかったな」

 

ベルリバーは、崖上に設置された無数の砲台を勝手に発射させる機構に身を任せてぼんやりと空を眺めながら呟いた。

 

ボタンというギミックを使うと砲台や大弓などの兵器を手で操作せずとも発射させることが出来るという特性に目を付けたビルドが「ひいじいちゃんの まねは しゃくだけど」と言いながら作った自動砲台発射装置。

 

ピストンと呼ばれる対象を弾く性能のあるものと階段を組み合わせて作ったそれはベルリバーが何もせずとも毎秒4発の砲弾が発射される機構となっている。ただし、その機構の動力源となったベルリバーに自由はない。ぐるぐるとその場を行ったり来たり。

 

「うぇぇ……気持ち悪いぃ……」

 

ベルリバーはぐるぐると回る視界にうんざりしながら爆風で飛ばされる魔物たちの悲鳴をBGMに動力源となり続ける。

 

 

 

浅瀬のため大型の船から小舟に乗り換えてやってこざるを得ない魔物たちに向かって降り注ぐ砲弾の雨。それを潜り抜けてやってきた魔物たちが小舟から降り立ち進むことになる場所には泥水の貯水池がある。貯水池と海との境界線には城の壁が使われて壊されることがない。

 

魔物たちが進むには貯水池を避けて大きく迂回するか、貯水池の上を一本だけ通った木の橋の上を突っ切るしかない。当初、浅瀬を突っ切ってきた魔物たちの第一陣は何も問題ねぇと言わんばかりに貯水池を突っ切ろうとしたが、その瞬間沈んだ。

 

どうやら、この貯水池、かなり深く掘られているようなのである。側面はすべてが城の壁で出来ており、沈んだが最後、再び浮上することはない。それでも浮上するのは、肉が無くなった骨である。

 

「ピラニアで満たされた貯水池とか、どこのB級映画だよ……」

 

緑の開拓地側で鋼の鞭と盾を構えるヘロヘロは迂回してきた魔物を容赦なく貯水池に弾き落す。泥水の中でバシャバシャと暴れていた魔物の周囲が血の色に染まると同時にビタリと動きが止まる。そのまま沈んでいく魔物を見て、残った魔物たちの悲壮感は半端ない。

 

貯水池の上に掛かる橋の方を見れば、ユグドラシル時代はポンコツ仕様で残念な印象しかもたれていなかったバルバ・トスアタックが武器である『血ヲ啜リ肉ヲ喰ウ』を使って、魔物をバッタバッタ切り伏せる姿が見られる。

 

ルプスレギナの支援魔法を受けて、攻撃力が跳ね上がったバルバの攻撃は硬い装甲を持つ全身鎧の魔物や機械の身体を持つ魔物すら容易に斬り捨てて行く。もはや、中央の橋を通ろうする猛者は魔物の中にいない。ただし、

 

「ぶるああああああああああっ!!」

 

何かの電波を受信したのか、普段ののほほんとした雰囲気のバルバの見る影もなく、変な調子のハイテンションとなっていて台詞もぶっ飛んでいる。「後退するんじゃねぇぇえええっ!」「背後みせるんじゃねぇえええ!」「防御してんじゃねぇええええっ!!」と結構、強気の発言が多い。

 

「これ、確実にバルバ君にとって黒歴史になるよねぇ。というか、僕の存在が霞んじゃうよっ!」

 

ヘロヘロはビシバシと貯水池に落ちるように振るっていた鞭を仕舞って、盾を持って前に躍り出る。このままでは、赤の防衛拠点で活躍したメンバーは『バルバとその他』で片づけられてしまうかもしれないと思ったからだ。

 

自分の子供であるソリュシャンやメイドたちに不甲斐ない姿を見せたくないし、見られたくない。そう思って、ヘロヘロは前線に赴いて、ふと思った。「あれ、そもそも僕はどうして、あそこで戦っていたんだっけ?」と。

 

『ヒュルルル~』という擬音と共に飛来する虹色に輝く玉を見てヘロヘロは思い出した。そういえば、ここってベルリバーが担当している砲弾が飛び交う場所じゃないかと。

 

その日、コールタールの様な色合いをしたスライムは砲弾に晒されて、何度も空を飛ぶことになるのだった。

 

 

 

「たーまやー……って、阿呆!!ナーベラル、ベルリバーさんを一瞬だけ止めてこい!その間に俺がヘロヘロを回収する!」

 

「はっ!ご武運を、弐式炎雷さまっ!」

 

船着き場側の貯水池の横で見事な小太刀裁きと体術を用いて魔物を蹴り落としていた弐式炎雷は、魔物たちに混ざって空を飛ぶギルドメンバーの姿を見て声を張り上げた。すぐに娘であるナーベラルに指示を出し、砲弾が止むまで様子を伺いつつ周囲の魔物を掃討する。

 

その中で視界に写り込んだのは、沖合に留めてあった魔物の船が海中から伸びてきた大きな手に掴まれて、瞬く間に海中に引き摺りこまれて消えて行く姿。乗ってきた船の突然の消失を目の当たりにした魔物たちが唖然としているのが見える。

 

退路を断たれた魔物たちは一層、必死な様子で侵攻しようとしてくるが、橋を渡った先にいるバルバ、内陸部に向かうための洞窟の前には武人建御雷とコキュートス、そしてやまいこという鉄壁の布陣。崖上からは連続して雨のように砲弾を降らせるベルリバーと隙が無い。

 

こういうのを避けるには空を飛ぶのが一番なのだが、それをさせないように等間隔に置かれたバギバキューム。たとえ越えられたとしても、ペロロンチーノの狙撃が待っている。そんなことを弐式炎雷が考えている時、砲撃が止んだ。

 

目の前の魔物を蹴り飛ばし、浅瀬にぐったりとした様子で倒れるヘロヘロの下へと駆け寄る弐式炎雷。肩に小麦袋を担ぎ上げるようにヘロヘロを担いだ弐式炎雷はバルバが布陣する貯水池の橋を目掛けて走る。

 

崖上ではまた砲撃が開始されたようで虹色の玉が戦場に降り注ぐ。弐式炎雷はヘロヘロを担ぎ上げた状態で斬ったはったを繰り広げるバルバの背を通って、武人建御雷たちの下に辿り着いた。待機していたユリ・アルファを筆頭に戦闘メイドたちがボロボロになったヘロヘロに薬草をもみ込む。

 

貯水池の両サイドを守っていたヘロヘロと弐式炎雷が抜けたことで、そこを通って魔物たちが殺到してくるが、意識を集中させていた武人建御雷とコキュートスの2振りの刀と、やまいこの鉄拳が振りかざされ魔物を討伐していく。

 

乱戦になるかと思われた時、崖上から手投げ爆弾が大量に振ってくる。そこにいたのは、ぷにっと萌えが指揮するぬーぼーや音改といった非戦闘メンバーと一般メイドたち。弐式炎雷は戻ってきたナーベラルと、意識を取り戻したヘロヘロと共に爆弾のダメージでボロボロになった魔物に止めを刺すべく戦場を駆けるのだった。

 

 

【青の防衛拠点の場合】

 

ギラタイルを着火し、高温に熱された状態の鉄ブロックの鉄板の上に掛けられていた砂は尽くがガラス化し、上陸した魔物たちに襲い掛かる。ザクザクと突き刺さるガラスと蒸気が上がるほど熱された鉄板に足を乗せた魔物たちは一心不乱になりながら内陸部を目指し、とげワナで傷つき、ヒャドトラップで凍った所を両サイドに並べられた大弓の攻撃で粉々に砕かれる。

 

例の如く、空を飛ぶ魔物はバギバキュームで地面に縫い付けられて大弓か大砲の砲弾の餌食となり、無残な死体が積み重なる。数々の罠を通り抜け、やっとの思いで内陸部に差し掛かった魔物たちの前に現れるのは、足元に踏むとギミックを動かすことになるボタンと何かのレリーフが掘られた大きな壁。

 

魔物たちが内陸部に行くにはその大きな壁を通らなければならず、魔物たちは恐る恐るボタンを踏みながら壁を叩こうとしたが、飛び出て来た壁に弾き飛ばされてとげワナのある所まで飛ばされる。

 

 

 

「なぁ、たっち。お前、あの『メルキドの守り壁』って奴を壊せるか?」

 

「いや、城の壁の方がまだ壊せる希望がある。……あの壁は無理だ」

 

青の防衛拠点に派遣された面々は完全な姿で稼働した防衛拠点を前にして、恐れ戦いていた。灼熱の鉄板の上には煌々と紅色を帯びたガラスの液体が気泡をあげている。あれがどんな温度に達しているのかなんて、仲間の死体を踏みながら進む魔物を見れば一目瞭然である。

 

鉄板地獄を抜けても蛇行する形に敷かれたとげワナがあり、体力の低い魔物ならば3列目に差し掛かったところでお陀仏だ。それを越えた先にはヒャドトラップで全身が凍り付いたところで大弓の集中砲火を受ける空間があり、それを越えても大砲の攻撃を間近で受ける間がある。

 

そして、肝心の最終防壁は絶対に壊すことが出来ない『メルキドの守り壁』というものとボタンに反応して近くにあるものを何でも弾き飛ばすピストンと呼ばれる物によって守られる。ピストンの威力は大砲の間を通り過ぎて、ヒャドトラップで凍り付いて大弓の集中砲火を受ける部屋まで戻されてしまうほど。

 

例の如くバギバキュームが地面に埋め込まれているために空を飛んで逃げることすら出来ない悪魔の防衛拠点となっている。

 

「ビルドってさ、本当にただの人間なのか?」

 

黒い山羊頭の悪魔であるウルベルト・アレイン・オードルがぽつりと呟く。それに対する答えは無言だった。

 

こんな光景を見ていると自分たちが戦ってやる方が情けになるのではないかと思うほどだ。そう思って、防衛拠点の稼働スイッチを押した死獣天朱雀を見たウルベルトだったが、彼がすいっと海面を見るように促してきたので大人しくそちらを見ると、ムーンブルク島で強力な魔法を使い、砦を罠ごと破壊した牛顔の魔物と他の魔物とは体格が比べ物にならないほど大きな体を持つ一つ目の魔物がやってきていた。

 

一つ目の魔物は足元であくせくしていた魔物を無造作に握ると内陸部に向かって放り投げてくる。

 

たっちは剣を、セバスは拳を握りしめ、デミウルゴスは漆黒の手袋を嵌めなおす。ぶくぶく茶釜は両手にとげのある盾を構え、アウラとマーレはそれぞれの手に鞭と杖を持って魔物たちと対峙する。ウルベルトはニヤリと笑い、杖を振りかざすととげワナを破壊し終えた牛顔の魔物に向かって極大の火球を降らせる魔法を使う。

 

「ほらよっ!くらいな、メラゾーマっ!」

 

ウルベルトの放った火球と牛顔の魔物が放った魔法が衝突し、大爆発を起こした。

 

 

【船着き場にて】

 

からっぽ島にまともに上陸できる唯一の場所である船着き場にて、俺は船団を率いる立場にあるウゾーンと対峙している。

 

ウゾーンと共に上陸しようとしていた魔物たちは、まとめてニグレドとオーレオール・オメガの魔法で赤の防衛拠点か、青の防衛拠点のある場所に送られてしまい、彼はただ1人で俺とシャルティアの前に立っている。

 

「久しいな、ウゾーン。前回はしてやられたが、ビルダーであるビルドに時間を与えたのがお前たちの敗因だ。もう諦めろ」

 

「ふっふっふ。甘いですよ、モモンガ殿。こちらにはまだまだ兵力があるんですよ?からっぽ島を囲うように私が率いてきた船の数は30隻。乗組員は総勢1500人を下らない。多勢に無勢とはこのことでしょう?」

 

「現状を理解していないようだな。お前に現実を教えてやる。オーレオール・オメガ、俺たちとウゾーンを神殿に送れ」

 

「はっ、モモンガ様」

 

崖上で魔物を魔法で送り飛ばしているオーレオール・オメガに命じて、俺たちはしろじいの神殿へと向かう。そして、降り立った先で俺はウゾーンに尋ねた。

 

「さて、お前が率いてきたという船団はどこにいるんだ?」

 

「おやおや、目が悪いのではないですかな、モモンガ殿。どこにって、あちらこちらに……え、あれ……」

 

ウゾーンは神殿がある岩山の淵近くまで移動して島の周囲を取り囲んでいるはずの船を探すが、船着き場にある自分が乗ってきた船以外が見当たらないことに気付いた。赤の開拓地方面を見て、青の開拓地方面を見て、島の北側を確認して、ようやく俺たちを睨みつける。

 

「貴様ら!一体、どんな方法を使ったのだっ!海での爆弾には驚いたが、沈没するようなものではなかったはずだ!!」

 

俺は船着き場の沖合にある船の側に白い泡が沸き立つのを確認してから、そちらの方に杖を差し向けつつ告げた。

 

「ウゾーンよ、お前が連れてきた船団を沈めた奴が出てくるぞ」

 

「な、なんだとっ!?」

 

ウゾーンが船着き場の方へと走り出した瞬間に海の方で動きがあった。

 

魔物の船近くの海面から上半身を浮かび上がらせたガルガンチュア。

 

ムーンブルク島で着ていた城の壁の鎧も、右腕の燃え盛る焔も、左腕の絶対零度の拳も、海を45ノットという速さで移動できるバックパックも、全て取り外し元の姿に戻ったガルガンチュアが腰の高さほどにある船を見下ろしている。

 

それに気付いた魔物たちが一斉に大砲を発射するが、表面で爆発するだけでダメージはほとんど通っていない。その時、ガルガンチュアが動いた。船首と船尾をそれぞれ両手で掴んだガルガンチュアがそのまま船を持ち上げていく。そして胸の高さまで持ち上げると、胸部装甲がぱかりと開き、煌々と桃色の光を放つ砲台が現れた。

 

「おいおい……一番撤去しないといけない奴は残したままなのか」

 

俺の呟きはガタガタと身体を震わせるウゾーンには聞こえなかったようで、彼は悲壮感たっぷりの声色で「やめてくれ」「もう二度と攻めないから」といったことを喚いているが、ここから大声で叫んだとしてもガルガンチュアを操縦するビルドに聞こえるはずがないし、ウゾーンが言うことを信じられる訳がない。

 

そして、ムーンブルク島で歴戦の戦士でもあり大総督であったアトラスを屠ったガルガンチュア・ミナディン砲が炸裂した。搭乗員として船に乗っていた魔物たちを丸ごと消し去った桃色の砲撃はずっと沖の方で大爆発を起こした。

 

ガルガンチュアは手に残った船首と船尾を「もういらね」と言わんばかりに放り捨てると船着き場に跪いた。

 

「赤と青の防衛拠点での戦いも終わったようだな」

 

「……は?」

 

「お前の負けだと言ったんだ、ウゾーン。お前が率いてきた船団はすべてが海の藻屑となり、率いてきた大量の魔物たちもからっぽ島の内陸部に足を踏み入れることもできないで全滅した。残っているのは、もうお前だけだ」

 

現実を突きつけられて衝撃を受けたウゾーン。彼は持っていた杖をぎゅっと握りしめ、顔を上げると同時に俺に向かって魔法を放とうとした。

 

しかし、俺とウゾーンの間に割り込んだシャルティアの剣で杖を持っていた右腕を肘の辺りで斬り落とされる。

 

「っぐぁあああ!?」

 

「無様でありんすなぁ。けど、お前みたいな無能な指揮官にはふさわしく、そして勿体無い最期でありんすねぇ。刮目するでありんす!この世界に集い、この世界を牛耳ることが出来る至高の御身の方々のお姿を!」

 

シャルティアの言葉を聞いた肘から先を失ったウゾーンが周囲を見渡すと、からっぽ島に集ったアインズ・ウール・ゴウンのギルドメンバーや階層守護者たち、領域守護者たちや戦闘メイドだけでなく、一般メイドたちも揃っていた。錚々たるメンバーを前にして、ウゾーンはへたり込む。しかし、ウゾーンは絶望するどころか笑っていた。

 

「世界を牛耳る?……は、はは……ははははは!この滅ぶことが決まっている“幻の世界”を牛耳って何になるというのですか?……そうか、そうだったのか。お前らは何も知らなかったのか。創造する力を持ったビルダーがいる島だからと狙ったが、こんなことをする必要もなかったのか」

 

ウゾーンは俺たちから離れて岩山の淵の方へ下がっていく。俺はペロロンチーノさんに目配せして彼を取り押さえるように指示を出そうとしたのだが、それよりも早くウゾーンは神殿のある岩山から飛び降りた。

 

「直にこの世界は滅びる。この世界と共に消えろぉおおおおおおお——……」

 

海面に何かが衝突する音が聞こえた。

 

2度に渡ってからっぽ島を襲撃した魔物の軍勢はここに壊滅した。

 

しかし、指揮官であったウゾーンの遺した意味深な言葉が俺を含めた全員の脳裏に残る、後味の悪い終わり方だった。

 

 

 

そんな雰囲気の悪い中にニグレドとオーレオール・オメガとガルガンチュアを連れたビルドがルーラで飛んできた。暗い表情を浮かべる面々を見て、どうかしたのと言わんばかりに首を傾げている。

 

ビルドは、『タタタッ』と軽い足取りで高いところに登ると じゃじゃーん と旗を掲げた。その旗に描かれていた模様はアインズ・ウール・ゴウンのギルドの紋章だった。ビルドはしろじいの教えを受けつつ旗を作成していたらしい。

 

 

きょうから このしまは からっぽじま じゃない

 

なざりっくじま だよ

 

 

そう言ってビルドはしろじいの神殿の高いところに旗を突き刺した。

 

旗が突き刺さると同時に島全体に活力が漲ってくのを肌で感じた俺は、ウゾーンの言葉なんかに囚われていてはいけないなと思い、勝鬨を上げようと視線をビルドの方へと上げた時、彼の真後ろに漆黒の渦を描くゲートが開いていることに気付いた。

 

そのゲートから伸びてくる艶のある黒い籠手がビルドを捕えて引き摺り込もうとしたその瞬間、ペロロンチーノさんが叫ぶ。

 

「ルベド!フォールンダウン!!」

 

後方でプレッシャーが跳ね上がるのを感じ取った瞬間には、戦闘形態へと変貌したルベドがゲートに向かって突進していた。スカート状にしていた浮遊している銃剣が束になり、ドリルのように回転しながらビルドを捕える黒い籠手を身に纏う存在へと突き進んだ。

 

しかし、そのルベドの攻撃は巨大な斧で弾き返され、ルベド自体にも勢いよく放られた斧の投擲を受けて、俺たちの前に落ちてくる。

 

そして、ゲートからビルドを小脇にして現れたのは艶のある漆黒の全身鎧を纏ったナザリック地下大墳墓の諸語者統括にして、ハーゴンと呼ばれる魔物に操られたままのアルベドだった。

 

「ぎゃーっはっはっは!よくやった、アルベド。そのまま、ビルダーを押さえていろ」

 

アルベドに続く形で現れた魔物は高笑いしながら俺たちの前に現れた。デミウルゴスが眼鏡の奥に隠している赤い宝石の目を見開き、犬歯を剥き出しにして睨みつける。

 

「貴様、ハーゴンだなっ!よくも、私たちの前にのうのうと現れることが出来ましたね!」

 

「ぎゃーっはっはっは!お前たちに用はない。まさか破壊神さまの力が、器とは別に存在しているとは思いませんでしたよ!しかし、こうやって手中にした今、ビルダーやお前たちに興味はない!」

 

そう言ってハーゴンはビルドに手を翳す。すると、ビルドの身体から赤黒い靄が噴き出し、その靄はハーゴンの手の中に集まって血の色のような赤い結晶となる。心臓が脈動するように鼓動するそれを握りしめたハーゴンは俺たちに用はないと言わんばかりにゲートを通って去っていく。

 

それに続いて去ろうとするアルベドは抱えていたビルドを投げ捨てると同時に歩き出した。創造主であるタブラさんや姉妹であるニグレドがアルベドに声を掛けるも、彼女は振り返ることもなくゲートを通り消えて行ったのだった。

 

 

 

ハーゴンとアルベドが去って、これからどうすればいいのかを話し合う間もなく、ハーゴンに力を奪われて気を失っていたビルドが目を覚ます。

 

 

 

 

 

しかし彼は、この島で俺と出会ってからの記憶のすべてを失っていた。

 

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