昔話を語るのは夜だよね!

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 視点変更あります。文章密度(?)高めです。眼精疲労には気をつけててきとーに流し読みでもしてやってください。


深夜曲学:拡大解釈

 君は、知っているかい? その檻になにが閉じ込められているか。

 

 いやはや、これを語る日がくるとはぼくは全くもって今日まで思っちゃぁいなかったし、語る必要があるなんてことも思いもしなかったけど、しかし君がその部屋に()()()()()()()()()というのなら───ぼくは、君に言わざるを得ないわけだ。

 

 これはぼくからの降伏勧告みたいなものなのだけれど……それでも君は往くのだろう? 知っているさ。知っているからこそ、ぼくは君にあの檻の正体を語らないといけなくなるのさ。

 

 ……君はさ、神様ってやつを信じるかい?

 

 いやいや、信じる者は救われるなんてことぼくはちっとも思っちゃぁいないし、結局神様ってやつはきまぐれなんだよね。だれかを助けるかもしれないし、だれも助けないかもしれない。奇跡ってやつが神様が助けた証明なのさ。

 

 けれど奇跡ってやつはめったに起こらない。希望はなく、結局死んでゆく人もいる。死んで彼らはどこにゆくのだろうね?

 

 ……ああ。君が答えを求める気持ちもわかる。わかるが、しかしそんなに急いでいては物語を理解できないだろう? しっかりと聞いていってくれ。物語を聞き終えて、君がそれでも檻へ向かうというのなら───ぼくは、それを止めない。

 

 さぁ、物語───語ってみよう。

 

 

 

 

 とある場所に突如発生した───いや、実際は生まれた、が正しいのかな? まぁ、ともあれ出来上がった子供は、とある国の次期王女様だったらしいよ。

 

 彼女は生まれて育ち、八歳になった頃に家から逃げ出したんだとさ。一体なにを知っていたのか、一体なにを求めていたのか。……それはわからないけれど、彼女は少なくとも、なにかを求めていたわけだ。

 

 そして逃げ出して───彼女は、ある人体改造を良しとする組織に捕まった。

 

 神様が消えた世界において、彼女は唯一神の力を保って生きていた人間だったからね。そんな彼女を利用することくらい、当たり前だったのさ。少なくともその時代には、その世界には、その組織には。

 

 ───そこで、彼女はある少年と出逢ったそうだ。

 

 感情のない少年だったそうだ。

 

 互いに名を喪失し、彼女は目を、少年は腕と足を……互いに、体を喪失した。幸い彼女は神様の力で、其の目をまた作ったようだけれどね。しかし神の力で作ったとなると、常人には見られないほどの目だ───感情がないから、少年には、その目の魅力も効果はなく。

 

 だからこそ、少年と少女は惹かれ合ったのだろうね。

 

 少年は怪物を殺し、少女は少年の帰りを待った。少年は帰ってこなかった。

 

 少女は待ち続けた。待ち続けた。待ち続けた。

 

 少年が帰ってきたとき、少女は二度とは動かなかったそうだよ。

 

 彼女は少年に三千文字の恋心を遺し、少年は守ってきたものをすべて捨てる覚悟をしたそうだ。

 

 少年は自分が守ってきたものすべてを殺し、潰し、滅ぼした。最期には彼女を抱きしめ共に逝った。

 

 これが一巡目の話だ。

 

 次からふたりはある神話の時代へと向かう。決して誰にも語られざる、じぐざぐの神話の時代だ。

 

 名前も感情もなかった少年は、感情の起伏のないただの少年へと生まれ変わった。機械の腕はなく、ただの少年に。

 

 少女はまた、ある王国の姫に生まれ変わった。

 

 少年と少女は、御天道様も高い刻限に入り組む迷宮のような裏路地の中で出逢ったそうだ。そしてふたりは互いに惹かれ合う。

 

 しかし彼女は少年の住む国の、敵にあたる国の王女だった。死の匂いは近く、耳元を撫でるようでうざったい。

 

 結局、少年は腕と足をなくし、少女は目を失い再び神と成った。

 

 腕も足もない少年に少女は機械の腕を作り出し、二人は二度と国に戻らないことを決めた。

 

 けれど神話の時代の這いずる音はいつも背中についてくる。

 

 少年と少女は離れ離れになり、そして少年は戦地という地獄に自らを投げる。

 

 ……ああ、なんて不幸なんだろう。同情するよ。けれどぼくはね、その少年が、実際にたった一人のために他の全てを犠牲にしたのを知っているから、なんとも言えない。

 

 少年は戦うことを選択した。少女以外の全てを殺して殺して殺し尽くすことを選択した。

 

 一方遠く離れた少女は、少年の無事を祈っていたらしい。いやはや、あっぱれ。ぼくも驚きだ。自分の命なんかどうだっていいと思ってやがる。……全てを再生できる、というのだから、彼女からすれば傷も肉体も要らなかったのかもしれないね。

 

 少年は英雄と言われ、称賛された。戦争なんて生き残ったほうの正義だからね……少年は英雄となり、人々に語られる存在になってしまったのだ。

 

 英雄の一生の終わりは悲劇と相場が決まってる。少女はその力を最大限利用されて殺され、少年も彼女と同様に殺された。

 

 離別のまま死んだ───そして三巡目だ。

 

 少年は、歪な童話を駆け抜けた。どれだけ残酷だったって、それでも生きていれば問題はなかった。母に足を切られ、父に腕を潰され、感情を閉ざした少年の夢に、少女が出てきたそうだ。

 

 傷を治してあげる。かわりに、あなたはわたしを見つけてね───少女はそう言った。

 

 少年が起きると、たしかにそこには無事な両手両足が。よし、と思い、彼はその家から逃げ出した。

 

 そして試練を超え、王城に侵入し、窓の外を眺める、美しい少女と出逢った。

 

 ───その後、二人がどうなったかを知っている人はいない。

 

 

 

 

 全てを聞き、それでもなお檻に向かう少年を見て、ぼくは口を閉ざした。自分にしては珍しく饒舌だった。普段喋ってなんかいなかったから、いちいちの発音にも気を遣いながら長々と語ったが……少年は気づいているのだろうか。

 

 ……まぁいい。ぼくはこの暁の後にくる朝を知っている。知っているからこそ、ぼくは物語に干渉したのだ。だって尊いのだから。

 

 ぼくの介入がなければこのお話は永遠に悲劇を繰り返す。童話の終焉は───この暁だ。

 

 三巡目の結末を次に持ち越す物語の暴挙。

 

 ……しっかし、愛のちからは偉大ってやつか。まさか物語の垣根を越えて記憶を未来から引っ張ってくるなど、常時には考えられない。

 

 それも愛が為せること───と思って、ぼくは持っていた本を開いた。新たな記述がある。その記述を見て、ふたりの物語は───姿を変え渡り歩いた物語は───ようやく、終わるのだと。

 

 あるいは漸く悲劇から抜け出すことができたのだと。

 

 ぼくはそこで理解した。少年と少女がこれから、どれほどの物語を辿ろうが、きっと彼女らは幸せに生きるから。

 

 ぼくは物語に最後の一文を書き加えた。

 

 ───ふたりの行く路に、もう悲劇はない。

 

 

 

 

 閏年はいつもいつでも忙しない。それはわたしのせいでもあるし、ひょっとしたらわたしのせいではないのかもしれないし、いやいややっぱりわたしのせいかもしれない。しかしそんなことは意地のせいで認めたくもないし、だからそのことについてノーコメントとしてしまいたいと思う。とりあえず、わたしは電話をとりだした。最新式すまーとふぉーん。やったー。最近もらったばかりのわたしのスマホは、意外に機能が充実している。うれしい。やったー。そして起動するにはLINEだった。

 

『今からいくね!』

 

『りょーかいb』

 

『できたらそっちからもきてほしいんだよ』

 

『それができたら苦労してねぇよ!w』

 

『そうだねwごめんねw』

 

 今日が終わるまであと十六時間。それまでに、わたしはそこへ向かわなきゃいけない。憂いを思うが閏年は大切な日。だから、わたしはそれから逃げちゃあいけないのだ。そもそもわたしは三百六十五日がんばってなんかいない。だから、今日くらいはがんばるのだ。絶対の絶対に。

 

 いくぞー! と言葉を紡いでみて、わたしは家を飛び出した。パパとママのがんばれという声を聞いて。

 

 

 

 

 わたしの居住区は田舎の田舎でどこへ向かうにもめんどくさい───時間がかかる。だからわたしはそんなにどこかへいかない。基本、家でのんびりのんびり過ごしているだけだ。たぶんあいつもそのはずだ。電車に揺られながら、わたしは思う。

 

 いや、あいつの場合は家ではないか。そういえばそうだ。もはや殆ど家のようなものとはいえ、別にあいつは家にいるわけでもない。ふー。なんだってわたしがあんなおおばかもののために動かなきゃいけないんだ。まぁしかたない。それはしかたないと思っておこう。童話での約束は守るべきだ。

 

 さぁて、わたしは電車から降りる───なぜならもう終点についてしまったからだ。いや、終点というには少しも語弊があるか。終点では終点でも、こぉのちんけな路面電車の終点というだけだ。わたしの場合、空の旅に出るのもよかったかもしれないけれど、さすがにそれはすこし怖い。未だに空にはトラウマがあるのだ。

 

 とりあえず、最初に自動販売機からペットボトルを一つだけ買っておく。長旅になるだろう。わたしからすればたぶんそうなるだろう。

 

 昔であればそんなに大変ではなかっただろう。三百六十五日の約束をしていなかったときならば、そんなに苦でもなかったはずだ。

 

 電車に乗り込んで見れば世界はますます変わっていく。代わる代わる世界は姿を変えていく。

 

 心地がいい。そう思ったのはつかの間、どうにも世界がわたしを嫌っているかのように。若干の緊迫があり、その直後に世界が崩壊したにも似た感覚を覚える───いや、それは言い過ぎか。しかし虚弱で無力で弱々しいこのわたしからしたらそのくらいの感覚を覚えた、ということで、とりあえずわたしは衝撃で大きく前に吹っ飛びかけた、ということだ。痛い。シートベルトがめちゃくちゃ食い込んで痛い。いったいぜんたいどーしたことやら。くっそ、折角わたしが決起した閏年だっていうのになんでこんなに世界はわたしに試練を与えてきやがるんだ、くそぉ。

 

 とりあえず、慣れからか鍛えられた勘に従ってシートベルトを外した。買った飲み物を回収して、それの蓋を開けつつ飲み、先程いた場所をなんとか離れる。周囲の悲鳴なんか知ったこっちゃないですよ。わたしはまずわたしが生きるために戦うんだーい。

 

 そんなことを思いながら、開いていた扉から外に出る。周囲の静止は振り切った、周囲の生死も吹っ切れた。

 

 とりあえず、わたしはそこから抜け出し、走った。くそぅ、世界ってやつはどうしてわたしにこんなに試練を与えてきやがるんだ。くそぉ。くそぉ。つらいぞいたいぞ。まぁこのくらいの痛みはもう慣れたものなので、わたしは逃げるために駆け出した───なにも追っては来ないな、と思いつつ、気分としては馬に乗っての逃避行だばかやろー。いけないいけない、高貴な生まれのわたくしがこんな言葉遣いなのはいけない。いや、別に今はそういうわけじゃないか。じゃあいーや。ばーかばーか! やーいやーいばかやろー! 世界ってやつのばかやろー! そんなんだからわたしは三百六十五日働かねーって決めたんだぞ!

 

 と思ってたら電車が爆発した。

 

 ……いや、ごめんなさい世界さん。さっきのぜんぶ嘘ですから。いやー! いたいのいやー! 助けてー! なんて思ってもわたしのような貧弱女子がそんなに短い間に爆発の距離圏内から逃げ出せているわけがなく、その爆発に巻き込まれて大きく吹き飛んだ───落ちたのは、道路だった。ぎゃー! 死ぬー!

 

 

 

 

 おうおうものの見事にやってくれやがったじゃん。まぁ辛うじて生きてたからいいんだけど。これはわたしを守る幸運さんが辛うじて過労死してでも助けてくれてるってことだな。いや過労死してもらっちゃあ困る。辛うじて生きながらえてくれたまえ。よきにはからえー。よーきーかーなー。おっと危ない車がやってきた。止まってくれたしいいや。さぁて、わたしは現在青信号の車道中心にいるんだけどこれ大変危険だよね。たーすーけーてー! ふざけんな。わたしがなにをしたっていうんだ。あや、やったにはやったんだけどね。でも普通こうなるとかだれが考えるんだよ。

 

 さぁて、信号が変わった。さっさと逃げるぞぉと思ったら信号無視した車が轢き殺しにきた。なんだこれ。三百六十六日目に三百六十五日のぶんの悪運が降り掛かってるとでもいうのか。くそぉ、わたしをだれだと思っていやがる。まだまだ全然平気だよ! と思いつつ、近くにバス停を発見したのでそっちへと向かう。とりあえず、あいつのところにいくのだ。やってきたバスを見るに、少しばかり時間短縮になるだろうし。

 

 と、いうことで止まったバスにさっそく乗り込んで腰を落ち着けた───ら、隣に座ってきた輩がいた。……まぁ、いいんだけれどね。少し顔を拝見すると随分と独身っぽい男の姿。わたしはかわいいししかたないよね、と思っていたら、どうにも運転席のほうへと向かう足があるではないか。少し嫌な予感がしてきたぞぉ、と思っていたら、そいつは案の定バス運転手になにかを突き付けたではないか。

 

 はい、バスジャックですね。

 

 そう考えるとなんか隣に座った男も怪しくなってきた───と、思うと脇腹にひやっとした感覚。ええ……? 今日はほんとについてなさすぎじゃない? いったいわたしがなにをしたっていうんだ。ばーか! ふざけんなー! ばーか!! ばーか!!

 

 若干肌が切れたのか、少し痛む。くそぉ。こういうときこそあいつが出てくるべきでしょ、と思ったはいいけどあいつ肝心な時に役に立たねぇんだよな。ほんと。最初の記録でもそうだったし。ほんと最悪だ。

 

 そんな感じで、バスはだんだんと進んでいきましたとさ。

 

 

 

 

 画面を見ずにスマホを操作する術を身に着けておいてよかった。あいつに『バスジャックなう(´・ω・`) 助けて』とLINEを入れておいたので、たぶんなんとかしてくれるだろう。と、縛られながら思う。まったく、わたしみたいな美少女が病んじゃったら世界の損失だぞ? だからこの縄解いてくれませんかね。いやほんと。おねがいします! おねがいします! 助けてください! マジで!! うぎーうぎぎー。

 

 と思ってたらナイフを首に当てられた。死んじゃうー! なのでおとなしくする。

 

 はぁ。いったいこいつらはなにが目的でなにがしたいんだろうか。わたしにはわからない。でもとりあえずそういうものだろうので、わたしはがんばることにする。あいつほんと早く来いよ。おっと口が悪くございますわね。高貴な身分であられますのに、もったいないですわよ。いやいやそんなことどうでもいいんだ。とりあえず、わたしが思っておくべきことは耐え忍べばあいつがくるだろう、ということだけ。

 

 あーあ、パパとママ心配してねーかな。死んでないといいけど。それくらい今日はわたしにとって運が悪い、全くなにをしたってんだ。そういえば電車に乗ってた人大丈夫かなぁ。なんかじくじくと体が今更ながら痛い。落下のときにけっこう打っちゃったみたいだった。

 

 うん。痛い。

 

 こういうときって、いっつもあいつが助けてくれたんだよね。だからあいつは世界に対するヒーローじゃないんだけど、わたしにとってはヒーローだった。

 

 最初は、まぁ、わたしが助けてって言っても気づかなかったんだけど───

 

 と、思っていたら天井が崩壊した。やっぱり。予想通りだ。さっすがわたしのヒーロー。

 

「───その人を離してもらおうか」

 

 と、あいつはいった。やだ……かっこいい……と思いつつ、わたしは少しにやけてしまう。へっへー、わたしのヒーローはかっこいいんだぞー。

 

 また機械の腕をして、機械の足をして、それでもわたしのヒーローはそこにいてくれる。

 

「な、なんだてめぇ!」

 

「強いていうなら俺かな」

 

 ごめん訂正。相変わらずめちゃくちゃズレている。感情がなかった頃からするとこういう回答まなかったんだから、進歩といえば進歩かな。

 

「……もう一回。その人を離してもらおうか。その人は俺が助けるべきお姫様なんだよ。その眼帯、その服、その声、……ちょっと見てない間にめちゃくちゃはっちゃけたようだけど、それでも俺のお姫様には変わりない」

 

 あっやだかっこいい。

 

 そんなことを思う───駄目だ、やっぱりこの人にはわたしは弱い。とっと弱い。やだ、こっち見ないで。かっこいいなぁほんとあんたお前ほんとお前なぁ!

 

 男達は、まず彼を取り囲んだ。ナイフを持った男も、わたしから離れて彼を警戒している。

 

「戦うのかい?」

 

 と、彼はいう。その声音は機械的に感じる。そういえば、わたしは彼の戦闘を見るのは久しぶりだった。そうそう、彼はまずああやって腕の機構を起動して、牽制に爆破するんだったよなぁ。

 

 あれ。

 

 ……それ、たしか対軍用級だからめちゃくちゃ射程デカかったんじゃないっけ。

 

 巻き込まれない……?

 

 と、思うわたしの考えは間違いであってほしくとも間違いではなく。

 

 爆発音と共に激しい衝撃、崩れる音を聞きながらわたしは倒れたのだった。ぐふっ。

 

 

 

 

 そして緊急入院。病院のベッドでゆらゆらりと揺られている。

 

「……ごめん」

 

 と、言うのは彼だ。彼もまたわたしのように、病院のベッドの上にいて、上体を起こしている。服は胸元が大きく空いており、そこから大きく全身にある火傷のあとが見えた。

 

「全く、君は何回わたしを殺そうとしたら気が済むんだい? ……いや、今もまだ神様の力は使えるんだけど……使えるんだけど、もう『眼』はないんだよ? だからわたしが危険を見極めれるわけないじゃん」

 

「……ごめん」

 

「ごめん、はいらないよ。わたしがほしいのはもっと別の言葉。昔のキミはくれたじゃない? わたしに向けていってくれたじゃん。死ぬほど痛かったし、死ぬほど恥ずかしかった。けど、キミはそんなわたしの恥ずかしいところを見て、見た上で言ってくれたじゃん」

 

「……………………?」

 

「えー!? 覚えてないのー!?」

 

「……ごめん」

 

「……あー! だから! そんな言葉が! ほしいんじゃ! ないの!!」

 

「………………じゃあなんだよ」

 

 と、言う辺り本気で彼は忘れているらしい。うっそぉ。あの時ホントにかっこよくて惚れ直したのに? ほんとに忘れちゃったの? ありえねー。と思いながら、わたしは叫んだ。半分絶叫みたいだったな、と自分ですら思った。

 

「───どんな困難があっても! どんな苦難があっても! 必ず俺が助けにいくって!!」

 

「……いや、それは普通じゃないのか?」

 

「そういっちゃうあたりやっぱりかっこいいんだよなぁ……」

 

「そう思ってもらえてるんなら光栄ってところか」

 

「んー! もう! そこは聞き流すところ!」

 

「生憎、今生は随分と耳が良くてだな。お前の言葉を聞き漏らすことももうないだろう。それに、その綺麗な声も前よりよく聞こえる」

 

「はい反則! それはずるい! そんなこと言われたら今度は三千文字じゃあ済まないよ! キミへの愛で長編小説書けちゃうよ!」

 

 と、言って、

 

「……大丈夫? 無理させちゃったよね」

 

 わたしにしては珍しくしんみりしているのだ。最終的に彼に頼ったことに。彼にはもう以前のような頑丈さはない。機械として生まれ、不完全な人間として生きた彼はようやく人間として生まれ、人間として育てられたのだ。

 

 そんな彼を、わたしはもう、困らせたくはない。

 

「大丈夫大丈夫。むしろ、お前が傷ついているほうが俺にとっての最悪だ」

 

 と、彼はいった。やっぱりどこまでもかっこよくて、以前よりわたしは彼のことが好きだと思った。

 

「……あ、()()

 

「ん? ……おお、ほんとだ。懐かしいな。灰降る廃都市に変わっちまってから、水の青さは見ていないから……」

 

「わたしがいつも見ていた世界だよ」

 

「それはそれは……共有できて、本当に嬉しい」

 

 ふふ、と笑った。わたしはこの人の前では神様とか、三百六十五日の約束とか、そんなのぜんぶ投げ捨てて、ただの女の子でいられる。

 

 名前なく生まれ、意味もなく生まれ、ただなんとなく神にされ、

 

 名前なく生まれ、意味もなく生まれ、ただなんとなく悪魔にされ。

 

 そんなわたしと彼は、どこまでも似ていた。だからこそ、わたしたちは愛し合えた。

 

「……ねぇ。覚えてる? わたしとキミとが駆け抜けた、或る物語の話」

 

「ああ。当然。忘れるわけがないだろう?」

 

 始まりはいつも残酷からで、三千文字の恋心を経て、誰がためにあった悪魔は目より遥かに雄弁な童話を綴り、ジグザグの神話を呑み込むだろう。

 

 それに続く───或いは、続かないわたしの話は、名付けるとしたら……くたばってしまいそうなくらいにめちゃくちゃ忙しい一日と割とそうでもない三百六十五日としようか。

 

「だったらさ───」

 

 

 そう。物語を語るのは深夜だ。それが昔話の鉄則だ。

 

 

 

 

 

 

 

「一緒に暁の忘れ物を取りに行こう」




 企画作品なのに連載にしなきゃ話がわからないような物語構成よくないと思うよ(正論)


 物語のテーマは拡大解釈ってことでめちゃくちゃやらさせていただきました。まずは申し訳ございませんと謝罪を。

 前半部分の語り部『ぼく』のほうのお話が『暁の贈り物』
 後半部分の『わたし』のほうのお話が『めちゃくちゃ忙しい一日とわりとそうでもない三百六十五日』です。

 企画の関係者……主催者? であるお二方には深い感謝を。こんな作品でごめんなさい……()


 なんでこいつ企画作品でそれぞれの人の解釈を見せる作品で解釈をさらに問うてるんだ……?

 それはね、一番最初に出来上がったお話がそのお話だけだとバッドエンドにしかならなかったからなのよ……

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