ゾンベルドの情報を元にキャンベルの森に来て、サウザーとビュウたちを同時に見つけたと思ったらいきなり反乱軍壊滅の危機だったわ。危ない危ない。とりあえず
「ヨヨ様……このマテライト、年甲斐もなく感動しておりますぞ」
「ヨヨ様、俺はこの日を待ち望んでおりました」
ビュウとマテライト──私が最も信頼を置く二人の騎士の言葉に、私は笑みで以て返す。
「ビュウ、マテライト。あなたたちがどれほど苦汁を舐め、泥を啜る日々を過ごしてきたのか、私には到底察せられない」
帝国で囚われの身であったといえど、一人だけ安寧に過ごしていた私には彼らの今までの歩みは想像できるものではない。ただ一つ言えるのは、彼らの行動の意味は今この時のためにあったということだ。
「今、私はここに来た。我が祖国、カーナ亡き後も私に忠義を捧げんとする皆の想いが私をここに導いたのよ」
「もったいなきお言葉です(じゃ)」
二人がそう私に返答するも、その目は油断なくサウザーを見据えたままだ。私がサウザーに向かい振り返ると、奴から声がかかる。
「感動の再会といったところですかな、ヨヨ王女」
ここが劇場ならば拍手でもしそうな調子でサウザーが言った。私が背中を見せたというのにわざわざ会話が終わるまで待っているとは律儀な男だ。まぁ、斬りかかってきたら即座に波動をぶつけてやるところだったのだが。
「余裕ね、サウザー皇帝? あなたが求めた力がその身に向けられようとしているというのに」
「何、私も神竜を操るというカーナ王家の力には興味があるのでな。しかし、そちらが貴女の本来の姿か。ずいぶんと猫を被っていたようだ」
それはまぁ、この私とて周囲に味方のいない状況でこの性格を表に出すほど無謀ではない。
「貴女のおかげで我が友パルパレオスは今も生死の境をさまよっている」
あら、くたばっていなかったのねあの男。あの時は脱出を優先したが……きっちりトドメを刺しておくべきだったかしら?
「うふふふ、必死で私の機嫌を取るあなたたちを見ているのは愉快だったわ!」
「それはそれは──あまり私を舐めないでいただきたい」
サウザーのカイゼルブレイドに凄まじい闘気が集中する。なるほど、皆がやられたのはこれね。
「「ヨヨ様っ!」」
ビュウとマテライトが私を庇うべく私の前に出ようとする。私の臣下として当然の行動だが──今においてはまずい。
「──お前たち!」
「「すいませんね、お二方」」
「なっ、お前らは!?」「なんじゃ!?」
上空で待機していたサジンとゼロシンに合図を送って二人を足止めさせる。今、私の前に出られると困るのだ。
「ラグナレック!」
「ふっ……!」
サウザーが闘気を解放すると同時に、私は今までで最大の力の波動を解き放つ。サウザーの奥義と私の波動が激突し──
「あら?」「何っ!?」
──完全に相殺した。
「私の技を打ち消しただと……!」
自身の技が消滅した事にサウザーが驚愕しているが、むしろ驚いているのは私の方だ。この力を単身で相殺できる人間がいるとは思っていなかった。さすがは世界の支配者たる覇王と言うべきかしら。
そうして戦闘中にもかかわらず呆けていた私たちだが、その機を見逃さなかった者がいた。ビュウである。
「はあっ!!」
「っ!? ちいっ!」
ビュウが跳躍し、上空から双剣を振り下ろすのをサウザーは自らの剣で迎撃。明らかに上空からの一撃の方が有利なはずのその打ち合いはしかし、ビュウの方が押し返される結果に終わる。本当に規格外ね、この男。
「ふんっ!」
「なっ!?」
着地に合わせて振るわれたサウザーのカイゼルブレイドを受け止めたビュウだったが、その双剣が衝撃に耐え切れず折れる。それを見て、サウザーが凶悪に笑う。しかし、だ。
「ビュウ! 私からのプレゼントよ!」
「ヨヨ様!?」
私はレンダーバッフェを呼び寄せ、その背に積んでいた双剣をビュウに向けて投げる。その剣は吸い込まれるように彼の手に収まった。
「こいつは……シャルンホルスト! グナイゼナウと並ぶ最強の双剣!」
「なっ……!」
双剣シャルンホルストを携えたビュウが再びサウザーに斬りかかる。サウザーは迎撃するが、武器の差が埋まったおかげか、先のように押し返される事なくビュウの剣撃が続く。
「くっ……ならば今一度!」
「無駄よ!!」
ビュウの攻撃にあえて弾かれて大きく後退したサウザーが再びラグナレックを放つが、私は素早く前に出せると波動で迎撃する。すると先ほどの再現のように、互いの攻撃が共に消滅した。
「それがカーナ王家の……神竜の力か。この私の技を二度までも打ち消すとは……」
「そちらこそ、この力を単身で相殺しきるとはね。誇って良いのよ?」
お互いに最大の技が打ち消し合うという戦況だが、私は微笑む余裕があり、サウザーは忌々しげだ。それもそのはず、サウザーと異なり、私には仲間がいるのだから。常にラグナレックを警戒して相殺しなければならない為に私自身は大きく動けないが……。
「見えるかしら? 私の身を覆う白い光が」
「……ああ」
「これはね、私の敵を滅ぼす死の光。怒り、憎悪、悲しみ……私の冥い感情が、この身に宿る存在の感情と共鳴して輝く負の具現化」
祖国を滅ぼされた私の抱く負の感情。その憎悪に呑まれて自身を見失うほど私は弱くない。むしろ
「神竜ヴァリトラよ……なぜ目覚めぬ? なにゆえ王女を選ぶ? オレルスの覇王たる私の何が不足だ?」
私の言葉に何を思ったのか、サウザーは語りかけるようにそう呟く。ああ、あの緑のドラゴンがキャンベルの神竜だったのね。道理でただならぬ気配を発しているわけだ。
しかし、神竜がなぜ私を選ぶか、サウザーの何が不足か? そんなの決まっているじゃない。
「うふふふ、サウザー皇帝。あなたの力はまさしく人間の臨界に到達していると言うに相応しい。しかし、あなたと私には致命的な違いがある」
「……何?」
そう。サウザーがどれほどの力を持っていようとも決して手に入れられぬものが、サウザーが神竜を目覚めさせられない理由だ。
「血よ! この私の身に流れるカーナ王家の尊き血だけが、神竜を操る力を得られる!」
オレルスの歴史上、カーナ王家の人間以外が神竜を操ったという記録はない。生を受けてからは決して覆せぬ血こそが、私とサウザーとの明暗を分けるものだ。
「だから諦めなさいなサウザー皇帝。神竜の力の強大さは私が証明してあげる。あなた如き下賎の者は、尊きこの私を地べたから見上げていればいいわ」
「この私が、下賎だと?」
「事実でしょう? 成り上がりの皇帝さん?」
ベロスというラグーンは元々、作物も育たず動物も僅かにしか生息していない不毛の土地だ。国家ごと傭兵として食い詰めていくしかなかった戦争屋どもの集まりである。
自らの力でその頂点に立ち、一代で帝国と呼ばれるまで権勢を築き上げ、『偉大なるベロス』──グランベロスを創り上げた男がこの皇帝サウザーである。
「サウザー皇帝。あなたは力によって底辺から頂点にまで上り詰めた王。しかし、私は天に選ばれし生まれついての王! この世に生を受けた時から、私には世界の頂点に立つ権利があるのよ!」
これは決して傲慢ではない。純然たる事実に過ぎない。そしていずれこのオレルスの全ては私の物となるのである。
『その通りだ……娘よ……カーナ王の娘ヨヨ……神竜の心を知る者よ……』
「あ?」
いきなり頭の中に声が聞こえたと思ったらいつの間にか
『ドラグナーとなる者よ……我ら神竜の心をあつ「うっさいわ!!」がはぁ!?』
何やらべらべらと語りかけてくる神竜ヴァリトラに対してこちらから精神攻撃して黙らせる。全く、勝手に入ってきた分際で人の頭の中でウダウダとやかましいのよ! 大体、私は今サウザーと話しているのだ。化石は化石らしく掘り起こされるまで埋もれていなさい。
「傲慢極まりない言葉だな……神竜とはそれほどの存在だというのか?」
「あら、だからこそあなたも求めたのではないのかしら? なんだったら──体感させてあげましょうか?」
「──何?」
私のその言葉に、皇帝サウザーは怪訝な表情で私を睨みつけるのだった。
【光の波動】
原作でヨヨが神竜と関わる度に発光し身に纏っている光の波動。
触れるだけで周囲の人間を吹き飛ばす攻撃力を見せたり、瀕死の仲間を一瞬で完全回復させたりと凄まじい力だが、原作ヨヨ自身の意思では制御できないらしく、完全にイベントでしか使用されない。