「本日は皆に話しておかねばならない事があるわ。神竜の伝説の事よ」
キャンベル解放から一日明け、ファーレンハイトへと帰還した私は反乱軍の皆を集め──新参のオレルスやジョイたちも含めて──伝説について話をする。
「カーナ王家に伝わるというその伝説はただ短い文が伝えられているだけだった」
カーナに伝わる神竜の伝説。神話と言うのも首を傾げるような、迷信とも呼ぶべき短文。だが、彼の皇帝サウザーをも動かした力ある言葉。
「『神竜の心を知る者、新たなる時代の扉を開く』。そして『心弱き者、天空より災いを招く』」
この『心弱き者、天空より災いを招く』であるが……そのような戯言は論ずるに値しない。重要なのは前者の文。『神竜の心を知る者、新たなる時代の扉を開く』。
「神竜の心を知る者とは、即ちカーナ王女でありドラグナーたるこの私の事よ」
「「「「「おお……」」」」」
我がカーナ王家の歴史において、神竜と対話できた者は数多くいるが、その神竜の力を御する事ができる者は今まで初代カーナ王以外に現れていなかった……そう、この私が生まれるまでは。
「そう。新たなる時代の扉は、この私、そしてこの私に付き従う皆によって開かれるのよ!」
「「「「「おお!!」」」」」
そうだ。新たなる時代の扉は我らによって開かれる。この私と、私の臣下たる皆こそが時代に選ばれし者たちなのである。
「そこで、私は皆に問う。国とは何か? 王とは何なのか?」
「「「「「…………」」」」」
誰もその問いには答えない。否、答えられないのであろう。
「土地と城があれば国かしら? 王座に座る者が王なのかしら? 否。断じて否よ!」
そうだ。そのようなものがあっても王にはなれない。王が王足り得るのに必要なものは土地でも、城でも、王座でもない。
「国とは民であり、王の下に集う人々のことよ。そして王とは民の中心に立ち、民を導く者の名よ! 土地も、城も、王座すら必要ない!」
王は民の為にあり、民は王の為にある。王は民を導き、民は王に身命を捧げる。ただそれだけでいい。
──そして今、ここには私の民がいる。ならば、ここは国。ならば、私は王!
「カーナ騎士団長マテライト!」
「ここにおりますじゃ!」
──私が生まれる前からカーナを支えた老兵が。
「センダック老師!」
「わ、わしがんばる」
──カーナ一の知識人たる老人が。
「カーナ戦竜隊長ビュウ!」
「ここに」
──私が最も信頼する騎士が。
「ラッシュ! トゥルース! ビッケバッケ!」
「おう!」「はっ!」「は、はい……もぐもぐ」
──スラムから栄光を目指して騎士となった三人組が。
「バルクレイ! アナスタシア!」
「ははっ!」「はーい!」
──実直な騎士とせっかちな魔術師が。
「ディアナ! フレデリカ!」
「は〜いっ!」「はいっ……ごほごほっ!」
──強い信仰を抱く僧侶たちが。
「フルンゼ! レーヴェ!」
「「ランランランサー!!」」
──阿吽の呼吸を見せる二人の槍使いが。
「ホーネット! エカテリーナ!」
「おうよっ!」「はい……ウフフフフ」
──我が艦の航空士と彼を慕う魔術師が。
「サジン! ゼロシン!」
「「お任せあれ」」
──私に仕える二つの影が。
「ゾラ! オレルス!」
「ほら、シャキッとしな!」「は、はい!」
──キャンベルの頼もしき母と夢を背負った息子が。
「タイチョー! グンソー! ルキア!」
「ははっ……でアリマス!」「はっ!(ボリボリ)」「はいっ!」
──マハールの精鋭たる騎士たちが。
「メロディア! モニョ! マニョ!」
「はぁ〜いっ!」「モニョ〜!(地獄の果てでも!)」「マニョ〜!(お供しますぜ!)」
──ゴドランドの幼き魔術師と小さな死神が。
「ジョイ! ネルボ!」
「新参者ですが……」「お力になれるのなら!」
──キャンベルの女王の側近であった二人が。
「ドラゴンおやじ! 商人さんたち! クルーの皆!」
「ほほっ」「「「あいよ!」」」」「「「「「へいっ!」」」」」
──日頃影から私たちを支える人々が。
「サラマンダー! アイスドラゴン! モルテン! サンダーホーク! ツインヘッド! ムニムニ! ブラン! ドゥング!」
「「「「「「「「────!!」」」」」」」」
──我ら人類の隣人たる戦竜が。
「──私の下には皆がいる!」
これだけの者が集うこの場所が国でないはずはない。民と呼べぬはずがない!
「このファーレンハイトに集いし皆こそが、私にとってのカーナの民に他ならない! ゆえに私は、今この時を以て我がカーナ王国の再興を宣言する!」
「「「「「おお!!」」」」」
そう。土地など、ラグーンなど必要ない。この私と、私の臣下たる皆がいる場所こそがカーナなのだから。
「我らは所詮は敗残兵である。大義も無く、ただ帝国への怨念に身を焦がす復讐者に過ぎない」
「「「「「…………」」」」」
今のオレルスの支配者は帝国であり、それに抗う私たちは所詮は一介の反逆者でしかない。だが、それがどうした!
「しかし、皆と共にあれば、必ず新たなる時代を輝かしい物にできるであろうと私は信仰している!!」
王たる私と我が民の力があれば、新たなる時代は素晴らしき時代となる。否、素晴らしき時代とする!
「そう、天空より災いが訪れようと問題ない。この私と、私の臣下たる皆の力を以て打ち払うのみ!!」
私はロイヤルガウンを翻し、杖──エンプレスカーナを掲げる。
「このエンプレスカーナに誓いましょう! 皆と共に新たなる時代の扉を開くことを!!」
「「「「「おお!!」」」」」
──神竜の伝説、私たちは必ずそれを見届けねばならない。
──その続きは、我らが綴るのだから。
「今より私は、故カーナ王国王女ではない! 新生カーナ王国、女王ヨヨである!!」
──今この時、カーナは蘇るのだ。灰の中から幾度でも飛び立つ
『新生カーナ王国、万歳!!』
『ヨヨ女王、万歳!!』
私の宣言に熱狂する皆の想いを背負って、私は女王として最初の命令を下す。
「さぁ、新生カーナ王国の始動よ!! ホーネット!」
「おう!! 任せて下さいヨヨ様!! お前ら、ヘマすんなよ!」
「「「「「アイアイサー!」」」」」
私の命を受け、ファーレンハイトの操縦を預かるホーネットとクルーたちが素早く動き出す。
(そう、今日は運命の日──我がカーナの新たなる時代の始まりの日!)
『新生カーナ王国旗艦ファーレンハイト──発進!!』