しろじいの神殿がある、からっぽ島の中央にある山頂に建設されたお団子屋さん。
和風の建物がよく似合う巫女服姿のオーレオール・オメガが店主だ。店先に設置された畳が使われた椅子に腰掛けつつ、開拓が進むからっぽ島改めナザリック島の景色を見ながら俺とビルドは思い出話に浸っている。
もんぞーらとうでは るぷすれぎなさんに てを くわえられたんだよね
「ははは、そんなこともあったな。起き上がって追いはぎ発言をした直後、俺とヘロヘロさんを見て固まっていたなぁ。もぐもぐ、ずずー……。俺はその後のモンゾーラ島で食べたキャベツの味は一生、忘れられないな」
ももんがさんは からっぽじまで なまこんぶだけしか たべてなかったもんね
俺はビルドの相槌を聞きながら、その光景を思い浮かべる。
装備がまったくなく、ユグドラシルの魔法やスキルが一切使えず。島に生息する魔物にも勝てず、食べられるのは海岸に流れ着いた生の海藻類だけ。あと1週間、あの生活が続いていたらどこかに穴を掘って埋まっていたかもしれない。
だけれど、ビルドと出会い、ヘロヘロさんと焼かれながら再会を喜び、モンゾーラ島ではルプスレギナやぶくぶく茶釜さん、エントマや一般メイドたちと再会できた。魔物に操られたアウラとマーレと戦うのは辛かったが、ビルドのおかげで取り戻すことも出来て本当に良かった。
「そういえば、ヘロヘロさんに何かを頼まれていなかったか?」
うん なざりっくはいつ ほんかんとぶんかんを もやしたでしょ?
だから あたらしく めいどさんたちと ゆっくりくらせる いえが ほしいって
ぜんいんで はいれる ろてんぶろも あるといいなって
めんどうだったから みどりのかいたくちの おかのうえに
こんよくおんせんつきの りょかんを つくってきた てんしゅは へろへろさん
「ああ、メイドたちは全員従業員か。確かにヘロヘロさんの要望は全部こなせるな。まぁ、いいんじゃないのか?どうせ、その旅館を利用するのはナザリックの者たちだけだし」
いやがらせに みどりのかいたくちに あるいえの おふろを ぜんぶ しようふのうに してきた
おねがいばかりしてくる おろかものは ばしゃうまのように はたらけば いいんだ
「強制的にブラック旅館に早変わり!?」
そのてん せばすさんは おとなだよね
ぎょせんを つくって あげたら
まいにち ちょうかを おすそわけ してくれるようになったんだ
落差が酷い。
ヘロヘロさんのことを話す時はむすっとした表情だったのに、セバスのことを話すビルドは満面の笑みだった。ビルドは基本的に善意でお願いを聞いているが“くれくれ”だけは許せないのだろう。ギブアンドテイクは社会人として人間関係を円滑にする方法であるが、俺たちが過ごしていたリアルはその善意を搾取する世界だったからなぁ。
「ところで家の風呂を使えないようにしたって、言っていたがそんなに言うほど家があったか?」
ぶくぶく茶釜さんのとこ にぐれどおねえさんのいえ ばるばさんたく うるたっちにせたいじゅうたく
ぺろろんさんのいえもつくったけど かいまくおとしあなに ひっかかっているかな ふたりで
げんじろうさんとえんとまさんちは おおきなきりかぶふうだし ぶじんたけみかづちさんは わふうなおいえ
こきゅーとすさんとおよめさんのおうちは こどもべやが いっぱいのさんかいだてで
でみさんのいえは だいぼくじょうぬしらしく ちょうひろいぼくじょうの よこにつくったよ
「待て、待て待て待て。情報量が多い、多すぎる。うるたっち二世帯住宅?開幕落とし穴?何よりも、コキュートスのお嫁さんって何の話だっ!?」
くわしいはなしは はぶくけど かおみしりの しょうにんさんに
ヴぁーみんろーどの じょせいのひとは いないかをたずねたら ヴぁーみんろーどは しらないけれど
あんとのいどの おひめさまがいるって おしえてもらって おみあいを せってぃんぐしたよ
おたがいが ひとめぼれして すぐに どうせいを かいししたんだ
ぶじんたけみかづちさんも じぶんのことのように よろこんでいたよ
ビルドの言う顔見知りの商人とは、ハーゴンがかつてロトの勇者と呼ばれる者たちを閉じ込めるために作り上げた世界をぶっ壊して、新たなに世界を創造した結果、干渉できない空間の狭間で隔たれていた外の世界と接続したのである。外の世界には元々ビルドや船長が住んでいた島もあり、突如現れたナザリック島をはじめとしたモンゾーラ島やオッカムル島、ムーンブルク島に外の世界の島々からの人間が押し寄せた。中にはビルドを知る商人もいたという訳だ。
「あれ、何でそんな重要な情報がギルドマスターである俺に回ってきていないんだ?」
にぐれどおねえさんの いもうとさんから にげまわっているからじゃない?
「……。もぐもぐ。ずずー……」
俺は無言で団子を食べてお茶を啜る。
ビルドもその話題は避けるかと言わんばかりに皿の上に乗っていた団子を食べるとオーレオール・オメガにお代わりを要求した。おれもお代わりをオーレオール・オメガに頼むついでに、緑の開拓地にあるペロロンチーノさんの家に救出隊の派遣を要請した。
多分、家の玄関からすぐの入り口に落とし穴が設置されていて、そこに何日か閉じ込められているはずだ。ヘロヘロさんと同じでお願いばっかりで、ビルドの逆鱗に触れたのだろう。
利用されっぱなしで泣き寝入りをしないところもビルドらしくていいが、被害が結構やばいな。
このあいだ あたらしい ひとが きたじゃない?
あのるしふぁーさんって ひとのいたずらに まけないようにしなきゃ
「いや、そこは張り合わないでくれないか」
そう、世界を創造しなおし、新たな生活をスタートさせた矢先に奴がやってきたのである。
アインズ・ウール・ゴウンで一番の問題児である、るし☆ふぁーさんが。
右も左も分からない状態の彼を見つけたのが、ガルガンチュアの本体に肩車されたビルドだったっていうのも今を思えば拙かった。ビルドからあらかたの説明を受けた、るし☆ふぁーさんは「俺も参加したかったーっ!!よーし、ギルメンたちに悪戯してやる」とビルドとビルド化しつつあるガルガンチュアを巻き込んで、とんでもないことをしやがった。
もしも、るし☆ふぁーが『悪戯』ではなく、『嫌がらせ』をすると言っていたらビルドによるフルスイングはるし☆ふぁーだけに向けられただろうに。うっ……思い出したら、腰の骨が……。
ビルドはそんな俺の思いを全く理解していないように不思議そうに首を傾げるだけだった。
◇
「ずずー……。それにしても色々とあったなぁ。まだビルドと出会って1年も経っていないのに、長年と共にしてきた感じだよ」
そうかな でも ももんがさん
ぼくは ほかにも いろいろと つくりたいものがあるし
やってみたいことも いろいろとあるんだ
「ああ。そうだろうな。そんなビルドの隣には当然、俺がいるんだろう?」
ビルドは俺の言葉を聞いてニシシといたずらっ子のように笑う。ビルドは立ち上がって、水平線の彼方を指さして言う。
このせかいには いろいろなものがある
まだみぬ いせきや しま しょくぶつや どうぶつ
たべたことのないものや ひとが あしを ふみいれたことの ないばしょも
きっと たくさん あるんだ
「ああ、一緒に行こう。世界の果てまで、そこで得た知識全部を詰め込んで、このナザリック島をこの世界で一番の島にするんだ。それまで、俺たちの開拓記は終わらない」
俺もビルドの横に立ち、水平線の彼方を眺める。
まだ見ぬ、世界の果てに思いを馳せながら。
俺たちの冒険はまだまだ終わらない。
◆おまけ
「ところでビルド、何でこんな不便なところにお店を作って、俺を呼び出したんだ?」
ん?
そんなの ももんがさんが にげられないように するために きまっているじゃない
いもうとさんも こうかつだよね
にぐれどおねえさんの ぱふぱふを ひとじちに とって ぼくを おどすんだもん
まぁ はまべの りぞーとほてる かわいいちゃぺるつきを たてるっていう
けいけんも できたし いいかなって おもうことにしたんだ
「……え?」
俺はゆっくりと周囲を見渡す。
見ればニヤニヤしたギルドメンバーが俺たちを取り囲み、ねずみ一匹たりとも逃げる隙間さえ存在していなかった。俺はビルドに『謀ったなっ!!』と文句を言おうとしたが、その時にはすでにビルドは風のマントを使って山頂から離脱していた。
黒い礼服を身に纏ったギルドメンバーたちの姿に何が行われるかなんてことは一目瞭然で、俺はそのままビルドが建てたという可愛いチャペル付きのリゾートホテルに連行されることになる。
そして、純白のドレスを身に纏った美しくて可愛い肉食獣の前に放り出されるのだった。
◇
さくばんは おたのしみでしたね
あまいちごをふんだんにつかったわいんと らーのかがみの しようかんは どうでしたか?
わいんは こきゅーとすさんたちで じっけんしたから こうかはばつぐんだとおもうけど
おお! けもののように おそいかかってくれたと
あ のろけはけっこうです
それにしても およつぎが たのしみですね
え? らーのかかがみを ていきてきに かしてほしい?
うーん それは こんごの いもうとさんの たいどしだいかな
最後まで誤字脱字修正ありがとうございました。
これにてからっぽ島開拓記~ナザリック風味~は完結でございます。
日常編はちょいちょいアップするかもしれないので、その時はまた読みに来てくださいね。
では。
今後は、途中で投げ出したままになっている小説を再開させようと思います。