彼方の傭兵   作:悠士

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そういえばこの前はフィーロの誕生日だったのを忘れてましたww


15話 似た者兄弟

 テーブルの前にはオレが知らないような料理が沢山並んでいた。馬鈴薯、玄界(ミデン)ではジャガイモというのが一般的らしいがそれをすり潰したものにマヨネーズという調味料と少しの野菜を混ぜたポテトサラダ。スパゲティという麺類の料理。皿のように薄くしたパンに野菜や肉を乗せて、さらにチーズを被せて熱して溶かしたピザという丸い食べ物

 

「おーーい!買って来たぞ!」

 

 そして進さんが買いに行ってたものが、生の魚の身を乗せた寿司という食べ物だ。寿司の到着に小南や宇佐美とか喜んでいたし、修もそんなに買ったんですかと驚きつつも心臓の鼓動が早くなっていたので喜んでいるみたい

 

「どうしたのフィーロくん?」

 

「…アレって、食べるものなの?」

 

 顔を引きつらせたフィーロに千佳が気になって声をかけていた。生ものを食べるという食文化が無いソチノイラ育ちのオレたちは疑問と不安しかない。戸惑いながら問いかけると、さも当然かのように「そうだよ?」と返ってきた

 

「進、あいつらの国って寿司とか無いのか?」

 

「そうなんだよ。寿司だけじゃなく生では食べないから、肉もしっかり火が通ってじゃないと食べないんだよ」

 

「そうなのか?」

 

 林藤支部長と進さんとレイジが3人で話していた。過去に生ものを食べていたという話は聞いたことがあるが、加熱していないため雑菌が死ぬことなく身体の中に入ってしまうこと、食べれるところと食べれないところの分かれ目が分かりにくいため、生ものを食べて体調を壊した、死亡してしまったという事例があるため飲食店では基本的に火を通して安全にしてから食べるというのが常識となっている

 

 当時の調査ではその程度しか分からなかったが、玄界(ミデン)にこのことを当てはめると雑菌がいるのは寄生虫が住み着く生物だったから。食べられるところと食べれないところは死んでから時間が経ち毎回腐っているところが変わってしまっていたから。体調を壊したのは加熱しないといけない部位を生で出したから、寄生虫が人体に寄生してしまい薬や検査をしても分かりづらかったから。ということになる

 

 かなり昔のことだから詳しいことは不明だけど中には状態が悪いものとかも混ぜて高値で売っていたということもあったとか

 

「へ~そんなことがね。まあ大丈夫だ、食べられるものじゃなかったら売ってないから。騙されたと思って食ってみろ?」

 

「………」

 

「…どうする兄ちゃん?」

 

 さすがにフィーロも食べるのは戸惑っている。林藤支部長が言っていることも間違いとも言い切れない。問題があればそれは商売として成り立たないため売っても意味が無い。だから売れるものは問題なく食べられるということだ。しかもオレはこの間嘔吐してしまったこともあるから結構不安も大きい

 

 だが進められている以上食べないわけにもいかず、恐る恐る手にとって半分かじる

 

「……?…っ!!?んっっーーーーーー!!!?」

 

 ご飯にもなにか手を加えているのか少し味があった。次に感じたのは乗った魚の身の柔らかさ。この前のお菓子の店で買った練り菓子に近い食感。味も変と思うほど不味いと感じるほどではなかったんだけど、徐々に刺激的なのが口の中を暴れ回り、何なんだ? と思った瞬間鼻の奥から突き刺すような痛みにオレは口と鼻を押さえてシンクに租借していたものを吐き出し、水を注いで口の中を注ぐがまだ痛かった

 

「なに…ごれ?めっちゃはながいだい……」

 

「に、兄ちゃん!?大丈夫!?」

 

 何なんだろこれ? あまりにも痛すぎて何年かぶりに涙が出てしまった。フィーロが心配して駆け寄ってくれるが、1人だけ思いっきり笑っていた

 

「あーっはははっは!!伶!おまっ……すっげー慌てて!!っぶ…っくっくく」

 

「進、おまえ……わさび入りを進めたのか?」

 

「いやー伶も17だしいけるかなー思ってたんだけど、やっぱりだめだったか」

 

 人が尋常じゃない鼻の痛みに悶絶しているときに笑っていたこの男は許し難い。大分落ち着いたから進さんの前に立つと

 

「わるかったって、今度は抜いてるほうをブフォッ!?……れ、おま……」

 

「……そのまま暗闇から帰ってくるな」

 

 手を握って腕を引いてから思いっきり突き出す。全く悪びれてる様子も無い進さんの鳩尾に渾身の一撃を食らわせた。腹を押さえて蹲ったが意識を保てず気絶。それからオレは指をポキポキと鳴らしながらみんなの方を向いて「わさび」とは一体何なのか問いかけた

 

「…珍しく兄ちゃんがキレてる……」

 

 強い刺激性と香を持つ食材で料理に薬味や調味料として使われるらしい。摩り下ろして使うのが一般的で身をもって知ったように刺激が強すぎるから量は気をつけたほうがいいらしい

 

「あちゃーここのは結構乗っているな」

 

 林藤支部長が箸で身を持ち上げると砂糖とかを一つまみした程度の緑色の物体が挟まれていた。慣れている人じゃないとこの量は厳しいらしく

 

「僕はさすがにその量は食べれないです」

 

「私も…」

 

 と修と千佳が遠慮していた。陽太郎も除いてそれ以外の人たちは食べれるという。炭酸のジュースといい玄界(ミデン)の人間の味覚は刺激的なのが好みなのかと疑いたくなる

 ソチノイラにはこういった調味料はある。けれど鼻の奥が痛くなるというものは無かった。初めてで不意打ちを受けた所為で今後わさびは受け付けれないと思う

 

 とりあえずわさびが入っていないほうの寿司を食べると意外と美味かった。ただやっぱり生ものという点が気になってしまい、腹を下してしまわないか心配になってしまう。ほかにも黄色いのは卵だったり、マヨネーズと混ぜたツナマヨだったりと安心して食べられるものとかもあってよかった。フィーロも案外気に入ったのかパクパクと口に運んでいると突然口を押さえた

 

「どうした、フィーロ?」

 

「兄ちゃん…これ、なんかプチプチ爆発してるんだけど!?」

 

「え…爆発……?」

 

 一体何を言っているんだと指をさしていたものを見るとぐるっと巻いた海苔の中に赤い透明な球体の謎の物体があった。爆発と言った言葉に食べるのを躊躇してしまうが、気になったのか修が見に来てこれの正体を教えてもらった

 

「それはいくらですよ」

 

「いくら?ん?これ高いの?」

 

「いくら」というらしいがなぜ修は金額を聞くときの言葉で答えたのかわからない。フィーロも同じ考えに至ったようで頭を傾げていた。オレの疑問がおかしかったのか苦笑いして詳しく教えてくれた

 

「いくら」というのはサケという魚の卵で、産卵する前に取り出して醤油にや塩に漬けたりして食べるんだという。プチプチするのは膜があるからで、噛むと弾けるように中身が飛び出すからなんだとか

 

 魚の卵まで食ってしまうなんて玄界(ミデン)は意外と残酷なことをするのか一瞬思ってしまったが、オレたちも鶏の卵を当たり前のように使っているのでそうでもないなと考え直した。ただ生の魚の肉をご飯に乗せて食べるのは正直気が狂っているのじゃないかと、思いついた人の精神を心配してしまった。すでにこの世にいない人を心配するだけ無駄なのは分かっているけれど

 

「フィーロ、まだ渡さなくていいのか?」

 

「ん?あ!!そうだった!!」

 

 とりまるがフィーロに何か言った後慌てて上の階に行った。何を渡すんだと気になっているとガサガサと音が聞こえてきた。ビニールじゃなくこれは紙に近い。まさか思いつくままに行動するフィーロが玉狛支部の人たちに何かお礼てきなのを買ったのかと思い感心しようとしたのだが、下に降りて部屋に入ったときには両手で抱えるほどの大きなものを持っていた

 

「兄ちゃん!これ!」

 

「え…オレに?」

 

 しかも渡す相手がオレだった。成長したなと思ったが訂正だ、案外そうでもなかったしこの大きさだと相当高いものを買ったのではないかと思う

 

「フィーロ、ボーダーからのお金、全部使ったな?」

 

「っ!!?そ、それは……」

 

 フィーロ自身のお金はまだ上げていないから買うためにはボーダーから防衛任務で稼いだ報酬金を使ったのだろう。けれどこれだけの大きさだと全て使ったに違いない。そして問いかけると当たりのようだ。心臓の鼓動が早くなり目を逸らした

 

 そりゃまだ子供だから買いたいものを好きに買いたいのは分からなくもない。傭兵だから減れば稼いでしまえばいいのだが、フィーロは金遣いが荒すぎる。お金の大切さをいい加減知ってほしいものだと大きくため息を吐くと横からとりまるが出てきた

 

「まあそこまで責めなくてもいいだろう。なにも欲を持って沢山買ってしまったわけじゃないんだ」

 

「そ、そうだよ!兄ちゃんが喜ぶと思って……ほとんど使ったけど…」

 

 一度怒られそうになった所為か自信なさ気に続けて言う。どうやらお金を沢山使ってしまったという自覚はあるみたいだ。ないよりはまだいい方かとこの話は終わりにして開けてみることにした

 

 文字は読めないが祝われているのか分からない紙で包まれたプレゼントを裏返してテープを剥がし、開いていくとこれは予想外だった。せいぜい沢山のお菓子とかが入っているのかなと思っていたのだが

 

「これは……」

 

「おーー鉄道模型が沢山じゃないか」

 

 林藤支部長の言うとおり鉄道模型が一杯だった。しかもオレがすでに持っている新幹線というものの車両を増やすセットがあった。ほかに赤色、青色、銀色など数種類あり。おまけに線路まで山のようにあった

 

「ほら、旅行で来たからさ。次いつ来るか分からないじゃん?だからそれまで飽きないように色々買ってみたんだ」

 

 確かにこれはオレが喜ぶものだ。鉄道模型というのは不思議と魅了されているため、これだけあるとしばらくは飽きることがないと思う。ただ線路の上を走らせる。単純なおもちゃでしかないのに不思議なものだった。しかも銀色のはつい最近発売されたものらしい。「新発売」と書かれていたらしい

 

「あ、これトラス橋ですね」

 

「トラス橋?修、鉄道に詳しいのか?」

 

 しかもここで反応したのが以外にも修だった。また不意を突かれようでみんなも驚きの表所をしていた

 

「あ、いえ…鉄道には詳しくないのですけど、橋とかは結構好きで」

 

 こういうと失礼なのは分かっているけれど真面目な修が橋というどこにでもあるような建築物が好きというのは意外性があった。見てもいいですか? 聞かれたのでいいよと答えると手にとって眺めている。鉄道模型というのは実際にあるものを縮小した模型の大きさで作っているため、細部までこだわって作られているらしい。でもやはり小さいためどうししても再現不可能な部分もあったりするらしい

 

 修いわく橋は忠実に再現されているが、やはり実際のものと思い比べるとレンガ模様が均一だったり、上から眺めたとき枕木という線路を安定して載せるための木材が安っぽく見えたりなど中々に厳しい評価をしていた

 

「ぁ、すいません。篠島先輩のものなのに」

 

「はは、大丈夫だよ。気にしてない。それよりも修のほうが意外だったな、そこまで細かく見ていたなんて。よほど橋とかが好きなんだな」

 

「あ、あはは……」

 

 まさかここで自分の好きなことを披露してしまったのが恥ずかしいのか照れてそれ以上何も言わなかった。親しい遊真や千佳でも知らなかったことらしい。でも好きなことを突き詰めていくのは良い事だと思うし、拘りを持つのは自分の好みとかはっきりするだけでなく、第三者から見た意見というのは作った当事者からは分からなかった発見がある

 

 そういえばオレも稼ぐようになって食べてみたかった店のお菓子をあれこれ買ったり、おいしい店はないかと探索していると父さんから少し驚かれたことがあった。「おまえ、散歩が好きだったのか?」と

 オレはそんな自覚などなく、ただお菓子の店を探していただけだからその時は違うよと答えたけど。続けて父さんは「好きでも好きじゃなくても自分の住んでいるところを見るのはいいことだ。いろんな発見もあるしより知ることができるからな」とも言っていた

 

 と、ここで父さんの言葉を思い出していたら少しだけ頭に引っかかった。「住んでいるところを見るのはいいことだ」という部分。オレは生まれたところは知っているし、先生たちからどういうところなのか聞いてはいたりする。でもそれは他人から得た情報だ。オレ自身が歩いて見て聞いて知ったことじゃない。本当の家族とも会って、それを知ることは良かったと思える。なら、オレの家族が住んでいるところを知るのも案外悪いことじゃないのかもしれない

 

 結果どういうことに繋がるのかはわからないけれど、情報というのはなんでもないことでも損はすることがない。ただオレは近界民(ネイバー)で、玄界(ミデン)の人たちからは嫌われている。正体を知られないように気をつけないといけないな、今度散歩でもするとき頭の中に留めた

 

「さてと、さっきは怒ってしまったけど。オレも人のことは言えないからな。今なら好きなだけ文句は言えるぞ?」

 

「え?どういうこと…?」

 

 オレのプレゼントは一通り見たので、続きは部屋に持っていったときにしようとまとめた。わけが分からないフィーロは困惑していて、それもそうだなと部屋から同じ紙に包まれた大きな箱を持ってきた

 

「え!?兄ちゃんそれって……!」

 

「さすがに透けてるから分かるか?」

 

 紙一枚だから中の箱の絵がうっすらと見えてしまっているため開かなくても何が入っているのか分かる。受け取ったフィーロは嬉しそうに喜んで、紙を剥がしてさっそく中身を出していた

 

「お前さんも粋なことをするな」

 

「そうかな…なんかなにかと理由をつけては甘いんじゃないかと思うんですよ」

 

「ははは、それでいいんじゃないか?お前もフィーロもまだまだ子供だ。わがままを言って好きに遊んで今しかできないことを思いっきり楽しめ」

 

 林藤支部長が褒めてくれるが、オレとしては少し複雑だ。最初にあのおもちゃ屋に行った時我慢させたのはオレなのに、こうして高いものを買ってあげている。オレもまだお金に余裕があるから好きに使いたいという欲が溢れているのだと実感した

 

「ありがと、兄ちゃん!!」

 

「…おう、壊さずに大事にしろよ?」

 

「うん!」

 

 満面の笑みでお礼を言ってくるが、なまじフィーロも身体を鍛えているため力加減を間違えると簡単に壊しそうだ。どれくらい持つのだろうなと不安もありつつも、弟の喜ぶ姿はいつも見ても幸せなものだ

 

 戦争は非情で残酷。だからこそ大切な人との思いがけない別れというのはとても辛い。できることならフィーロが父さんのところに行ってしまわないでほしいと虚しい願いを祈るばかりだ




なんだかんだで甘いお兄ちゃん。まだまだ未熟だと生まれ故郷に戻って初めて知った自分に成長の余地を感じたのかな…?





その先に〜より彼方の傭兵方がモチベがあるのはなぜ…
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