「ヨヨ様の思い出の教会が……なんてことだ!」
「ヨヨ様……お気を確かに!」
俯く私に、サジンとゼロシンが励ましの言葉をかける。──カーナの恋人たちの聖地であり、私とビュウの約束の地でもある教会は見るも無惨な瓦礫の山と化していた。
「ヨヨ様、落ち着かれるまで後方にお下がり下さい。やつらは「ふ、ふふふふふふふ……」よ、ヨヨさま?」
サジンが私を気遣うように下がるよう進言してくるが、私はそれに思わず低い笑いが漏れる。二人はどうも私が精神的ダメージで動かないと思っていたようだが、この私の尊き精神はそんなに脆弱ではない。
「お、おい。もしかしてここにいるとヤバくないか?」
ゼロシンが危険を察知し、サジンに声をかける。それもそのはず、今、私の身体は非人間的な光を帯び始めているからだ。
「ふ、ふふふふ……褒めてあげるわベロスの蛮族ども……お前たち、この私を苛立たせる事に関しては天才的よ……」
カーナへの襲撃といい、今回の教会の破壊といい、尽く私の怒りを煽ってくれるじゃないの。
「全く……揃いも揃って……塵芥のクズどもがぁっ!!」
「「「うぎゃあああああああぁ!?」」」
私が怒りのままに放った力の奔流に、帝国兵たちもガーゴイルもまとめて呑み込まれる。そして奴らは肉体の一片も残さずこの世から消滅した。
「ちいっ! しまったわ!」
感情が高ぶっていて判断を誤ってしまった。神聖な教会を破壊した罪は死より恐ろしい責め苦を与えて償わせるべきだったわ!!
「す、すごいな……あれがヨヨ様の力か」
「あれ? これオレらいらなくね?」
サジンとゼロシンが私の力を見て何やら感想を述べているが、私はそれどころではない。奴らめ、私とビュウの誓いの場所を破壊してくれやがって!
「おいっ! 今すぐ教会を修復なさいっ!」
私は
「あ? なんですって? 『その願いは自分の力を超えているから無理』?」
つ、使えないっ!! それでも神なの!?
「きぃーっ! あんた仮にも神なんでしょうに!! 時間ぐらい操れないでどうすんのよ!? 神ってのは全知全能じゃないの!?」
なに? 『神の如き力を持つ竜という意味の呼び名であって、実際に神の力を行使できるわけではない』? ちっ、屁理屈をっ!! ……まぁ、確かに
「はっ! それならもういいわ! こんな教会の伝説なんて所詮は迷信よ!」
ここで『彼』に八つ当たりしても仕方ない。考えてみれば、いくら誓いの場所とはいえ失われた物に対して固執するなど愚行の極みだ。
たかが建造物の一つや二つ、今さら粉微塵になったところで私とビュウの輝かしい未来には一片の曇りもない! そう、この胸に抱いた強き想いさえあれば!!
「もうこんな場所はどうでもいいわ! サジン、ゼロシン! すぐに発つわよ!」
「「はっ!」」
瓦礫と化した思い出の教会など、私にとってもはやどうでもいい存在。うにうじ以下の価値しかない。
そうと決まればこんな場所に長居するのは時間の無駄だ。私は飛行形態の下僕一号二号を呼び、サジンとゼロシンを乗らせる。
「うわ、なんだこのドラゴン?」
「子供の落書きみたいだな」
二人は異様な姿のドラゴンに戸惑っていたが、それでも特に抵抗はなくその背に乗った。私もレンダーバッフェを呼び付け、ひらりと飛び乗る。
「いくわよ! さっさとビュウたちと合流するんだから!」
ふふふ、待っていなさい下賎なベロス人ども! 愛しのビュウと再会した暁には、即刻叩き潰してあげるわ!
◇ ◇ ◇
「二人とも、本当にこっちにビュウたち反乱軍がいるの? こっちはキャンベル・ラグーンよ?」
あれから既に数日が経っている。私はふとサジンとゼロシンにそう尋ねる。あの時、飛行してすぐ彼らにキャンベル方面に向かうよう言われたのだ。
「はい。数日前、反乱軍がキャンベルに向かったとの噂を耳にしていましたので。既に発っていないならまだキャンベルにいるはずです」
「まぁ、あなたたちがそう言うならそれでいいけれど」
しかし、今の反乱軍がキャンベル方面に何の用があるのだろうか? 気になるが、まぁそれも合流してみればわかることだ。
「ヨヨ様、お待ち下さい!」
「止まりなさい!」
突如サジンが待つように進言してきたのに従い、私がレンダーバッフェに飛行停止を命ずると、それに従いその場に滞空した状態となった。二人もドラゴンを滞空させ停止している。
「どうしたの?」
「あれをご覧下さい」
突然止まった理由をサジンに尋ねると、彼は指で近場のラグーンを指し示す。私が目を凝らすと、カタパルトのような物体が見えた。
「あれは……帝国軍が運用している砲台ね!」
私はそれで止まった理由を理解する。ドラゴンに乗ったままあれに砲撃されれば撃墜の危険が大きい。しかし、ふと疑問が湧く。
「ここはまだキャンベルではないわよね? どうして帝国軍がいるのかしら?」
「それがどうやら、補給基地のようですね」
「だな。あれが食糧庫で……向こうが火薬庫か」
なるほど。確かに小さな倉庫らしきものが建ち並んでいる。あの中に兵糧やら弾薬やらが詰まっているのだろう。
「しかし、火薬庫ね……うふふふふ」
「よ、ヨヨさま?」「やばそう」
妖しく笑う私にサジンとゼロシンが若干引いているが、私は気にせずに、彼らに砲台の射程を尋ねて、その射程範囲外にレンダーバッフェを着陸させる。
「ヨヨ様、何をするおつもりで?」
「ふふふふ……火薬庫と来たらやる事は決まってるでしょう」
「ま、まさか……」
そのまさかだ。私は杖を構え、魔力を高めてゆく。
──吹き飛べ、愚民どもっ!!
『フ レ イ ム ゲ イ ズ !』
完成した私の魔法によって、火薬庫の中心に大きな火炎が立ち上る。──そして、凄まじい大爆発が起きた。
「うわあああああっ!?」
「なんだこれは!? 何が起こっている!?」
「メディック! メディーーーーック!」
突如訪れた大惨事に帝国兵たちが大パニックを起こす。ああ、なんて気持ちが良いのかしら! 素晴らしいわ!
「やりやがったよこの人ぉ!?」
私の行動にゼロシンが思わずと言った様子で叫ぶが、しかし私の気分は最高潮だ。
「あははははは! 逃げ惑え! 泣き叫べ! 死の炎に怯えろ!」
私は混乱の極地に追い込まれている帝国の兵士らを眺めながら両手を広げて高笑いする。賎しいベロスの蛮人どもがいい気味だわ。あぁ、なんて清々しい気分なのかしら。教会の破壊により燻っていた怒りが洗い流されていくようだわ!
「誰かいるぞ! 襲撃者だ! やつらの仕業に違いない!」
「おや、見つかってしまったわね」
「そりゃこれだけはしゃいでたら見つかりますって」
確かにちょっとはしゃぎすぎたようだ。反省反省。
「しかし、ただの補給基地にしてはやけに大きいわね?」
「確かに。少々過剰な気がしますね」
「キャンベルの駐留軍への供給だけならここまでの補給基地は必要なさそうですが……」
これは何やらきな臭いわね。ビュウたち反乱軍がこのキャンベル・ラグーンに向かったのと関係あるのかしら?
「砲兵隊、撃て! 射程外でも構わん!」
「了解……ば、バカな! カタパルトが不調だと!?」
帝国兵たちが何やら騒いでいると、未だに炎上する基地の奥から筋肉隆々の大男が現れた。
「オレ様の基地で一体なんの騒ぎだ!?」
「ぞ、ゾンベルド将軍!」
あら、ちょうど何か知ってそうな奴じゃないの。これは聞き出すしかないわね!
【サジン&ゼロシン】
依頼人から金を貰って活動するフリーのアサシン。
黒装束に身を包み忍術を使うがあくまでアサシンである。サツバツ!
原作では中盤にダフィラの街中に隠れており、潜伏している所を話しかけると雇うことができる。当然だがスルーすると仲間にならない。
加入時期が遅い為に全く使わないプレイヤーもいるものの、実力は高く忍術による各種属性攻撃はもちろん、フィールドでは周囲の敵、直接戦闘では敵全体を一瞬で即死させる『居合切り』が猛威を振るう。さすがアサシンである。ちなみに回復も得意としており、『チャクラ』で周囲のキャラのHPと状態異常を纏めて回復させられる。
ファーレンハイト内においてはいつも潜伏しており、ビュウ以外に彼らに気付いた人物がいる様子は無い。下手をするとビュウ以外は誰も彼らの存在を知らないと思われる。
サジンは静かで見つからない場所を好み仕事の話ばかりする典型的なアサシンらしいアサシンだが、相方のゼロシンの方はというと、母親に仕送りしながら、笑顔の練習をして友達を作ろうとしているという健気な人物。しかしずっと潜伏していたため、結局原作終了時まで彼に友達ができる事は無かった……。
彼らを雇う際には普通に雇うかオプションで暗殺依頼をするか選べるのだが、この暗殺依頼の選択肢が敵側が一人も入っていないというとんでもないもの。
その暗殺対象はというと『ファーレンハイトのクルー』『マテライト』そして『ヨヨ』である。
シナリオ的に結局マテライトとヨヨの暗殺は未遂で終わるのだが、仮にもカーナの騎士団長とカーナの王女の暗殺を依頼するビュウのとんでもぶりが光る。なお、2回目以降のプレイをしている場合は暗殺依頼の対象はほとんどヨヨになるようだ。ですよねー。
ちなみにクルーの暗殺依頼は本当に成功し、シナリオが進む度に彼らの墓が艦内に増えていく。
なお、クルーの暗殺、マテライトとヨヨの暗殺未遂をやるのは全てサジンである。ゼロシン仕事しろ。