気づいたら悪の親玉扱いされていたけど今日も元気に頑張りましょう!   作:体は物語でできている

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なんだかみんなが俺を避けてるんだけど

気が付けば、魔王だの悪魔だのと呼ばれていた。いやまあ、自分が警察組織とかを潰して回った自覚はある。邪魔する組織はすべてプチプチしてきたし、敵対者もかなり潰してきた。それはこれからも変えるつもりはないし、正しくないと知っていても俺はやり続けるだろう。

 

問題はなぜか仲間にまでめちゃめちゃ恐れられているという話だ。話しかければ、逃げられるか、失神される。もしくは警戒される。俺とまともに会話をしてくれるのなんて彼女くらいなものだ。全く納得がいかない。俺は彼らには何もしていないというのに。何であんなに怖がるのだろう。この間もあいさつしただけなのに「すいませーん」って謝られ、そのまま引き返していったし・・・何なのだろう。

 

そんなことを考えていると、上から火の玉が振ってきた。そう、火の玉だ。

 

「まあ、意味はないけどさ」

 

火の玉は俺の半径3メートル以内に入ることがないまま消し去られる。

 

「ディザスター。貴様を今日こそ捕らえる!!!」

 

気が付けば、俺の周りを30人余りが取り囲んでいた。ヘルメットに結界石製の大きな盾。完全装備だ。

 

「まったく、日曜朝の戦隊ものもびっくりだぜ。こんな人数で、たかが男一人を襲おうとするんだからな。こんなことしていいの?対能力者制圧部隊の隊長さん?」

 

能力者というものが出現してから100年。能力者は徐々に数を増やし社会に溶け込んでいった。今では当たり前のように存在している。だが、『能力(スキル)』を持った人間が善良な一般市民だとは限らない。『能力(スキル)』を使った犯罪が昔は横行した。それを防ぐための組織が対能力者制圧部隊だ。彼らは能力者だけで構成された能力者をとらえるエキスパートだ。当然、俺のような人間は目をつけられているわけだが・・・まあ、殺人を許可されていない彼らははっきり言って相手にならない。

 

「・・・発砲を許可する。撃てぇぇぇぇぇぇぇぇ」

 

瞬間、銃弾の雨が降り注ぐ。しかし、まあ能力を発動させている俺には銃弾なんて聞かないわけですべて俺に届く前に消失する。

 

「皐月!!!」

 

「はい」

 

皐月と呼ばれた青年が炎の弾丸を飛ばしてくる。さっきの攻撃は彼だったか。

 

「だけど無意味なんだよな」

 

炎の弾丸も火の玉もすべて俺に触れることはなく霧散。爆炎と硝煙の匂いだけが辺りを漂っている。

 

「クソッッッ」

 

隊長らしき人物が苛立った様子で怒鳴っている。だが、状況は一向に変わらない。

 

「君たちってさ、本当に芸がないやつらだよね・・・学びなよ、能力も銃弾も俺には届かない」

 

「奴の能力とて無制限に使えるわけではない。攻撃し続けろ!!!!!」

 

うっとうしいので終わりにするか。タイミングを見計らって能力を解除する。

 

「行けるぞォォォォォォォ」

 

隊員がかなりのスピードで突っ込んでくる。俺は嘆息しながらそれを迎え入れた。放たれる拳を躱し、十分に威力の籠った拳で隊員の一人の背中を押し、足を払う。バランスを崩した隊員は、反対側から突っ込んできていた奴に激突した。

 

能力者というのは生まれつき身体能力が高いし体も頑丈だ。それは個人差があるものの個人の能力と比例している。だから、能力が向上すれば身体能力も向上する。さっきの隊員はかなり速い動きだったのでかなりの能力者なのだろう。

 

「けど、この程度じゃなあ」

 

「ま、まだだ」

 

「もういいや、君たち。『沈め』」

 

瞬間、数名を除いた隊員がすべて泡を吹いて倒れた。彼らを襲ったのは、自身を覆う空気が凍結したかのような、痛いほどに冷たい感覚。すなわち、『殺気』と俗に呼ばれるものである。

 

意識が残っている数名も体が震えていて、立ち上がることさえ困難だろう。

 

「じゃあね。また今度ね」

 

そう言って俺はいつも通りの歩調で、倒れ伏す人間の上を歩いて帰った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、おかえりなさい。ボス」

 

根城に帰って、最初に出迎えてくれたのは黒い髪にバラ色のリボンをした少女。この組織の幹部、廻栖野 氷雨だ。学校帰りだからだろうか?セーラ服のままここに来ている。

 

「氷雨ちゃんさ~挨拶してくれたことはうれしいんだけどさ、もう少し警戒心を緩めてくれないかな?」

 

「あなた相手にそれは無理ですよ。あなたの能力の一つである『気配強化』のせいで、あなたが抑えている殺気や野心、狂気が漏れ出ていますから。生存本能ってやつです。警戒せずにはいられないんです」

 

 

「あ~、なるほど。だから、みんな俺のこと避けてたんだね」

 

「いえ、それを抜きにしてもボスは本能的に怖いんです」

 

「・・・・・・・」

 

偉く傷つくことを言われた。

 

「でもこの能力便利なんだよ。気配を強化してるから、かくれんぼには不向きだけど制圧するのに向いてるし。さっきも対能力制圧部隊を殺気の増幅で沈めてきたし・・・」

 

「ボスはその能力がなくても、殺気で人を殺せそうですが・・・」

 

「いやいや、それは流石に無理だよ」

 

「・・・そういうことにしておきましょう」

 

「ところで、センは来ているか?」

 

「来てますよ。ボスの部屋で、マンガ読んでます」

 

「了解っと。今日は特仕事ないからグダグダしたら帰っていいよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

部屋を出て、階段を使って三階分移動する。途中で、「生きていてすいませんでしたー」や「視界に入ってすいません」などと言いながら同じ組織の奴に逃げられたがいつも通りなので気にしないでおこう。

 

幹部以外は俺の部屋の場所すら知らない。そして、幹部ですら俺の部屋に入ることは禁じられている。この例外を除けば・・・

 

「おい、千。いい加減俺の部屋でマンガを読むのやめろ。自分の部屋で読めよ」

 

幹部には、それぞれ部屋が一部屋ずつ用意されており、それはこの女とて同じだ。しかし、この女俺の部屋のベットでマンガを読むことを決してやめようとしない。

 

「やあ、おかえり。真白。今日はずいぶん早かったね」

 

俺と相対しているのにもかかわらず、この女には警戒という二文字は存在しない。もはや、可愛いなんて言葉では表せないほどの絶世の美女なんて言葉じゃチープすぎて話にならないほど美しい容姿をしているこの少女は、相も変わらず制服のまま俺の方すら向かずに寝転がっている。思わず蹴り飛ばしてやりたい衝動に駆られるが、俺が蹴り飛ばす前に千はマンガを持ったまま寝返りを打ちこちらを向いた・・・。

 

「散歩帰りにしては硝煙の匂いが強いな~。君、また襲われたのか」

 

「お前が俺に与えた『気配強化』のせいで、目立つんだよ」

 

俺がそういうと、彼女はキョトンとした顔でこちらを見てピンク色の髪を振り乱して大笑いし始めた。

 

「プッハハハハハハハ、何だい?君、『気配強化』がなければ襲われないとでも思っているのかい?傑作だ。君は確かに『気配強化』によって目立つようにはなったけど、君はどうせこの国最大のお尋ね者だよ?『気配強化』をなくしてもそれは変わらないよ」

 

「・・・・・・」

 

「でも、そうだな~。君がそんなに嫌なら回収してあげるよ」

 

そう言って、千は俺の首筋にかみついた。瞬間、焼けるような痛みが首筋から全身にかけた。

 

「いッッッて―――」

 

「そんなに涙目になるなよ、もっと虐めたくなるだろ」

 

痛みに悶絶する俺にそんなことを言い出すこの女はやっぱり最悪だ・・・容姿以外は。

 

「ほら、感じるだろ?『気配強化』は奪っておいた。代わりに、『瞬間移動』を与えた。うまく使うんだよ」

 

「・・・・・・それは感謝するけどさ・・・噛みつく必要あるのかよ」

 

「仕方がないだろ。この能力は対象の体液が必要なんだから」

 

「・・・使い勝手が悪いな」

 

「まあね、我ながらそう思うよ」

 

全く反省の色が見えない千をを見ながら、傷口に包帯を巻く。毎回思うが、もっと優しくできないのだろうか。いや、たとえできたとしてもこの女はそんなことしないだろう。じくじくと痛む腕をさすりながら、楽し気に笑みを浮かべる千に悪態をついた。

 

「このドSめ」

 

「そんなこと言うなよ、こ~んなに美少女なのにさ」

 

「・・・・死ね」

 

「あは、勘弁しなよ。あんまり強がると虐めたくなっちゃうからさ」

 

このままいくと、勝ち目のない喧嘩が始まりそうなので話を変える。

 

「ハァ~、ところでお前学校に行かないのに何で制服着てるの?」

 

「ん?可愛いからだよ。後、君の反応が面白かったから」

 

「お前、俺で遊んで何が楽しいんだよ」

 

「楽しいよ、いろんな意味で」

 

「・・・ハァ~」

 

こいつはまあ、昔からこんな感じだししょうがないか。諦めたほうが速い。

 

「あ、そうそう・・・言い忘れてたけど、明日から私、君の高校に転校するから。よろしくね」

 

「は!?」

 

 

 

俺は何を言われたのかわからまかった・・・というより理解したくない・・・。

 

 

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