からっぽ島開拓記~ナザリック風味~   作:甲斐太郎

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モンゾーラ島編 その⓺

村の北側に魔物の軍勢を率いて現れたアウラとマーレ。彼女たちは完成間近の世界樹を見て忌々しそうにしている。そんな中、前回アウラとマーレが乗り、世界樹の若木を粉砕した大猿の魔物が雄叫びを上げてドラミングをする。アウラが五月蠅いと一喝するも無視している。

 

チャコに支えられ。農家の平屋から出てきたマギールの話によればあれが前の総統のヒババンゴであるとのことだ。

 

「モモンガさん、気付いてますか?アウラとマーレの肌や衣服の色がうっすらと見えていることに」

 

「勿論ですよ、ヘロヘロさん。魔物たちが纏う黒い瘴気はアウラとマーレから分け与えられたものだったと考えるのが妥当ですね。つまり、黒い瘴気を纏った魔物を倒し尽くせば」

 

「アウラさまとマーレさまが元に戻るっすか!?」

 

俺とヘロヘロさんの考察を聞いていたルプスレギナが大声で言うと後方に控えていたメイドたちが歓声を上げる。気分が沈み込んでいたぶくぶく茶釜さんも茨の大盾と魔導士の杖をギュッと握りしめてアウラとマーレを見つめる。やる気を見せ始めた面々を見つつ、俺は小声でヘロヘロさんに耳打ちする。

 

「とはいえ、アウラとマーレの肉体はユグドラシルのもので、俺たちのようにこの世界に順応していません。そこら辺はビルドが何とかしてくれるみたいだから、その時のフォローを頼みます」

 

「あー……。もしかしなくてもフルスイング?」

 

「恐らく」

 

枯れた世界樹で見つけた双子の世界樹の葉。あれが鍵を握るはず、と俺は見ている。ビルド自身が何も言わないので何とも言いようがないが、これまで俺たちや村人の願いを尽く叶えてきてくれた彼ならば、きっと何とかしてくれると思わせるものがビルドにはある。

 

例え、それがアウラとマーレにとんでもないトラウマを刻むようなものであれ、今は命を救う方が何よりも優先される。そのためにも……

 

「ここが正念場だ。お前たち、抜かるなよ!」

 

「「「「おー!!」」」」

 

ヘロヘロさん、ぶくぶく茶釜さん、ルプスレギナ、エントマ、メイドたち、チャコ、ポンペ、リズ、みみずん、村人たち。そして、ビルドが武器を掲げて魔物の軍勢を見据える。俺も茨の杖を構えて、大きく息を吸い込み。号令を掛けた。

 

「今こそ、決戦の時!者共、行くぞーっ!」

 

俺が先陣を切ってメラを発動し、戦闘が開始される。

 

アウラとマーレが率いてきた魔物たちは波状攻撃を仕掛けてくる。まず向かってきたのは湿地帯にいる毒攻撃をしてくる大ナメクジと雲状で麻痺効果のある雷を降らせる魔物の群れだ。雲の魔物は宙を浮遊し普通であれば攻撃は難しいが、ヘロヘロさんとエントマが装備している茨の鞭で効率よく攻撃が通り、雷の攻撃をさせる隙も与えない。エントマが外で戦うデメリットとして蟻の大群が現れるが、それは村人たちが気を付けて駆除するので小麦の種が貯まる貯まる。

 

大ナメクジと雲の魔物を倒し終えると、今度は素早い動きで麻痺の矢を放ってくるアローインプと体力のあるマンドリルとオークの群れが現れる。タンクのオークとアタッカーのマンドリル、後方支援のアローインプというバランスの取れた構成。こちらはエントマを下げ、俺とビルドが前衛に上がる。

 

俺は本来、魔法職で体力が心もとないがビルドが作ってくれた防具で防御力を底上げしている分、大盾を装備しているぶくぶく茶釜さんと肩を並べて戦うことが出来る。武器を杖に持ち替えたヘロヘロさんが防御魔法スカラを俺たちに掛けてくれるのでさらに万全である。加えて、回復魔法ホイミを使えるルプスレギナが後方に控えサポートに徹するため、俺たちは後ろを気にせずに戦うことが出来る。

 

ほいっ ほいっ ほいっ!

 

その中でも獅子奮迅の活躍を見せるのはビルドだ。軽快な大木槌捌きで敵を問答無用で吹っ飛ばす。戦場を縦横無尽に駆けまわりながら相手の陣形をガタガタに崩していく。体力の多いタンクが一番後方に追いやられ、体力面に難のあるメンバーが前衛に引き摺り出されでもしたら、そのパーティーはどうしようもなくなる。厄介な攻撃をしてくる敵を倒してしまえば、あとは体力があるだけの敵だ。苦戦するはずもない。

 

次は『戦争は数だよ兄貴』と言わんばかりの黒い瘴気を纏った蟻の大群だった。動きと色合いでナザリックの恐怖候が思い出される。彼は今、何処で何をしているのだろうかと思ったが、そこでエントマが戦場に登場。彼女の誘因性を活用して、敵の攻撃を彼女に集中させることで戦闘に不慣れな農民たちも攻撃に参加できる。エントマによる黒い瘴気を纏った蟻とは別に普通の蟻も混ざっていたが、特に問題なく駆除完了。小麦の種も得られてウハウハである。

 

「あーもう!役立たずばっかり、行くよ!マーレ!」

 

「…………」

 

高みの見物をしていたアウラとマーレががいこつ剣士を引き攣れて俺たちの前に現れる。アウラとマーレが纏っていた黒い瘴気はほとんどが消失し、本来の彼女たちの肌や服の色が鮮明になっている。残っている黒色の瘴気は僅か、だが目が血のように真っ赤なのが変わらない。でも、マーレは何かに抗うように動きが緩慢で表情も無に近い。

 

「お前たちの様な下等生物が私たちに勝てるはずがないでしょ!」

 

そう強気の発言をしたアウラが振るう鞭で彼女の側にいたがいこつ剣士が1体バラバラに破壊された。アウラは攻撃を繰り出した自分の右手を見て、困惑するように首を傾げている。

 

マーレはそれを見ても何もしない。杖をギュッと握りしめて、俯いて何かに耐えているように見える。何が起こったのかを分析しようとする俺にビルドが自信満々に告げる。

 

ももんがさん かのじょたちいがいの てきを たおすよ

 

「……そういうことか、ビルド。よし、村人たちは下がれ!ヘロヘロさん、ぶくぶく茶釜さん、ルプスレギナ、エントマは、アウラとマーレの攻撃に注意しながら、がいこつ剣士だけを倒せ!アウラとマーレは攻撃するな!」

 

「何か策があるんだね、よーし!行くよ、ルプスレギナ」

 

「お任せっす!よいっしょー」

 

スカラで防御力を上げたヘロヘロさんとルプスレギナがそれぞれ魔導士の杖と茨の杖でがいこつ剣士を殴打する。スカラとホイミが勝手に発動されるので、体力が減らないコンビだ。

 

ぶくぶく茶釜さんはエントマを連れてがいこつ剣士と当たる。茨の大盾を構えて、突っ込んできたがいこつ剣士に茨でのダメージを与えつつ、パリィで弾き飛ばす彼女らしい戦い方。エントマの魔法は相手に幻を見せるマヌーサ。敵同士の相打ちを狙い、体力が減ったところで、杖で殴打しダメージを与えるテクニカルな戦い方を見せてくれる。

 

そして、俺とビルドはヘロヘロさんやぶくぶく茶釜さんたちに攻撃がアウラの鞭による攻撃やマーレのユグドラシルの魔法攻撃が向かわないように彼女たちと正面から対峙する。

 

アウラは自分の言うことを聞かない右腕を左手で抑えつけながら鞭を振るう。マーレは恐怖によって歪んだ涙目の表情でしたくもない魔法攻撃をしてくる。そんな中でもマイペースに、そして理不尽に、彼女たちの攻撃をいなすビルド。

 

アウラによる音速並みの鞭による攻撃をタタタッと長縄跳びで遊んでいるように跳びながら避けるビルド。涙混じりのガラガラ声で放たれるマーレの魔法、第7位階魔法『チェイン・ドラゴン・ライトニング』。杖の先からのたうつ龍のごとき白い雷撃が生じ、アウラによる鞭の攻撃を軽快なステップで遊ぶように躱しているビルドに殺到する。しかし、ビルドはアウラの鞭による攻撃を避けつつ、自分に向かってきたマーレの魔法である雷撃を背負っていた大木槌を振りかぶり、『カキーンっ』と弾き飛ばした。

 

 

ビルドの戦い方を呆然としながら見ていた俺の方に。

 

「のぎゃーーっ!?」

 

雷撃が身体に巻き付くように動いて俺全体を覆いつくし焼いた。戦場で気を抜いた罰か、と遠くなりかけた意識だったが背中を支えられて踏みとどまる。後ろを振り返れば、下がるように命じたチャコやポンペといった村人たちが俺を支えてくれていた。メイドたちが駆け寄ってきて自作した薬草を使って俺を回復してくれる。

 

「負けないでください、モモンガさん!後ろには私たちがついています!」

 

世界樹の若木を破壊されて落ち込み、俯いて、諦めていた者たちと同一人物と思えない程、彼らの眼はしっかりと前を、未来を見据えていた。俺は茨の杖をしっかりと握りしめ、足に力を込めて踏ん張り立ち上がる。そして、大きく手を広げ、息を吸い込み、言い放つ。

 

「俺は、いや俺たちは絶対に負けん。本気でぶつかってこい、AOG教団!」

 

それから、3度くらいビルドが大木槌で弾き飛ばした雷撃が俺の方に来て、その度に焼かれた。正直、先ほどの発言を取り消したいと思ったのは俺だけの秘密だ。

 

ヘロヘロさんやぶくぶく茶釜さんたちの活躍で、アウラとマーレ以外のがいこつ剣士が消滅した。それと同時にアウラとマーレの動きが止まり、その場で蹲って頭を抱える。彼女たちの創造主であるぶくぶく茶釜さんが駆け寄って肩に触手の手を置いた時、2人は顔を上げた。

 

緑と青のオッドアイがぶくぶく茶釜さんの姿を映し、ボロボロと大粒の涙が流れた。それはまるで長い間、迷子だった子どもが大好きなお母さんを見つけたような、そんな光景だった。

 

「「ぶくぶく茶釜さまぁああああ」」

 

ひしっとぶくぶく茶釜さんに抱き着くアウラとマーレ。そんな2人を、触手をめいいっぱい伸ばして締め付ける勢いで抱きしめるぶくぶく茶釜さま。感動の再会に涙するメイドたちと村人だったが、

 

ここは せんじょう です!

 

「「「あふんっ!?」」」

 

と、空気を読まないことに定評のあるビルドの大木槌によるフルスイングで、戦場外に弾き飛ばされる親子3人。

 

それを見て俺たちはあんぐりと口を開けて、叫ぶ。

 

「「「「なにぃいいいいい!?」」」」

 

あまりに非道すぎるだろっ!

 

と俺たちが批難の声を上げようとした時、ビルドは大木槌を持ってその場でグルグルと回転していた。まるで竜巻のようにどんどんと加速している。戦場にいた誰もが頭の上に疑問符を浮かべる中、俺は気づく。俺と村人たちがいる場所のビルドを挟んだ反対側に『すべてを壊さん』と言わんばかりに回転数を上げて転がってくる黒い瘴気をこれでもかと身に纏った大玉の姿を。

 

前回、しっかりと地面に足を踏ん張りながら大盾を構えた俺を後ろにいたぶくぶく茶釜さんごと吹っ飛ばした大猿の攻撃。それが村人たちを射線上に並べた状態の俺たちに向かってきている。

 

避難させる時間がない。

 

そのことを俺が察した瞬間、大猿と小型の竜巻となったビルドが激突した。

 

結果は双方痛み分け。大猿はその場にうつ伏せに倒れ、ビルドはその勢いで吹き飛ばされ、村の南西に建てられたナザリックハイツの三階部分に激突し、それを破壊しながら地面に落ちていく。

 

村人たちから悲鳴が上がる。

 

メイドたちが目の色を変えてビルドの下へと走る。

 

俺は、その光景をただ見ていた。遠くで『どすっ』とビルドが落ちた音が聞こえた。その瞬間、俺の頭の中で理性を保っていた糸がぶつりと切られた気がした。

 

 

「この……クソ猿がぁあああああっ!」

 

 

ミシミシと茨の杖が悲鳴を上げる中、不意に俺の頭に新たな魔法が閃いた。それはビルドがからっぽ島ではじめて樫の杖を作って、手渡してくれた時と同様の感覚だった。知らない魔法のはずなのに、どんな魔法であるのか、どんな威力で、範囲はどれだけで、3発撃てば憎き大猿を葬れるダメージになると俺は即座に理解する。しかし、今の武器が耐えられるのは1発ずつ。それでも俺はその魔法を口にする。

 

「くらえ、クソ猿!メラガイアー!!」

 

俺が魔法名を口にすると同時に持っていた茨の杖が弾け飛ぶ。その代わりに俺の真上に太陽と見間違わんばかりに大きな火球が出現し、大猿へと落とされる。天に届くほどの火柱が立ち昇り大猿を焼く。その火柱が消えると、煤塗れとなった大猿が現れ雄叫びを上げながらドラミングを行う。すると体を構成していた黒い泥のようなものが剥がれ落ちる。そのおかげで黒い瘴気を纏っていて見えていなかった部分が見えるようになった。

 

その肉体はすでに筋肉が削がれ落ちた骨だった。そういえば、かつてこのモンゾーラ島を支配していたヒババンゴという大猿はアウラとマーレに殺されていたんだった。恐らく、黒い瘴気を纏っただけの、人間が作ったものを破壊すると言うヒババンゴの執念だけがあの大猿を動かしているのだろう。

 

「ヘロヘロ、お前の杖を寄こせ!」

 

「お、オッケー!今すぐに!」

 

ヘロヘロさんが俺に近づいてくる。大猿は、それはさせんと言わんばかりにヘロヘロさんとルプスレギナに狙いを定めて攻撃を仕掛けるが、彼らの背後から白い雷撃が大猿に襲い掛かる。見れば光の粒子を放ちながらも気丈に杖を構えるマーレの姿があった。同じく光の粒子を放ちながら鞭を振るって大猿の視界を遮るアウラも。彼女たちの援護もあってヘロヘロさんは俺の下まで駆け寄り、魔導士の杖を俺に差し出す。

 

「エントマ」

 

「お傍にいますー」

 

「2発目を打ち込んだら、すぐに3発目を放つ。用意して待て」

 

「御意ですー。モモンガさま」

 

俺はヘロヘロさんの杖を受け取りながら、暴れる大猿に狙いを定めて2発目のメラガイアーを放つ準備をする。しかし、俺の動きに気付いたのか、大猿が俺たちから距離を取って、またその場で転がって回転数をドンドンと上げていく。狙いは魔法を発動させようとしている俺だ。

 

「私たちにありったけの魔法を掛けて、ヘロっち!アインズ・ウール・ゴウンの壁役の本領を見せてやんよ!!」

 

アウラとマーレと和解し、やる気に満ち溢れたぶくぶく茶釜さんが俺の前で茨の大盾を構える。その彼女の背をアウラとマーレ、ルプスレギナやエントマだけでなく、後方に下がらせていた村人たちが全員で支える。

 

怖くないはずがないだろうに、村人たちはしっかりと地面に足を付け自分の前にいる俺の仲間たちを支えてくれている。少し前まで、住む場所、寝る場所も、別にして少し嫌煙する兆しもあったのにも関わらずだ。ヘロヘロさんはそんな村人たち全員に防御魔法のスカラを掛け続ける。

 

『ハカイスルハカイスルハカイスルハカイハカイハカイハカイ!!グゥオオオオオオオオオ!!』

 

大猿の回転攻撃が迫る。誰もが歯を食いしばり、その時を待つ。大猿の攻撃と、この村で一緒に農業をし、世界樹を作り上げ、戦闘の最中に心を通わせた皆の想いが詰まったぶくぶく茶釜さんの大盾がぶつかった。

 

「「「「うぅおおおおおおおおおー!!」」」」

 

大猿の勢いに押されて、じりじりと後方へと追いやられる。だが、光の粒子を放出させてでもぶくぶく茶釜さんを支えるアウラとマーレ、大粒の汗を流しながら、ガチガチとなる歯を必死に押し留めながら、鼻息を荒々しく噴きながら、村人たちも必死に大猿の攻撃に目の前の背中を支えることで抗う。

 

「どぉりゃぁあああああっ!」

 

先頭で大盾を構えていたぶくぶく茶釜さんが一際力を込めて、大猿を弾き飛ばした。その勢いで彼女を支えていた者たちがドミノ倒しのようにその場に倒れる。だが、攻撃を弾き飛ばされた大猿は、地面に落下しうつ伏せに倒れ、俺たちに致命的な隙を晒した。

 

「地獄の業火に焼かれろ!メラガイアー!!」

 

2発目の火柱が大猿を焼く。体を構成していた黒い泥の様な表皮がすべて剥がれ落ち、大猿の本体である骨の身体が現れる。心臓の部分と思われる場所が、黒い瘴気を纏って脈動する姿にどこか寂しさを感じさせる。

 

あんな姿になってまで破壊することに憑りつかれるのかと。だが、俺は手を一切緩めるつもりはなかった。衝撃で仰向けに倒れたていたエントマは、俺の命を果たすためにすぐに起き上がって、俺の下へ駆け寄り杖を差し出していた。それを受け取った俺は、3回目の魔法を発動させる。

 

大猿の執念に止めを刺すために。頭上に形成される巨大な火球。それを見て、大盾を構えなおす仲間たち。しかし、その中でぶくぶく茶釜さんは大粒の涙を流して粘体の身体を震わせている。見ればアウラとマーレの体を構成していた光のほとんどが消失し、向こう側がうっすらと見通せるほど透き通った姿となってしまっているが、2人はしっかりとぶくぶく茶釜さんの背中を支えている。彼女たちは何も言わずに、大盾を構える。

 

最後の衝突に備えて。全身の骨をかち鳴らしながら回転数を上げる大猿。大盾を支える全員の眼に灯る焔。一致団結した仲間たちの前に、大猿の最後の攻撃は何の意味も果たすことなく、俺の3度目のメラガイアーでヒババンゴの破壊への執念ごと、大猿は消え去ったのだった。

 

 

 

 

誰もが疲弊して何も声を発せぬ戦場だった場所で、ぶくぶく茶釜さんの泣き声だけが響く。

 

もうぼんやりとしか見えなくなったアウラとマーレの姿。けれど、彼女たちの表情は穏やかでぶくぶく茶釜さんに2人並んで微笑んでいる。

 

2人が言った「「おかえりなさい、ぶくぶく茶釜さま」」という言葉に彼女の眼の涙の堤防は決壊した。

 

ぶくぶく茶釜さんは2人の手を握る、するとアウラとマーレがたどたどしく呟く、「一緒にごはんが食べたい」とか、「いろんなところに行ってみたい」とか、「お風呂で背中を流しっこしたい」といった些細な願いをうんうんと頷いて答えるぶくぶく茶釜さん。

 

しかし、別れの時が近づいたのか、2人の手に力が無くなるのを悟ってぶくぶく茶釜さんが大きな声で叫ぶ。

 

「ダメ!いなくならならいで、アウラ!マーレ!」

 

 

はい そうおもうのなら さっさと どいてくださーい

 

 

感動的な場面を打ち壊す、ビルドの大木槌によるフルスイング。「あ、この光景見たことある」とデジャブを感じ取ったのは俺だけではないはず。

 

「あふんっ!?」

 

横方向からのビルドのフルスイングでホームランされたぶくぶく茶釜さん。落下地点でべちょっと潰れる。そんなことは関係ねぇと言わんばかりにビルドは枯れた世界樹で手に入れてきた双子の世界樹の葉をアウラとマーレのおでこにそれぞれ乗せる。

 

身動きひとつ取れないアウラとマーレは自分の目の前に佇む大木槌にひぃっと恐怖している。次の瞬間、ビルドは世界樹の葉もろともアウラの頭を大木槌で叩き潰した。姉の悲惨な状況を見て悲鳴を上げたマーレも同様に叩き潰す。

 

その結果、この世界の死を覆らせる世界樹の葉の力と消えかけていたアウラとマーレの肉体が再構成された。

 

きょとんとした様子で座るアウラとマーレの姿に感極まって抱き着き押し倒したぶくぶく茶釜さん。その姿に今まで黙っていた俺たちや村人たちは勝利の勝鬨と共に喝采を上げるのだった。

 

ビルドはうんうんと頷きながら呟く。

 

ものがたりは やっぱり はっぴーえんど じゃなきゃね!と。

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