ヨヨですけど、何か問題でも?   作:れいのやつ Lv40

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金と天下は回り物

 私が王宮から出ると、あれほど閑散としていたのが嘘のように城下は多くの人で賑わっていた。ふむ、民家に篭っていた住民たちが出て来たのね。

 

「ありがたいのう。これで元のキャンベルに戻るんじゃのう」

 

 静かに周囲の様子を眺めていた老婆がそんな事を嬉しそうに呟いた。どうやら、キャンベル国民も皆が皆、解放を迷惑に思っているわけではないらしい。

 

 と、何やら髭面の男性と話し込んでいたビュウが私の姿を見つけて駆け寄ってきた。

 

「ヨヨ様! 女王との話しは済ませられたのですか?」

「ええ。伝説も聞き出せたわよ。ところでそちらは?」

 

 ビュウと会話していた髭の男性が私に頭を下げる。

 

「どうも、ヨヨ王女様! 私は商人をやらせてもらっている者です」

「彼は人呼んで戦場を駆ける商人。その名の通り、買い手がいればどんな危険な戦場にも現れる逞しい男です。反乱軍も度々助けられました」

 

 ほほう。それはまた豪気な人物だこと。戦場を駆ける商人と呼ばれた男は人当たりの良い表情で笑った。

 

「いやあ、ビュウさんたち反乱軍はお得意様ですから。この度は、キャンベルを解放して下さってありがとうございました」

 

 どうやら彼も解放は肯定派のようだ。すると彼は懐からワインを取り出しビュウに差し出した。

 

「この甘いワインはサービスです。私の感謝の気持ちとして受け取って下さい」

「そうか……ありがたくいただいておくよ」

 

 ビュウがワインを受け取ると、彼は私にも酒を差し出してくる。

 

「ヨヨ王女様におかれましてはこちらをお納め下さい。スーパーウォッカです」

「あら、気が利くわね」

 

 スーパーウォッカといったら王室にも献上される最高級の酒だ。さすがに自分の売り込み方をよくわかっている。彼は笑って商品らしき荷物を背負う。

 

「私は次のお客の元に行かなければなりません。ビュウさん、ヨヨ王女様、お元気で!」

「ああ。またどこかで会ったら世話になるよ」

 

 ビュウに見送られて、彼は颯爽と去って行った。中々気の良い人物だったわね。

 

「やはり人に感謝されるのは嬉しいですね」

「そうね」

 

 さて、ビュウ以外の皆は何をしているのかしら。

 

「ビッケの奴がさっきこの家に入って行きましたが……」

 

 ビュウがそう言った通り、民家にはビッケバッケと、家主らしき薄ら笑いを浮かべる老人がいた。ビッケバッケはビュウに興奮気味に話しかける。

 

「ビュウのアニキ! このお爺さんにお金を預けたら将来1000倍にして返してくれるんだって!」

「うさんくさっ!?」

 

 ビッケバッケの言葉にビュウが思わずといった様子で率直な感想を漏らした。まぁ、あからさまに胡散臭いわよね。

 

「イヒヒ、イヒ……ワヒを信じるんじゃ。イヒヒ」

 

 うむ。この老人の言動といい、1000倍という異様な倍率の高さといい、怪しさ大爆発である。これに金を預けようとするのはそれこそビッケバッケぐらいしかいまい。

 

「どうしようかなアニキ? 預けた方がいい?」

「う、うーん……ここまであからさまだとかえって信用できる気もするが……」

「そうね。倍率が高いし、少しだけでも預けておく価値はあるわね」

 

 騙されたら騙されたで教訓になるし、本当であるならこれほどの儲け話は無い。

 

「まぁ、失っても困らない程度に預けてみてもいいんじゃないか?」

「そうだね! 預けてみるよ! 本当だといいな〜」

 

 ビュウの後押しもありビッケバッケは金を預ける事に決めたようだ。ワクワクしながら老人に金を渡した。

 

「ふむ、面白そうね。というわけでご老人、私のも預かって下さいな」

「ちょ、ヨヨ様もですか……そんな気はしてましたが」

 

 さすがビュウ、我が未来の夫。私の性格をよくわかっている。というわけで金貨の入った袋ごと老人に預ける。

 

「お二人の大事なお金、確かにお預かりしましたぞ。イヒヒ、イヒ」

「お、おう……ところでヨヨ様、もしかして預けた金って帝国の宝物庫から持ってきたやつですか」

「ええ。どうせ元々私の金じゃないしね」

 

 例によって中身は確認していない。なのでいくら入っているのか私は知らない。増えたら儲け物である。そんなこんなで私たちは老人の家を後にする。

 

「ここは宿屋かしら」

「そうですね。中々立派な宿です」

 

 ビュウが褒めたように中々良い雰囲気の宿屋だ。これなら貴族も満足するであろう。と、そう宿を眺めていた私たちに男の子から声がかかる。

 

「褒めてくれてありがとう! ここはあのサウザー皇帝も泊まった宿屋だよ!」

 

 どうやら、この子は宿屋の息子のようだ。こうして客引きをしているらしい。すると、男の子はビュウが軍人だと気付く。

 

「その格好、お兄さんたち、もしかして噂の解放軍?」

「ああ。俺はカーナ戦竜隊長のビュウ。そしてこの御方がヨヨ様だ」

 

 ビュウのその言葉を聞いて、男の子は目を輝かせる。

 

「ヨヨ様って、カーナの王女様!? すごい! 広告を書き換えなきゃ!」

 

 男の子はそう言うと宿の壁に貼ってあるポスターに一文を書き加えた。

 

『グランベロスのサウザー皇帝とカーナのヨヨ王女も褒め讃えた宿屋』

 

 うむ、嘘は言っていない。私は褒めただけであり、泊まっていないという事が書かれていないだけである。そのポスターを見てビュウが苦笑した。

 

「商魂逞しいですね」

「そうね。キャンベルの気風なのかもね」

 

 あの戦場を駆ける商人といい、この子といい、中々強かな住民たちである。叔母様が思っているほどキャンベルの民は強さを失っていないかもね。

 そんな事を思っていたらふと思い出した。

 

「そういえば、マテライトはどうしているかしら」

 

 確か、何やら計画があるとかタイチョーと話していたはずだ。

 

「マテライトなら、確か防具屋の方に行ったのを見ましたが」

「そう。行ってみましょう」

 

 マテライトの計画とやらには私も興味がある。街の入口近くにある防具屋に向かう。

 道に露店を眺めつつ歩く。こうして見ると色々な店があるものだ。キャンベルの特産である果実を売る店、キャンベル観光旅行店、怪しいクスリを売る店──

 

「今、露店に見覚えのある顔が見えたような気がするのだけど……」

「他人の空似です。そうに違いありません」

「そ、そう?」

 

 我が軍の一員によく似た風貌の女店主が「そこのお方。クスリに興味はありませんか?」などと声かけしていたのが見えた気がしたのだが……まぁいいか。

 

 さておき、たどり着いた防具屋では店主らしき老婆が困惑していた。

 

「鎧の男たちが部屋を貸せとドカドカと……わたしゃグランベロスが仕返しに来たのかと思いましたよ」

 

 どうやらここにいるのは間違いなさそうだ。苦笑しているビュウを連れて奥の部屋に入ると、マテライトとタイチョー、それから肩身が狭そうなバルクレイがカウンターに座っていた。

 

「……何してんだ? あんたら」

「おお、ビュウ! ビュウも協力するでアリマス!」

 

 タイチョーがそう言ってビュウに斧と鎧を見せる。それぞれ値札が付けられていた。

 

『マテじるし斧 2060ピロー マテじるし鎧 3090ピロー』

 

「キャンベル解放の英雄! このマテライトのサイン入り武器防具じゃ!」

「お、おう……そうか」

 

 ビュウは何とも言えない様子で頷き、何人かいる客からは「ちょっと高いな……」「なんだかセンス悪いって感じ」などと言葉が聞こえてくる。どうもあまり評判はよろしくなさそうである。

 しかし、鎧をチェックしていたビュウは驚いたように声を上げた。

 

「これだけ軽くてここまで頑丈な鎧とは凄いな。マクシミリアンなんかより遥かに高性能だぞ」

「このパレスアーマー・マテライトのお墨付きの鎧じゃぞ? そのぐらい当然じゃ!」

 

 どうやら実用性はかなり高いようだ。さすがマテライトね。それに、名声を使っての資金集めは良いアイデアだわ。

 

「マテライト、私も協力してあげるわ」

「おお、ヨヨ様! それはありがたい」

「といっても、どうされるのです?」

 

 こうする。私はビュウから剣を借りて自身の髪をほんの少しだけ切り、それらを一本ずつ小分けにする。そして紙に商品名を書き加える。

 

『王女の??? 60000ピロー』

 

 これでよし。私は満足して値札を眺める。

 

「高っ!?」

 

 価格を見たバルクレイが驚愕する。ふっ、わかっていないわね。

 

「下々の民が畏れ多くも尊きこの私の髪を手にしようというのよ? むしろ安すぎるぐらいだわ」

「いやいや、全く! ヨヨ様のおっしゃる通りじゃぞバルクレイ! のうビュウ!」

「そ、そうだな」

 

 ほら、二人もそう言っているわ。さすが我が騎士たち、よくわかっているわね。私がそう頷いていると店内の客の一人が声をかけてきた。

 

「あのー、そちらはカーナ王女のヨヨ様ですよね? カーナ戦竜隊長のビュウさんっていますか?」

「ビュウは俺だが、何か?」

「おお、あなたが! いやー、やはり格好いいなぁ」

 

 ほう。ビュウの格好良さがわかるとは中々見る目があるわね。

 

「ビュウさん、キャンベル戦竜隊ってご存知です?」

「キャンベル戦竜隊? すまんが知らな……待てよ。そういえばドラゴンおやじに言われたな……キャンベルにもう一人の戦竜隊長がいるって」

 

 ほう。あの老人がそんな事を言っていたのね。

 

「そのキャンベル戦竜隊はどこにいるの?」

「パブの二階に隊長がいるはずです」

「キャンベル戦竜隊長か……」

 

 ひとまず会ってみようじゃない。そのキャンベル戦竜隊長とやらにね。




【マテライト】
カーナ王国騎士団長。職業は専用クラスのパレスアーマー(宮廷騎士)。
ヨヨが生まれる前からカーナに仕えており、ずっと彼女の面倒を見てきた。
カーナ軍の指揮官を自称しているが、どちらかというと艦内での会話を仕切る場合が多い。戦場での指揮はほとんどビュウ任せであり、上官のはずの彼自身もビュウの指揮に従っている。

既に老将と言ってもいい年齢だが、戦闘能力はカーナ軍随一で、キャラとしてのステータスはHP、攻撃、防御と戦士として重要なステータスは全てトップを誇る。さすがは騎士団長と言うべきか。技が雷属性の攻撃『インスパイア』しか無いのが難点だが、これも威力自体は最終戦まで通用するほど高い。

性格の方はというと典型的な口うるさい老人で、部下に威張りちらしたり、ビュウやタイチョーに一方的に命令する横暴な振る舞いが目立つ。
ただしマテライト自身も自分がそういう人間である事を自覚しており、あえて横暴に振る舞い嫌われる事で部下の自立心を促そうとしている節がある。

凄まじいまでのヨヨ至上主義者で、ヨヨが生まれて初めて喋った言葉『まて』は自分の事だと主張している。
基本的にヨヨのやる事は常に全肯定……だったが、原作ヨヨが祖国の仇であるはずのパルパレオスと恋仲になると一転、パルパレオスにべったりで周囲を気にも留めないヨヨの行動に愚痴をこぼしたり、「最近のヨヨ様の考えはわからん」と発言するなど段々とヨヨに否定的な考えになっていく様子が見られる。

カーナ再興の資金集めのため、自身を英雄と称して自分のサイン入りの『マテじるし装備』なるものを売り出すという一面も。
この装備のうち『マテじるし鎧』は最終盤まで通用するほどの高性能ぶりで、そんなものが序盤で買えてしまうため、これ以下の性能で特殊効果の無い鎧はあえなく全てがドラゴンの餌とされる運命となるのであった。


怪しいクスリ屋
『自家製ドラッグ 100ピロー
 博士の異常なドラッグ 1000ピロー
 シェフの気まぐれドラッグ 10000ピロー
 昆虫採集セットの青いクスリ 2ピロー
 昆虫採集セットの赤いクスリ 2ピロー
 昆虫採集セットのクスリ(混ぜた) 10ピロー』

クスリ屋「きっと素晴らしい世界の扉を開けますよ!」
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