生きてきて初の本格的な戦闘行為を終えて私は一息ついた。ふむ。クッキーで始末したあの男は例外として、本格的な殺人を行ったのはこれが初めてだが案外何も感じないものなのね。
「さらばペルソナ将軍。あなたの魂は私の栄光のロードの為の礎となるでしょう」
私も後に語り継ぐとしよう。ペルソナの名はこの私が最初に実戦で葬った男として後世の歴史家の間では有名になるかもしれない。彼も自身がその栄誉を賜った事を冥府で喜んでいるであろう。
「
この力は最近使えるようになったものだ。以前は
どうせならもっと早くから使いこなせていれば我がカーナもそう易々と陥落せずに済んだでしょうけれど……まぁ、過ぎたことを言っても仕方ない。
だが、実戦でも問題なく使えそうで安心した。特に消耗が酷いわけでもないし、これなら大抵の相手は撃退できるだろう。事実、将軍らしきペルソナを倒せたのだから。
「おっと、忘れるところだったわ」
私はペルソナのスロウランサーの一撃によって撃沈して以降放置していたレンダーバッフェにホワイドラッグをかけて回復させてやる。全く、頼りないドラゴンだ。まぁ、肉壁として役立ったことは評価してやるが。
「さて、宝物をいただきましょうか」
なし崩しにペルソナと戦闘になってしまったが、元々はそれが目的だったのである。これだけ苦労させられたのだ、是非とも良い物をいただかなければ。
「よし、じゃあお前は入口を見張っておきなさい。私が中にいる間に誰か来たら撃退するのよ」
レンダーバッフェにそう命令するが、何やら私に訴えかけてくる。ちなみに今さらだが戦竜隊の心得をマスターしている私は当然の如くドラゴンとの対話が可能だ。
なになに? 貴族、ましてや王族ともあろう高貴な人物が、戦争中の敵国が相手とはいえ強奪などという下賎な行為に手を染めても良いのかって?
「はっ、何を言うのかと思えば。ドラゴンのくせにずいぶんと人道に理解があるのね?」
主人の影響かしら? あの男、クソ真面目そうだったしねぇ。しかし、あいにくと私にはその説得は意味を成さない。
「いい? 覚えておきなさい。私はこの世で最も尊き人間。本来、この世のものはすべて私のものなの。お前たちこそ、この私の所有物を許可なく使っている盗人にすぎないのよ?」
そう。この世界の財はすべて私のものである。なぜなら、ドラグナーたるこの私はいずれはこの世界を統べる存在だからだ。ゆえに、この私の行為は強奪ではない。暴虐極まるベロスの蛮族共が奪っていった財を正しき主である私の元に取り戻す正当な行為である。
何やらレンダーバッフェが茫然としている。ふっ、所詮は竜、この世の道理は理解できまい。まぁ知った事ではない。強制的に見張りに立たせて私は宝物庫へと入った。
「随分と整理されているわね」
宝物庫内部には数々のアイテムが所狭しと置かれていた。しかもきっちりと分類ごとに分けられており、いっそ異常なほどだ。
「とりあえず、魔法薬の類いはあらかたいただいていくとしましょうか」
これらはいくらあっても困ることはない。優先的に持っていくことにする。ドラッグにハイドラッグにロイヤルドラッグ、それからマジックジンにハイマジックジンも。あら、エリクサーまであるわ。
「剣も色々とあるわね。どれか持っていきましょう」
ビュウへのお土産に一番良さそうな剣を持っていく事にする。愛しい男女の再会時の贈り物としては色気が無さすぎる気もするが、まあビュウは実用的な物を好むしいいだろう。あら、双剣があるじゃない。これがいいわ。
そうだ、せっかくだから我が忠臣マテライトにも何か持っていってあげましょう。あ、この鎧とか良さそうね。金ぴかだし。おっと、金銭も必要ね。あとは魔法の草とかも持っていって……。
「こんなものかしら?」
大多数はレンダーバッフェに押し付けるにしてもそう多くは持っていけない。ほどほどにして切り上げようとした時、異様な存在感を放つ杖と法衣が目に入った。
「これは……」
私は思わずその二つを手に取る。杖が私に応えるように光り輝いた。
「この杖の銘……エンプレスカーナ?」
カーナの名からして……この杖、うちの国宝ね! 陥落の時にカーナ城から持ち出したのね。こちらの法衣はロイヤルガウンというらしい。これも相当な魔力を秘めた衣だ。恐らくはどちらもお父様のもので、我がカーナの王が戦に向かう際の正装なのであろう。しかし、実に素晴らしい銘が刻まれている。
「カーナの女帝に王の外衣か……ふふ、この私の尊き身に相応しいじゃない!」
私のために存在するようなその二つの武具を纏い、私は機嫌良く宝物庫を出た。
──すると、何やらレンダーバッフェが慌てていた。その隣には二匹のドラゴンがいた。二匹とも同種だ。確か、こいつらは帝国の汎用竜のブランドゥングとかいう連中ね。
「騒がしいわね。一体どうしたの?」
聞くと、どうもこいつらはレンダーバッフェの舎弟みたいなドラゴンらしい。私が宝物庫を物色している間にやって来たようだ。二匹は大人しくその場にうずくまっている。いや、私に怯えてるようにも見えるわね。
「こいつらにも私の命令を聞くように言うから命だけは勘弁してやってくれって? そう言われてもね」
どうもレンダーバッフェは随分こいつらを可愛がっているようだ。別に下僕の願いを聞いてやるのもやぶさかではないが、正直こいつらはあまり役立ちそうな感じがしない。それに汎用竜だし、帝国もこいつらの性質はよく知っているだろう。戦力としては正直いらない気がするが……。
「あ、そうだわ。戦力として弱いなら底上げすればいいじゃない。我ながら名案だわ!」
私は先ほど手に入れた剣を使い、自分の髪の毛の先端を少し切る。そして──
「ほら、食べなさい!」
「────!?」
──強引にその髪の毛を二匹のブランドゥングに食べさせるのだった。
【エンプレスカーナ・ロイヤルガウン】
ヨヨの父親であるカーナ王の使っていた杖と法衣で、ドラグナー・ヨヨの最強装備。高い魔力と状態異常耐性を得られる。
原作では帝国打倒時にパルパレオスが渡してくれる。帝国がカーナ陥落時に持ち出した宝物で、これだけは売り払われずに残っていたらしい。
一品物かと思いきや、アイテムランクの高い敵を土属性で倒すといくらでも量産できたりする。実はセンダックも装備できる。
何気にFFRKにて暗闇の雲の武器として出演してたりする。