とあるきっかけで彼は王国での合同訓練に参加することとなったのだが、そこで王子に関する奇妙な噂話を耳にする。
【ブルーマン】
何やら王子の称号のようだが、詳細は何もかも謎に包まれたまま。
なぜか気になって仕方なかった彼は軽い気持ちで噂を調べようとするのだが・・・
千年戦争アイギスの二次創作になります!
つたない文章ではありますがいろんな方に読んでいただけたらなと思います。
「でやあああああ!!」
気合を込めた掛け声とともに一合また一合、カキン!カキン!と金属同士が激しくぶつかり合う音が今日も訓練場に響き渡っている。訓練用の刃をつぶした剣で訓練相手と打ち合わせるそのたびに自分がまだまだ未熟だという事を痛感させられる・・・。
王国に来た翌日から合同での訓練に参加しているが、その訓練の中で私は毎日王国の兵士たちと手合わせをしている。今日は同じソルジャー系統であるユリアンと剣を交えていた。
「そんな甘い踏み込みと剣の降り降ろしじゃちょっと強いオークに返り討ちにされちまうぜ。そらっ!」
すばやく力を込めた上段からの降り降ろしを左手の盾で受け止めたユリアンは、そまま力を受け流しながら私の横腹へ蹴りを放ってくる。バックステップでかわすもユリアンは攻撃の手を止めず剣を突き出してくる。それを手に持った長剣で上にはじき、その勢いを活かし振り下ろす。しかし、ユリアンはまたもや盾で受け流してくる。お互いに有効打を与えれないまま打ち合いは1時間近く続いていた……
「ハァ…ハァ…プラチナ級やっぱつえ―」
「そっちこそ、ハァ…ハァ…ゴールド級には…思えないんだけど…」
一時間ほどの打ち合いの末、何とかユリアンに有効打を打ち込んだことで訓練は終了となった。一時間ぶっ続けで打ち合いを行ったことにより体力は底をつき、現在二人はその場にあおむけに倒れこんでいた。
今日で王国へきて二週間になるが、ここでの訓練にも大分慣れてきた。帝国兵である私は、本来なら今頃帝国で訓練を行っているはずだが、なんで王国に来て対人訓練を行っているかというと、きっかけは約一か月前にさかのぼる……
◇◇◇
「王国への派遣交流ですか?」
日々の日課であった剣の鍛錬をしていると、"元"帝国兵長のリーゼロッテさんから声をかけられた。
「そうだ。最近では、王国と帝国でも共闘する機会が以前に比べて格段に増えた。そうしなければならないほど魔王軍の侵攻も激しくなってきているともいえるのだが。まあそれに伴って、王国と帝国でもう少し親交を深めるべきだろうとの事でな。実力のある若手たちを何人か選抜して王国と帝国でお互いに兵士を派遣しようという事になったのだ。それに王国にもさまざまなクラスの強者たちがいる。最近プラチナ級になったミルグット君も自分の力をもっと高める良い機会にもなるとも思うのだが、どうだ?一度王国へ来てみないか?」
なんでリーゼロッテさんがここにとも思ったが、今回の交流に派遣する兵士を選抜するにあたって王国にも帝国にも信頼のある人にという事らしく、帝国にも顔の効くリーゼロッテさんが今回の派遣交流の件で一時的に王国よりやってきたのだと。
正直またとない機会だと思った。さらにもう一段強さの壁を超えるために何かきっかけがほしいともがいていたや先の話だった。
それに王国の兵となるべく帝国からその身を王国に移してからますますその名を轟かせているプラチナ級のリーゼロッテさん。帝国にいたころは自分と同じソルジャー系統の上位クラス、ソルジャーエリートだったが、今ではそのまた先のウォリアーへクラスチェンジしていた。まあ同じソルジャー系統のクラスでも元々の実力が自分とはかけ離れた人だったが。しかしそんな強者のおすすめだ、断る理由がない。それに王国にいけばあの人にも会える……
「自分などでよろしければ!ぜひ!」
私は喜んでその話を受けることとした。
というかリーゼロッテさん、王国に行ってかなり印象変わったような気がする。
以前はいつも頭に防具をかぶっていて顔を隠していたし、あんまり喋らない寡黙なイメージだった。
それが今に至っては何というか、明るくなったというか・・・端的に言うと全体的に露出が増えている気がする。
王国に行って何かいいことでもあったのだろうか?まあ、以前からかなりの美人だと噂のあったリーゼロッテさんだ。そんな人の素顔が見れるようになってひとりの男としてうれしい変化である事は違いない。今だって自分が二つ返事で了承したことに満足したのか、とても素敵な笑顔を見せてくれている。そんなリーゼロッテさんをしばらく眺めてしまっていると、リーゼロッテさんが不思議そうにこちらの顔を覗き込んでくる。
「ん?どうかしたのか?」
「あの一つお伺いしたいのですがよろしいでしょうかリーゼロッテ兵長」
「別に構わないぞ?というか兵長はよしてくれ。いまは帝国の兵ではないのだから」
「ではなんとお呼びいたしましょう?」
「普通にリーゼロッテでいいじゃないか。で、聞きたい事って?」
「わかりました。えっと、リーゼロッテさん王国に行って何か良い事でもありましたか?」
「えっ!?どうした急に!?」
「いえ、以前と比べてかなり雰囲気が変わったというか、装いがかなり変わったような印象を受けましたので」
「か、環境が変わったからな。自分としても心機一転というか、王国は帝国の頃に比べて周りに女性の兵士が多いから。それにこれぐらいしないと王子が……ってうわああ!!なんでもない!なんでもないぞ!」
なんかすんごい慌て始めて自爆した気がする。
リーゼロッテさんは物凄く顔を真っ赤にして顔をうつむけてしまった。かわいすぎる。
彼女の乙女としての部分をここまで引き出している王子に興味はあるが、ここは紳士の対応として自爆して口走ったことには深くは触れない方向でいこう。
「そうですか、王国でもいろいろあるのですね。私も早く王国の戦士たちと手合わせして、少しでも強くなるための己の糧にしたいところです」
顔を上げて一瞬きょとんとしたリーゼロッテさんは、すぐに調子を取り戻したのか普段の喋り方に戻る。
「そ、そうだな。では期待しているぞミルグット君。出発は一週間後の予定になっているからしっかり準備していてくれ」
何はともあれ、こうして私は派遣交流の一人として王国へ向かう事へとなるのだった。
それにしても慌てるリーゼロッテさん可愛かったなぁ……
◇◇◇
「いたた、私もまだまだですね・・・」
「ハハハッ!そりゃこっちのセリフだよ。まあ、ミルグットさんもここで揉まれてればそのうちいやでももっと強くなれるさ」
二人でボロボロになった体に鞭を打って何とか立ち上がる。体についた土を手で払いつつユリアンは笑いながそう言った。
「帝国の兵士としてそれなりに戦えると自負していたのですがね。王国の方々もかなりの実力ですね、ていうか強すぎでしょ?」
「そりゃ王国兵士はまずケイティに鬼の特訓を施されるからな、それで根性はかなり鍛えられる。あと、ここは助っ人で途中から王国の仲間に入ってくる奴らが馬鹿みたいに強い奴ばっかなんだよ。うかうかしてるとすぐに置いてかれるからみんな必死なんだ。俺だって何とかくらいついてこうと思ってやってたらいつの間にかだいぶ力がついたもんさ」
ケイティさんか・・・
自分も訓練を始めた日から三日間、お試しでその鬼の特訓に参加させてもらったが正直死ぬかともった。
まさか、気を失った挙句に水をぶっかけられて叩き起こされるのを自分が体験するとは思わなかった。普段は礼儀正しく優しいケイティさんだが、訓練の時は本気で怖い・・・
ケイティさんの地獄の特訓を思い出しているとユリアンから質問が飛んでくる
「そういえば、この後の戦闘訓練は誰とやるんだ?」
「えっと、キャリーさんとの対騎兵訓練ですね」
そう、この日をずっと待っていた。王国に来た大きな理由でもあるため期待に胸を膨らませていると、次の瞬間ユリアンから発せられた一言で私の期待は打ち砕かれた。
「そっか、あ……多分だけど、キャリーとの訓練は後回しにしたほうがいいかもしれんぞ?」
そう言うユリアンは、苦笑いをしながら私の後ろを眺めていた。
その視線につられて後ろを振り返ってみると
「いやあああああああ、だれか止めてええええええ」
暴走する馬にまたがったキャリーさんに次々と王国兵士が跳ね飛ばされている最中だった。
「うわああ、キャリーがきたぞおおお逃げっ――ぐへっ!」「まずい総員退避!繰り返す総員――――ぷぎゃっ!」
ユリアン曰く訓練場ではよくある風景らしい。キャリーさんが一定時間以上またがるとどんなにおとなしい馬でも途端に暴れまわるとのこと。
「あれ見たら信じられないかもだけど、いざって時にはかなり頼りになる一流の騎兵なんだぜ?」
あまり気にしていないのか、にかっとまぶしい笑顔で笑いながらユリアンは言う。
訓練ではちょくちょくあんな風に暴れまわっているが、彼女の実力は騎兵の中でも一目置かれている。実戦での彼女は訓練での光景が嘘のような活躍らしい……
そんなことぐらい知っているさ……
「とにかく、あれが収まるまでもうしばらくかかると思うから先に休憩でもしてたらいいんじゃないか?」
手の空いていた他の王国兵士の人達はすでにほかの帝国兵士と訓練を行っているため次の訓練相手がいない状態だった。どうしよう…暇になった。ユリアンは休憩でもと言っているが自分だけ先に休むのもなんだか気が引けた。自主訓練でもするかな?
そして対人訓練をしてくれたユリアンにお礼をつげその場をあとにし、自主訓練をするための場所を探しながら王国についていろいろ考えてみる。
ここでの生活にも大分慣れた。そして人間余裕が出てくると周りもよく見えてくるというもので、よくよく考えてみるとこの王国の軍ははっきり言って異常だった。もちろんいい意味でだ。
まず、住んでいる人たちの種族が多種多様すぎる。
獣人、竜人、鬼、オーク、吸血鬼に堕天使。そして大妖怪の娘や古代龍といった具合だ。
はっきり言ってすごすぎる。皇帝をはじめ、人外チックな強さを持っている帝国兵士もかなりいたが、それでもほぼ人種で構成されている。なので初めて王国に来た日はその軍の構成員の方達にかなり圧倒された。もちろんそれだけじゃない。王国軍に所属している人たちは種族関係なくかなりの実力者ぞろいだ。そんな人たちと肩を並べて訓練ができるのだ、それだけでここまで来た甲斐があったというものだ。
そしてやはりと言うべきか、最も注目すべきは多種多様な種族をまとめ上げているこの国の王子だろう。これだけ他種族がいるのだ、普通なら内部でいざこざがおきてもおかしくないとは思う、しかしそんな話は耳にしたことがない。起こってもせいぜい笑い話で流せる程度の些細なトラブルだ。
それもすべて王子のカリスマがなせる業だろうか。どんな人に王子の話を聞いても、優しく頼りがいのある人物像を想像させるものばかりだった。
我らの白の皇帝だってカリスマの度合いで言うなら負けてはいない。しかし、力によるカリスマ性が強い白の皇帝とは王子のカリスマ性は少しベクトルが違うようだ。
そんな優しいと噂の王子だが、戦闘の実力もかなりのようだ。ひとたび戦場に的確な采配で味方をまとめ上げ、時には出れば他の兵士と肩を並べ共に敵を薙ぎ払っていく。その実力はブラック級の兵士にも引けを取らない。
【神殺しの英雄】【獅子女を討伐せし勇者】ほかにも様々な称号をもち、神器や名剣を駆使し王国軍の希望の象徴として戦場を駆け回っている。
このように数多くの称号をもつ王子だが一つ気になる称号を耳にした。
【ブルーマン】
他の称号と違って一部の兵士にしか知られおらず、それもあくまで噂程度の認識のようである。
称号の由来、称号がもたらす力、すべてが謎に包まれた称号【ブルーマン】
なぜか気になって仕方がなかった……
などと考えごとにふけっていると地響きと共に悲鳴が聞こえてきた
「避けてええええええええ」
「え?」
声の聞こえたほうを振り返った瞬間、目前に迫る馬に気がついた時にはすで私は空高く打ち上げられていた。
魔法の訓練で的にされた人形が吹き飛ばされた時のように何の抵抗もなくきれいに地面にたたきつけられた私は、暴走する馬にまたがって走り去っていくキャリーさんをただ眺めながらその意識を手放していった……
◇◇◇
目を開けるとそこには見知らぬ天井が……と思ったがめちゃくちゃ見覚えがあった。
王国に来てからケイティさんの鬼の特訓でケガしたときに何度もお世話になった治療部屋のベットの上だった。
キャリーさんに吹き飛ばされてからどれくらい気を失っていたのだろう……
状況を確認しようと、体を起こしベットから足を下ろそうとしたとき、地面に頭をこすりつけた状態で東の国の謝罪のポーズ「土下座」をしているキャリーさんがそこにいた。
「すみませんでしたぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
いったいいつからこの状態なんだろう……
「えっと……顔を上げてくださいよキャリーさん」
「いえ!そういうわけには!ほかの王国の方は慣れていらっしゃるので受け身をとれていましたが、あなたには不意打ちをかましてしまい、一番ひどいダメージを……せっかく帝国から来てくださったミルグットさんになんてことを。馬で味方をはねるなど騎兵としてあるまじき行為を私は……なんとお詫びをしてよいものか」
あ、王国の人はやっぱり慣れてるんだ。
というかキャリーさんが全然顔を上げようとしない。落ち込み具合がすごいことになっている。正直びっくりはしたが、今後に影響のあるような致命的なダメージではないしここはどうにか持ち直してもらわねば。私はあなたにそんな事をさせるために王国へやってきたわけじゃないんだ……
「えっとですね。今日のキャリーさんとの対人訓練なんですが、実は私のほうから指名させてもらってたんですよ」
「え?どう……して?」
今にも泣きそうな表情で顔を上げたキャリーさんは、疑問の表情を浮かべていた。ちなみに騎兵を相手にした対人訓練にキャリーさんを指名していたのは本当である。
「そうですね、なんて話していいものやら……以前、魔法都市で帝国と王国の共同戦線があったときのことを覚えているでしょうか?そのころちょうど私もクラスが上がったばかりで少しきつい区域の戦場を任されたんですが、案の定へまをやらかしてしまってゴーレムにやられそうになったことがあったんですよ…」
◇◇◇
帝国と王国共同による魔法都市奪還作戦。
本来であれば魔法都市を守護する存在であるはずのゴーレムや巨兵が魔物の手先となってしまったため、魔法都市を奪還するべく二つの国が手を組んだ作戦だった。しかし、伝説の魔法都市は未知の技術にあふれており、次から次へと転送されてくる守護兵器たちに対して両国の兵士たちは苦戦を強いられていた。
シルバー級ソルジャーとなったばかりの私もこの作戦に参加していた。
「くそ!どうなってんだ!さっきから水晶やらゴーレムなんかがガンガン転送されてきやがる!一体いつこの波は終わるんだよ!」
倒しても倒しても送り込まれてくる魔法都市の兵器に悪態をつく兵士。それも仕方ない事だろう。
“いつまで戦えばいい?”
終わりの見えない戦いに兵士たちの顔にも疲労と焦りが見えていた。
私も苦戦を強いられている戦況に焦りを覚えたが、シルバー級に昇格したばかりで少し浮かれていた事もあってか内心どうにかできるだろうという慢心が心の底にあった。
そんな時だった。
「おい、そっちにゴーレム行ったぞ!何とか食い止めろ!」
押し寄せる敵の大軍を何とか少しづつ退けていたが、2体のゴーレムが防衛線を潜り抜け後衛のヒーラーめがけて突っ込んでいった。
「私が行きます!できればメイジも一人お願いします!」
自分の部隊にそう言い残し一人ゴーレムを追いかけていく。ゴーレムの物理防御は非常に高い。基本は足止めを行っている間に魔法職によるダメージで倒すべきだ。しかしメイジはすぐには来れそうにない。何とか足止めだけでも行い、ヒーラーが下がる時間だけでも稼ぐ必要があった。
そして今の自分ならそれぐらいやってのける自信もあった。
しかし、それが慢心であったことはすぐに思い知らされる。
(こいつら他の個体よりも力が強い!)
すぐに2体のゴーレムに追いつき交戦を開始。しかし、他の個体に比べ明らかに力強いゴーレムの拳に表情を歪ませた。
2体のゴーレムと戦闘を開始して10分ほどが経っただろうか。ヒーラーは十分に後退することができたようだ。後はメイジがやってくるのを待つだけだが、こちらに向かおうとしていたメイジは新しく転送されたゴーレムに足止めを食らっていた。
(あと何分持ちこたえればいい…)
通常より重いゴーレムの拳を何とかさばいてはいるが、かなりギリギリだ…
どうすればいい…
そう思っていた時だった。とうとう一体のゴーレムの拳をさばききれずにミルグットの左肩へ直撃。勢いを殺しきれず、そのまま後方へ数メートル吹き飛ばされる。
「ぐはっ…」
何とか立ち上がるも腕がしびれて力が入らない。利き腕ではなかったもののこれでは両手で剣を振るうことができない。おまけに視界まで少し揺らいでいる。飛ばされた際に少し脳も揺らされているようだ。
「こんなところで死にたくないんだがな…」
正常に機能する右腕でなんとか剣を構え、朦朧とする視界のなかでゴーレム2体をにらみつける。
殆ど虚勢に近い。もう一度ゴーレムに殴り掛かられても防ぐ自信はなかった。そんなことはお構いなしにゴーレムはズンズンと地面を揺らしながら接近してくる。
「あー、調子に乗ってたつけがまわってきちゃったかな…」
ハハ…と乾いた笑みを浮かべながら半ば自分の生存をあきらめていた。
その瞬間。
「せやあぁぁぁぁぁ!!!」
気合の雄たけびと共に現れた一騎の騎兵がゴーレムへ槍による強烈な一撃を浴びせた。その一撃を受けたゴーレムはたまらず後方へ転倒する。
「え……?」
突如として起きた目の前の出来事に頭が追い付かず、一瞬思考がフリーズする。
「私が時間を稼ぎます!今のうちに体勢を立て直してください!」
そう言って目の前に現れた騎兵の女性は再度ゴーレムへと突貫を行う。
固いゴーレム相手に致命的なダメージは与えられないが、それでもものすごい槍裁きと巧みな乗馬技術でゴーレムを翻弄し、圧倒していく。そして徐々にではあるが確実にゴーレムへダメージを与えていく。
戦場の真っただ中だというのに、その美しい戦闘技術に私はしばらく見惚れてしまっていた。
彼女のおかげでかなりの時間を稼げたことで、あとから駆け付けたメイジと共にそのゴーレムは倒された。
「あ、あの!」
自分の窮地を救ってくれた彼女に一言でもお礼を!そう思い声をかけようとした。
しかし、私の呼び声が届く前に彼女はすぐさま他の敵に押されている現場へと馬を走らせて行ってしまった。
◇◇◇
「後から王国の兵士にその人の名前を教えてもらったんですが、それが王国のゴールド級騎兵のキャリーさんだったんです。あの光景は目に焼き付いて今でも忘れられません。そして運良く今回の交流の話をもらった時決めたんです。絶対にあの時のお礼を言おうって……」
「あ……」
キャリーさんもその時の状況を思い出したのか、私の話を聞いて驚いていた。
「でもその時はシルバーだったんですよね?今はプラチナで…あれ一年前じゃなったですっけ……」
「あの時のキャリーさんの姿が鮮烈すぎてですね、追いつきたくて必死に頑張ったんですよ。そしたらいつの間かにプラチナ級になっちゃいました…」
自分でも驚きだが一年でプラチナ級はかなりのスピード出世と言ってもいいだろう。
それを聞いたキャリーさんは少しぽけーっとした表情になっている。
話を戻さなければ…
「だからそんなに自分を責めないでください。少なくとも私はあなたに救われたんです。そして、あの時はありがとうございました」
そう言って、キャリーさんに頭を下げた。
「そっか……騎兵として私も誰かの役に立ててたんだね……認めてもらえてたんだね……よかった……」
顔を上げるとそこには先ほどまでの申し訳なさいっぱいの表情とは違い、涙を流しながら微笑むキャリーさんがいた。こちらが励まそうとしていたはずなのにその優しい笑顔を見た瞬間ぎゅっと心を締め付けられた。
「あ、あと!私だけじゃなくって、王国の皆さんもとっくにキャリーさんの実力は認めてると思いますけどね」
こんな時は冷静に対処しなければと思ったが、うまく取り繕うことができずに少し焦った口調になってしまった。
「え、でも私いっつもみんなに迷惑かけて……騎兵のくせにさっきみたいに馬の制御できない事ばっかりで……だからみんなもあきれて何に言わなくなっちゃって……」
やっぱり勘違いしていたか……
「訓練ではそうかもしれないけど、実戦はでいざって時うまく騎乗できてるんじゃないですか?」
「確……かに大事な場面では馬も言うこと聞いてくれてたけど……」
「訓練の時はキャリーさんを乗せたことで一緒に強くならなきゃーって馬が張り切りすぎちゃってるだけだと思いますけどね。あと他の兵士の方はあきらめてるっていうより、キャリーさんの事を理解してるって感じですね。訓練ではへましてるかもだけど、いざ実戦となれば共に戦場を駆ける信頼できる仲間だって。ちなみにこれはさっきユリアンから聞いたばっかりのホカホカな情報ですので信頼していいかと。本番に強いタイプで自分としてもうらやましい限りですよ」
「そう……なのかなー」
大分持ち直してくれたけど、あともう一押し必要なようだ。さて、どうしたものかと思っていると、入り口の方から顔を半分だけのぞかせてちらちらとこちらの様子をうかがっている人と目が合った。
目が合った瞬間ビクッと驚いて顔を引っ込めたが、恐る恐るとこちらの様子を確認すように再度姿を現した。
「あのー、お邪魔しても大丈夫でしたかー?」
そういって現れたのは杖を両手で大事そうに抱えているイーリスさんだった。
「えっと、大丈夫ですよ。いいですよね?キャリーさん」
「あ、私はぜんぜん!というかすいません、みっともない所をお見せしました」
「いえ!とんでもありません!というかキャリーさん、あんまり自分を責めすぎないでくださいね?私だって戦場でキャリーさんにはいっつもお世話になってるんですから!」
ほしかったもう一押しを、フンフン!と少し鼻息を荒くし胸を張りながら言ってくれたイーリスさんに内心感謝していた。
「ありがとうございます。あー……それと、そのー……何時から聞いていたのでしょうか?」
「すいませんでしたーっておっきな声でキャリーさんが謝っていた所らへんでしょうか?」
「「……」」
ほとんど最初からじゃないかー!
キャリーさんを見ると恥ずかしさのあまりだろうか、顔を赤く染めプルプルと体を震わせていた。
わ、話題を変えよう。
「それはそうと、イーリスさんはどうしてここへ?」
「ミルグットさんのケガの具合を確認しに来たんですが……」
「なに、大したダメージじゃないですよ。もうこの通りピンピンの全回復です」
大丈夫な証に二人に向かって肩をぶんぶん回して見せた。
「な、あまり無理をなさらないで……」
私が強がっていると思ったのかキャリーさんはおろおろと心配し始めた。しかし大したダメージが残っていないのは本当だ。
「うーん。その様子だと大丈夫そうですが、キャリーさんも安心できないでしょうから念のため回復魔法をかけておきますね」
そういってほほ笑んだイーリスさんは、杖を構え回復魔法を唱え始めた。
すると私の体全体を淡い光が包みこみ始める。その光はとても暖かく、身体だけでなく心の底から優しく包み込むように私を癒していった。
時間にして5秒も無かっただろう。体を包み込む光が消えたかと思うと、先ほどより体がかなり軽くなったようだった。
流石癒しのスペシャリスト。その効果は確かなようだ。
「ありがとうございます。なんだか体がかるくなった気がします」
「私からもお礼を。ありがとうございましたイーリスさん」
「いえいえ、私にできるのはこれくらいですから。お役に立てたようで何よりです。あ、それから……」
と言葉を途中で切り、キャリーさんの耳元で何かを囁いているイーリスさん。言い終えるとイーリスさんは少しニヤついた表情をしながらキャリーさんの耳から離れる。言葉を聞いたキャリーさんは、またもや顔を真っ赤にさせて「王子には内緒に……」と小声でイーリスさんに言っていたが少し聞こえてしまった。
彼女も王子に好意を寄せているのだろうか。ここでのやり取りは聞かれたらやはり恥ずかしいに違いない。
「さ、お二人のお邪魔をしてしまいましたね。それとあんまり無茶はしないでくださいね?怪我したらいつでも力になりますけど、私の出番は少ないに越した事はないんですから」
イーリスさんに向かって「もー!」と頬を膨らませながら可愛く抗議するキャリーさん。それをクスクスと笑って受け流し、にこやかに手を振りながらイーリスさんは去っていった。
さて、しばらく眠ってしまっていたようだし、訓練を再開したいところではあるがちょっと中途半端な時間だ。いい機会だしキャリーさんに【ブルーマン】について聞いてみるか。
「そういえばキャリーさんちょっと聞きたいことがあるんですが」
「え!?あ、はい!なんでしゅっ!ッ~!!」
突然話しかけた事で驚かせてしまったのか、返事をするだけなのにキャリーさんは思いっきり噛んでしまっていた。
「ああ!すいません!大丈夫ですか!?」
「い、いえちょっと驚いてしまっただけですから、平気ですよー。えっと、それより何か聞きたい事って?」
「そうでした。王子の称号についてなんですが、【ブルーマン】という称号について何か知りませんか?少しだけ噂で聞いたのですが、耳にしたことがある人でも詳細は何も知らず何が由来の称号なのかまったくわからなかったんです」
「【ブルーマン】ですか?うーん、私も詳しい事は聞いたことないですね。王子は他にもたくさんの称号を持っていますので、あんまり深くは考えたことはなかったです。その称号がどうかしたんですか?」
「いえ、深い理由はないんですよ。ただ気になって仕方なかっただけでこう……何か胸につっかえるというか。まあぶっちゃけちゃいますと興味本位ですかね?それと、みんなを引き付けるあの王子のカリスマ性や強さの正体にも少し近づけるかなって」
「ふふ、なんですかそれー。ミルグットさんは王子のカリスマがうらやましいんですか?」
そう言ってキャリーさんは少しいたずらっぽく笑ってみせた。
「ちょっとうらやましいかなーっての少しはあるかも?ですが単純に気になっただけですよ」
二人してクスクスと笑っていると、突然キャリーさんが何かを思い出した。
「あっ!そういえば私は知りませんが、政務官のアンナさんとか昔から王子を知ってる近衛騎士団長のミレイユさんとかだったら何か知っているかもですね」
なるほど、確かにその二人なら他の兵士が知らないような事でも知っていそうだ。しかし、他の王国の兵士にも公にされていないようなことを帝国から来たいち兵士にすぎない自分に教えてくれるものだろうか?
「まあ、教えてくれるかわかりませんが、とりあえずダメもとで聞いてみますか……」
そう言って今度こそベットから起き上がり立ち上がろうとすると、すでに立ち上がっていたキャリーさんがもじもじとしながら質問をしてくる。
「あ、ミルグットさん。私も一つ聞きたいんですが、その……さっきの話を聞くに派遣交流に来たのって私にお礼を言うためでもあった……て事なんですかね……?」
「そうですね。もちろん強くなるためってのもありましたが、命の恩人に対して何も言えなかったのがずっと引っかかってましたから。もう一度会ってちゃんとお話ししたいと思っていました。ようやくお礼が言えて今は少しほっとしてます」
「そう……なんですね。ふーん……」
なんかふくみがあるなー。
それよりミレイユさんやアンナさんはどこにいるだろうか?
「えーっと……。ちなみにお二人っていつもどこにいらっしゃるんでしょうか?」
「うーん。アンナさんなら大体執務室にいらっしゃることが多いと思いますが、ミレイユさんはどうですかね。特定の場所にいるってイメージがあんまりありませんので……」
なら先にアンナさんを探したほうがいいのかな?
ただ、【ブルーマン】について知りたいからって執務室に突然押し掛けるのも変な話だな。あくまで自然な流れで聞き出していきたいな。
それにしたってなんでこんなに【ブルーマン】について気になるんだろうか……
「あの!私、偶然!たまた~まアンナさんに用事があったんですけど。一緒に行きます?ちょっと王子の【ブルーマン】ってのも少し気になりますし、はい」
なんだかさっきからキャリーさんが不自然な気もするが、一人でアンナさんに会いに行くよりはキャリーさんがいてくれたほうが断然いいだろう。
「ならお言葉に甘えて、一緒についていってもよいでしょうか?」
「はい!一緒に行きましょう!」
そう言うキャリーさんはなんだか楽しそうだった。
「あ、でもまだ訓練中の時間なんで、午後の訓練が終わるまでもう少しですし訓練がおわってからにしましょうか」
「あの……じゃあ、もうちょっとだけここでお話してから行きませんか?私も今日はあとミルグットさんとの対人訓練以外予定いれてませんでしたし」
「じゃあ……ちょっとだけさぼっちゃいます?他の方には内緒でお願いしますね」
「ふふ、共犯ですね」
普段は真面目に訓練しているんだ、たまにはこれくらい女神様もゆるしてくれるだろう。たぶん……
それから訓練予定だった時間がすぎるまで、しばらくキャリーさんと話をした。一緒に戦った共同戦での事や戦闘時の立ち回り。あとは帝国や王国でのお互いの日常の他愛もない話。気づけばあっという間に訓練予定の時間が終わってしまっていた。キャリーさんとの話が盛り上がりすぎてしまったようだ。
「もうこんな時間!ミルグットさんそろそろ行きましょうか?」
「そうですね、すっかり盛り上がっちゃいました」
「ええ、帝国のいろんな話が聞けて私も楽しかったです」
それから治療部屋をあとにして、アンナさんがいるであろう執務室へ二人で向かった。
◇◇◇
話しながら二人で廊下を歩いていると、気が付けば執務室のすぐそばまでやってきていた。
そのまま執務室の前に立った私たち二人、キャリーさんが扉をノックをしようとした時部屋の中から声が聞こえてくる。
キャリーさんが思わずノックしようとした手を止めこちらを見てくる。
「この声ミレイユさんですよ。しかも王子と何か話してるみたいです」
キャリーさんが小声でそう話してくる。部屋の中の声をよくよく聞いていると何やらミレイユさんに王子が淡々と説教を受けているようである。
「王子……私は以前にも一度言いましたよね?女性に年齢の話は禁句であると。人間生きていれば失敗くらいあるものです、しかし一度ならず二度までも」
大きなため息をついているミレイユさん。大きな声で怒鳴っているわけではないが、普段であればそのきれいで透き通るような声に男性は心惹かれるのかもしれない、しかし今聞いているミレイユさんの声はどこか冷たく恐怖を感じる。
「しかも今度はケイティさんにとは……王子さすがに私でも擁護できませんよ?ちょっとこれはお仕置きが必要かもしれませんね……って!あ、ちょっと王子!まだ話は終わってませんよ!」
そう聞こえたと同時に扉の向こうから人が駆ける足音が聞こえたため、私とキャリーさんは慌てて扉の前から退避する。その瞬間扉が勢いよく開け放たれたと思ったら、執務室から王子が飛び出してきてそのまま猛スピードで廊下を走り去っていった。執務室から飛び出だして私の隣を横切る瞬間の王子の顔はこの世の終わりを見てきたかのように、ひどく青ざめていた……。
執務室の外にいたキャリーさんと私は、王子の走り去っていく光景にあっけにとあられていると、部屋の中から出てきたミレイユさんに不意に声を掛けられ我に返る。
「お見苦しい所を見せてしまいましたね。まったく、王子にも困ったものです。だいぶ女性への対応は上手になってきたと思っていたのに、気を抜くとすぐにボロが出てしまうんですから……まあそこもかわいいんですけどね」
そう言ってほほ笑むミレイユさんは可憐な少女のように可愛らしく。それでいてどこか大人な余裕のあるたたずまいをしていた。
あれ、ちょっと待てよ。キャリーさんの話ではこの人は王子が小さいころから教育係も行っていたらしい。しかしどう見てもミレイユさんは私やキャリーさんと同い年くらいにしか見えない。
この人いったいいくつなんだ?こんな容姿だと王子が思わず聞いてしまったのも納得できてしまう。
「あのー、王子走り去って行ってしまいましたが大丈夫でしょうか?」
どこかへと行ってしまった王子のことが気になった私はミレイユさんに質問をする。
「え?あー多分大丈夫ですよ。えっと、ほらあそこを見てください」
廊下の窓からミレイユさんが訓練場の方を指さす。ミレイユさんが言う方向を見ると、木剣を持った王子が打ち込み用の的の前に立っていた。王子は呼吸を整え木剣を構えたと思ったら、ものすごい気迫で打ち込みを開始した。あまりにも鬼気迫る勢いで打ち込みを開始したためあっけにとられていた。
「【ブルーマン】……」
「えっ!?」
突如ミレイユさんの口から【ブルーマン】の単語聞こえたため、驚いてミレイユさんに振り返る。
「王子の称号の一つですよ。さっきみたいに私やケイティさんなんかに怒られると、自分へ罰として木剣での打ち込みを千回以上行うんです。その訓練があまりにも気合が入ってるから、その熱気に当てられて周りの兵士の方たちもいつもより訓練に気合が入るんです。そしてその熱気は他の兵士達へと伝播していく」
もう一度訓練場のほうに目をやると、王子の熱気のこもった打ち込みを間近で見た事で感化されたのか、訓練の最中だった兵士達が気合を入れなおし打ち込みを再開した。そして今日の訓練を終え宿舎に戻ろうとしていた兵士達も訓練場に戻ってきて再度訓練を始めてしまった。中には雄たけびを上げ始めるものまでもいる。気づけば訓練場は異様な熱気に包まれていた。
「えぇ……」
王子をはじめ、兵士達のあまりの熱狂ぶりに言葉を失ってしまった。しかしキャリーさんは何かを思い出したようだ。
「……この光景以前見たことあります。みんながあんまりにも気合を入れて訓練するものだから私も頑張っちゃった事があった気がします」
キャリーさんが訓練の時に頑張ったと言うことは、騎乗していた馬も頑張っちゃったということで……
これ以上考えるのはよそう……それよりも。
「あの、そもそもなんで称号が【ブルーマン】なんでしょうか?」
単純に疑問だった。称号の名前ならほかにもいろいろつけようはあったと思うのだが……
「王子は私たちに叱られるとものすごく顔が真っ青になっちゃうんです。そんな顔のまま訓練始めちゃうもんですから、誰が言い出したかわかりませんが王子のその表情を見た者が言ったのがきっかけみたいです」
そんなことで称号の名前が……
蓋を開けてみれば何ともしょぼ……素朴な理由だろうか。ただ名前の由来はあれだが、訓練時に他の兵士に与える影響は大きいようだ。これが【ブルーマン】の力……。
「そういえばお二人はどうしてここへ?アンナさんへ何か用事があったのでは?」
ミレイユさんが疑問に思ったのか私たちへ問いかけてくる。
「えっと……あれ?なんだったっけ?なんかびっくりしちゃって忘れちゃったみたいです」
【ブルーマン】に関することはともかく、キャリーさん自分の用事まで忘れてしまっているようだが大丈夫だろうか?とりあえず私は知りたいことはもう分かったので、キャリーさんと同じように驚いたことで忘れてしまった事にしてキャリーさんに同調しておいた。
「そうですか。どっちにしろ今はいらっしゃらないので、思い出したらまた来るといいと思いますよ」
そう言ってにこやかに笑ったミレイユさんは、執務室の扉を閉める軽く会釈をして私たちが来た方とは逆の方向へ歩いて行った。
「よかったですね!謎が解けて!」
「そうですね。というかキャリーさんの用事の方は大丈夫だったんですか?」
「あはは、それがホントに忘れちゃったんですよねー。まあ思い出せないくらいな些細な用事だったんですよ。なら大丈夫です!」
なぜか自信満々な笑顔で答えてくるキャリーさん。本当に大丈夫だろうか?
何はともあれ、これで【ブルーマン】の謎についても一件落着か……
気になって仕方なかったことだったが、わかってしまえば他愛もない理由だった。
この後は自分たちも訓練に混ざったほうがいいかなと思っていたが、キャリーさんに無理はするなと言われやめておくことにした。そのため二人で雑談をしながらお互いの宿舎に向かって帰ることにした。
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ミルグットとキャリーが話しながら宿舎に向かって帰っていき、その姿が見えなくなった事がわかると、廊下の曲がり角から姿を現す二つの影があった。
「行ってしまわれましたか?」
「ええ、もう大丈夫みたいですよ。それよりあのタイミング二人が現れてくれたのは好都合でしたねアンナさん」
「ええ、しかしミレイユさんが機転を効かせて二人に【ブルーマン】の理由があの怒られた事にあると思わせてくれたのは流石だと思いました」
「私もとっさの事であれくらいしか思いつきませんでしたが、何とか信じてくれてよかったです。これであやふやに名前だけが噂になってしまっていた【ブルーマン】についても二人をきっかけに少しずつ今回の情報が広まっていくと思います」
「ですね、まったくどこから漏れたのか。皆さんには誤認しておいてもらわないといけません、【ブルーマン】の真実がその……王子がベットの上で……あんな姿になってしまう事だなんて……」
「アンナさん」
「はっ、すいません。こんなところで口に出すことではありませんでしたね」
「そうです。これは王国の威信にかけても他の皆さんには知られるわけにいけないんです。これを知っているのは私とアンナさんだけです。何としてもこの秘密は守っていかなければなりません」
「はい、王国の威信のため。そして王子のためにも……」
そうして二人が王国最大級の秘密を守っていくことを新たに心に固く誓い合うのだが、こんなやりとりが王宮の中であったことはけっして誰にも知られることはなかった……
そう、決して……
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