ヨヨですけど、何か問題でも?   作:れいのやつ Lv40

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家畜か人か

 さて、帝国のキャンベル駐留軍を倒し、キャンベルを解放した私たちであるが、現在キャンベル国民から総スカンを食らっている。理由は至極簡単。キャンベルは()()()()()()()の支配下で満足していたからだ。

 

「帝国だかなんだか知らないが、ただ首がすげ変わるだけじゃないか。平和な生活ができればそれで良かったのに……」

 

 とまぁ、そういう事らしい。トップが女王だろうがサウザーだろうが、彼ら国民には関わりの無い事であり、平和ならそれで良かった。そこをいきなり私たちがやって来て帝国を蹴散らしてしまったので彼らは報復を恐れているという状況である。全く、天下のキャンベルも堕ちたものだ。

 

「これは少々予想外でしたね……自治すら認められていない状況下に満足していたとは……」

 

 ビュウが複雑な表情でそう言うが、まぁ民衆など大抵はこんなものだ。反乱軍の皆のような気概のある人間などそういるものではない。

 

「被害者でいる方が楽なのよ。支配されるのは弱者の特権だからね」

 

 その弱者を管理するのが我々王族である。そしてその支配下で庇護されていながら、今の日々に不満を漏らし勝手な事ばかり口にするのが大衆というものだ。彼らは今は私たちに不平を言っているが、帝国に支配されていた時は女王やサウザーに対して不平を言っていたのだろうと容易に想像がつく。

 

 何の事はない。要するに、彼らは不安なのだ。そしてその不安を無意識に支配者への不満へとすり替え、それを口に出して自身を慰めているだけなのである。

 

「まぁ、どうでもいいわ。それより叔母様は何処?」

「女王は地下牢にいるそうです。サウザーへ抵抗の意思が無い事を示し、キャンベルを守る為に」

「そう」

 

 なんて傑作なのかしら。女王ともあろうものが()()()()()()()()だなんて! 

 

「ビュウは城下でも見て回っているといいわ。あまり愉快な話にはならないだろうからね」

「はっ、では失礼します」

 

 一度()()()()()()()私にそう返答するビュウ。彼を見送り、地下牢へと降りるとマテライトの怒鳴り声が聞こえてきた。

 

「亡きカーナ王の妹君といえども許せませんぞ!」

「マテライト……変わっていませんね」

 

 叔母様のものであろうよく通る声がこちらまで届いたが、マテライトは憤懣やるかたない様子である。

 

「おう! 女王のように変わり果てるぐらいならワシはドラゴンの餌にでもなった方が幸せじゃ!」

 

(全くだわ。自分の心を殺して変わり果てるならば、それは死ぬのと同じよ)

 

 私がマテライトに内心同意していると、横の牢屋から私に声がかかった。

 

「おーい、ヨヨ様! 帝国に逆らった俺たちは歓迎するぜ!」

「キャンベル国民を見損なわないでくれ! 情けない奴らばかりじゃないぜ!」

「ほう」

 

 声のかかった牢を見ると数人の男女がいた。彼らは帝国の支配に反発して投獄されたようだ。どうやら気概のある人間もいるらしい。

 まぁ、彼らがこんな扱いを受けている事自体、帝国の下での平和とやらが歪みな事の証明でもあるのだが。

 

 さておき、私は通路に佇むマテライトに声をかける。

 

「随分な怒りようね、マテライト」

「おお、ヨヨ様! こんな話を聞かされては怒らずにはいられませんぞ!」

 

 怒り覚めやらぬ様子のマテライトを側のタイチョーが宥めすかす。

 

「マテライト殿。ここは例の計画を実行するでアリマス」

「おお、そうじゃな! こんな国はさっさと出て行きたいがあの計画をやらずには帰れん! ヨヨ様、失礼しますぞ!」

 

 そう言うと二人は足早に去っていった。計画ってなにかしら? 

 

 まぁいい。私は叔母様のいる牢へと向かう。牢の前には凛々しい表情の二人の女性がいた。

 

「カーナ王国王女、ヨヨ様ですね?」

「そうよ。あなたたちは?」

 

 私が問うと、二人は同時に私に礼をする。

 

「私はプリーストのジョイ。女王様の側近を務めさせていただいております」

「同じく、ウィザードのネルボです。どうぞ、ヨヨ様。女王がお待ちです」

 

 二人に促されて薄暗い牢へと足を踏み入れると、そこには紫色の衣装に身を包んだ女性がいた。キャンベル女王──亡き我が父の妹であり、私の叔母である。

 

「久しぶりね、叔母様。随分とご立派な決断をなされたようですわ」

「ヨヨ……相変わらずですね」

 

 私がからかうように拍手をすると、叔母様は疲れた表情で溜息を吐く。

 

「ヨヨ……あなたはまた戦争を始めるつもりですか?」

「そうだけど?」

 

 叔母様の今さらな問いに私が平然とそう返すと、彼女は表情を一辺させ激昂する。

 

「あなたという人は……! サウザーがオレルスを統一して戦争は終わったのですよ!? 彼らに服従していれば私たちの安寧は保証されていたのです!」

「へえ? それでカーナ滅亡の引き金を引いた張本人である叔母様は、のうのうと帝国の庇護下で平和を享受するわけね」

 

 私がそう言うと、叔母様は目を見開いた。その瞳には深い絶望が宿っている。

 

「どう……して……」

「どうしても何も、サウザーに伝説を教えられるとしたら叔母様しかいないでしょう。そして神竜の伝説を知ったサウザーは、その伝説に挑む為にカーナに攻め入り私を捕らえた」

 

 私はそこまで言うと、わざと大袈裟に肩を竦めてみせる。

 

「知りませんでしたわ。叔母様がそんなに私のことが嫌いだったなんて!」

「違いますっ!!」

 

 私の言葉を受けた彼女はこれまでで一番の大声で叫んだ。私に訴えるかのように。

 

「私は……私はただキャンベルを……」

「守りたかった。そうでしょう? 自分の統治している国と比べれば、かつての故郷なんて天秤に乗せるまでもないものね」

 

 自分の生まれ育った故郷とはいえ、所詮は過去住んでいただけの国と、自身が王として治める国なら、後者を優先するのが王族だ。たとえそれで故郷が滅びようが、王としては当然の選択である。

 

「私は別にそれについてとやかく言う気はありませんわ。ただ私にも教えて下さらない?」

「……実のところ、神竜の伝説とは具体的な神話があるわけではありません。ただ、短い文章が伝えられているだけで」

「それは?」

 

 私が促すと、彼女は重々しく口を開く。

 

「神竜の心を知る者、新たなる時代の扉を開く」

 

 ほう。新たなる時代の扉か……良い響きね。

 

「そして……心弱き者、天空より災いを招く。これが神竜の伝説です」

「なるほど。つまり、私は新たなる時代の扉を開く人間なわけね。ふふふ、この私に相応しいわ!」

 

 私が高らかにそう言うと、叔母様は信じられないようなものを見たように私に目を向ける。

 

「あなたは……恐ろしくないのですか? その身体に伝説を背負うことが」

「何を恐れるというのかしら。この私が伝説なんぞに潰されるとでも?」

 

 たかが伝説程度、背負えずして何が王か。しかし、彼女は儚げに言葉を零した。

 

「ヨヨ……あなたは強いですね」

「叔母様が弱くなったのよ。その全てを諦めた瞳、気に入らないわ。昔の叔母様はもっと魅力的だった」

 

 私がそう返すと叔母様は弱々しい表情で俯いた。

 

「私もできるならあなたのように強く在りたかった。しかし私は知ってしまったのです。自分の弱さを……」

 

 そう暗く沈む叔母様。全く、これではまるで私が虐めているみたいじゃない。

 

「それでサウザーの軍門に下ったと。でもね叔母様。私たちが来なくてもどの道キャンベルの支配体形も近々変わっていたと思うわよ? 何せサウザーが倒れたからね」

「サウザーが……!? それは、ヨヨ、あなたが……?」

「ええ。私の偉大な力によって」

 

 私は髪をかきあげてそう答える。正確にはアレキサンダーの力であるが、まぁそこまで話す必要はないであろう。

 

「私が無抵抗を示した為に、キャンベルの民は強さを失ってしまいました。私が諦めたから……」

 

 叔母様は失意に沈んだ顔でそう力無い言葉を漏らす。確かに、キャンベルの民が支配を良しとするようになったのは叔母様のせいかもね。ただ、民に犠牲を出さない最適な方法であったのは事実だとは思う。まぁ、私は願い下げだが。

 

 しかし、どうせ帝国に下るなら、ここで後ろの側近二人に命じて私の首を掻き切り帝国への手土産にするぐらいの気概を見せて下されば面白かったのだけれど……この様では無理そうね。私は()()()()()()()()()()そんな事を考える。

 

「私は……どうすれば良かったのでしょうか?」

「さぁ?」

 

 かつての叔母様がどうするべきだったのかなど私が知るわけがない。ただひとつ言えるとすれば、今のキャンベルは帝国にとって家畜同然の存在だということだ。

 

「知っているかしら? 叔母様。『家畜に神はいない』。彼らは食われる為に神に生み出された生き物だからね」

 

 ゆえに、家畜に祈る神はいないのだ。なんと哀れな存在であろうか。カーナ? カーナには私という尊き存在にして祈るべき対象がいるから問題ない。

 

「まぁ、帝国に反旗を翻すか、このまま家畜のように帝国の気まぐれに怯えながら生きていくか、お好きにして下さいな。選ぶのは叔母様よ」

「ヨヨ……」

 

 叔母様は縋るような目を私に向けてくるが、キャンベルの王は私ではない。この心弱き女王なのだ。

 

「ではね。キャンベルの女王よ」

 

 既に興味を失った私は彼女に別れを告げ、地下牢を後にするのだった。




【キャンベル女王】
本名不明。亡きカーナ王の妹であり、ヨヨの叔母に当たる人物。
サウザーによるグランベロス帝国のオレルス統一戦争時、無抵抗を示し早々に帝国の軍門に下った。

キャンベルを守る為にサウザーに神竜の伝説を教えた張本人。これにより世界を制覇しても自身の野望が終わっていない事を知ったサウザーはヨヨを捕らえ、神竜の伝説に挑む事となる。
カーナ滅亡、ヨヨの運命、そして『バハムートラグーン』という物語が始まる引き金を引いた人物である。

感想から追記
もしキャンベル女王がやらかさずサウザーがカーナに侵攻しない=ヨヨがドラグナーに覚醒しなかった場合どうなるか?

まず、ドラグナー無しではそもそもオレルス側からアルタイルへの扉を開く手段が無い。いつ、どこからオレルスに侵攻してくるかわからない魔物たちを随時撃退するという受動的手段しか取れない。
帝国あたりがうまく魔物たちを押し返し、扉が開いた機を見計らってアルタイルに行ったとして、今度は帰還手段が無い。地獄への片道切符。

そして何より某神竜王に対抗する手段が無い。
まず倒せるかどうか不明だが、倒せたとしてもヨヨが未覚醒では原作の打倒法が使えないので復活、そのまま何度復活するかわからない神竜王と終わりの見えない戦いに突入する。
神竜王「我の残機は百八まであるぞ」

オレルスの全人類の総力を挙げても勝てるかどうか怪しい。


結論:キャンベル女王はオレルスの救世主だったんだよ!!
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