ヨヨですけど、何か問題でも?   作:れいのやつ Lv40

12 / 46
唐突な番外編
UA30000突破記念


番外:もしもヨヨ様がパルパレオスとの飛行イベントを起こしていたら

「サウザー皇帝から飛行の許しが下りました」

 

 ──雲海にラグーンが浮かぶ世界、オレルス。その世界の覇者、グランベロス帝国皇帝サウザーが最も信頼を置く将軍、パルパレオスは、薄暗い牢屋の中で美しい金髪の少女にそう話し掛けた。

 

 ──カーナ王女ヨヨ。グランベロス帝国に滅ぼされた亡国、カーナ王家の姫君。

 

「さぁ、ヨヨ王女……行きましょう。私のドラゴンが外で待っています」

 

 神と呼ばれし竜、『神竜』と心を通わせられる人間、カーナ王家に伝わる『ドラグナー』の資質を持つ彼女は、その力ゆえに、未だに帝国に生存を許されている。皇帝サウザーの野望──神竜の伝説に挑むこと──を果たす為にはヨヨの力が必要であり、彼女が監禁生活で心身を病む事は避けなければならなかった。

 

 今回の飛行は、そういった理由からサウザーが許可したものだった。……パルパレオスがヨヨを気にかけ、少なからず好意を抱いているのも許可した理由のひとつであるようだが。

 

「一度だけなのね……夜が訪れるまでの数時間……」

 

 監禁生活の中で少しだけ与えられた偽りの自由に、ヨヨは憂いを帯びた様子でその美しい顔を歪めた。パルパレオスはそれに無言を貫くしかなかった。

 

「……本当にどこへでも飛んでくださるの?」

 

 パルパレオスの胸板に身体を預けながら、ヨヨが上目遣いでそう問い掛ける。どこか行きたい場所があるのだろうか。彼女の仕種にドキリとしながら、パルパレオスはできるだけ動揺を悟られないよう冷静に返答した。

 

「お望みのところへ……」

 

 

   ◇   ◇   ◇

 

 

 自身が滅ぼした国の王女を後ろに乗せ、愛竜レンダーバッフェで空を翔ける。他者から見ればまるで逃避行のように映るであろう状況に、パルパレオスは不可思議な気分であった。

 

「カーナの戦竜と比べては劣るかもしれません」

「…………」

 

 そう言っても王女は無言のまま。しかし、甘えるように彼の首に両腕を絡めてくる。そのまま抱きしめるようにヨヨの腕に力が篭るのがわかった。

 

「ヨヨ王女……」

 

 そんなに力を入れなくても、と言おうとしたパルパレオスであったが、それは叶わなかった。なぜなら──

 

「おらぁ!!」

「ぐふっ!!?」

 

 ──ヨヨがそのままパルパレオスの首を締め上げたからであった。

 

「……ぐ……かは……!?」

 

 突然のヨヨの暴挙にパルパレオスは抵抗を試みるが、ヨヨは少女とは思えない腕力で彼を締め上げている。それもそのはず、実は彼女はこの飛行の前に強化魔法ビンゴを自身に使用しており、身体能力を上昇させていたのだ。今の彼女の腕力は屈強なパルパレオスをも上回っていた。

 

 パルパレオスの抵抗空しく、ヨヨは完全に殺す気でより一層彼を締め上げる。

 

「おらっ! 逝け! 逝ってしまえ!!」

 

 普段の淑やかさなど一切見られない乱暴なヨヨの言葉を聞きながら、パルパレオスはついに意識を飛ばしかける。

 そしてその隙を見逃さず、ヨヨがパルパレオスの身体を持ち上げて──そのまま投げ捨てる。

 

「うわあああああっ!?」

 

 ──こうして、帝国将軍パルパレオスは戦場に散る事もできず雲海の露と消えるのであった。それを見ながら、ヨヨは心底嬉しそうな笑顔で手を振り、落下してゆくパルパレオスに言葉をかけた。

 

「グッバイ、パルパレオス!」

 

 

   ◆   ◆   ◆

 

 

「あっはははは! 馬鹿め! この私に飛行を許したのがお前たちの最大の過ちよ!!」

 

 パルパレオスを雲海へと投げ落とし、私は久々に心の底から笑った。私を単なる王室育ちのお姫様と侮ったわね。竜の背の上、それも周囲に何もない空中という無防備な場所でこの私に背を見せるなどと、殺してくれと言っているようなものよ。

 まぁ、下賎なベロス人如きが尊きこの私と空を翔ける栄誉を賜ったのだ。冥府への手土産には過分な褒章でしょう。

 

「おい。お前、まさか私に逆らうなどと考えていないわね?」

 

 私は今その背に乗っているドラゴン──レンダーバッフェに語りかける。こいつの主人はたった今、この私に投げ落されたばかりだ。もし反抗でもされると面倒である。

 サラマンダーよりずっとおそい駄竜だが、今現在、私の移動手段はこいつだけであるし。

 

「────!?」

 

 するとレンダーバッフェは慌てて私に服従の意を示してきた。どうやら逆らったらマズいと本能的にわかるらしい。ふふふ、賢い子は好きよ? 

 

「そう。うふふふ、これで私は自由! このオレルスの空は私の物よ!」

 

 ふふふ、実に清々しい気分だ。この美しい大空によって牢獄生活で燻っていた負の感情が洗われていくようだわ。

 

「愛しい人も〜♪ 素晴らしき世界も〜♪ 運命さえも〜♪ この手の中に〜♪」

 

 ──カーナ陥落以来、私は随分と我慢を重ねてきたが、それも今日まで! 忌々しい帝国から解放され、私は自由になることができる! 

 

「あら、ここは」

 

 上機嫌の私の前に、神聖な雰囲気の建物──思い出の教会が目に入った。

 飛行の行き先を聞かれ思い浮かんだのがこの場所だったのだが、どうやらあの男は私に言われるがまま律儀にここを目指していたようだ。私はレンダーバッフェに降りるよう命じ、教会の側まで歩み寄る。

 

「懐かしい。愛しいビュウとの思い出の場所……ああ、彼は今どうしているかしら」

 

 二人きりで訪れた男女は将来必ず結ばれるという言い伝えを宿した、カーナの恋人たちの聖地。数年前、この教会でビュウと誓いを交わしたあの日は、今でも鮮明に思い出せる。

 

「待っていてビュウ。私は必ずあなたの元へ行くわ」

 

 ふふふ、この約束の地に誓いましょう。愛しいビュウの心を手に入れることを! ついでに帝国を叩き潰し、オレルスの全てを私の物にすることを! 

 

「……ん?」

 

 そう誓った私であったが、何やら突如として天候が悪化してきているのを察知した。空が黒雲に覆われたかと思えば、凄まじい雷鳴が轟き──

 

「……は?」

 

 ──轟音と共に黒雲から地に降り注いだ落雷が、まるで何者かの意思が働いたかの如く狙いすましたかのように思い出の教会へと直撃し、哀れ教会は粉微塵に崩壊するのだった。

 

 ──わ、私とビュウの約束の地があああぁ!?




サウザー『急募:王女が気弱な世界線』


実はこれ没1話でして、話の流れに見覚えがあるだろうのはそのせいです。
でもどうせなら序盤から最強ヨヨ様にしてしまえと宝物庫襲撃でエンプレスカーナを手に入れる事に。ついでにいつの間にかアサシン組が仲間になってペルソナとゾンベルドが退場してました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。