ヨヨですけど、何か問題でも?   作:れいのやつ Lv40

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焼き殺しておきます

「「ランランランサー! ヤリヤリ!」」

 

 ヨヨ様をファーレンハイトの自室に送り届けた俺が皆の所に戻ると、フルンゼとレーヴェがいつものように阿吽の呼吸で槍を振るっていた。それを見てゾラがやや呆れ顔で呟く。

 

「姫様がお休みだってのに騒がしい子たちだねえ……」

「まぁ、ヨヨ様は騒がしいのは嫌いではないから、いいんじゃないか?」

 

 安眠妨害したならともかく、部屋内までは聞こえてないだろうし問題ないと思う。

 

「彼ったら、振り回すのよ……ブルンブルンって。ああ、身体に悪いわ……」

 

 と、槍を振る二人を見てフレデリカがそう呟いているが……何か違う意味に聞こえるから、それ。

 

「き、緊張したでアリマス! すごい覇気だったでアリマス!」

「がははは! タイチョーにもヨヨ様の偉大さがわかったか!」

 

 ふと横に目をやると、そうタイチョーが息を吐いていた。まぁ、ヨヨ様と初めて対面したら緊張するのは仕方ない。あの美貌に加えてあの性格だからな。

 

「なんだかイメージと大分違ったわ。私はお姫様ってもっとこう……儚げな感じの方を想像してたんだけど」

「ヨヨ様かっこいい!」

 

 ルキアが感想を漏らし、メロディアが楽しそうにはしゃぐ。まぁ、世間一般に語られるような『お姫様』を想像してたら面食らうだろう。ヨヨ様はそういうのとは最も程遠い方だからな。外見だけなら深窓の令嬢だが、常に不敵な笑みを浮かべているし……。

 

 儚げでか弱いヨヨ様なんてのがいたなら見てみたい──

 

『大人になるって悲しいことなの』

 

 ──俺の頭にあの忌まわしい夢の光景が過ぎった。

 

(やっぱりヨヨ様は今のヨヨ様が一番だな、うん)

 

 ただ今回は状況が状況だったからいつもより覇気が増していたが、普段はもう少し気さくな方だ。いや、気さくと言っても天から見下ろすような感じの振る舞いなのは変わらないが。時々、「私に対してそれは不敬よ?」という王族ジョークが飛んできたりする。場合によってはジョークでなくなるのはご愛嬌だ。

 

「凄く苛烈な方なのね、ヨヨ様って。なんというか……サウザーが世界征服してなかったらヨヨ様が乗り出してそうだわ」

 

 それは正直なところ否定できない。というか間違いなくやると思う。何しろ座右の銘が『この世は私の為にある』な御方だし。

 

「モニョ〜!(オラオラ!)」

「マニョ〜!(けりけり!)」

「わわわ……!」

 

 と、そんな話をしていたら何やらセンダックがプチデビたちにいじめられている。老人虐待だぞお前ら。幼児並の威力しか出てないけど。

 

「こらっ! 二人とも!」

 

 と、いじめられるセンダックを見かねたのかフレデリカがプチデビ二人を一喝する。

 

「いいですか? 暴力を振るって良いのは、魔物(バケモノ)どもと異教徒(ヨヨ様の敵)どもだけです」

 

 ……いやいやいや、その説得の仕方は僧侶としてどうなんだ? むしろ僧侶だからか? まぁ悪魔に道徳を解くよりはマシなのか?

 

 まぁそれはさておき、これまでのいきさつを聞くべく二人の暗殺者に話しを聞く事にする。

 

「まず皆には紹介しておかないとな。この二人はサジンとゼロシン。ヨヨ様のお抱えのアサシンだ」

「「以後、お見知りおきを」」

 

 二人の暗殺者は全く同時に頭を下げる。この二人はカーナの人間でも俺以外は初対面のはずだ。まぁ、王家の人間が雇っている暗殺者の存在なんて公にしていいもんでもないだろうしな。彼らを見てマテライトが顎に手を置いて呟いた。

 

「ふむ、ヨヨ様はこんな者たちも従えておったんじゃのう。わしも知らんかったわい」

「そっか〜、ヨヨ様には影のように動く臣下がいるって聞いたことあるわ。この二人のことだったのね〜」

「お、おう。たぶんな」

 

 ディアナがマテライトに続いてそう語るが、そんな噂がカーナ国内で流れてた覚えはないし、騎士団長のマテライトが知らないことをなぜディアナが知っているのか謎だが、とりあえず触れないでおく。

 

「まず、俺たちはカーナ陥落以降路頭に迷っていた」

「反乱軍に入る事も考えたが……ビュウさん、あんたが世界を飛び回ってたんで無理だった」

 

 ……そりゃ悪かった。しかしな、俺もカーナ陥落時に散り散りになったドラゴン達を呼び戻すのには苦労したんだよ。

 

「それでサバイバル生活をする事数年。ほぼ偶然だがヨヨ様と再会した」

「あの時のヨヨ様はまさしく救いの神だったぜ!」

 

 どうもヨヨ様に再び雇ってもらえたのが相当嬉しかったらしい。

 

「いくらで雇われたんだ?」

「10万ピロー、ポンとくれたぜ」

 

 そりゃまた随分な大金だな、この二人を雇うだけにしては過剰なような……いやまて、なんで囚われの身のヨヨ様が金を持ってるんだ?

 

「その金はどこから?」

「ああ、帝国の宝物庫を襲撃して強奪したらしい」

 

 強奪って。さすがというかなんというか。とゼロシンが「ほら、そこのがそうだ」と例のドラゴンが背負っていた荷物を指さす。

 なるほどな。となるともしかして、中身見ないで金貨袋ごと渡したんじゃ? ありうる。ヨヨ様はあれで変なところ適当だからなぁ……。と、マテライトがふと思い出したように呟く。

 

「そういえば、ヨヨ様が持っていた杖……あれはカーナ王の物じゃなかったかの?」

「そうそう! あれ、エンプレスカーナ! それにローブもカーナの王衣のロイヤルガウンだよ」

「ああ、あれも宝物庫にあったらしい」

 

 なるほど、カーナ陥落時に持ち去られていたんだな。それでヨヨ様が今回取り返してきたと。正当な持ち主の元に戻ったわけだ。

 

「そうそう、さっき逃げたドラゴンは牢から脱出した時に服従させたらしい」

「あと脱出時と宝物庫襲撃時に将軍を倒したと言ってたな。確かペルソナと……レオパレス?」

「パルパレオスだな」

 

 サウザーが言っていた通りだな。しかしヨヨ様、そんな脱出のついでみたいな感覚で将軍を倒されると俺たちの立場が無いんですが……。

 

「で、脱出したヨヨ様と俺たちが出会ったのがカーナの思い出の教会付近なんだが……」

「どうかしたか?」

 

 急に言葉に詰まったゼロシンがやや言いにくそうに口を開く。

 

「実はグランベロスの追っ手に思い出の教会を破壊されてしまって……」

「教会を!?」

「むむむ、グランベロスめ、なんという事を!」

 

 俺がヨヨ様に将来を()()()()()あの教会が……そうか。名前の通り俺にとっては思い出の場所だったんだけどな。

 

「そうか。ヨヨ様もさぞや悲し……みはしないよな?」

「おう。直後はショックで固まっておられたが、すぐに復活してグランベロス兵を消し飛ばしてたぞ」

「ですよねー」

 

 だろうと思った。ヨヨ様がその程度で悲しみに沈むとか想像できないし、あの方は過去にはこだわらない主義だ。

 

「で、俺たちは反乱軍がキャンベル・ラグーンに来ているという情報を得ていたのでご案内した」

「途中で帝国の補給庫を見つけたのでついでに焼き打ちし、そこにいたゾンベルド将軍も撃破した」

 

 おい、またついでで将軍が倒されてるんだが。ヨヨ様、ちょっと暴れすぎじゃないですかね……?

 

「あとはあんたたちの知る通りだ」

「なるほどな、だいたいわかった。えーと、まとめると……」

 

 将軍二人を倒して宝物庫を襲撃して脱出、補給庫を潰してまた将軍を始末、そしてサウザーを神竜アレキサンダーの力により昏倒させ……ってオイ。

 

「ヨヨ様一人の御力で帝国が半壊してる件について」

 

 おかしいな、ヨヨ様ってこの間まで囚われの身だったんだよな? なんだこの冗談みたいな戦果は。

 確か帝国将軍は八人だったはずだが、既に半数近くがヨヨ様の手で撃破され、更にトップの皇帝サウザーも神竜の力によって今や生死の境に立たされている。さすがヨヨ様、やりたい放題だ。というか俺たちとの合流がもっと遅れてたら一人で帝国壊滅させてたんじゃないか……?

 

「がはははは! 帝国め、奴らはヨヨ様を浚った事を後悔しておるじゃろ!」

 

 マテライトが笑い飛ばす通り、そもそもヨヨ様を浚っていなければ恐らくこんな事になっていない。なんというか、祖国を滅ぼした相手ながらちょっと同情してしまうほどだ。まぁ、ヨヨ様を捕らえなかったら捕らえなかったで、あの方のことだ。カーナ陥落直後に反乱軍を纏め上げて帝国を叩き潰す準備を始めていただろう事は容易に想像できるが。こうなるとあのカーナ陥落の場でヨヨ様を生かしたのが帝国のそもそもの過ちだな。

 

「で、この妙なドラゴンは?」

 

 俺はさっきから気になっていた、人面のある饅頭に直に翼を生やしたような謎のドラゴン二匹について尋ねる。

 

「元は帝国の汎用竜だそうだ。脱出時に下僕にしたとか」

 

 帝国の汎用竜っていうとブランドゥングか……なんでこんな姿に……そういや昔ヨヨ様の髪をかじったドラゴンがこんなんになってた気がするな。もしかしてそれか? 確かカーナ戦竜隊にとっても正体不明の存在だったな。

 

「そういや名前は?」

「下僕一号二号」

「ええ……」

 

 ヨヨ様らしいといえばらしいがさすがにあんまりである。

 

「仮名らしいから変えても怒らないと思うぞ」

 

 と、言われてもいまいちピンとくる名前が浮かばない。

 

「ブランとドゥングでいいか」

「適当だな……」

 

 確かに種族名を分割しただけで適当だが少なくとも下僕一号二号よりはマシなはずだ。何よりそのままだと人前で名前を呼びにくいしな。

 

「しかし、なんだ。こいつらを見た時は随分と形容し難いドラゴンがいたもんだと驚いたんだが……」

 

 サジンはそこで言葉を区切るとサラマンダーたちを見回してから言う。

 

「戦竜隊のドラゴンも十分珍妙だな」

「ほっとけ!!」

 

 珍妙で悪いか。育成の過程で偶然こうなったんだ。ああ、今のサラマンダーたちの姿は確かに万人のイメージするドラゴンとは掛け離れているだろうよ。

 

 まずサラマンダーの現形態がホワイトウォリア。これの外見だが、厳ついヤギだ。あの草を食べるヤギである。無論、ドラゴンなので翼がありちゃんと飛べる。

 次にモルテン。今はホワイトモルテンだが、これがドラゴンというかデブの悪魔と言った感じだ。正直な話、竜には見えない。

 続いてアイスドラゴン。こいつがアスピドケドン。その外見は「顎のしゃくれた人面に直に翼を生やしました」と言った感じのもの。ぶっちゃけ正体不明と大して変わらない。

 そしてサンダーホーク。こいつはデボアハーンというんだが……外見はなんというか……蟹? 言葉では説明しにくいがそんな感じだ。

 

 ……改めて並べると妙な形態ばっか引き当てすぎだろ俺。今現在まともなドラゴン的外見なのはツインヘッドぐらいしかいないぞ。……おかげでブランたちも違和感なく溶け込めそうだからいいか。まぁ一つ言っておくとしたらだ。

 

「空が飛べて知能が高くてブレスを吐く生き物は全部ドラゴンだ、いいね?」

「アッハイ」

 

 サジンも納得してくれたようだな!

 

「さて、ヨヨ様がお戻りになった今、ワシら反乱軍の活動も益々忙しくなるのう!」

「まぁ、どんなことがあろうと俺たちはヨヨ様についていくだけさ」

 

 カーナ騎士団の掟にもある。『ヨヨ様のお言葉は全てに優先する』ってな?

 

「ヨヨ様、どのような夢を見ておられるのかのう?」

「ヨヨ様の見る夢だ、きっとオレルスの覇権を取った夢とかじゃないか?」

「おお、そいつはいい!」

 

 そう言って俺とマテライトは笑い合うのだった。

 

 

   ◆   ◆   ◆

 

 

「……んー、これは夢かしら」

 

 私は辺りを見回してそう呟く。先ほど私はファーレンハイトの自室で就寝したはずだから、確実に夢ね。

 

「……あら、ここって」

 

 ここは、帝国に囚われてた時に私がいた牢じゃないかしら? 私がそう確認していると牢の扉が開く。

 

「ヨヨ王女……」

 

 ──そして部屋に入ってきたのは、あの帝国皇帝サウザーの右腕、パルパレオス将軍であった。それを確認した瞬間、私は素早く接近し──

 

『娘よ、こんな物がお前ののぞ「なんでお前が出てくんのよ!!」がはぁ!?』

 

 ──即座に部屋に入ってきた奴の鳩尾に全力の蹴りを入れ、壁側まで吹っ飛ばす。

 

『う……うぐ……』

「私の神聖な夢という聖域にお前如きが入って来るとはいい度胸ね。丁度いい、夢の空間というのは気に食わないが、死んでいなかったらしいから私が改めて葬ってあげるわ」

 

 私はそう言うと再び奴に接近する。

 

『ま、待て! ドラグナーとなるべきむす「うっさいわ!!」めぇ゛っ!?』

 

 何やら喚こうとしている奴を無視し、右ストレートでぶっ飛ばす。まっすぐ行ってぶっ飛ばす。

 

「これで終わりよ!!」

『待て!? 待ってくれえ!?』

 

 私はトドメを刺すべく魔力を高める。何やら喚いているが無視だ。なんか姿がぼやけて緑の竜が見えているような気がするが関係ない。

 

「あの世で私に詫び続けろパルパレオスゥ────!!」

『ぎゃあああああ!?』

 

 ──私の怒りの業火によって、私の夢に侵入してきた無礼者は塵一つ残さず焼き尽くされるのであった。




「うぐっ……熱っ……ぐああああ!?」
「将軍!? しっかりして下さい将軍っ!?」
「メディック! メディーーーーック!」
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