このSSは硬梨菜氏が小説家になろうにおいて連載している、「シャングリラ・フロンティア〜クソゲーハンター、神ゲーに挑まんとす〜」の二次創作であり、作中作である、ギャラクシアヒーローズ:カオスに登場するカースドプリズンおよび同ゲームに登場する栗きんとん幼女モブ、そして感想欄で硬梨菜氏がゲロったロックピッカーを土台とした妄想2次創作です。
どうしてかはわからない。
あくる日に起きたヒーローとヴィランの激突。
それは人災であると同時、自然災害でもある。
何か凄い人が介入して、町は少し時間が経てば元どおり。
街の一般人は、それ以上を知ることはなかった。
気がついたらループする数日間は終わりを告げ、街はそれまで通りの時間を刻み始めた。
どうしてだろう。
ちょうどその頃から夢を見るようになった。
私をかばって死ぬ母。
私を巻き込んで爆発する人形。
それを見て笑う美女。
私のために酷いことを強いられる母。
私に向かう流星。
私を守る黒い背中。
内側から破裂する、致死性の衝撃。
傍若無人な黒い自然災害は、何を考えているのかもわからない。それは、朝に私がどちらの足を先に踏み出すかについて意識しないのと同じように、何を為すかという点において、誰かが関与しうる余地はない。
だからきっとその時、私が助かったのはただの幸運が運んできた結果でしかないのだろう。
Lock Picker
私なら、あなたをその枷から解放することができるんだよ?おじ様。
Goodbye dear my Cursed Prison
悪態をついた。
警官なんて仕事は、権力機構がまともに機能していなければ存在したところで意味がない。
街の様子はここ数年で一気に様変わりした。
これでもちゃんと勉強して採用試験に通ったのだ、さぁこれから育った街に尽くそうかと思っていた矢先に街を取り巻く環境は一変した。
「まーたやってるよ...いい加減どうにかなんねぇかなぁ」
ヴィランがいればヒーローがいる。
それは東洋でいうところの太極図のようなものなのだろう。
どちらかに割り切れることはなく、相反するように見える存在であっても、それはどこかで鏡合わせになっていて、全く逆の要素が、小さな、それでも核となるような存在感を伴って中に存在している。
だからといって、結局被害を被るのは一般市民だ。自然災害とそう変わらないヴィランとヒーローの激突。
街は随分としたたかになった。
ヴィランが暴れれば、街は被害を被る。
ヴィランを止めようとヒーローが現れたら、また街は被害を被る。
その被害を癒し、埋めて、修復して、元の姿を取り戻そうとする。
けれどもそれは生産的な行為ではない。失ったものを取り戻すだけの、マイナスからゼロに立ち戻るだけの行為。
だから時折、このやり取りもそのサイクルの中で利益を得る人が煽動している壮大なマッチポンプなのではないかとまで考えてしまうことがある。
なら、そのマッチポンプのお陰で職をえている自分は何なのだろう。
そんな自己嫌悪は、無線通信の入電にかき消される。
「おい、ジュード。何やってやがる。そろそろお星様がついた頃合いだろ?さっさと周囲の避難を完了させやがれ」
「...了解」
fxxk、fxxk、fxxk。
何もかもイライラする。とは言っても仕事は仕事で、さっさと仕事を終えないと、危なくなるのは我が身で、いつのまにか給与と引き換えに自分の命まで捧げていたなんてことになったら、死んでも笑えない。
「それこそ笑えない冗談だっての。fuxx...」
つきかけた悪態は虚空に消えようとして、ちょうどその上空から降ってきた叫び声にかき消された。
すわヴィランの強襲か、あるいはそれを追いかけてきたヒーローの雄叫びか、そう思って上空に視線をむけたその時、ちょうど視線の上昇と入れ替わる形で、降ってきた女が、積み上げられたゴミ袋の山に突っ込んでいった。
「えっと。こうよね。はいID」
手の内に隠すように、――どうして知っているのだろう――僕のリーダーに、市民カードをかざす。
身元確認を求めれば、あいたたたた。とゴミの山から這い出た彼女は、すぐに応じた。
すぐさま情報補助ARグラスに彼女の第1階層パーソナルデータが表示され、それを一通り確認する。
氏名情報照合:認証
居住情報照合:認証
経歴情報照合:認証
照合完了オールグリーン
Tips:年齢に対して、収入が低いようです。
提案:職安の紹介
問題はない。というか、何もなくてよかった。
まずありえないことだけれど、偽造IDカードを持っているような人を相手にしたくない。というか、そんな人ともし邂逅していたなら、今の自分が無事であるはずがない。
そんな反社会的な人間はこんな真っ昼間に堂々と外を歩くはずがないし、もし歩いているならさっきのヴィランのように大量の破壊を伴いながらだったりと、こうやってのんびりID確認の応対が出来るような雰囲気であるはずもない。
しかし、彼女は一体どうして空から降ってくるなんてことになったのだろう。
マンションの窓からだったら何かから逃げているのか、それともDVからのがれようと?それとも強盗?レイプ?そういった身の危機から逃れようとして?
「えーと、ミス....」
とりあえず話を聞いてみたほうがいいのかもしれない。そう考えて、声をかけようと再度彼女の名前を確認する。
と、目が滑った先の居住地情報に見慣れたはずの字の並びを見つけて、違和感に頭を捻る。
確かその居住地は、今自分が一人暮らししているアパートの部屋番号でなかったか?
ズガンッ.......
遠くで響いていたはずの、
「えっと、聞きたいことはあるけど話は後だ。あいつらが近づいてくる。今から君を避難所に誘導するからついてきて」
「あれぇー...何か失敗したかしら」
彼女はそう呟いたような気がしたけれど、些細なことは横に置いておいて、彼女の手を引いてその場から離れようと走り出す。
「ところで、あいつらっていうのは?」
見かけによらず結構体力があるのだろうか?それなりに鍛えているはずの僕が、割と真剣に走っているのだけれど、それに息もあげずについてくる。
「あぁ?お星様と脱獄囚だよ。どうしたってこんな昼間からあのカースドプリズンって奴は」
僕の仕事をめんどくさいものにしてくれやがって。
そう吐き捨てて僕は、彼女を避難所へと連れて行く。
その時、カースドプリズンの名前を聞いて、ニヤリと微笑んだ彼女に、「おじ様きてるんだ」と呟いた彼女に、気づいていたらその後の結果も少しは変わっていたのかもしれない。
「それで、ジュード」
私たちはどこに逃げたらいいのかしら。と、彼女は僕の名前を呼ぶ。名乗ったはずのない名前をどうして知っているのかという疑問は、袋小路にまよいこんだぼくの頭に浮かぶことはなかった。
ARグラスは、避難所までの道をまっすぐに指し示している。
なのに、目の前には壁が立ちふさがっている。
破壊音はさっきのところに留まったままで、こちらにやってくるまでにはまだ時間がかかる。
こんなことはありえないはずだ。と、さっきまでちゃんと存在していた常識が僕を混乱させる。
センサーからネットワークに情報が流れて、通行可能で安全な経路が自動生成されるから、僕たちはそれに従うだけでいい。
従うだけでよかったはずだ。なのに、ARグラスが指し示すルートの目の前には壁が立ちふさがって、僕はどこへも動けなくなっている。
「こんなこと、あるはずないんだけど、避難経路の情報が間違っていたみたいで」
全幅の信頼というものは脆いもので、一度裏切られると次は些細なことすら何も信じられなくなってしまう。それに拍車をかけて無線の電源を入れても流れてくるのは砂嵐のようなホワイトノイズだけで、頼るものがない僕は、どうしていいのかわからない。
なのに、彼女は不思議だ。
てっきり
だってそうだろう。警官を信じて避難していたら、その先が安全な場所じゃなくて袋小路だったのだから。
「しかしどうして壊れちゃったんだろう....」
そういって彼女の方に向直ると、彼女は視線を泳がせて吹けない口笛を吹いている。
尖った唇からひゆひゆと漏れる息がどこか滑稽で、そんな場違いな光景をみていると次第にぼくのこころにまで余裕がでてきた。
「えーっと、先に謝るけど、あなたの端末がエラーを吐いたの、きっと私のせいだわ」
視線を合わせてくれないままに、謝るように彼女が言う。
繊細な作業だと時々こうなっちゃうのよね。
そう言いながらぽりぽりと頭をかく彼女をみて、やっと落ち着きを取り戻した僕の思考回路は、これまで溜まりに溜まった疑問を一気にまとめて吐き出した。
「それは、君のID上の居住情報が僕のマンションと被っていることに何か関係があるのかい?」
結びつくはずがない。
例えばちょっと静電気を帯やすい体質だとか、そういったことであればいい。
それでマシンがエラーを吐くはずもないのに、そんなことを思った。
そしてその期待はすぐに裏切られる。
「あちゃあ。そこもミスしちゃってたかぁ」
どうも近からずも遠からず。と言った具合だろうか。
「えっと....」
言い淀んだ彼女が、どんなカードを切るのかと身構えて
「私が未来からきたヒーローだって言ったら、君は信じる?」
予想だにしない豪速球に、僕の思考回路は再度オーバーヒートした。
「まぁ、我々については説明した通りだ。信じてもらうしかあるまい」
超常の力を持つ存在と相対した時に、通常の存在はどう応対すればいいのだろう。
リキシオンと名乗った巨漢は、どうも彼女――ロックピッカーというらしい――の同業者?であるらしい。さらにはティンクルピクシーという小柄な妖精までいる始末。
いやそれよりも僕はリキシオンと名乗った彼を捕縛した方がいいのだろうか?
彼は「サイバー漢方、東洋の神秘である」と説明していたが、僕の見間違いでなければ合流して直後の彼はしばらく自らの体を発光させていた。
飲用すれば青白いオーラを纏うことのできる飲料と聞けば、真っ先に連想するのは違法薬物なのだけれど...ええいうるさい。この際、頭の中で囁かれる合法だよ?という声は無視する。
「改めて名乗ろう。私はリキシオン。東洋のサイバー・アルケミカル・リキシであり、このティンクルピクシーとともに、そこのロックピッカーの過去遡行に同行するものだ」
普段はNINJA・SUMOUの興行で日銭を稼いでいるがね。
と笑うその巨漢は、きっと突っ込んではいけない存在なんだろう。
その横で、きまりが悪そうにもじもじとしながら、それがいわゆるヒーローとしての正装なのだろう、ツナギとオーバーオールをベースとした、些か油の匂いが漂ってきそうな装いに衣装替えした彼女、ロックピッカーが佇んでいた。
どうも彼女は、ピッキングや鍵開け、そしてその延長線上でハッキング等々に精通しているらしい。
あんまりみないでね。と照れ臭そうに笑いつつ、彼女の手にかかればスーパーの施錠を開けることなど朝飯前のようだ、僕たち一行は今、パンやスナック菓子を片手に腹ごしらえをしながら、ヒーローとヴィランの対決の行く末をうかがっている。
「ねぇ、ロックピッカー。思うに僕の常識では今一連の行為は窃盗を始めとした犯罪行為になると思うのだけれど」
おおよそヒーロー向きではない能力を持った彼女に語りかける
「私だってヒーロー向きな能力じゃないって自覚はあるんだから!......えっと...うん。ちゃんとお店の口座に電子マネーで支払いしてあるからノーカウントよノーカウント」
いや、不正アクセスについてもそれは犯罪じゃあないだろうか。
ズシン...
思い直せば、僕たちは避難の途中だった。
場所が動いたのだろうか、今回の衝撃は少し今いる場所に近づいたように思う。
そうだ。それで、過去にやってきた目的は一体なんなのだと、そう問い正そうとする僕を遮って、真剣な表情をした彼女が告げる。
「巻き込んでごメンね。私は彼に会いにきたんだ」
じゃあね、バイバイ。もう行かなくちゃ。
それだけ告げて、彼女は駆け出していく。
「なんなんだよ、もう......」
何も持たない僕が口にできたのは、そんな困惑の言葉だけだった。
「ハァイ、おじ様。助けにきたわ」
うるせぇガキの声がした。
ビルが崩れて瓦礫の山となった広場の中で、その声はやけに響いて聞こえた。
あの星野郎と殴り合って、クロスカウンターがキマってお互いが反対方向にぶっ飛んでいったあと、どうやら数秒俺は落ちていたようだ。
さぁもう一発殴りに行こうかと再度身軽になったところに、水を差されたような形だ。
「うるせぇぞ糞ガキ。尻の青い青二才はすっこんでな」
じゃなきゃどうなってもしらねぇぞ。
いや、これは俺様のキャラではない。
まぁいい。ちょっとスゴめば、ぴいぴい泣き出して引っ込むだろう。
それよりも、こいつは今なんと言ったか、俺を、助けにきた?だと?
まだ、距離はしばらくある。
が、俺の行く先に、にっこりと笑ったまま突っ立っている。
ズシン...ズシン...と、呪われた鎧を打ち鳴らしながら、そいつをいないものとして扱ってそのまま足を進める。
「誰が誰を助けるってぇ?ここは俺のユニバースだ。俺様がすることにいちいち口をはさんでんじゃねぇよ」
軽く横にはたこうとした手は、武器のようなもので阻まれた。
力を入れていなかったとはいえ、女子供に止められるようなものではない。
怪訝に思う自分に向かって、彼女は笑顔で挨拶をする。
「ええと、じゃあ......はじめまして、カースドプリズン。私は”ヒーロー”、ロックピッカー。好物はマロングラッセ、よろしくお願いしますわ、おじ様」
やけに馴れ馴れしくて好意的な笑みとともに、左右からバットと見間違うようなドライバーが自分を真正面から打ちすえる。
「んぉおおおおおお?」
自分を戒める鎧を貫通するほどではない。
が、自分がすっ飛んでいく感覚をミーティアス以外に味わわせられるというのは久しぶりかもしれない。
「なんかイライラするなぁガキンチョ」
ちょうど近くにあった高級車を殴りつけて、エンジンを徴収。ついでにガラスを割って拳にスパイクを纏う。
「さっさとママんところに帰っておねんねしなぁ!」
しかし、なんだ。ミーティアス以外にもイキのいいのがいるじゃねぇか。
あるいは別の場所
ティンキー☆
「えぇい、なんなんだ君は!!!」
謎の掛け声とともに、怪しく発光するモヤが妖精の周りに発生する。
それは今、自分の手足を拘束しているものと同じものだ。
先程から同じサイクルを繰り返している。
拘束され、数秒経てば解けるその端から、また新たなモヤの中に蹴り飛ばされて拘束される。
事実1
この妖精には、私、ミーティアスにダメージを与えるような手段はない。
事実2
この妖精からはなたれるモヤ?は、絶対の拘束力を持っている。
事実3
近接設置は出来ず、スペースはある。なのに、効果が切れる直後に、謎の掛け声とともにモヤの中に蹴り飛ばされる。
ならば、Quick Draw Bangだ。
こいつの蹴りが早いか、私が一足目を駆け出すのが早いかの早撃ち勝負だ。
「ティンキー☆」
悪魔的な笑みを浮かべた邪悪な妖精との一騎打ちが始まる。
事実としてその妖精に勝ち目はない。
だが、ミーティアスとカースドプリズンの合流を遅らせれば、目的は十全に達せられるのだ。
負けのない一騎打ちが始まる。
最初は不意打ちだったから当てることができた。
重い重い鎧を着ているからといっても、彼の力は圧倒的に上位の存在だ。
ミーティアスはその速さをもって渡り合っているけれど、大したものを持ってない者が向かい合ったとして、今の私のように打ち捨てられるのが関の山だ。
「あいったぁーー.......もう少しなんとかなると思ったんだけどなぁ....」
重症ではないだけで、あちこちに生傷を作ってしまった。
立てるし、まだ戦える。けれど今のままでは、それだけで、戦えば戦うほどに、おじ様の有利は揺るぎないものへと変わっていく。
一撃、ただ一撃を届かせるためにこの場をセッティングした。
そしてそれは成った。
だが、そこまでだ。
場を成立させたところで、そのさきの一撃が、無限の彼方の先にあるようにおもえてしまう。
「おうおうおう!威勢は良かったのにもう終わりかぁガキンチョ。オジサンはまだまだ元気ハツラツだぜぇ」
破壊の化身がこちらに向かっている。
すこしガタついた膝に力を入れて、構え直す。
大きく振りかぶって、ただの横薙ぎの平手。
最初と同じ動作。
緩慢な一撃。
けれど離脱するには私の膝はすでに笑っていて、盾になる道具ももう品切れで、そしておじ様は最初と違って込めた力は段違い。
「甘く見てたなぁ。失敗しちゃったかなぁ」
目の前に迫ったおじ様を視界に納めて、独りごちる。
脳裏に浮かぶのは走馬灯。
いつもの夢の中の光景。
私をかばって死ぬ母。
私を巻き込んで爆発する人形。
それを見て笑う美女。
私のために酷いことを強いられる母。
私に向かう流星。
私を守る黒い背中。
内側から破裂する、致死性の衝撃。
いつの間に向こうとこっちが入れ替わったんだろう。
手が振るわれようとする刹那、遠くで声が響いたような気がした。
ズンッッッと届いたのは衝撃波。その残滓。
今回は爽やかな水色の光をまとった
「サイバー漢方急速充填、遅れてすまないロックピッカー。さぁそのカケラがそうだ。手に取りたまえ。長くはもたないぞう」
私とピクシーが時間を稼いで、リキシオンが探していた今回のキーピース。
焼け焦げた黒いカケラ、それはカースドプリズンが脱ぎ捨てた鎧のカケラだ。
私たちにはそれを剥がす力がなく、仮に剥がせたとして、剥がれた端からすぐに新しい鎧が現れて覆われ、取り込まれる。故にそれは、ミーティアスとの戦闘といった超高速の打ち合いの中でしかこぼれ落ちることがなく、そしてそれは、妖精界で瞑想をしたことがあるような、神秘の感性を持ったものでなければ判別することができない。
「うおおおお???なんだテメェ???」
おもしろいじゃねぇかと言わんばかりに力比べに力を入れ込むカースドプリズン。
それに向かい合うリキシオンの背後で、パズルの最後の一枚が、ロックピッカーの手に渡った。
だからその檻、こじ開けてあげる。
小さく唱えれば、ギャラクセウスから与えられた素材が形を変えて武器となる。
それは鍵と呼ぶには大きすぎて、槍と呼ぶには鈍重で、斧と呼ぶには鋭利すぎる。
少女が振るうにはあまりに不揃いな巨大なハルバード。
それを軽々と扱うのは、それがギャラクセウスが彼女に与えたものであるからに他ならない。
しかして、この場に、その槍の真意を知るものが持ち主の他にもう一人。
その槍から感じる力は、忌々しい星の力と同じもので、自らを戒める枷と同じもので、そしていつかの日に、自分が脱ぎ捨てた残骸と同質の気配を有していた。
「準備完了!どいてリキシオン、おじ様貫けない!!!!」
リキシオンがその身からは想像もできない俊敏さで組手を解いて跳ね抜ける。フェイントをかけられたような形になって、よろめいた足を立て直す。そうして前を向いたカースドプリズンの目の前には、先ほどとは打って変わって目に意志の光を輝かせた一人の女が、仰々しい武器を構えてこちらに向かい合っている。
「いいじゃねぇか面白い。砕けるものなら砕いてみな!!!」
全てを砕き拓け、世界を解放せよ。
ロックピッカーが声を張り、真正面からブチかます。
激突
質量と質量の衝突はエネルギーを生み、そのエネルギーは光と衝撃波に力を変え......
騒々しい乱入者は、なにかを告げることもなく去っていた。
「一体なんだっつうんだよ。というか俺様に娘も姪もいねぇぞ」
よくわからないが、乱入者の目的は達せられたらしい。
思えば反抗期の娘に相対する父親というのは、こういうものなのかもしれない。
ともあれ、久々に力を解放してどうしてか今の自分はすっきりしている。
あの小娘は自分を檻から解放するといった。
しかし、それは他人から与えられるものでなく。解放とは、自分から勝ち取るもの、いや自分が奪い取るものでなければならない。
「ナマ言ってんじゃねぇぞガキンチョが」
さっさとママんところに戻っておねんねしてな。
どうしてか、柄でもないそんな言葉を続けそうになって、首をかしげる。
いつぞや、そんなことを言ったことがあるような気がしないでもない。
と、次の瞬間、我が宿敵が瓦礫の山から起き上がるのを目にしたところで、それまでの雑念は全て思考の中から蒸発する。
「オウオウオウ、いつまでおネムしてるつもりだ。もうひと暴れしようじゃねぇか」
目の端に颯爽と逃げ出す警察官がいたような気がするが、それはもうどうでもいいことだ。
自分の思考回路が享楽に埋め尽くされて行くのを実感しながら、俺は取り込んだエンジンのスロットルを一気にレッドゾーンに突っ込んでいく。
「それで、目的は果たせたのかい?ロックピッカー」
サイバー漢方の効果が切れたのか、いつに増して紳士的な
別にそう簡単におじ様の牢獄を破れるなんて思ってはいない。
カースドプリズンを閉じ込めた力は、私が得たそれの数段階は上の次元にある力だ。
「今回は、これでいいの」
昂る思考を押さえつけて、私は冷静に返事をする。
いつかの過去に、気まぐれで助けられた私は、せめて自分を、母を、大切なものを守るための力を欲した。
それはそれとして、結果としてそうなったというだけなのだけれど、迫り来る暴力から、身を挺して守ってくれた黒い大きな背中に憧れるのは、仕方のないことだろう。
その名前を知ることになったのは随分と後になってから。
けれど、幼い私が抱いた憧れが、叶わぬ恋に変わるまで、そう長い時間はかからなかった。
私の人生には3つの幸運がある。
一つ目は、あの日命を落とさずに済んだこと。
二つ目は、おじ様に届きうる力を得られたこと。
三つ目は、手遅れになる前に、もう一度おじ様に出会える機会を得られたこと。
おじ様の檻を砕きにかかったように見せたのは、カモフラージュ。
本来の目的は、私の槍とおじ様の檻が接触した際に既に果たされた。
それはトロイの木馬。感染性のウイルス。いつか発芽する、その檻を脆くする潜在性の脱獄の為の応答者。
ねぇおじ様、ご存知?
脱獄っていうのは、外からの応答者がいれば、その可能性は飛躍的に高まるものなのよ。
「悪い顔してるねぇ」
到底いい子には見せられないよと、私をからかう
私の脳内は既に、やっと会えたおじ様に向かう思考で埋め尽くされていた。
その後1
「登録した住所を変えるのもめんどくさいから、またお邪魔するわジュード」
「んぇえええええ?ロックピッカー????」
その後2
「ハァイおじ様。午後のティータイムご一緒しませんか?」
「ガキンチョぉ??????」