彼方の傭兵   作:悠士

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19話 レッツゴーホーム!

 1戦だけということでオレは進さんの弟さんと勝負することが出来たんだけど、正直言って勝てるような気がしない。ボーダーのトリガーに慣れていないからってのもある

 だけど修とのバトルを見てこの人の動きは無駄が少ないように見えたのだ。それだけ訓練してきたってことだ

 

「行くよ!」

 

 オレだって訓練はしてきたのだから自信だってある。スコーピオンを出して突撃するが、修の時のように姿を消したのだ。でもオレにはある程度は気配で探ることもできる

 

「そこだぁ!」

 

「っ!お前には意味がないか」

 

 左へ移動をしているから左手を振って切りつけようとするが、直前で現れてスコーピんで防がれてしまった。でもこれは予想していたことだから驚かない。追い討ちをかけるために近づいて斬りかかるが

 

「筋は悪くはない。だがまだ甘いな」

 

「っぅ!!」

 

 シールドと併せてうまいこと攻撃を防がれてしまう。中々傷を負わせられないことに焦ってしまってスコーピオンがはじき飛ばされてしまった。武器を手放されてしまうのは初めてで動揺してしまった

 その隙に弟さんはオレの首を斬って伝達系を切断されてしまった

 

 負けた

 

 トリオン体が復元されても膝を付いたオレは手も足も出なかったことに動けなかった。結局オレはレーゲン(父さん)がいなければこんなに弱かったんだ。だけどなおさらボーダーに入りたくなった。気を落としたオレが訓練室から出るとアラシヤマって人が慌ててオサムに話していた。聞き取れた内容はチカの身に何かあったことくらいだが、とにかくオサムたちの後を追うとそこには目を疑う光景が広がっていた

 

「そうかそうか、千佳ちゃんと言うのか」

 

「………」

 

「…………」

 

 どういうことだ、これ?

 

 あの夜にいた幹部の人のハゲになり始めている人がチカを台みたいなのに座らせて頭を撫でていた。やさしい声で

 オサムたちもオレと同じみたいで状況が掴めていなかった。てっきりチカの身になにかあったのかと思っていたのだ

 

「すごいトリオンだねーご両親に感謝しないかんよ」

 

「は、はい…」

 

「壁のことは気にせんでいい。あの壁もトリオンでできているから簡単に直せる」

 

「壁?……え、えっぇぇええ!?」

 

 怒るどころか褒めていることにチカはなにか良いことをしたのかと思ってしまうが、ハゲのおっさんが言ったことが気になって見てみると。的の奥の壁が大きな穴を開けられていた。今日の晴れた空が見える

 

 話を聞けばいつもどおりの訓練を教えているときに、チカがアイビスを持って撃ったらしい。いつも通りに。そしたらありえないほどの威力が出てそのまま壁を開けてしまったと言う

 

 そういえばウサミがトリガーの説明で言っていたような気がする。銃型は弾丸の性能を上げるだけでなく、トリオン性能によって銃の性能も左右されると。中でもスナイパーのは弾速、連射特化。バランス、そして威力重視の3つのタイプがあると。それで確かアイビスが一番強いとか

 

 そりゃ膨大なトリオンを持つチカに持たせたらとんでもないことになるよ。もはやこれは…

 

「狙撃じゃなく…砲撃に近いよ…」

 

 オレも兄ちゃんもいろんな国見て、仕事してきたけど。ここまで派手にトリガーの性能を上げるトリガー使いは見たことがないよ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 伶.side

 

 

「……なにが起こってるんだ…?」

 

 街を散策していると突然轟音が聞こえた。発生源はボーダー本部で、振り向けば壁からビームが飛び出た。与えられた携帯にはなんの連絡が無いから大丈夫なんだろうけど。とはいえ何か新兵器の実験でもしていたにしては威力が強すぎる気がする

 オレのサイドエフェクトでも基地の壁はかなり分厚いのが分かる。中に入ると外の音がほぼ聞こえなくなるから相当防衛力に注いでいるんだろう

 

 大丈夫なんだろうと判断し今日も三門市を散策することにした。何か美味しいお店とかないかなと歩いていると後ろから聞き覚えのある声が掛けられた

 

「兄貴?」

 

 振り向けばそこには涼治がジャケットのポケットに手を突っ込んで意外そうな表情でオレを見ていた

 

「涼治か。買い物か?」

 

「違う、DVD借りたから」

 

 手首には小さな黒い袋があり、お使いかなにかの帰りなのかと思ったら違うらしい。こっちの世界には映像や音楽を穴の開いた薄い円盤にデーターを記録しているらしい。それらを低価格で貸し出している店があるようで、涼治はそこで見たいものを借りてきたらしい。オレが大金を上げたことで色々と使っているみたいだ

 折角だからオレは涼治に店を案内してもらおうと考えた

 

「時間があるなら案内してほしいところがあるんだけど?」

 

「案内?どこに?」

 

「お菓子の店。玄界(ミデン)には色々あるのが逆に困っててな、ちょうどいいから涼治が好きなお菓子の店とかあったら教えてほしいと思ってな」

 

「お菓子が好きって…子供かよ」

 

「こっちの法律ではそうらしいな」

 

 子供かと馬鹿にされた気がするが傭兵生活しているオレの癒しでもあるんだ。それに涼治はオレより年が下なのだからまだ子供だ

 

「急にそんなこと聞かれても1人で行ったことなんてないからなー……あそこでいいかな」

 

「どこでもいいよ。とりあえずいろんなのを食べてみたいから」

 

 どこか思い浮かんだところがあったみたいだからそこへ向かうことにした

 

「あーあ、オレも適正があれば今頃ボーダーになれたのにな」

 

「なろうとしてたのか?適性がないって?」

 

「そう!えーっとトリオン?っていうのがオレには足りないからって、エンジニアとか他ならなれるって言うけどオレはトリガーを持って戦いたかったんだ!」

 

「トリオンが…?」

 

 涼治が入隊試験を受けていたことも驚きだけど、それ以上にトリオン能力が足りないことのほうが驚きだ

 今も研究が進められているがトリオン能力は基本的に遺伝性があることは判明している。そしてオレのトリオンは多い。つまり弟である涼治たちも()()()()トリオンは最低でも平均程度はあってもおかしくないのだ。だが適性がないと判断された。涼子も含めて

 

 計測器が壊れるなんてあるのかなって考えるが多分それはないだろう。試験日に使う道具を点検しないはずがない

 

「着いたよ」

 

 原因を考えていたら目的地に着いたらしい。そこはプリンの専門店らしく、小さな容器にスタンダードなものからイチゴや抹茶といったものまであった

 ここを選んだのがグルメ番組で見て近いと知って覚えていたからだと

 

「涼治はどれにするんだ?」

 

「いや、自分で買うよ」

 

「いいから、少しくらいは兄貴面させろ」

 

「…じゃあこれ」

 

 どれも美味しそうで迷ってしまう。さきに涼治の決めようかなと聞くが断られた。オレがいつまでミデン(ここ)にいられるかは分からないから、少しでも兄らしくしようと思った

 渋々と言った感じで選んだのはミカン味だ。酸味が効いて後味スッキリと書かれている。あとはイチゴとコーヒーと普通のを5つずつ買った

 

「そ、そんなにも買うのかよ…」

 

「母さんたちの分もだよ」

 

 オレを含めて6人家族。希はまだ離乳食には移れていないから申し訳ないけど5人分で買った。各1個ずつ食べられるように

 自分の分だけ取って帰ろうとしたが、涼治が「ここまで着たなら家に来ればいいじゃん」と家に行くことを許してくれた。少しは涼治とも仲を縮められたようで嬉しかった

 

「じゃあ、そうしようかな」

 

 住むはずだった家がどんなろころなのかも気になっていたからよかった。プリン専門店がから15分ほどで着いた。たしかに近ければ覚えやすいっていうのも頷ける。塀には「篠島」の文字があり、始めて来るのに帰ってきたんだっていう感覚になった

 

「ただいまー」

 

「お邪魔します」

 

「何言ってんだよ?兄貴の家でもあるんだから違うだろ?」

 

「っ、ただいま」

 

 まさか家に上がる挨拶を言い直されるなんて思いもしなかった。ちょっと素っ気無い感じもあるが基本は良い子のようだ

 

「伶!来てくれたんだ」

 

「うん。涼治に誘われてね。これ、途中で買ってきた」

 

 リビングにいくとソファに座っている母さんがテレビを見ていた。傍らには希もいて、いまは眠っている。プリンを買った袋を渡すと喜んでくれて、食べようとスプーンを用意してくれた

 

「おいしい、ありがとうね、伶」

 

「この店を選んだのは涼治だよ」

 

「ちょ、いらんこというなよ!!」

 

 自分のを取りに来ていた涼治は突然店を選んだのが自分だと暴露されて焦っていた

 

「涼治が?興味ないって言ってたのに珍しいわね」

 

「べ、べつに覚えてたのがそこだったからだよ!興味はねぇ」

 

「とか言ってしっかり2つも取りに来てるじゃん?」

 

「りょ、涼子!」

 

 大人ぶっているのかあまり興味がなさそうにしているが、オレは案内を頼んで着いたとき涼治の心臓の鼓動が早くなるのをしっかりと聞いていた。しかも涼子も食べにきたときちゃっかり涼治は2つもプリンを取っていたのを指摘した

 

 にぎやかで楽しいなと、母さんたちの笑いを聞きながらそんなことを感じた。ソチノイラにいたときも大体騒ぐのはフィーロだった。それでオレと進さんがいらないことを言ったり笑ったりする。血の繋がりはなくても、あの時間は本当に楽しかった

 

「ところで父さんは?」

 

「上の部屋よ。いつもの」

 

「いつもの?」

 

「鉄道模型だよ…物置部屋の半分を使って遊んでるんだよ」

 

 この場にいない父さんはどこにいるのか聞けば2階にいるようだった。鉄道模型と聞いてさっきから聞こえてくる小さな稼動音に納得がいった

 プリンを持ってオレは上がることにした

 

「父さん、入るよ?」

 

 ノックをして部屋に入ってみると驚いた。テーブルの上には山や街があるのだ。たしかに模型コーナーにそういうものがあったのを記憶しているが、目に映っているのはまるで使い込まれたような汚れがある。それがリアリティを出していて一体どれくらい遊んでいるんだと父さんにちょっとだけ呆れた

 

「おお、伶か。来ていたのか」

 

「うん、それよりすごいねこれ…でも結構汚れているけど、綺麗にしないの?」

 

「っ……伶、おまえは……!」

 

「え、ぇ…?な、なに……?」

 

 誰かが入ってきたことでオレがいることをやっと知った父さん。下であれだけ騒いでいたのに気付いていないなんてよほど鉄道模型が好きなんだってさらに呆れる。テーブルに近づいてみると汚れだけでなく樹木や小さな人もあった。山を貫通するようにトンネルもあり作り込みがすごいなと感心するが、汚いなとやっぱり思ってしまう

 綺麗に掃除をしないのか聞くと、突然肩を掴まれてびっくりする

 

「鉄道模型が好きなのか!?」

 

「ぇ、ぇ……?」

 

 全く父さんの考えが理解できず困惑すると話してくれた。結婚してから子供と鉄道模型で遊ぶのが夢だったらしい。幼児向けのおもちゃを買って遊んでいたけれど、大きくなるにつれて飽きていき、涼治はバスケ、涼子は園芸と部活に入って段々と離れていったらしい

 そこへオレが興味があるように話しかけたから嬉しくなったんだとか

 

 オレの鉄道模型への感動や衝動は父さん譲りだったのかと今理解した

 

「まぁ、好き…な方なのかな?まだかっこいいとかそのくらいにしがっ!?」

 

「最初はそれでいいんだ!そこからゆっくり鉄道模型の楽しさと奥深さを理解すればいいんだ!」

 

「ぁ……うん」

 

 肩を掴むの次は抱きしめられた。別にそれは良いんだが、余程子供と遊びたい気持ちが大きかったのか、それを知ると同時に呆れてしまった

 

 

 

 




最近伶のイメージcvが内山昂輝でムフフ〜でした

もちろんロクサスボイスっす!
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