ヨヨですけど、何か問題でも?   作:れいのやつ Lv40

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私のヨヨ様の声のイメージはハルシュタイン閣下です。
ピンと来ない人は『無尽合体キサラギ スキルボイス』でググろう!


神竜リヴァイアサン

 ヨヨ率いるカーナ軍は、無人の野を進むかの如く進軍していた。時折、巨人が襲ってくるが、どれもこれも同じく水辺に誘き寄せる戦法で呆気なくその身を沈められていく。

 

「グオオオォッ!?」

「モニョ~!(面白いぐらいに簡単にひっかかりやがるぜ!)」

「マニョ~!(単細胞の脳無しデクの棒だな!)」

 

 調子に乗ったプチデビたちが悪魔らしい罵倒を飛ばしているが、彼らの言葉が理解できるのはヨヨとメロディアぐらいしかいないため、誰も咎めることはない。

 

「呆れるほど単純な連中ね。学習するという知能を持っていないのかしら」

「まぁ、あの体躯を以てすれば、大抵の相手は殴りつけるだけで狩れるでしょうからね。知識を得る必要もなかったのかもしれません」

「なんともまぁ、哀れな奴らだこと」

 

 せっかく人間と同じ体の作りをしているのだから、巨人たちにも文明を築き、一種族として発展していく余地はあったはずなのだが。知識を得られなかった人間というのはこうなるのか、とヨヨは多少面白げに本能のまま突進してくる巨人たちを観察していた。

 

「それよりもヨヨ様、そろそろ最深部のようですよ」

「あら本当。意外とあっさり到着してしまったわね」

「そうですね。まぁ……どうやらヌシがいるようですが」

 

 ビュウが目線をやった先には、厳かな雰囲気を漂わせた物々しい大扉と、その扉を守るように鎮座する巨大なイカのような魔物の姿が見えた。その姿を見て、ヨヨは首を傾げる。

 

「イカの魔物?海魔(クラーケン)として知られているのはタコの魔物じゃなかったかしら?」

「そのはずです。あまり見たことのない魔物ですね……」

 

 オレルスの海には水棲の魔物たちが棲息しており、中でも大型のタコの魔物は海魔(クラーケン)と呼ばれ、毎年多数の船が犠牲になる海の悪魔として恐れられている。しかし、イカの魔物に船を襲撃されたという話は全く聞いたことがないし、実際に目撃例も無かったはずだ。

 少し妙に思ったヨヨだが、まぁなんであっても倒すのは同じことか、と考えを打ち切ることにした。

 

「まぁ、さっさと排除して神竜と会うとしましょう。皆、お願いね。強化魔法(ビンゴ)!」

「はっ!」「お任せください!」

 

 ヨヨの命と彼女の強化魔法を受け、ビュウとマテライトを筆頭としたカーナ軍が前に進み出て、一斉に武器を構えた。それを見て、魔物の巨体がゆっくりと動き出す。

 

「…………!!」

 

 イカの魔物──スキュラは大きく触手を振り上げると、自身に迫ってくる人間を排除するべく鞭のように振るった。標的となったのは、機動力に優れ真っ先に接近していたルキアとジャンヌである。

 

「……っ、重い!」「ちいっ!」

 

 二人とも咄嗟に細剣で防いだものの、衝撃を殺しきれずに吹き飛ばされる。

 

「おおっと、大丈夫かい? 愛しのレイディたち」

「……あ、ありがとう……って誰が愛しのよ!」

「まーた始まった」

 

 吹き飛ばされたルキアたちの身体を支えたのは、やはりというかドンファンであった。礼を言いつつも、余計なセリフに文句をつけながら二人は立ち上がる。

 

「ルキア、わざわざ君やビュウたちが出るまでもないさ。あんなイカ如き、この純情硬派のドーンファンが一瞬で」「…………!!」

「…………ZZZZZ」

「ドンファン!? 格好つけておいて寝ないでよ!? ドンファーン!?」

 

 気障なポーズを決めて前に出ようとするも、スキュラにより放たれた睡眠魔法(スリーピン)によってそのポーズのまま眠ってしまったドンファンをルキアが必死に揺り起こしているが、残念ながら彼が起きる気配はなく、呆れたようにジャンヌが額に手を当てた。そんな一幕の間にもカーナ軍とスキュラの攻防は続く。

 

「はぁっ!!」

「食らえい! インスパイア!」

「…………!!」

 

 鋭いビュウの双剣と、城塞すら打ち崩すマテライトの戦斧がスキュラに直撃するも、多少身動ぎした後にすぐに二人を迎撃すべく触手を繰り出す。それを察知して即座に回避行動に移った二人は無傷のまま距離を取った。

 

「ちっ、呆れるほど硬いやつじゃな」

「ああ。少なくとも並の魔物じゃなさそうだ」

 

 小休憩を入れつつ分析する二人と入れ替わるように、ラッシュたちナイトが前に出ると、三人が一斉に剣を構えた。同時に、ウィザードたちも詠唱を始め、サラマンダーたち戦竜がブレスの体勢に入る。

 

「「「フレイムパルス!!」」」

「「「サンダーゲイル!!」」」

「「「キシャアアア!!」」」

「…………!!!?」

 

 炎を纏った剣波と天空から降り注ぐ雷撃、更にはドラゴンたちのブレスによる総攻撃を受け、スキュラの巨体が大きく揺らぐが、その眼光には鋭さを宿したままカーナ軍を睨んでいた。

 

「おいおい、マジかよ!?」

「これでも仕留めきれないとは……!」

 

 ラッシュとトゥルースが驚愕する中、スキュラが大きく身体を振るわせる。

 

「っ何か来るぞ! 全員下がれ!!」

 

 ビュウの声に反応し、全員で一斉に全力で後退すると、何処からか現れた水流が津波の如くカーナ軍を襲った。

 

「いかんでアリマス! 皆、自分たちの後ろに!」

「チビウィザード! 早く隠れろ!」「う、うん!」

 

 バルクレイのチビ呼びに文句を言う暇も無く、アナスタシアたち魔術師が重装部隊の背後に隠れ、他の皆もドラゴンの影に隠れた。そして、津波となった水流に押し流されないように、全員が懸命に耐える。やがて津波が終わると、スキュラはこれでも排除できないことに怒りを宿したようにカーナ軍を睨んでいた。慌ててプリーストたちが回復魔法(ホワイドラッグ)を飛ばす。

 

 この戦況に、さすがにヨヨも首を傾げざるを得なかった。

 

「我がカーナの精鋭たちの一斉攻撃で倒せないばかりか、大規模魔術並の津波の召喚? こんな魔物がオレルスに蔓延っていたなら人類など今頃駆逐されているはずよ。どう考えても単なる魔物ではないわね」

「そうですね……そもそも魔物にしては知能が高すぎます。明らかにこちらに対応して動いている」

 

 普通、本能のままに動く魔物がここまで戦術的な動きをするはずがない。単なる魔物ではないのは明らかだった。最も、ヨヨにとって眼前の敵の正体などさして興味はない。なんだろうと排除するのに変わりないのだ。さすがにあれだけの攻撃を受ければ結構なダメージが入っているはず。となれば、必要なのは決めの一手だ。

 

「喚ぶわよ。センダック、合わせなさい」

「は、はいっ、陛下」

 

 ヨヨの命に、緊張気味のセンダックが応える。瞬間、二人の魔力が高まる。

 

「偉大なる緑竜よ、我が前に力を示したまえ!」

「来なさい、我が下僕」

 

 センダックの祈りとヨヨの傲慢な言葉が響き渡ると、深緑の神竜が現れる。

 

『出でよ、ヴァリトラ!』

 

 召喚されたヴァリトラが咆哮すると、無色の衝撃波がスキュラを襲った。スキュラは驚愕に眼を見開くと、

 

「…………シンリュウ……!?」

 

 そう言い残すと、その巨体は地に沈み、ついに動かなくなった。

 

「皆、聞いた?」

「はい。『神竜』と、そう言っていたようです」

「ただの魔物ではないと思っていたが、神竜の眷属か何かだったようね」

 

 通りで手強いはずだし、見たことの無い魔物のはずである。

 

「まぁ、何にせよこれでようやく神竜とご対面というわけね」

「なんとも偉そうで物々しい扉ですな」

 

 マテライトの目線の先には大きな両開きの扉があり、ただならぬ雰囲気を漂わせていた。せっかちな彼はさっそく押し開けようとしてみるが、びくともしない。

 

「うぬぬぬ、どうなっとるんじゃ?」

「力押しなんてダメダメ。この扉は神竜の心の扉。資格あるものじゃないと開かないよ、きっと」

 

 センダックの言葉に、ヨヨが扉の前に進み出る。

 

「ドラグナーたる私が来てやったわよ? さっさと開きなさい」

 

 尊大な態度で命令するヨヨの言に従ったわけではないだろうが、巨大な扉は音を立てて開いていく。

 

「さ、行きましょうか」

 

 堂々と歩き出すヨヨの後に続き、マテライトたちが扉を通ろうとした瞬間、見えない力によってヨヨ以外の全員が押し返される。

 

「うおぉっ!?」「なっ、なんだ!?」

「……これは?」

 

 ヨヨが不快げに眉をひそめると、神竜リヴァイアサンが彼女に語りかけてくる。

 

『ドラグナーたる娘よ……我らの傷を癒す者よ……ここは我が領域……お前以外が踏み入ってはならぬ……』

 

 傷を癒す者? と聞き慣れない呼び名に首を傾げるヨヨだったが、リヴァイアサンのその言葉にますます不快げに顔をしかめた。

 

「ほう。私がお前たちの傷を癒す? 初めて聞く話ね」

『我らの悲しみ……怒り……お前にしか癒せぬ……資格あるものにしか……』

「ふぅん。しかし、人に頼み事をする態度ではないわよ? 駄竜が」

『ぐおっ!?』

 

 ヨヨの不遜な言葉と同時に、彼女に語りかけていたリヴァイアサンの気配が急速に小さくなる。精神波をリヴァイアサンに浴びせて黙らせたのだ。

 

「皆、入って良いわよ」

「は、はっ!」

 

 ヨヨの呼びかけに応じ、ビュウたちがヨヨの元へと向かう。先ほどは彼らを押し返したリヴァイアサンの力は、ヨヨによって打ち消されていた。

 

『馬鹿な……我が力が……』

「お前、何か勘違いをしているのではない? お前たち神竜は、ドラグナーたる私を器にしなければ言葉を伝える事すら叶わない化石の如き遺物。そのお前たちを、この尊き私がわざわざ直々に使役してやろうと言うのよ? 泣いて感謝を述べるが道理でしょう?」

『……!!』

 

 ヨヨのあまりの傲慢さに絶句するリヴァイアサンを、ヨヨは嘲笑する。

 

「悲しみだか怒りだか知らないが、そんなに癒して欲しいのなら我が軍の僧侶たちにでも頭を下げて頼むことね。最も、肉体すら無いお前たちは下げる頭も持っていないでしょうけど」

 

 絶句したままのリヴァイアサンを置き去りにして、あーっはっはっは! とカーナ女王の高笑いが盛大に響き渡るのだった。

 

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