ヨヨですけど、何か問題でも?   作:れいのやつ Lv40

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覇王


「辛気臭いところじゃな」

 

 険しい表情の老将──カーナ王国騎士団長マテライトがそう呟く。俺たち反乱軍は今、キャンベルの森の奥深くに来ていた。マテライトの言う通り、薄暗く、魔物が跋扈するこの森はかなり不気味な場所だ。少なくとも積極的に訪れるような場所ではないな。

 

「こんなところにサウザーがいるのかねえ?」

「私の仕入れた情報ではそのはずだけどね〜?」

 

 熟年の僧侶──プリーストであるゾラの呟きに対し、のんびりした口調でそう言ったのは同じくプリーストのディアナだ。何かとアクが強い人間が揃っている反乱軍では地味な存在だが、正直、反乱軍一謎な人物は彼女だと思っている。今の発言とかな。

 『私が仕入れた』って一体どっからだ。いつもファーレンハイトの女部屋から出て来ないのにどうやってサウザーの動向を掴んだんだか……。おっと。

 

「フレイムヒット!」

 

 俺は双剣を交差させ、必殺剣を放つ。一面に炎が広がり、木々の奥に潜んでいた植物の魔物──トリフィドを焼き尽くした。

 

「おお〜、ビュウつよーい!」

「あんまりはしゃいじゃダメよ、メロディア」

「はーい」

 

 少女というよりは幼女というべき容姿の黒魔術師──ウィザードのメロディアがはしゃぐのを軽装歩兵──ライトアーマーのルキアが窘めた。メロディアが呑気な返事をし周囲から笑いが漏れる。と、苦笑して立ち止まっていた重装歩兵──ヘビーアーマーのバルクレイに、後ろを歩いていたウィザードのアナスタシアがぶつかり、「あたっ」と可愛らしい呟きが漏れる。

 

「ちょっとバルクレイ! あんたがのろのろしてるからぶつかったじゃない!」

「なんだと!? そっちが前を見ていなかったんだろう!」

「なにおーっ!?」

 

 そのまま二人は言い争いを始めてしまった。それを見て蒸れる鎧が悩みなヘビーアーマーのグンソーがボリボリと体を掻きながらやれやれと首を振る。ウチの軍はどうにも緊張感がないな……気を張りすぎるよりはマシか?

 

「「フレイムダスト!!」」

「フレイムゲイズ……ウフフフフ……ウフ」

「キュアアァ!」

 

 フルンゼとレーヴェのランサーコンビの炎の槍とエカテリーナらウィザードたちの火炎魔法、そしてサラマンダーのヘルファイアでトリフィド共を焼き払いつつ森を進んでいくと、やがて周囲の様子が変わる。

 

「む、奴が見えたでアリマス!」

 

 だみ声のヘビーアーマー、タイチョーのその言葉に一気に皆の雰囲気が引き締まった。森の最奥に目を向けると、確かに見える。

 愛剣を手に佇む銀髪の皇帝と──鮮やかな緑色の鱗に覆われた巨大な竜の化石が。

 

「居おったなサウザー! ……しかし、あの馬鹿でかい竜はなんじゃ?」

「あ、そうか!」

 

 マテライトの疑問に答えたのは反乱軍の知恵袋こと老師センダックだ。

 

「この森の気配、どこかで感じた事があると思ってた。これ、カーナのバハムート神殿と同じ。神竜の気配!」

 

 センダックはバハムート神殿で祭事を執り行う司祭──ワーロックだ。そんな彼の感覚は確かだろう。とすると、あれは神竜か?

 

「なるほど……ヨヨ様はカーナ王家に伝わる神竜と対話する力を持っている。あの日、サウザーがヨヨ様を連れて行ったのは神竜と話すためだったのですね」

 

 サウザーの考えを理解し納得したように頷くナイトのトゥルースだが、「ならよぉ」と横から声がかかる。

 

「肝心のヨヨ様はどこにいんだよ?」

「い、いないよね……もぐもぐ」

 

 確かに同じくナイトの二人──ラッシュとビッケバッケが言うように、サウザーの近くにヨヨ様の姿は見当たらない。ヨヨ様がいなければ神竜と話す事はできないはずだが……どういう事だ?

 

「ええい、ここでウダウダしていても仕方なかろう! わからん事は奴から聞き出せばいいんじゃ!」

「マ、マテライト殿ー!? 待つでアリマース!」

 

 そう言うとマテライトは側のタイチョーが止める間もなく一人でサウザーの方に走っていってしまった。おいおい……だが、彼の言う事は一理ある。わからなければわかる奴から聞き出せばいい。どの道サウザーはここで仕留める予定だったしな。

 

「サウザー! こんな森にのこのこと現れよったな! よくもヨヨ様を浚いよって!」

 

 俺たちが追いつくと、マテライトがサウザーに啖呵を切っていた。それを聞いてか、サウザーは神竜から振り返り俺たちを見据える。

 

「無礼な……私をまるで誘拐犯のように言うのは止めていただきたい。ヨヨ王女は私が神竜の力を手に入れる為に大切なお方。丁重にお迎えしたに過ぎぬ」

「そう言う割には、ヨヨ様はいないようだが?」

 

 俺がそう言うと、サウザーは困ったようにわざとらしく肩を竦めた。

 

「あの方ならば、既に私の手を離れて久しいさ」

「何じゃと? どういう意味じゃ?」

「どうも何もそのままだ。数日前に帝国から脱走されてしまってな」

 

 マジかよオイ。ヨヨ様ならやりかねないとは思っていたが本当に一人で逃げ出したのかあの人……。

 

「その際王女がどういう手を使ったのかは知らないが、我が友パルパレオスは今や昏睡状態だ。更には宝物庫から宝物を奪った挙げ句に、粉々に破壊していったそうだ」

 

 やりたい放題だなオイ。さすがというかなんというか。それを聞き、マテライトが大笑いする。

 

「がはははは! 所詮、貴様如きがヨヨ様をどうこうするなど無理な話だったんじゃ!」

「そのようだな。単なる王室育ちのお姫様だと思っていたのだが……いやはや恐れ入った」

 

 やれやれ、といった風にサウザーは首を振る。

 

「ゆえに、私一人で神竜に会いに来たのだが……どうやら神竜は気難しいらしくてな。私では不満らしい」

 

 まぁ、今までカーナ王家の人間以外が神竜と話をしたという記録はないからな。この男ならあるいは出来るのかとも思ったが……。

 

「して、諸君らは私に何用かな?」

「決まっているじゃろう! 貴様の首じゃ!」

 

 マテライトがそう叫ぶとサウザーは笑みを浮かべる。

 

「ほぉ、それは勇ましい事だ。よかろう、この私の首、掻き切ってみせるがいい!」

「行くぞ!」

 

 俺が皆に号令をかけると同時にマテライトがその破壊の力をサウザーに叩きつける。

 

「インスパイア! ……ぬっ!?」

「フッ……ぬるいな」

 

 しかし、サウザーはその雷撃を食らっても平然としていた。マテライトのインスパイアは城壁も破壊する技だというのに……なんて奴だ。

 

「フレイムヒット!」

「む……これは、クロスナイトの技か」

 

 俺は必殺剣を放つが、奴は涼しい顔のまま後退し──そのまま火の粉すら浴びる事も無く炎が収まる。

 

「ただ歩くだけで必殺剣の範囲から逃れただと!?」

「フッ、確かに素晴らしい剣だが……その技の影響範囲はよく知っていてな」

 

 ……まずいな、力の差がありすぎるか? 皇帝が一人で帝国外に出るなど滅多にない機会だ。陥落時のように将軍たちもいない今なら仕留められると思っていたが、見誤ったか!

 

「私もそろそろ反撃させてもらおうか」

「……っ! 皆、散れ!」

 

 皆が俺の言葉に従い各人が技や詠唱の体勢から強引に散開する。そしてサウザーの剣、カイゼルブレイドに凄まじい闘気が集中し──解放される。

 

「ラグナレック!!」

 

 ──瞬間、天地が裂ける。

 

「うわああああっ!?」

「きゃああああぁ!?」

「皆っ!」「若造どもっ!」

 

 蒼い闘気が走り、衝撃波を受けた皆が吹き飛ばされる。最もサウザーの近くにいたはずの俺と咄嗟に防御したマテライトは何とか踏み止まっていた。

 

「モニョ〜!(やばいぜやばいぜ!)」

「マニョ〜!(死の足音が聞こえるぜ!)」

「あわわわわ! 何かないか何かないか……!?」

 

 偶然にも衝撃波から逃れていた小悪魔──プチデビたちが焦るように跳ね回り、プリーストのフレデリカが自前の薬袋から万能薬やらリタンシブルやらをぶちまけている。……意外と余裕そうだなお前ら。

 

「何という力じゃ……伊達に世界の覇者となったわけではないということか!」

 

 確かにマテライトの言う通りだ。俺たちはオレルスの支配者サウザーを甘く見ていたらしい。しかし、当のサウザーは顎に手を当てて「ふむ」と呟く。

 

「並の軍なら今の一撃で終わりなのだが……まさか女子供一人仕留められんとはな。なるほど、私に挑んでくるだけの事はあるらしい」

 

 確かに奴の言う通り、皆は先のラグナレックで吹き飛ばされてボロボロだが、死者は出ていない。仲間内で最も体力に不安のあるメロディアでさえ杖を使ってなんとか立っていられている。それを見てサウザーが再びカイゼルブレイドを構える。

 

「諸君らが力をつければ、未来の私にとって脅威足りえるだろう。ここで一掃させてもらうとしよう」

「──それは認められないわね」

「──何?」

 

 殲滅宣言をしたサウザーに対し、透き通るような美しい声がその動作を遮った。この声は……! すると、まばゆい光が辺りを包み込み、視界が白に染まる。

 

「い、今のは何!? 皆の傷が治ったわ!」

 

 驚きの声を上げたルキアの言葉通り、光が収まったかと思えばサウザーの攻撃で負傷していたはずの皆の傷は、まるで初めから無かったかのように綺麗さっぱり消えていた。

 

「これは……!?」

 

 あのサウザーですら、目の前で起きた現象に驚愕して目を見開いている。すると、再び透き通るような声が響いた。

 

「ずいぶんと面白い見世物をやっているわねサウザー皇帝。──不愉快だわ」

 

 そう言って屈強なドラゴンから優雅に飛び降りてきたのは、俺たちが探し求めていたお方。

 

「おお……! なんと凛々しいお姿……!」

 

 マテライトが歓喜に震えている。俺も、サウザーを前にしていなければ手を叩いて喜びたい気分だ。

 

「これはこれは。まさか貴女の方から再び私の前に現れて下さるとは」

「ふっ、感謝なさいな。お前の命運に、この尊き私が手ずから終止符を打とうというのだからね?」

 

 皮肉げに笑ったサウザーに堂々とそう返したのは、金髪翠眼の美しく、隠しきれぬ王気を纏った女性。

 

「皆、カーナ亡き後、その義務も無いというのに私を救出する為によく動いてくれたようね。──大義である」

「ヨヨ様……!!」

 

 ──俺たちは、遂に仕えるべき主君と再会したのだった。




【サウザー】
グランベロス帝国皇帝で、傭兵国家だった旧ベロスを自らの武力により纏め上げ帝国を建国し、オレルスの全ラグーンを統一した覇王。神竜の伝説に挑むためカーナを滅ぼした張本人。
設定上はドラグナーのヨヨを除くと恐らく人類最強であるが、原作ではシナリオ中盤のボスである。

最序盤で神竜ヴァリトラの眠るキャンベルの森にて反乱軍の主要メンバーと4対1で戦うが、所謂負けイベントであり、こちらが2桁ダメージ与えるのが精一杯なところにサウザーの方は軽く4桁ダメージを叩き出す。オレルスの覇者の圧倒的な力を見せつけてくれる。
……が、このゲームは『強くてニューゲーム』が可能であり、その場合もサウザーは無敵で絶対に倒せないのだが、こちらがゲームクリア時の能力を引き継いでいるのに対してサウザーはシナリオ中盤で戦う時の能力そのままなので、中々サウザーがこちらにダメージを与えられずに戦闘が終わらないという場合も多く、むしろプレイヤーがサウザーを応援する羽目になったりする。
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