ヨヨですけど、何か問題でも?   作:れいのやつ Lv40

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今年もこの日がきたということで。


Fate/jojo 2

 ────聖杯戦争。

 それは七体のサーヴァントとそれを使役する七人のマスターで行われる、命を賭けたゲーム。万能の願望器『聖杯』を求めて行われる殺し合い。

 そして今宵、とある倉庫街で二人の騎士が相対していた。不可視の剣を携えた少女と、二槍を操る美貌の騎士の対決。

 

「ふむ。あれが現世に蘇った英霊様ね」

 

 そして――その戦いを安全圏から高みの見物を決め込む少女が一人。召喚されて早々、御三家が一角、間桐家を事実上滅ぼしたサーヴァント、カーナ王ヨヨである。

 彼女は自身のサーヴァントとしてのスキル『女帝特権』を用いて、本来持ち得ない『道具作成』の能力により創り出した遠見の水晶玉によってこの戦いを見物していた。

 

「なるほどなるほど。セイバーもランサーも、どうやら一流の英雄と見える。これだけの英傑がたかだか一杯の盃を求めて殺し合っているというのだから傑作よね」

 

 くつくつと笑いながら、彼女は呟いた。元々イレギュラーで喚び出された彼女は、聖杯戦争の勝者となる為ではなく、あくまで娯楽として参加しているだけだ。

 彼女にとってこの聖杯戦争は、単なる愉快なショーであった。

 

「そんなに面白いんですか? ヨヨさま」

 

 傍らに立つ幼い少女が問うた。彼女は間桐桜。間桐家にて次代を産み落とす為の母体としてしか見られていなかった哀れな少女であり――ヨヨによって突如その地獄から救い上げられた存在である。同時にヨヨのマスターでもあった。

 ……最も、ヨヨ自身は単に自身に対する不敬と見なして臓硯を殺しただけであり、桜を救ったつもりなどさらさらなかったのだが。その上、マスターとしても単に自我が薄い桜であるのが自分が好き勝手するのに都合が良かっただけである。

 だがそれでも桜にとっては、自分を助けてくれた恩人であり、敬愛すべき王様であることに変わりはないのだ。

 

「だって考えてごらんなさい桜。英雄と呼ばれるような連中が、たかだか魔術師の駒に甘んじた挙げ句、聖杯などというおもちゃを取り合っているのよ? これほど滑稽な見世物は私も初めてよ!」

 

 そう言ってヨヨは心底楽しそうな笑みを浮かべる。桜には彼女の言っていることの半分も理解できなかったが、彼女はとても楽しいらしいということだけは分かった。

 

「聖杯をもらったら、『お願い』が叶うんですよね」

「ええ。だけどね桜、本来、願いとは自分の力で実現すべきものなのよ?」

 

 ヨヨが聖杯に興味を持たないのはそういう理由だった。仮に万能の願望器を手に入れたところで、自分の力で叶えていない望みなど意味がない。

 桜もなんとなく納得したのか、遠見の水晶で戦っている二騎のサーヴァントを見て首をかしげた。

 

「じゃあなんで、あの人たちは自分の力じゃなくて聖杯にお願いしようなんて思ったんでしょう?」

「簡単よ。あの英雄様たちはね、どうしたら自分の願いが叶うのかわからないの」

「自分のお願いなのに?」

「ええ、自分の願いだからこそ、その方法がわからなかったのよ。だって彼らはただの人間なのだから」

 

 いかなる英雄も、結局は一人の人間に過ぎない。人間に過ぎないからこそ、自身にすら実現方法がわからない願いを抱いてしまうのだ。

 

「さて桜。自分すらわからない願いを叶えてもらうにはどうしたらいいかしら?」

「……神様にお願いする?」

「正解よ。人間が叶えられない願いであっても、神ならば聞き届けてくれるかもしれない」

「その神様が、聖杯なんですね」

「そう。まぁ聖杯(神様)が聞き届ける『願い』が、彼らの思っているものと同じかは知らないが」

「?」

 

 ヨヨの言葉の意味がよく分からず、桜は不思議そうな顔をしたが、それ以上は教えてくれなかった。突如、戦場に大きな変化があったためである。と言っても、決着がついたわけではなく……。

 

『AAAAALaLaLaLaei!!』『ひぃぃぃッ!!?』

 

 ――空を翔ける戦車(チャリオット)に乗った大男が、マスター共々戦場に乱入してきたのであった。

 

「おやおや。ずいぶんと豪快な奴がいたものね」

 

 乱入者の姿を見て、ヨヨはくすりと笑う。一方の桜は突然の事態に目を丸くしていた。

 

『双方、剣を収めよ! 王の御前である!』

 

 そう叫んで戦車の上でふんぞり返ったのは、筋骨隆々の偉丈夫――ライダーのサーヴァントである。

 

『我が名は征服王イスカンダル! 此度の聖杯戦争においてはライダーのクラスを得て現界した』

 

 ライダーは堂々と名乗りを上げると、倉庫街全体に響き渡るほどの声で叫んだ。いきなり正体をばらす暴挙に、傍らのマスターが騒ぎ出す。

 

『何を考えてやがりますかこの馬鹿はあぁあああっ!?』

『はっはっは。よいではないか。こういうのはインパクトが大事だと言うであろう?』

『そういう問題じゃないでしょうがこのトンチキが!』

 

 マスターの少年は頭を抱えながら怒鳴り散らすが、当の本人はどこ吹く風である。その上「ちょっと黙っとれ坊主」とデコピン一発で沈黙させられてしまった。明らかに手綱を握れていない。

 

『うぬらとは聖杯を求めて相争う巡り合わせだが、まずは問うておくことがある。うぬら、ひとつ我が軍門に降り、聖杯を余に譲る気はないか? さすれば余は貴様らを朋友として遇し、世界を征する快悦を共に分かち合う所存でおる!』

「……馬鹿なんですか、この人?」

「あっはっは!」

 

 非常識極まりないライダーの言動に呆れたように呟く桜だったが、ヨヨは楽しげである。こういう馬鹿は行動が読めないので彼女の好みだった。

 一方、突然の申し出を受けた他陣営の反応と言えば……。

 

『その提案には承服しかねる。俺が此度の現界にてこの槍に賭けて忠誠を誓うのは我が主ただ一人。断じて貴様ではないぞ、ライダー』

『そもそも、そんな戯言を述べたてる為に私とランサーの決闘を邪魔だてしたのか? だとしたら騎士として許しがたい侮辱だ! 加えて言うなら、私も一人の王。ブリテンを預かる身として貴殿に下るなどという選択は無い!』

 

 当然のように総スカンを喰らう。特にセイバーなどは怒り心頭のようであり、明らかな殺気を放ち始めていた。だがそんな険悪な雰囲気の中、ライダーは食い下がる。

 

『……待遇は応相談だが?』

『『くどい!!』』

『うーむ交渉決裂かぁ……残念だのう』

 

 本気で落ち込むライダー。全く相手にされない状況に再び彼のマスターが叫ぶ。

 

『らいだあああぁ! ど~すんだよお!? 征服とか何とか言いながら、結局総スカンじゃないかよ! お前本気でセイバーとランサーを手下に出来ると思ってたのか?』

『いや坊主、ものは試しと言うではないか』

『ものは試しで正体ばらすなよおおぉっ!?』

 

 頭を抱えるライダーのマスターに、さしものランサーやセイバーもやや同情的な視線を向けた。並大抵の魔術師ではこのライダーは制御できないだろう。

 

『無駄に情報渡しただけじゃないかよ!  せっかくこっちがうまく立ち回れば有利に進められると思ったのに、何やってんだオマエは!?』

『そう怒るでない。だいたい余はそういう小賢しい真似は苦手なのだ。それにな坊主、何も我等だけが情報を渡したわけでも無いぞ』『え?』

『先ほど、あの金髪の娘が名乗ったのを聞いておったであろう? 【ブリテンの王】とな』『あ……!』

 

 ようやくライダーの意図を理解してか、マスターは声を上げた。

 

『あの子、アーサー王なのか!?』

『驚きよな? あの騎士王がこんな小娘だったというんだからなぁ』

『……ならば小娘の剣、その身で味わってみるか征服王?』

 

 怒りのセイバーがライダーを睨む。しかしそこへまた別の声が響いた。

 

『……そうか、よりによって君か、ウェイバー・ベルベット君』

『―――ッ!?』

 

 不意にかけられた言葉にライダーのマスター――ウェイバーは硬直する。

 

『私から聖遺物を盗んで何を血迷ったのかと思えば、まさか君が自ら聖杯戦争に参加するとは。私に論文を否定されてちっぽけなプライドがそんなに傷ついたのかね? いや、それはそれで結構なことだ。君のような凡俗には相応しい』

『―――ッ!!  ケイネス、先生……』

『まぁ、せっかく聖杯戦争で会ったのだ、私が特別に課外授業をしてあげようではないか。魔術師同士が殺し合うという本当の意味を……光栄に思い給え』

『ひ――ッ!』

『おいおい坊主、シャキッとせんか。それでも余のマスターか?』

 

 完全に怯えきっているウェイバーを叱咤すると、ライダーはランサーへと――否、彼のマスターであるケイネスへと向きなおる。

 

『ランサーのマスターよ! 察するに貴様はこの坊主に変わって余のマスターになるつもりだったらしいなぁ。だとしたら、片腹痛いわ!』

『なに?』

『余のマスターたる魔術師は、余とともに戦場をはせる勇者でなければならぬ。貴様のような姿も見せない臆病者など、余のマスターは勤まらんわい!』

『なんだと……!?』

 

 ライダーの挑発にケイネスは激昂するが、ライダーは無視してさらに大声を張り上げる。

 

『おうこら、まだおるだろうが! 闇に紛れて覗き見している連中は!』

「む……」

 

 ライダーの言に、機嫌良さげだったヨヨの雰囲気が変わる。眉をわずかに動かし、水晶越しにライダーを見つめた。

 

『聖杯に招かれし英霊は、今ここに集うがいい! 余の呼びかけに応じず、尚も顔を見せぬ恥知らずは、この征服王イスカンダルの侮蔑を免れぬものと知れ!』

「たかだか征服王風情が大きく出たわね……」

 

 そう言うと、ヨヨは瞬時に間桐家から姿を消した。桜は察する。彼女は「おうさま」であるから、こういった見え透いた挑発であっても、無視するのは彼女の王としての誇りに関わるのだ。一人残された桜は、ぼんやりと遠見の水晶を見続けるのだった。

 




エイプリルフール中に続きをもう一話、昼ごろ投稿予定です。
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