彼方の傭兵   作:悠士

22 / 26
20話 守るために……

 初めての自分の家族の時間は楽しかった。とくにオレが鉄道模型が好きなことに父さんは喜んでいる。妹の希もまた抱いてみた

 

 楽しい時間というのは残酷なほどにあっという間に過ぎて23時を回っていた。オレは入れてもらったコーヒーを飲みながら、オレがいない間の家族の記録を見ていた。ミデン(こっち)ではアルバムって言うみたいだ

 母さんたちが付き合い始めてから、涼治や涼子が生まれてからの成長など色々あった。笑っていたり泣いていたりしていた

 

「なんだ、まだ起きていたのか?」

 

「父さん。夜はボーダーと契約した仕事があるから、それまでコレを見ていてね」

 

「懐かしいな。涼治が初めて表彰されたときか」

 

 父さんが言っているのは多分両手で持って上に掲げている金色の食器みたいな物の写真だろう。バスケというのがどういうものかは分からないが、髪が湿っているから激しい運動をする何かなのは想像はできた。周りには同じ格好の子が沢山いるからチームとかなのだろ

 

「伶は…なにかスポーツとかしたことあるのか?」

 

「いや、スポーツはないかな…闘技大会とかは出たことあるけど」

 

「闘技大会?」

 

 ソチノイラではスポーツはしたことがない。施設の先生が教えてくれたボールで投げ合いはしたことはある。たしかドッジボールとかだったようなきもするけど。アレをスポーツを言うのかは知らない

 代わりというわけじゃないけど涼治みたいに何かに出て表彰されるということならある

 

 年に2回。建国祭と文化祭のときにトリガー使い同士が勝ちあがり形式で戦う闘技大会なら出たことはある。使用するトリガーは自身の所有するもので、相手のトリオン体を破壊するか戦闘フィールドから出させるで勝敗を決める

 6年前に父さんにもらったトリガーで出て2位になって、それから3位、2位、1位と仕事がないときにタイミング合えば参加したりしている。今は2連続優勝を果たしているから協会内ではそういう意味でも知れ渡っている

 

「すごいな、伶は」

 

「オレが、というよりは作ってくれたトリガーのおかげだけどね」

 

「そうかもしれないけどな。けど結局は使う人次第だと父さんは思う。どんなに強力でも使いこなせなければ宝の持ち腐れだからな」

 

「…ありがと、父さん」

 

 確かに父さんの言うとおりだと思う。見えない脅威(ノヴァ)は強いけど、結局オレが使いこなせなければ意味がないのだ

 

「ところで父さん。宝の持ち腐れって、なに?」

 

 確かに見えない脅威(ノヴァ)はオレにとって必要不可欠の仕事道具でもあり相棒のようなものだ。言い換えればオレにとっての宝といえる。だが「宝の持ち腐れ」というのは少し意味が理解できなかった

 父さんに聞くと玄界(ミデン)の諺で、役に立つものや優れたものを持ってても使わなかったり発揮しないでいることのたとえだという。なるほど、それなら確かにさっきの会話でも意味が通る

 

「確か伶には弟がいるんだったよな?フィーロくんだっけ?仲はいいのか?」

 

「ああ、いつもはそうだな」

 

「そうか、そりゃたまには喧嘩だってするか」

 

 たしかに普段は仲のいい兄弟だと思っている。たまに喧嘩するのも普通のことだ。だけど今はちょっと長引きそうな予感がするし、フィーロがいま何を考えてボーダーに居たいというのか分からない。誰かから聞くのもいいかもと思って丁度父さんもいることだから聞いてみることにした

 

「なあ、父さん。少し聞いてもいいか?」

 

「ん、なんだ?」

 

「フィーロのことなんだが――」

 

 

 

 

 

「なるほどな。多分フィーロくんは伶のいないところで強くなりたいんじゃないか?」

 

「それは分かっているんだ。問題はなんでボーダーなのかだ。別にここじゃなくても国に帰れば強いやつは他にもいるし、何でオレのいない所なのか…」

 

「そりゃ、経験の長い伶がいたら知っているところを紹介されたり、やり方を指示されるからじゃないか?いま13歳なんだっけ?」

 

「なら反抗期なんだろうね。伶の助けもなく強くなりたいんじゃない?」

 

「………その理由がオレにはわからない…」

 

 父さんに聞いてもやっぱり反抗期なんじゃないかと返ってきた。強くなるのは別にいいけどなんでオレの手の届かないところでなのかが問題なんだ

 

「それは父さんも分からないな」

 

 これ以上聞いても分かることはなさそうだった。時間も迫ってきたし防衛任務に行くために家を出た

 

「お、伶も来たな」

 

「………オレこっち行くから」

 

 警戒区域を通っていると進さんとフィーロが見えた。だけど合流する前にフィーロは勝手に離れてしまった。ということはまだ本当の理由を言いたくはないってことなんだろう。頑なに言わないならオレも無理にでも連れて帰るしかない

 

「とりあえず見回るか?」

 

「そうですね…まったく」

 

 進さんと合流してオレ達は防衛任務を始めることにした。といってもトリオン兵相手に苦戦するほどじゃないが、問題はフィーロのほうだ。あんな調子で問題なく終えることができるのか心配だ

 

 

 

 

 

 フィーロ.side

 

 (ゲート)から出てきたモールモッドを相手にいているが、こんなにも難しい敵だったのか? て思うほど苦戦してしまってる

 

「っう!…このっ!」

 

 背中から伸びた刃が頬を掠めた。だけどこれで隙ができたと前に踏み出すと左右からまた刃が来るのが見えたからシールドで防いだ。その隙にスコーピオンで突き刺そうしたが

 

「あ、しまった!」

 

 夜の雨(レーゲン)の感覚でやってしまっていたから、2つまでしか使えないボーダーのトリガーでは何も起きなかった。その隙を見逃すはずもなく背中の刃が振り下ろされようとしたけど兄ちゃんのトリガーで守られた

 

「っはぁ!」

 

『硬化』で守られたトリオンの壁からさっそうと現れた兄ちゃんの三日月でモールモッドの腕を切られ、背中に着地すると目を突き刺して撃破された

 

「大丈夫か、フィーロ?お前らしくないな、この程度の敵に苦戦するなんて」

 

「っ、そうだよ!!どうせモールモッドも倒せないくらい弱いよ!!最強の兄ちゃんにオレのことなんか分からないよ!!」

 

「あ、おい!!」

 

 苦もなく倒す姿は確かにかっこよかった。だけどそれが余計にオレが弱いって言っているようで悔しかった。一生兄ちゃんには勝てないんじゃないかって。レーゲン(父さん)がいないと何もできないオレとは正反対だ

 

 顔も見たくなく、話もしたくなくてその場から逃げた

 

 ボーダーに入ればオレは、ちゃんとオレ自身の力で強くなれるのに。それを許してくれない兄ちゃんが今は大嫌いだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 伶.side

 

「あ、おい!……一体なにがアイツを変えたんだ……?」

 

 いつ振りだ?ってくらいフィーロの怒った声を聞いた

 

 臨時でオレ達のオペレーターをしてくれている沢村さんのおかげでフィーロのほうが苦戦をしていると聞いて駆けつけたのだ。あいつなら大丈夫だろうと思っていたのだけどそうでもなかったらしい。進さんに後を任せてオレは救援に向かったのだけど

 どうしてこうなったんだろうな。最悪どこかに隠れて強引に残ろうとするかもしれないし。なんとかしてボーダーに残りたい理由を知りたいものだ

 

『…あの、大丈夫ですか、フィーロくん…?』

 

「多分、大丈夫じゃないと思うかな…」

 

 沢村さんまで心配してくれている。トリオン体だけどなんだか一気に疲れた気がする

 

 翌日の昼前にオレは目を覚ました

 

「おはよう。よく眠れた?」

 

「おはよう、ちゃんと寝れたよ」

 

 起きて下に降りれば昼食の準備をしてくれている母さんがいた。涼治は今起きたのかよと呆れられ、涼子には身体壊しちゃうんじゃない? と心配された。ちょっとずつだけど2人とも仲は進展していってると思いたい。フィーロのこともあり少し人間関係に不安を感じていた。もしかしたら仲が良いと思っているのは自分だけなんじゃないかと

 

「今日は何か予定があるのか?」

 

「………あーボーダーに呼ばれているから…」

 

 父さんが何かを楽しみにしているような感じで聞いてくるからすこし困惑してしまった。オレを引き取って育ててくれた義父(とうさん)とは全く違うから。もしかして昨日2人だけで話せたのがそこまで嬉しかったのかと思ったが、今日は予定があると知ると徐に肩を落とした

 

 実の親と言えどそこまで父さんのことを知っているわけでもないからイマイチ理解ができなかった

 

 昼食を食べてボーダーに着くと会議室ってところに呼ばれた。オレが最初に来たところと同じ場所。だけど今回は照明をつけていて部屋は明るい。座るように言われたので座った

 

 メンバーは城戸指令や忍田本部長たち幹部の4人と―

 

「風間隊隊長、風間蒼也。兄が世話になった」

 

「篠島伶。全くだよ。恩は返してもらったのに居座り続けるからどうやって送り返そうか悩まされたよ」

 

「はぁ……それはすまなかった」

 

 進さんと違って蒼也くんは結構礼儀正しかった。だけど見目の割りに表情の変化は乏しいみたいだけど。そういえば4つしたの弟がいるって言っていたのを思い出して、もしかしてと思ってオレは確認をするために多分だが聞いてはいけないことを聞いてみた

 

「ちなみに…年っていくつなんだ?」

 

「21だ」

 

「…やっぱり」

 

 三男や四男じゃなく次男でした。「くん」じゃなく「さん」と呼ぶのが正しいようだ

 

「そうか…ごめん、年下に見えてた」

 

「気にするな。いつものことだ」

 

 遺伝子って理不尽だな。兄は平均を超えているのに弟は以下なんだから。しかもこれで成人ってわけだから酒を頼むのも大変だと思う

 

「それで、お前は?」

 

「………三輪」

 

「三輪ね。一応聞くが年上って事ないよな?」

 

「ネイバーに気遣われたって嬉しくなんかない」

 

 名前だけだがとりあえずどう呼べばいいのかだけ分かればそれでいい。蒼也さんのこともあるし年齢の確認もしたかったけどさすがにそれには答えてくれなかった

 

 あとは玉狛から支部長の林藤さんがいる。旧ボーダーメンバーの1人ということもあり支部長でありながらこうして幹部会議に呼ばれたりするらしい。だけど陽太郎がいるのは謎だった。雷神丸も

 

「話を続けよう。予定していた通り近いうちに大規模進行がくる。そのために我々ができるうる限りの対策を講じているのだが、アフトクラトルとキオンのどちらかというところまで絞ることはできた」

 

「へー侵攻の察知だけでなく国の特定までできてるんだ。意外と優秀だな」

 

 正直驚いた。玄界(ミデン)を近寄る国はいくつもある。もちろん進路図からどの国かまで判明することも不可能じゃない。その国の情報をもっていればだが

 

「問題はここからだ。攻めて来る国によって対策を考える必要がある」

 

「なるほど。つまり傭兵としてあちこち国を行ってるオレからその2国の情報を得よう、ということなんだな?」

 

「理解が早くて助かる。対価が必要なら払おう」

 

「なりふり構ってられない…か」

 

 強引だなって思うが金で人的被害を抑えられるなら安いって考えなんだろう。ボーダーが設立されてまだ4年程度。市民からの信頼はあれど、それでもまだ少しの切っ掛けで崩れ去ってもおかしくはない。だから得られるなら少しでも確率性の高い選択肢を選ぶと言うわけだ

 とはいえ、キオンもアフトクラトルのどちらも大国。断定するにしてもあまり大差はない。ブラックトリガーの数ならアフトクラトルが圧倒的だが

 

「オレから情報を与えようにも、どうしてその2国に絞れたのか知りたい。教えるのはそれからだ」

 

 無闇に情報を与えればその2国、さらにはソチノイラにも影響を受けかねない。最悪報復と言う形で攻撃されることもありえないことじゃない

 

「いいだろう。忍田本部長、説明を頼む」

 

「わかりました。まずは我々が観測している近界(ネイバーフッド)の話から―」

 

 絞れた理由はこうだ。ボーダーが観測している周辺国の進路図で最も接近している国がいくつか存在するという。これまでも近づくに連れて送られてくるトリオン兵の数が増えてきたこともあったから警戒していると

 その次に纏めて送られてきたトリオン兵の行動が規則的であったこと。誰かしらが命令を出している、1人の隊員を執拗に狙う、隊員を前にして警戒区域外に向かおうとする、などから自立行動を行う通常のトリオン兵とは違う行動を示していると言うことだ

 

 だがこの二つはありきたりな理由。この程度でいちいち警戒していればキリがない。本題はその次だ

 

「そして先月、三門上空に超大型トリオン兵が出現した」

 

 説明と同時に奥の壁に設置されているスクリーンにはイルガーが表示された。たしかにトリオンを大量に使うイルガーを造っている国は多くはない。アフトクラトルやキオンと断定するのも分かる

 

「これは嵐山隊の木虎が撃破。川に落下し自爆による被害は最小限に抑えられた。次にイレギュラーゲートは超大型トリオン兵出現よりも前に起こり、後になって原因が判明し隊員総出で処理を行った。これがそのイレギュラーゲートを発生させる原因のトリオン兵ラッドだ」

 

「これは…!」

 

 イルガーの次に表示されたのがまさかの偵察型トリオン兵・ラッドだった。小型のボディにモールモッドと同じ脚で歩く攻撃性のない情報収集用だ

 

「これには全く苦労したわい」

 

 背もたれに体を預けて鬼怒田さんが腕を組んで怒っていた。ということは原因が分かるまで相当苦労したってことだろう。その考えは当りらしく、修が動かないラッドを見つけたことでイレギュラゲートの発生原因を突き止めたという。C級隊員も使って全てのラッドを掃討したらしい

 

「以上が2国が大規模侵攻に大きく関わっていると判断した理由だ。なにか追加する情報があると助かるんだが」

 

「あるもなにも、そのラッドを送り込んだのはアフトクラトルだ」

 

「なに!?そ、それは本当なんだろうな!」

 

 忍田本部長の分かりやすい説明のおかげでここ最近の出来事も含めて把握することができた。だけどラッドまで分かっていて特定できていないことちょっと歯がゆい気持ちだった

 説明の後に他に情報はと聞かれたのでオレは答えた

 

 金と引き換えに情報を渡してもよかったけど、オレには大事な家族がこの玄界(ミデン)にいる。金は命に換えられない、オレが生きているように母さんたちも生きていてほしい。そのためにできることがあるなら少しでもボーダーの力になるつもりだった

 

 

 

 

 

 

 ソチノイラ南部にある学術都市「クルシャンス」

 多くのトリオン技術者や研究者など存在する、ソチノイラの最先端技術が集中しているここは首都のデルシスよりも発展している。普通なら首都が最先端なのだろうが、一部の技術は交易用に開発などされており。安全性や利便性やコストなど基準をクリアしたものが他国との交易や首都や各都市への販売される

 

 もちろん医療に関してもクルシャンスが最先端だ。その大病院の一つ、トリオン分析士のヤクーバは電話を片手に渋い顔をしていた

 

「先生?どうかされましたか?」

 

「それがね、デルシスにいる甥っ子の定期健診の日が過ぎているのに来ないから心配になって」

 

 看護士が困っている様子を見て声を掛けた

 

「甥っ子って確か傭兵をやっているって言うレイ君ですよね?」

 

「そうだよ。あの子は他の患者とは違いすぎるから定期的に来る様に言ってるんだけど」

 

「…レイ君って今旅行に言ってるじゃないですか?少し前に先生が言ってましたよ?」

 

「………ああ!そうだった!」

 

 言われて今、伶は旅行中だったのを思い出した。お土産持って検診に行くと連絡を貰ったのを忘れていたのだ

 

「あーまた忘れてたか…早く戻って来い……手遅れになる前に」

 

 頭を掻いていつものように忘れてしまっていたのを悔やむような様子で、モニターに表示した伶のこれまでの検診結果の画像を見た。背中の痣を中心に全身に広がるトリオン。まるで木の根のように見えるそれは頭部に集中していた。ヤクーバはそれが原因で伶にサイドエフェクトが発現してしまっているんじゃないかと考えている。もしそうだとしたら、伶を攫った国は人為的にサイドエフェクトを発現させる技術を持っていることでもある

 だがその技術は未完成なのか、それとも完成して「コレ」でなのかは不明だった。伶の診断画像は古いものと最新のと比べると、根のようなものは()()()()()()。今現在も

 ありえないかもしれないがサイドエフェクトが2つ以上発現してしまう可能性がある。これまで多くの患者を診てきたヤクーバでもそんなことは前例がない。伶のために治療法、薬の開発をする必要が出てくる。だが当然検証するための実験体は伶自身にやってもらうことになる。叔父としてはそれは心苦しいと思っていた

 

 人為的にサイドエフェクトの発現はすごいが、成長し続けるのならそれは結果的に人の精神を破滅させてしまう。医者の端くれとしてそれは許せない所業だ




大規模侵攻が終わったあとの大まかにできてるけど
どう詰めていくかなやむなぁ・・・
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。