ヨヨですけど、何か問題でも?   作:れいのやつ Lv40

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キャンベル解放

「行くぞ! カーナにマテライトありと思い知るがよいわ!」

「行くでアリマス! キャンベル解放でアリマーース!」

 

 マテライトとタイチョーが大声を張り上げて敵陣に突撃していく。私はそれを眺めながら頷いた。

 

「こういうのはまどろっこしい作戦なんぞ考えるより正面突破が一番よ」

「まぁ、それは確かに」

 

 そうでしょう。敵に将もおらず、こちらは相手を蹴散らせるだけの十分な戦力があるのだから真っ向から押し潰すのが最適だ。重装備のマテライトが先頭なのも彼らが一番白兵戦向きだからだ。本人が意図しているかどうかはともかく。厄介なのは、カタパルトの存在だが……。

 

「むっ、反乱軍か! 砲兵、砲撃せよ!」

「「そうはいかんな」」

「な、何……ぎゃあああ!」

 

 こちらに砲撃を放とうとしていた砲兵部隊が一瞬で焼き尽くされる。火遁──サジンとゼロシンのアサシンコンビの術である。

 

「やりますね、あいつら」

「まぁ、暗殺者だからね」

 

 元々、音も無く忍び寄って標的を仕留めるのが仕事なのだ。気付かれない内に敵陣に潜り込む程度はやってもらわねば。

 

「総員集結せよ!」

 

 敵陣の指揮官らしき兵が号令をかけて密集陣形を取る。ふむ、こちらの突撃を受け止める気かしら。ああも密集されると魔法で一層するのがセオリーだが……。

 

「姫、ビュウ、わしに任せて!」

 

 珍しく威勢の良いセンダックがその魔力を高める。すると、見覚えのある巨大な緑鱗の竜が戦場に現れた。

 

「な、何──ぐああああっ!」

 

 緑竜──ヴァリトラが翼を広げて咆哮すると、白い衝撃波が敵陣へと放たれ、密集していた帝国兵たちを纏めて吹き飛ばした。

 

「センダック、今のは神竜か?」

「うん! わし、神竜が召喚できるようになったんだ。姫の近くにいると自分が神竜になったような気分になって、力がみなぎって……」

 

 ああ、そういえばセンダックはワーロック……神竜を崇める司祭だ。私の中の神竜の力の一部が流れてセンダックに行っているのかもしれないわね。

 

(だめ……わし、浮かれてる……借り物の力で強くなってこんなに浮かれジジイ……)

 

 何やらセンダックが勝手に盛り上がって勝手に沈んでいるが、私はそれよりヴァリトラについて考えていた。

 

「中々適度な威力じゃない。アレキサンダーは破壊規模が巨大すぎるから、気軽に呼べる神竜が欲しかったのよね」

「神竜は爆弾か何かですか?」

 

 ビュウが呆れたようにそう言うが、実際のところ我が半身であるアレキサンダー以外の神竜など私にとってその程度の認識しかない。戦場で敵を蹴散らす為の兵器である。

 

「出番だぞ、チビウィザード」

「わかってるわよ! このまま一気に突破するわよ!」

「ウフフフ……ウフ……」

「どっかーん♪」

 

 アナスタシア率いるウィザード部隊が魔法を唱え、ヴァリトラにより壊滅状態だった敵陣に更なる追撃を加える。そこにサラマンダーらドラゴンも便乗し、炎や氷や雷が敵陣で踊り狂う。もはややりたい放題である。

 

「モニョー!(踊るアホウに見るアホウ!)」

「マニョー!(同じアホなら踊らにゃ損損!)」

 

 踊り狂うと言ったら彼らもだ。小さな死神ことプチデビ二人が踊ると、その異名に反して優しい光が味方を癒し──

 

「ってちょっと。敵陣にも癒しの光が降り注いでいるんだけど?」

「あいつらの踊りはそういうもんですから……」

 

 そうなの? ビュウがそう言うなら仕方ないわね。でも、そのせいで瀕死だった敵兵が何人か立ち上がってきてるんだけど?

 

「な、なんだ? 回復した?」

「何でもいい! 奴らに反撃するチャンスだ!」

「よ、よし! 反乱軍の犬めっ! くたばれぇっ!」

 

 ほら、早速反撃してきたわよ。槍兵──ランツェリッター部隊が槍を構えると一斉にこちらに向けて投擲する。標的は──ディアナのプリースト部隊だ。

 

「やば……」

「死ね! 僧侶ども!」

「ふっ……」

 

 殺意をみなぎらせる奴らの投降槍の前にひとつの影が立ち塞がった。フレデリカである。彼女は小さく笑みを漏らしてディアナを庇う位置に立つと、自身の杖を構え──

 

「はっ! ふっ! やぁっ!」

 

 ──素早く杖が振るわれると投擲された全ての槍は呆気なく叩き折られていた。

 

「な、ななな……」

「半人前の技では私は倒せません……」

 

 驚愕するランツェリッターたちにフレデリカがそう静かに言葉を投げた。いや、飛来してきた槍を苦も無くロッドで叩き折るって全体的にどういう身体能力してんのよ。

 

「あの娘ってあんなだったかしら?」

「まぁ、フレデリカですから……」

 

 そうなの? ビュウがそう言うなら仕方ないわね。と、ディアナが何やら懐から草を取り出した。

 

「よくもやってくれたわね〜、えいっ」

「な……うぎゃあああ!」

 

 ディアナが軽い感じでその草をランツェリッター部隊に投げ入れると、一瞬で奴らは炎に包まれた。ああ、炎の草か。

 

「今が勝機よ! 続いて!」

「「ランランランサー!」」

 

 敵陣が破られたのを見計らい、ルキアがライトアーマーの神速で以て一気に駆け抜け、ランサー二人がそれに続く。私たち後続が追い縋る頃には、彼女らの手によって敵軍の本隊はほぼ壊滅していた。

 

「俺も少しは働かないといけませんね」

 

 ビュウがそう言って双剣を構える。しかし働いていないのは私も同じである。まぁ総司令官が暇なのは良い事ではあるのだが。

 しかし最後まで何もしないというのも何なので、私は強化魔法ビンゴをビュウにプレゼントし、彼の身体能力を上昇させる。

 

「ありがとうございます、ヨヨ様。お前たち、行くぞ!」

「「「おう!」」」

 

 ビュウが舎弟三人を率いて敵陣に突撃する。狙うは、刀を構えた司令官らしき男。

 

「おのれ反乱軍! 大根切り!」

「甘いっ!」

 

 大上段から振り下ろされた刀をビュウは巧みに双剣で反らし、反撃に一撃を加える。

 

「がっ……」

「今だ! 合わせろよ!」

「急かさないで下さいよ!」

「よ、よし!」

 

 ビュウの斬撃により敵が怯んだ隙を見逃さず、ラッシュたちが剣を構える。

 

「「「フレイムパルス!!」」」

「がはっ……キャンベルが……落ちるとは……」

 

 ラッシュたちの剣波が決まると、キャンベル駐留軍の司令官であろう男はその場に崩れ落ちた。

 

「──我々の勝利よ!」

 

 私の言葉に、皆は一斉に勝鬨を上げるのだった。

 

 

   ◇   ◇   ◇

 

 

 さて、これで晴れてキャンベルは下賎なベロスの支配下から解放されたわけであるが。

 

「カーナ騎士団長にしてカーナ再興軍総司令官ヨヨ様が腹心! パレスアーマー・マテライトがキャンベル解放をここに宣言する!」

 

 マテライトがそう高らかに声を上げる。いつの間にか反乱軍からカーナ再興軍に変わっているわね……まぁいいか。

 

「キャンベル国民よ! 今からキャンベルはお前たちのものじゃ!」

 

 マテライトが更に言葉を続けるが……全く反応が無いわね。民家の扉どころか窓が開く気配もない。

 

「どうしたのじゃキャンベル国民よ!」

 

 マテライトが民家の扉を叩くが、やはり反応が無い。さすがに全部留守って事はないと思うのだけど。

 

「マテライト殿、こういう時は女王様にご挨拶でアリマス」

「おお、そうじゃな!」

 

 タイチョーに促されてマテライトは王宮へと向かっていった。まぁ、それが無難かしら。

 

「私たちも行くわよ」

「はっ」

 

 ビュウに声をかけ、私もマテライトの後を追って王宮へ向かう。中へと入ると、いきなり一匹の犬がやかましく吠えかけてきた。

 

 私が無言のまま睨みつけると、犬はすぐさま尻尾を巻いて逃げ出した。ふん、犬畜生が。

 

「相変わらず犬が嫌いなのですね」

「あら、違うわビュウ。私はただ媚びて生きるだけの輩が嫌いなのよ」

 

 飼い犬はそんなのばかりだから他人には犬嫌いに見えるというだけだ。

 

 そんなやり取りをしていると私たちに気付いた王宮の中のキャンベル国民たちが声を上げた。

 

「帝国を追い払うなんて余計な事をしてくれたね!」

「キャンベルは解放なんぞ望んじゃいなかったのに……これからどうなるんだ?」

 

 なるほどね。どうやら、私たちはこの国にとっては余計な事をしたようだ。

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