ヨヨですけど、何か問題でも?   作:れいのやつ Lv40

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追憶
孤独なる王


 ──彼は生まれた時から孤独だった。彼はオレルスとは異なる世界に生まれた。神の如き竜、神竜としてその世界──アルタイルに生を受けた。

 だが、彼の側には誰も近付かなかった。アルタイルの主な住民である竜人たちも、同胞である神竜ですらも。強大な力を持つ神竜の中でも特に彼は、他の神竜たちが小さく見えてしまうほどの凄まじい力をその身に秘めていたから。

 ゆえに、彼は恐れられ、怯えられ、疎まれた。彼はそれを仕方なく受け入れていた。

 

 やがて、ヴァリトラを始めとする彼以外の神竜たちはオレルスに渡り、オレルスの人間に力を貸すようになった。オレルスの人間たちは神竜の力を借り、互いに争い、殺し合った。

 神竜たちはそれを見て笑った。自分たちの力を使い、血を流しながらも、その神の如き力に怯える人間たちを見て楽しんでいた。

 

 自分だけはオレルスに渡らず、その光景を見ていた彼は、自分の中にある感情が芽生えるのを感じた。それは──憎悪だった。

 

 ──なぜ? なぜお前たちは自分の力で傷付く者を見て笑える? 

 ──自分は誰も傷付けまいとして皆から離れたのに。

 

 ──なぜ? なぜお前たちはそれほど恐れられるのを楽しんでいる? 

 ──自分は恐れられたせいで孤独になったのに。

 

 なぜ、なぜ、なぜ、何故──! 

 ──気が付いた時には、彼はアルタイルとオレルスとを通じる扉を閉じていた。彼の強大な力を以てすれば造作もないことだった。

 

 扉を閉じた時、彼以外の神竜は全てオレルスに渡っていた。唯一アルタイルに残る神竜は彼だけだった。ゆえに、彼はアルタイルの王──神竜王と名乗った。

 

 世界の王となれば、皆は自分に目を向けてくれる。彼はそう思った。それは正しかったが、その目は彼の望んだものではなかった。

 ──竜人たちが自分に向ける目には、以前よりも更に強い恐怖が宿っていたから。

 

 ──そうして彼は憎悪の化身となった。神竜の憑代──死した神竜の肉体たる竜人たちを神殿に集め、将来自身の肉体となる者たちだけを神殿に幽閉し、老いた者と幼い者以外の残る竜人は全て心無き魔物に変えた。いつかヴァリトラたちが帰還しても復活できぬように。

 

 

   ◇   ◇   ◇

 

 

 ──それから幾百年が過ぎたある日、彼は閉じたはずのアルタイルとオレルスを通じる扉が開いた事に気が付いた。

 ──神竜たちが帰還しようとしている。そう考えた彼は魔物をオレルスに送り込んだ。オレルスを破壊するために。もはや彼の憎悪は生きとし生ける全ての存在に向けられていた。

 

 しかし彼の意に反して、神竜たちはアルタイルに帰還を果たし、彼の前に現れた。唯一オレルスの人間の味方をした神竜──バハムートと、バハムートが人間と神竜の心を閉じてから、神竜と心を通わせて唯一自分を失わない人間──ドラグナーの娘の身に宿って。

 

 彼は憎悪のまま、ドラグナーとその身体に宿る神竜たち、ドラグナーに付き従う者たちに戦いを挑み──敗れた。

 

 ──彼は現実が理解できなかった。彼はその力を恐れられ、疎まれた。彼はそれだけの力を持っていた。オレルスとアルタイルを通じる扉を開く事すら容易い神竜の王。その自分が、敗れる? 

 

 即座に彼は神殿に幽閉していた竜人の身体を用いて復活した。その身を元の自分より強大な、四つ首を持つ歪みな竜と化して。そして再びドラグナーに戦いを挑んだ。

 だが──結果は同じだった。あらゆる神竜の力を模倣しても、天空の裁きを彼らに降らせても、彼らは諦めず立ち上がり──再び彼を屠った。

 

 ──なぜ? なぜ勝てない? 肉体を失ってなお続く思考でそう疑問を抱き続けていた時、ドラグナーの娘が高らかに叫んだ。

 

『オレルスの仲間たち、皆さんも……力を、私に力を! 強さをください!』

 

 その声を聞き三人の人間が集まり、娘は残るもう一人の側に寄り話し掛ける。

 

『ビュウ……あなたも、お願い……私、ビュウには嫌われてる……私がいることで、ビュウを嫌な気分にさせてしまう……それは分かってるの。でも……ビュウ、貴方はやっぱり私の大切な人なの。貴方がいなければ今の私はいなかった。私に大切なこと……教えてくれた。空を越えて伝わる気持ち……本当にあること。今だけでもいいの……私に……強さを! あの頃のように!』

 

 ビュウと呼ばれた男は無言で娘の側へと歩いていく。それを見た娘が嬉しそうに男に寄り添った。

 

『ありがとう……ビュウ。ねえ……もっと強く、つかまってもいい?』

『…………』

『もう、つかまっちゃった……』

 

 そうはにかんだドラグナーの娘は、決意を秘めた表情でこちらに向き直る。

 

『神竜の王アレキサンダーよ! 私の中に入ってきなさい!』

 

 ──肉体となる竜人が生き残っている限り自分は何度でも復活する。それを阻止する為、自身の心の内に取り込もうというのか。

 

『あなたなんか恐くない。私には皆がついているから、皆が強さをくれるから!』

 

 ──うらやましい。自分には誰もいない。支えてくれる誰かはいない。

 

『アレキサンダー!! 来なさい!』

 

 ──その呼びかけに誘われるがまま、彼はドラグナーの娘の心に入った。そして、バハムートたちはドラグナーの心から出て行き、竜人の身体を使って復活したが、彼──アレキサンダーを受け入れる竜人はもはや生き残っていなかった。

 

『心配しないで……私、大丈夫みたい。うん、大丈夫よ!』

 

 だが、その身を案じる周囲の者たちに、ドラグナーの娘は気丈に笑った。

 

『私は昔のような弱いお姫様じゃないもの! 私はカーナの女王! それにドラグナーなんだから! アレキサンダーを心の中に入れておくくらいなんともないの』

 

 ──まぶしい。支えてくれる誰かがいれば、人とはここまで強く存れるのか。

 

 そうして彼はドラグナーの娘の心に宿り、初めて自分の居場所を得た。怒りが冷めず、憎しみは消えずとも、彼はそれに安らぎを感じていた。

 

 ──しかし、その安らぎは唐突に失われた。

 

『ごめんなさい……アレキサンダー……やはり私は心弱き娘のままだった……』

 

 彼を受け入れたドラグナーの娘は、そう弱々しい声で彼に謝罪した。故郷に帰った彼女の想い人が、怒れる民の振るう凶刃に倒れてこの世を去ったのだ。

 それを知ったドラグナーの娘は身を引き裂かれるような悲しみに襲われた。もはや、彼の存在をその内に留めておけるだけの強い心は保てなくなっていた。

 

『私が……もっと強かったら……決して自分を失わない強さがあったら良かったのに……』

 

 ごめんね、とドラグナーの娘は再び彼に謝罪した。未だ消えぬ彼の憎悪に蝕まれ、もはや彼女の命は風前の灯だった。

 

『全てを笑い飛ばせるぐらいの強さが私にあったら……きっとあなたを救ってあげられたのに……』

 

 ドラグナーの娘は心底悔やんでいた。彼の憎悪を受け止められなかったことを。自分が最期まで心弱き娘であったことを。

 

『みんな……カーナをお願い……ビュウ……オレルスを……見守っ……て……』

 

 ──そうして、思い出の中の男へと世界を託してドラグナーの娘の命は消えた。彼の憎悪を受け止めきれずに。

 

 ──脆い。やはり命とは誰かと支え合わなければ生きられないのか。

 彼はそう思った。だが、ドラグナーの娘が死んだ今、彼にはその誰かはいない。彼にあるのは、決して尽きることのない憎悪だけ。

 

 ──みんな消し飛ばしてしまおうか。

 肉体を失い、精神のみの存在となっても尚、彼はこのカーナを砕けるだけの力を維持していた。だが、自分を初めて受け入れてくれた存在が守った国を消してしまいたくはなかった。

 

 ──だから、彼は違う世界へ行った。オレルスであってオレルスではない世界。

 

 ──極めて近く、限りなく遠い世界へ。




【アレキサンダー】
原作『バハムートラグーン』のラスボス。
オレルスと異なるもう一つの世界、アルタイルの神竜王。過去にヴァリトラたちがオレルスに行った時に二つの世界の扉を閉じ彼らを追放した(ヴァリトラたちはそれを知らない)
ラスボスとしてはぶっちゃけポっと出で、ゲーム終盤、アルタイルに行ってから初めて名前が出る。

反乱軍改めオレルス救世軍となったビュウたちに倒されるが、神竜はアルタイルの住人の竜人の身体を用いる事で何度でも復活できる。
それを阻止すべくヨヨが自身の心の中にアレキサンダーを受け入れ、彼女は未来永劫アレキサンダーの憎悪を抱えたまま生きていく事になったのだが……。原作では結局ヨヨはパルパレオスの死を知らずに、寒気を感じたところで終わっている。

ラスボスとしては前座形態はさほど強くない。最終章では四つの首がそれぞれ個別にHPを持ち、使用技も分担されている。回復専門、状態異常専門、ブレス専門、本体の内訳である。
本体は他の首を全て倒すまでダメージが通らない。MPは無限で、前衛ユニットも一撃で葬る超威力の単体攻撃『天空の裁き』と、ヴァリトラを始めとした各神竜の力を模倣して『召喚』してくる。神竜召喚は攻撃範囲が広く、大抵のユニットは二発食らえば落ちるなど強力。

隠し召喚でもあり、『つよくてニューゲーム』を行うと召喚で使用できる。もちろん威力・範囲・属性(暗黒)の全てにおいて最強の存在であり、周回プレイはこれだけで最終章まで進めるほど。なおアレキサンダー本人がこの攻撃を使ってくる事はない。
ちなみに負けイベントのサウザー戦でセンダックに使わせると『神竜王アレキサンダーの攻撃を平然と受け止めていたのにヨヨのヴァリトラ召喚であっさり倒れるサウザー』という妙な状況が発生する。

【ヨヨ】
カーナ王家の王女で、ビュウの幼馴染み。金髪翠眼の美少女。
プチデビたち曰く『人間にしてはまあまあの女』『中の上』らしいが何の評価なのかは不明。
神竜の力をその身に宿す事が出来る伝説の『ドラグナー』。
神竜伝説に挑もうとするグランベロス帝国皇帝サウザーによってカーナ滅亡と同時に連れ去られ、反乱軍に救出されるまでの数年間、獄中生活を余儀なくされた。
獄中生活の最中、グランベロス帝国将軍パルパレオスとお互いに親交を深めていき心の拠り所にしていたが、サウザーにヴァリトラを目覚めさせようとキャンベルに連れ出された所を反乱軍によって助け出され、そのまま反乱軍の旗標となり、帝国の支配から各ラグーンを解放する戦いを続けながら各地に眠る神竜を目覚めさせ、着実にドラグナーとしての実力をつけていった。

我の強い神竜達が彼女の中で傍若無人な振る舞いを続けた結果、『心弱き娘』である彼女は心身の不調を抱え寝込んでしまう事もあったが、サウザーの「お前の大切な人を助けてやれ」という命により反乱軍に参加すべくやって来たパルパレオスと再会し、共に祖国カーナをグランベロス帝国から解放する事に成功。
これにより、正式にカーナ王国の女王となり、反乱軍改めオレルス救世軍の指導者的となり、グランベロス帝国を打倒。
自国の守護神竜たるバハムートにも認められ、真にドラグナーとして覚醒。
人間と神竜の橋渡しができる唯一の人間として、世界の命運を握る存在となったのであった。

……とまあストーリー的にはヒロインどころかほぼ主人公な彼女こそ、言わずと知れた『バハムートラグーン』のヒロインにして、『スクウェア三大悪女』の筆頭。
今後どんなヒロインが現れても彼女の座だけは揺るがないと言われるほど。というかスクウェア三大悪女という括り自体彼女の為に作られたようなもの。
「バハムートラグーンは知らないがヨヨは知っている」という人までいるのだから凄いものである。
ドラゴンとビュウ以外で唯一名前変更可能。でも好きな女の子の名前をつけるならドラゴンの方にしましょう。

ビュウとは共に訪れた男女は将来結ばれるという言い伝えがある『思い出の教会』に誘うほど親密だったが、帝国に捉えられると親切にしてくれたパルパレオスに心変わり(ストックホルム症候群だろうか)

軟禁中の自由時間にパルパレオスと共に思い出の教会に行きビュウを過去の男にしてしまう
『サラマンダーより、ずっとはやい!!』

なのに救出された直後はビュウに対して「怖いの……手を握って……」だの「クッキー作ってきたの」だの思わせぶりな態度を取る

が、敵将のパルパレオスと合流すると「おねがいビュウ……私の大切な人なの……」と言い、ビュウを振ったあげく上から目線で説教
『わかるかしら?』『大人になるって悲しいことなの』

仲間になったパルパレオスと艦内で人目も気にせずイチャイチャし、軍の風紀を乱す

かつては神竜の怨念で苦しんでいたのだが、克服したはずなのにまだ苦しそうな声が部屋から聞こえてくる
部屋に入るとやたら急いで奥から走ってくるパルパレオスとベッドに寝ているヨヨ
『いったい、なんなのかしらねえ』

基本的にパルパレオスを最優先し、彼の様子次第では超重要な話を人づてにする、マテライトの呼びかけにも答えないなど周囲を蔑ろにする、今後の方針を決める会議を放り出して打ち切る

……などなど、とにかくあんまりな行動ばかり。そして最後が『あの頃のように!』である。

カーナ滅亡及びカーナ再興をどう思っていたのかは不明。
神竜たちからの『心弱き娘』の呼び名の通り「夢から覚めたくなかった。ずっと夢の中にいたかった」「何も聞きたくない。楽しかったあの頃に帰りたい」など嫌な事から逃避しようとする言動が多く、悪いのは自分よりも周囲の環境のせいと思い込みたがる傾向がある。
全体的に、気弱で臆病かつ状況に流されやすい割には妙に自己主張が強く、自分を中心に物事を進めたがるような振る舞いが目立つ。どうも前提として自分は守られ他人より優先される人間だという意識があるように見える。

当然、周囲がそんなヨヨに対して何も思わないわけがなく、パルパレオス加入以降は明らかに軍の士気が低下。慕っていたラッシュにも失望されるわ、側近のマテライトにまで「最近のヨヨ様の考えはわからない」と言われるわ、生真面目なトゥルースは「ヨヨ様は信じていいかわからないから何も考えない!」と思考放棄するわ、場合によってはビュウがサジンたちにヨヨの暗殺を依頼するわ……。
バハラグに詳しくない人には作中では聖女の如く崇められているように誤解されがちだが、実際にはごらんの有様であり、彼女が作中でも嫌われキャラとして描かれているのは明白。現在のネット評価も制作側の意図通りなのは間違いない。

しかし周囲がそんな状態でもヨヨ自身は気にも留めない……というか純粋に気付いていないようだ。どうも彼女は他者から向けられる好意が不変のものだと信じている節が見られる。確実に皆の心が自分から離れているのに全く気付かずに平然としている。ドラグナーとしては周囲がどう言おうがイチャついて精神を安定させていた方が合理的なのも性質の悪いところである。
アレキサンダーを受け入れ、パルパレオスの死に寒気を感じた後の彼女及びカーナがどうなったのかは不明。ただカーナ軍の内情を知らないカーナ国民、強いてはオレルス住人にとっては間違いなく救世主として映るであろう。
ちなみに劇中一度もパルパレオスを『愛している』とは言っておらず、本当に彼を愛していたのかも不明である。

何気にメシマズ属性の持ち主。文字通り死ぬほどマズいクッキーを作り出し、実際に戦闘中に敵に投げて即死させる事が可能。人間だけでなく竜や魔物も死ぬのだから相当である。
メシマズヒロインは数いれども本当に相手を殺すのに料理を活用されるというのも珍しいのではないだろうか。

そんな彼女だが、作中で伝説の存在とされているドラグナーの設定に相応しく、単純なユニットとしては凄まじく強い。
味方キャラ中最高のMPと魔力を誇り、センダックの完全上位互換。更にバハラグ唯一のクラスチェンジ持ちであり、ドラグナーになるとHPと防御もアサシンやライトアーマーなど一部の前衛クラスをも上回りかなり打たれ強くなる。
そしてワーロック時代の装いが王女の割にはかなり地味なのもあって、ドラグナー昇格後のキャラグラフィックは凛々しく格好良い。

フィールドでは広範囲高威力のMAP兵器たる召喚を使い敵を一層、それだけでなく近接戦闘でも召喚が高威力の全体攻撃として猛威を振るう。
物理・魔法問わず近接戦闘でのダメージを1.5倍にする最強の支援魔法「ビンゴ」も使用可能で、自分で自分を強化して近接戦闘で召喚すると凄まじい攻撃力を発揮する。おまけにホワイドラッグでの回復もこなす。
上記は全て同業者であるセンダックもこなせるとはいえ、ぶっちゃけMPさえ切れなければ大抵の戦況は彼女一人いればなんとかなるレベルの強さである。さすがドラグナー。

良くも悪くも、彼女こそが『バハムートラグーン』というゲームの知名度を引き上げ、歴史に名を残すゲームにした事は間違いない。彼女が普通のヒロインだったならば、バハラグは少し目新しいシステムなだけの普通に面白いゲームとして、さほど語られる事もなくゲーム界の波に呑まれていったであろう。
あとテーマ曲は凄く良い。テーマ曲は凄く良い。
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