まずライダーの挑発に乗って現れたのは、街灯の上に立つ黄金のサーヴァント――先日アサシンを葬ったアーチャーであった。
「この我を差し置いて王を称する不埒者が、一夜のうちに二匹も湧くとはな」
「そう絡まれてもなぁ。イスカンダルたる余は、世に名を残す征服王に他ならぬのだが?」
「たわけ。真の王たる英雄は天上天下に我一人。他は有象無象の雑種に過ぎん」
傲岸不遜、唯我独尊を地で行くような台詞だった。その言葉が真実かどうかはともかくとして、並々ならぬ自信と実力を備えていることは疑いない。
「そこまで言うなら、名乗りを上げたらどうだ? 貴様も王であるというなら己の威名を憚りはしまい?」
「問いを投げるか……雑種風情が、王たる我に向けて? 我が拝謁の栄に浴して尚、この面貌を見知らぬと言うなら、その無知は万死に値するぞ」
(いやいや理不尽すぎるだろ!)
殺気を纏ったアーチャーの言い分にウェイバーは内心で盛大に突っ込みを入れた。自身のサーヴァントであるライダーも大概横暴だと思っていたが、あの黄金のサーヴァントはそういうレベルを超越している。あれこそまさに暴君と呼ぶに相応しい存在だろう。
『無礼にも尊きこの私を呼びつけておいて、よもや他の些末事に意識を向けるとは、不敬が過ぎるわよ? 下賤ども』
不意に響いた美しい声に、その場の全員が一斉に視線を向けた。そこには息を呑むほどの美貌を持った魔術師風の少女が佇んでいた。見慣れない新手のサーヴァントに、全員が警戒を露にする。
「新しいサーヴァントか……! あの風貌からすると、キャスターか?」
「この私をお前たち下賤の価値感で測るのでないわ。尊きこの身が、聖杯ごときが用意した枠組みに収まるなど有り得ぬことよ」
「ほぉう? ではお主は何者だと申すのだ?」
「知れたこと。もしも王たるこの私を、不敬にもサーヴァントという器に収めようというのならば、いかなる世界に置いても、私に相応しい器はただひとつしか有り得ない」
少女の言葉に一同は眉をひそめる。だがそれすらも愉快とばかりに、彼女は高らかに宣言した。
「『ドラグナー』。神竜王たる私に相応しきは、遍く竜の支配者たるその称号のみ!」
「竜の支配者だって……!? そんなバカな!」
彼女の名乗りを聞いて、ウェイバーが驚愕の声を上げる。この場にいるアーサー王のように、自身が竜としての属性を得た英雄は数いるが、竜を使役する人間など、神代の時代ですら存在するか怪しい。しかし彼女の名乗りを聞いたライダーは、何やら嬉しげな笑みを浮かべていた。
「ふむ、竜属性の王はそこの騎士王とかが有名だが、竜を使役する王となると聞いたことがないのう。坊主、心当たりはないか?」
「僕も知らない……というかライダー! オマエなんでそんなに落ち着いてるんだよ! わかってるのか? あのドラグナーってヤツの言うことが本当なら、単騎で他のサーヴァント全員に匹敵するかもしれないんだぞ!」
竜種は幻想種の頂点にして、単体でサーヴァントに匹敵しかねない最強の幻想種だ。それを使役する王となると、いかに優れた英霊であろうと単独で打倒するのは困難を極めるだろう。
「なんだわからんのか坊主。いいか? あやつの言葉を信じるなら、ドラグナーは竜の支配者たる神竜王。つまりだな」
「つまり?」
「あやつが我が臣下となれば、竜もついてきてお買い得ということだ!」
「アホかオマエはああああっ!!」
実に能天気なことを言い出したライダーに対して、ウェイバーは全力で突っ込んだ。確かにそれが実現すれば間違いなく強力な戦力になるが、これまでの短い会話でもわかるほど、あの女はアーチャーに匹敵する傍若無人かつ傲岸不遜な性格をしている。どう考えても他人に服従するような存在ではない。
「尊きこの私の前でつまらない問答を繰り返すでないわ。本来ならば、この私を前にして尚、私の名を知らぬというそれ自体が万死に値する蒙昧であるのよ?」
「どっかで聞いたフレーズだなオイ!?」
ドラグナーの理不尽極まりない言い分は、先ほど名を問いかけた時に一方的に激昂しライダーを裁こうとしたアーチャーそっくりであった。どうやらこの二人は似通った性質を持っているらしい。
「つーかなんで七騎のサーヴァントのうち四騎も王様が来てるんだよ! しかもとんでもないレベルの暴君ばっかりだし! 王様のサーヴァントってのはああいうのしかいないのか!?」
「待っていただきたい
自分が名君だったと言えるかは自信が無いが、断じて暴君ではないと自負しているアーサー王ことアルトリア・ペンドラゴンはウェイバーの感想に抗議の声を上げた。
「まぁそうカリカリするな騎士王。それよりもだな」
「なんだライダー、何か気になることがあるのか?」
「うむ。アーチャーよ」
「何だ、雑種」
「さっきから気になっとったんだが、お主、なぜドラグナーには突っかからんのだ?」
そういえば、と周囲も同意を示す。アーチャーは先ほど「自分以外に王などいない」と豪語し、イスカンダルやアルトリアすら有象無象と見下していたが、ドラグナーに対しては特に言及していない。
「ふん、決まっていよう。確かに我は世界に唯一君臨する真の王であるが――我が存在しない歴史においてまで、王を名乗るは道理が通らぬ故な。あくまで我は、我が存在するこの世界における王だ」
「……そいつはどういう意味だ?」
アーチャーの言葉に誰もが疑問符を浮かべるが、ドラグナーはその言葉に感心したように楽しげな笑みを浮かべた。
「ほう。真の王などと大言を吐くだけの事はあるわね。そこまで見通しているとは、さすがと言うべきかしら?」
「貴様こそ、人の身で竜どもの王を名乗るだけはあるようではないか。その身の内に、何を巣食わせている?」
二人の会話の意味がわからず、一同が困惑する中、割り込んだのはやはりライダーであった。
「おいおい、お主らだけで納得しとらんで余らにも説明せい。お主らが言っているのは何の話だ?」
「王の会話に割り込んだ挙げ句、許可も無く問いを投げるとは不敬極まりないわね。まぁ、特別に答えてあげましょう」
尊大な態度で、ドラグナーが語り始める。
「と言っても、全てあの男の言う通りよ。私の辿った歴史にお前たちは存在しない。そしてお前たちが辿るべき歴史にも、私は存在し得ないのだからね」
「それは、一体……」「……まさか!?」
ドラグナーの言葉を受けて、反応したのはセイバーのマスターとしてこの場にいるアイリスフィールであった。始まりの御三家、アインツベルンのホムンクルスである彼女にとって、ドラグナーの発言はその可能性に思い至らせるには十分すぎた。
「気付いたかしら? そう、私は並行世界の英霊。故に、この私とお前たちの歴史は決して交わる事はない」
『有り得ない!!』
ドラグナーの言葉に思わず叫んだのは、アーチャーの視点を通じてこの場を見ていたマスター、遠坂時臣である。それもそのはず、彼の属する始まりの御三家、遠坂家は第二魔法「並行世界の運営」の術者であるキシュア・ゼルレッチ・シュバインオーグを太祖とする一族だ。
彼が知る限り、如何に聖杯戦争といえど、並行世界からの英霊召喚は前例がない。しかもアーチャー――ギルガメッシュの言葉通りならばドラグナーのいた世界はそもそもの人類史の成り立ちからして異なる事になる。そこまで行くともはや完全な異世界だ。
「ふーむ、成る程なぁ。そもそもこの世界の人間ではなかったわけか。こりゃあ一本取られたわい!」
「笑ってる場合か、ライダー! 並行世界なんて魔法の領域なんだぞ!? そんなの、いくら聖杯戦争とはいえただの人間がどうやって呼び出したっていうんだ!」
「落ち着け坊主。余には魔法だの魔術だのといった知識はないが、むしろ合点がいったぞ。この場の誰もドラグナーのことを知らんかっただろう?」
「え? あ、ああ」
「もしも竜を使役する王なんぞとんでもない輩がこの世界に居たなら、必ず歴史に――少なくとも伝承や神話には間違いなく名を残しておるはずだ。しかし余も坊主も騎士王も、ドラグナーのことなぞ微塵も聞いたことがない。つまり、あやつは真に異世界のサーヴァントということだ」
「…………」
ウェイバーは絶句した。確かに、ライダーの言うとおりである。最強の幻想種である竜種を統べる王などというとんでもない人物が存在していたなら、この場の誰も知らない無名な英霊であるなどということがあるわけがない。なのに彼女の存在が全く知られていないのは、そもそもが異なる世界の住人であるからなのだ。
「いやあ、余もいろんな連中に会ってきたが、異世界から来た王なんてのは初めて見たぞ! これはいい、実に面白い! どうだ、今度酒でも酌み交わさんか!?」
「ふむ。悪くないわね。元より娯楽として召喚に応じた身。異世界の人間と杯を交わすのも一興」
「おお! 話がわかるではないか!」
「だがその前に――無礼者への裁きを下す方が先決よ」
「む?」
ドラグナーが目をやったのは、先ほどから黙って話を聞いていたランサーであった。その視線に込められた怒りを感じ取ったのか、彼は慌てて弁明を始める。
「待て、俺は何も貴女に不敬など働いてはいない!」
「下賤が何を言うか。先ほどから煩わしい魅了の魔術がお前から届いているのが不快極まりない。効く効かないの問題ではなく、尊きこの私に魅了の術を行使する、それ自体が万死に値する大罪よ」
「なっ…………!?」
ランサーとドラグナーのやり取りに、先ほど自分もランサーに魅了の術を向けられたアイリスフィールは思わず「あちゃー」と言わんばかりに額に手を当てた。ランサー曰く、彼の魅了の術は持って生まれた呪いのようなものであり、それについてランサーは「俺の出生か、もしくは女に生まれた自分を恨んでくれ」などとのたまったのだ。
セイバーとアイリスフィールはあまり気にしなかったが、ドラグナーのような暴君が自身に魅了の術などという代物を行使されれば、こうなるのは自明の理であった。たとえランサーが意図して行使したわけでは無く、ドラグナーに全く効果が無くても、である。
「もはやお前は私の前に存在する事自体が大罪。――失せなさい、狗が」
『避けよランサー!!』
ドラグナーが杖を掲げると同時、ランサーのマスター、ケイネスが令呪を以ってランサーに命じる。令呪の補助を得てランサーが飛び退いた瞬間、先ほどまでランサーの居た大地にあらゆる物質を焼き尽くさんばかりの業火が立ち上った。もしケイネスの判断が一瞬でも遅れていたらランサーもあの炎に焼かれ、骨すら残らなかったであろう。
「……あれは凄まじいですね。私でも無事でいられるかどうか……」
「え? た、確かにすごい威力っていうのは一目でわかるけど……で、でもセイバー、貴女には対魔力があるでしょう?」
「確かに私はほとんどの大魔術ですら無力化できる最高位の対魔力を保持していますが……彼女の魔術にどれほど効力があるかはわかりません。何しろ……彼女は異界の英霊ですからね」
「あ……!」
そう、三騎士の保有スキルである対魔力は、あくまでこの世界の魔術基盤に由来するものだ。しかし異世界となれば、根本の魔術基盤からして異なるであろう。つまり、ドラグナーの魔術に対してはそもそもスキル自体が機能しない可能性が高かった。
「下賤が、事もあろうに私の炎を拒絶するとはね。お前ごとき塵芥が、尊きこの私の手によって死すという誉れを得ようと言うのよ? 歓喜して受け入れるが道理でしょう?」
つまりは「私がわざわざ殺してやるんだから喜んで死ね」と言っているに等しいドラグナーの言葉に、さすがのライダーも頭を掻いて唸った。
「うーむ、余は余より態度のでかい王などおらんだろうと昨日までは思っていたんだが、まさか今日で二人も会うとはなぁ。いやはや、これだから人生とは面白きものよ!」
「感心してる場合かライダー! あいつ竜の支配者って言ってたのに、竜がいなくてもめちゃくちゃ強いじゃないかよ!」
「まぁ、確かになぁ。しかも騎士王によると対魔力も当てにできんらしい。いやはや、どうしたもんかのぅ」
周囲が未知のサーヴァントであるドラグナーの力を見極めようとする中、突如脱落の危機を迎えているランサーのマスター、ケイネス・エルメロイ・アーチボルトは、盛大に焦っていた。
(こんな場面で脱落など冗談ではないぞ……!)
そもそもからして、ランサー――ディルムッド・オディナという英霊は気に入らなかったのだ。特に、ランサーが持って生まれた女性を魅了してしまう呪い、『愛の黒子』。それによって許嫁であるソラウがランサーに惹かれてしまった事から気に入らなかったというのに、よもやその呪いのせいで異世界の女王の不興を買い、脱落の危機に陥るなど笑い話にもならない。
「主よ! 宝具の使用をお命じ下さい!」
『……令呪による撤退ではなく、か?』
「はい! 必ずやドラグナーを討ち取り、我が槍に懸けて勝利を捧げます! どうか御許可を!」
必死の形相のランサーに、ケイネスは思わず眉をひそめた。正直な話、宝具を使おうが使うまいが、ドラグナーにランサーが勝てるビジョンが見えなかったからだ。ランサーの宝具である破魔の紅薔薇が持つ魔術の消滅効果は、あくまで魔術的防御やエンチャントなどの類に対して効果を発揮するもので、既に完了した魔術を打ち消すことは不可能。つまり破魔の紅薔薇ではあの炎の魔術には対抗できない。
ましてや、ウェイバーが言うようにドラグナーはまだ真価であろう竜種の使役能力を見せていない。もしもドラグナーが本気でランサーを殺しにかかれば、この場のサーヴァントで最も格が劣るランサー程度が対抗できるとはケイネスには思えなかった。
(だが、撤退しようにもそれには令呪を使わねばならんだろう。しかし私は既に先ほどのドラグナーの魔術を回避する為に令呪の一画を使用している。ここでさらに撤退に使用すれば令呪は残り一画。その状態で生き延びたところで、この後の聖杯戦争を勝ち抜けるとは思えん)
『ランサーよ、お前にドラグナーの討伐を命じる。宝具を使用してドラグナーを討ち取り、その首級を持って帰還せよ』
「はっ!!」
ケイネスが選んだのは、ランサーの言を受け入れることだった。ランサーが歓喜するのを感じ取れたが、ケイネスはランサーの実力を信頼してこう命じたわけではない。
逆である。どういう選択をしたところで、ランサーがこの先の戦いを勝ち抜けるとは到底思えなかったからだ。どうせこの場を凌いでも結局は敗退する可能性が高いなら、この場でドラグナーを討ち取れる可能性に賭けてランサーを死地に向かわせても問題あるまい。
(まぁ、九割九分は死ぬであろうが、万一、残りの一分を引けばドラグナーの首を持ち帰ってくるやもしれん。仮にランサーが死んで敗退したところで、私はランサーの言を聞き入れてやっただけだ。判断を誤ったのはランサーであり、私ではない。私はランサーが勝てるというから信頼して任せてやった――そういう事にしておくとしよう)
内心でそう結論付けたケイネスは、すでにランサーの死をほとんど確信していた。もはや聖杯戦争の脱落は確定的だが、元より単なる箔付けの為に参加したようなものだ。
結果を残せなかったのは口惜しいが、仕方あるまい。ランサーが消えればソラウにかかった魅了の術も解けるだろう。そうすればソラウの心はまた自分に戻ってくるに違いない。ならばまぁ構わんだろう。
『ランサーよ、存分に戦うが良い』
「――ありがたき幸せ! このディルムッド・オディナ、全身全霊を以って戦いましょう!」
ケイネスがそんなことを考えているなど露知らず、ランサーは嬉々としてドラグナーに挑みかかっていった。ドラグナーはランサーの槍の一撃を杖によって受け止めると、不敵な笑みを浮かべた。
「この私に挑むなど、身の程を知らぬ愚か者ね。お前がマスターに進言すべきは、私の打倒ではなく鼠の如く逃げ帰ることだったというのに」
「黙れ! 俺が貴様に挑むのは、我が主の名誉を守る為だ! 我が主は誇り高き魔術師! たとえ相手が異界の英霊であろうとも、この場を逃げ、主の恥となるなど断じて許されぬ!」
「ほう。この世界では自己陶酔の為に主に不利益をもたらすのを忠義と言うの? さすがは異世界ね」
「貴様、我が騎士道を侮辱するか!」
激昂したランサーが、ドラグナーに更なる攻撃を仕掛けようとした瞬間、ドラグナーから絶対的な『死』を感じさせる白い輝きが放たれた。そして、ランサーのサーヴァント、ディルムッド・オディナはこの世から消滅した。
「……え?」
突然の出来事に呆然とするウェイバーに対し、ドラグナーは不敵に微笑んだ。
「騎士道を口にしながら主を見ず、忠義そのものに仕える愚者が。尊きこの私の手によって消えるなど、お前には過分すぎる最期よ? 光栄に思うことね」
既に消滅したランサーに向けて、ドラグナーが冷たく言い放つ。あまりに呆気なくランサーが消滅したことに、ウェイバーは動揺を隠せなかった。
(あいつ何したんだ!? あんな一瞬でランサーを倒したのか!? 宝具? それとも魔術か!? )
そこでふと、ウェイバーはまだドラグナーのステータスを見ていなかったことを思い出した。これまでの流れに圧倒されてしまい、すっかり忘れていたのだ。慌ててドラグナーのステータスを確認しようと、彼女にその目を向け――瞬間、『死』を体感した。
「ぐ――――が、ああああっ!?」
「お、おい!? どうした坊主!?」
突如苦しみ出したウェイバーに、ライダーが声をかける。しかし、今のウェイバーにそれに答える余裕はなかった。
(な、ん……だ、こ、れ……!?)
今まで感じたことのないほどの強烈な悪寒が、ウェイバーの精神を蝕んでいた。それはまるで、自分の魂そのものが凍りついてしまうかのような恐怖。そして――憎悪。
(――憎い。憎い。憎い。憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い!!)
「やめろ――来るな――来るなああぁぁぁぁっ!!」
「坊主……! しっかりしろ、坊主!!」
尋常ならざる様子のウェイバーに、さしものライダーもただ事ではないと察する。ドラグナーは突如として狂乱し始めたウェイバーに首を傾げたが、ふと思い至ったように笑みを浮かべた。
「ああ、私を『視た』のね。尊きこの私に拝謁の栄誉を授かって、より深く私の威光を知りたいと思うのは当然の道理であるけれど――命が惜しくば、私を『視る』などということはしない方が賢明よ?」
「……な、なん、だと……!」
「坊主! 大丈夫なのか!?」
ウェイバーは息も絶え絶えになりながら、必死の形相で自身の身を案ずるライダーにしがみついた。今だけは、この傍迷惑なサーヴァントが心底頼もしく思えた。
「……ら、い、だー、あいつは、ヤバい。あんな、モノを、飼って、る、なんて、まともな……存在じゃ、ないぞ」
「……どういうことだ? 一体、何を見たというんだ坊主」
「ふふふ。どうだったかしら? 世界を焼き尽くすほどの憎悪は?」
愉悦に満ちた表情で、ドラグナーが問いかけてくる。ドラグナーの言葉に、ウェイバーは再び戦慄を覚え、ライダーが驚愕する。
「世界を焼き尽くす憎悪だと? 坊主、ドラグナーがそれほど世界を憎んどるというのか? 余には奴が
「違う、そんな、レベルじゃない……。アレは、もっと、根源的な、憎しみ……」
「何だ、気付いていなかったのか、雑種? 我はてっきり、貴様は自殺志願者かと思ったぞ」
「なんだって!? アーチャー、お前知ってやがったのか!?」
突然会話に割り込んで来たアーチャーに、ウェイバーは抗議の声を上げた。しかしアーチャーは意に介さず、不敵に笑う。
「当然であろう。我を誰だと思っている。我の眼にかかれば一目で看破できるわ。その女が、自身の内に憎悪そのものに等しき存在を巣食わせている事などな」
「な――」
「ふふふふふ。『彼』は我が半身。私の中に住まう、我が盟友にして憎悪の化身。あらゆる冥い感情を糧として、私の力と変えてくれる我が力の根源」
ドラグナーの言葉に、アーチャー以外の全員が唖然とした。その言葉が正しいならば、彼女は自分の身の内に『憎悪』という概念そのものを住まわせていると同義だ。いかに英霊といえどもそれは最早、人間という枠を完全に逸脱している。
「ウェイバーとやら、お前は幸運であるわよ? 我が半身が抱く憎悪は、私のいた世界に由来するもの。何の謂れも無きこの世界では、『彼』の憎悪も随分と弱まっているのだからね」
「な――」
ウェイバーは絶句した。彼が先ほど『視た』憎悪ですらそのまま発狂死してしまいそうなほどおぞましいものだったのだ。もしそれが本来のものであったなら――自分は今、間違いなくこの世にはいなかっただろう。
「……あんたは、なんなんだ。あんなモノを飼っていながら、どうして平然と微笑みを浮かべていられるんだ」
ウェイバーがそう問うと、ドラグナーは無知な愚民を嘲笑うかのように口角を持ち上げた。
「尊きこの私に何者か問うとは、全く以て蒙昧極まりない不敬であるが――ここは異世界。なればこそ、許そうではないの。特別に答えてあげましょう」
そしてドラグナーは、高らかに名乗りを上げる。
「私の名はヨヨ。遍く
【class】ドラグナー
【真名】ヨヨ
【属性】混沌・善
【ステータス】筋力D 耐久A 敏捷D 魔力EX 幸運A(E) 宝具EX
騎乗:EX
乗り物を乗りこなす能力。本来は騎乗スキルでは乗りこなせないはずの竜種に例外的に騎乗可能。
ドラグナーはむしろ竜に乗る事こそを当然としており、逆に他の獣や乗り物には騎乗できない。
カリスマ:A+
大軍団を指揮・統率する才能。ここまでくると人望ではなく、魔力、呪いの類いである。
黄金律(体):A
生まれながらにして、女神の如き完璧な肉体を有する。どれだけ贅を尽くしてもその美貌は損なわれる事はない。
忘却補正:A
人は多くを忘れる生き物だが、復讐者は決して忘れない。厳密には彼女はこのスキルを保有しておらず、このスキルの由来には別の存在が関わっている。
女帝特権:EX
本来所有していないスキルも短期間だけ獲得できる。最も尊き人間であるこの私が万能であるのは当然でしょう?
獲得可能スキルは実に多彩。Aランク以上ともなると肉体面の負荷すら獲得できるのだが、なぜか料理系統のスキルは一切獲得できない。
皇帝特権と同一のスキルだが、『名前が気に食わない』ので当人の自己申告によりスキル名が変更されている。
魅惑の美声:C-
天性の美声。王権による力の行使の宣言であり、言葉一つで王権の敵対者への魔力ダメージを導く。
本来は異性に対する魅了の魔術的効果もあるが、ドラグナーの場合、王としての自負が強すぎるせいか魅了の効果は失われている。
天意の加護:A
幸運値を強制的にAランクにする。加護とは言うものの、ドラグナーは誰の恩恵も得てはいない。あるのは、天意こそは我に在る──否、自身の行いこそが天意であると信ずる心から生まれる、自己の肉体・精神の絶対性のみである。
悪女伝説:EX
知名度補正が大幅に増幅するが、特定の対象から異常な敵対心を抱かれる。
また、特定の状況下で意思とは無関係に特定の台詞を口走ってしまう。
なお、このスキルは外せない。
憎悪の炎:EX
とある存在が抱く消えない憎悪。
あらゆる精神干渉を完全に無効化し、任意の対象に絶大な負の精神ダメージを与える。
また、所有者の内面に外部から何らかの干渉があった場合、自動的に精神ダメージによるカウンターを行う。ただし所有者とパスが繋がれている対象には反応しない。
【宝具】
『
マトリクス不足により、詳細不明。
『
マトリクス不足により、詳細不明。