今後の展開についてのアンケートも集計が完了したので開票します。
(48) そろそろ戦闘して欲しい
(316) 艦娘たちと和解して欲しい
(218) 海外艦との交流をして欲しい
(26) オリキャラとの絡みを見たい
(239) 主人公の活躍が見たい
ということなので、これを参考にしていきたいと思います。
計847票も協力ありがとうございました。
それと、また新しくアンケートも改築しました。金剛姉妹のことについてなので、良かったらよろしくお願いします。
「──敵艦前方に発見! 皆サーン! ワタシにfollow me! このままGo a headした後、直ぐに左旋回で斉射するヨー!」
と、後続する皆を不安にさせないように、ワタシは努めて明るく声を出した。前方から高速で接近してくるのは、一隻の深海の駆逐艦。対して、こちらはまだ経験を積めてない駆逐艦達とワタシを含めた六隻の艦隊だ。
「しょ、正面からなのです!?」
そんなワタシの言葉を聞いても不安がってしまっている、直ぐワタシに後続する電に、笑顔で応える。
「Yes! but,no ploblemネ! 最初はワタシが倒して見せるカラ」
「……は、はいなのです! よろしくお願いしますなのです! 金剛さん!」
そんな言葉に、電は先ほどより幾分かマシな面持ちになった。目の前の深海棲艦へ集中し始めたみたいである。
それを見て微笑ましく思いながら、自身も目の前を見据えて、集中する。
敵艦である駆逐艦たちはこのままワタシ達に突っ込んで出会い頭にゼロ距離で砲撃を当ててくるつもりだろう。であれば、この場合、普段通りであれば、既に有効射程圏内に入っている敵艦へ、砲撃を喰らわせるのが盤石といったところだろう。
しかし、ワタシはワタシらしく正面から行くことに決めた。高速戦艦を舐めてもらっては困る。そちらが突っ込んでくるのであれば、敢えてワタシもそれに倣おうではないか。何しろ、後ろには可愛い後輩たちがいる。ここで自分の度量を見せつけておけば、目標としてくれるかもしれない。
「……!」
そうして、目前に迫り来る敵艦に、冷静に砲塔の照準を微調整する。長年慣れ親しんだこの感覚は、無意識下でも、正確な砲撃を可能とするのだ。
敵艦もワタシの頭に防弾を撃ち込む気満々だ。勿論、ワタシもそれは同じこと。
間合いの勝負。まるで居合みたいだ。
ギリギリまで引きつけろ。
……Now! (今!)
「──Fire!」
勝負は一瞬だった。
ほぼゼロ距離での着弾だったのか、辺りには、爆煙が立ち込んだ。砲口からの硝煙の香りが、鼻腔をくすぐる。
「「「わぁ……」」」
すれ違う時間はたったのコンマ1秒か2秒。しかし、それで充分だ。敵艦はワタシの砲弾を間近でまともに喰らったせいか、その場で爆散した。
後続の駆逐艦達は、戦艦でありながらも、超接近戦を制したことと、細かな微調整を必要とする離れ業に驚きの表情で感嘆しているようだった。
「金剛さん……やっぱりすごい」
「ハラショー……」
雷と響が、そう褒めてくれる。
「Thankyou! 二人トモ! but、次はYou達が戦う番ネ!」
やはり後輩から持て囃されるのは悪い気がしない。ワタシは素直にお礼を言っておくと同時に、軽く釘を刺しておく。
「さっきみたいなことは出来ないけど、金剛さんみたいな立派なれでぃになるためだったら、何だってできるわ!」
「その意気なのです暁ちゃん! 私も頑張るのです!」
そんな言葉に対して、先程まで萎縮気味だった電と暁が、良い感じに意気巻いている。
そう。何故、暁型の子たちに、先程のような芸当をわざわざ見せたのか。それは、未だ慣れない実戦で緊張している面々の身体を解す為でもある。
士気はとても重要だ。本来の力を出すためには、モチベーションや冷静さが不可欠なのだ。先輩である、ワタシが少し無理をしてあのような曲芸を見せることで、戦う前の士気向上にはなった筈だ。
「その意気ネ! じゃあ先ずは近辺のはぐれをどんどんとFightして経験を積んでイクヨ」
これならば、今日のところは安心していけるだろう。ワタシは後ろに続く可愛い後輩たちを流し見て前に向き直った後、次の目的海域に向かった。
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横須賀鎮守府のドックに帰還してみれば、時計は既に十六時を回っていた。ふと、自分が身につけている艤装の砲身を、軽く撫でる。今回は結構な時間、後輩たちの任務に付き添っていた手前、残弾が残り少ない。艤装が出撃前よりかは、幾分と軽く感じられる。
しかし、最近結構な出撃回数だった為か、慣れ親しんだ艤装に少し違和感を覚えるほどくらいには、耐久力が落ちてきているようだ。確かにこうしてちゃんと見れば、砲身部分に、若干の欠損があるのが多く見受けられた。
この艤装も、そろそろ変えどきだろうか。と、相棒的な存在でもあった艤装の変更を検討すべきか迷うと、少々の寂寥感が募る。
「……暁型の子たちの成長に比べれば、Bestなんデショウケド」
取捨選択は、必ず訪れると言うもの。例え、自分の得物が削れていくのだとしても、自分の後に続く未来の卵の育成が急務だ。長年、横須賀鎮守府に在籍してきたからこそ思うことは、やはり層を厚くしなければ、結果として熟練艦の練度も落ちていく──ということだ。
今は低練度でも、経験を積んでいけば、必ず熟練艦になり得る。だからこそ、下が上に……上が下にと、相互に触発され続けるという連鎖が起きなければ、一歩、いや二歩、その先へ行けない。ワタシの自慢の妹、霧島が最初に言い出してから早二週間。ワタシは存分に、姉妹からアイデアを貰い、この鎮守府を更なるレベルへ引き上げるために奔走している。
だから今日の遠征という名目で、暁型の子たちを連れ出して、一日でも早く練度を上げるために指導しているのだ。
もちろん、やっていることはそれだけではない。最近では、自分の任務のほかに、他の艦娘の子たちの手が回らない海域に哨戒しに行ったりとかしている。もちろんその出撃分で消費した資材は、すべてその海域で拾ってきたもので折り合いを付けている。
今は固い基盤を作るために、後輩たちの育成などが最近だと専らなのだが、ただ、提督にはこのことを知らせていない。
もちろん、何も褒賞が出るわけでもなく、ボランティアに近い。言うなればただの自己満足であり、偽善的な行動だ。だからこそワタシは、提督には秘密にしている。
別に、このことが明るみになったとしても、問題が起きるほどのものではないことは分かっている。しかし、ワタシの心の根源的な部分が、それを許せないのだ。
事故前の当時の提督は、前任の悪辣極まりなかった運営のせいで、鎮守府の崩壊していたあらゆる施設や体制の復興に尽力していた。実際に、以前よりも改善されていくにつれ、多くの恩恵を、ワタシを含む多くの艦娘たちが、気づかぬ内に受けていたことは明らかである。
それと同時に、自分の提督に対して良かれと思ってやっていた、数々の排他的な行動には、勘違いでは済まさられない様々な多くの非があったことに、初めて気付くことが出来たのである。
提督は誰彼に言われたからという訳でもなく、すべて自主的に、且つ自分の出来る範囲の最大限の力で、鎮守府に貢献していた。誰にもその功績を知らせることはせず、いや、当時から一緒に行動することが多かった大和たちには既に知られていたとは思うが。それでも、彼は独りでやってのけた。
本来ならば、ワタシを含め大多数の艦娘たちが、彼の鎮守府に尽くして、もたらしてくれた恩恵に対して沢山の賛美と恩を払うべきだった。それは義務的なものではなく、ただ心から素直に「ありがとうございます」と伝えて、その提督のしてくれた恩に報いるために、部下として、一人の艦娘として、より一層尽くしてれば、済むことだったのだ。しかし、ワタシたちはそれさえもせずに、ただ提督がしたことを自己満足で偽善であると、一方的に嘲笑い、差し伸べようとする手を拒んだ。
そんなワタシに、果たして提督へ「今、鎮守府の為に、任務はもちろん、育成にも尽力しています」と堂々伝える資格はあるだろうか。もし仮に、それを伝えたとしよう。その時ワタシに、提督は笑顔を向けてくれるのだろうか。──果たして、自分自身の過去を赦せるのだろうか。
不安ばかりが募った疑問は尽きない。そんな状態だからこそ、ワタシの近況を提督には伝えることが出来ない。
いずれは伝えなければならない時が来るだろうとは思う。
──そしてもう一つ、ワタシは部屋にある提督の日記をいつか返さなければならない時が来るだろうとも思う。その時、否が応にも対話をしなければならない時が来る。
……今のワタシに、提督を前にして平然と会話が出来る自信がない。
あの日記は、毎晩読んでいた。自分への戒めのためでもあり、或いは自分を戒めていることで一時の安心感を得るためでもあった。
日記の序盤。着任当初の提督のこれからの期待と希望に満ちたページが、中盤にかかるにつれ、どんどんと苦悩や焦燥に満ちていき、終盤に差し掛かれば、殆どがワタシたちへの怒りや悲しみ、失望──憎悪にページは満ちていた。所々、明らかに涙で滲んだ文字も見受けられた。
しかも考えるにだが、当時、大和にもこの日記のことは知らせていなかったということだが。であれば、日々自分に降りかかる多くの理不尽への愚痴や怒りの吐き口が、この日記にしかなかったことが分かる。周りには吐き出せず、ただこの日記に書き殴るしか、当時の提督は出来なかった。大和でさえも、いつか裏切るのではないかと、本心で信用できなかったことも、日記に綴られていた。
つまり、この日記は当時の提督の本心そのものだ。
何回読み直しても、読んでいる方のこちらの胸が突き刺されるような感覚に陥った。ただただ、悲痛なのだ。ページをめくる毎に、ワタシは分かってしまうのだ。
序盤は達筆だった文字が、後半にかけて、見るからに段々と荒々しくなっていく文字も。
希望や期待が、見ていられないほどに悲痛な内容に変化していく様も。
その日その日の提督の心境が生々しく、ワタシの心に突き刺さってくるのだ。
特に、日記の最後のページ。提督が階段から突き落とされる昨夜に綴られていたであろう、白紙が目立つそのページには、たった一言だけ記されていた。
──辞めたい
弱々しい筆圧だった。まるで、余命幾ばくもない、体が衰弱した老人が遺書を書いたかのような、今から消えていなくなりそうな、そんな筆圧で綴られていた。
ワタシはそのページを読み、毎度の如く涙を溢しそうになる。当時の提督の心境を考えたら、尚更であった。ワタシたちに一切の不平不満などなく、ただ本心からの一言がそれだったのだろう。
それに、常々思うことがある。それは『もしワタシが提督と同じ状況下だったら、この最後のページにどんな言葉を綴るだろう』と。一体、何を書いてしまうのだろうかと、そう思った時に咄嗟に出てきた言葉は『死にたい』だった。
そんな自分が心の底から情けなくて。罪悪感がまたしても増大してくるのだ。
提督と同じような立場であったら、尚更死んで楽になろうとするワタシと。一年間もの理不尽に耐え忍び、悲しんで、苦悩して、葛藤しながら、それでも尚無意識にでも生きようとする彼の強さと誇り高さに、ワタシは泣いてしまいそうになる。日記を読むたびに、普段から気丈に振る舞っているように見せている自分の器の矮小さが、これほどまでに強かで、それでいて澄んだように真っ直ぐな心の持ち主である彼と比べて、身に染みるのだ。
「……」
これまでも、今も、提督はワタシたちの為に執務に限らずに色んなことを頑張ってくれているに違いない。ふと、鎮守府の南側にあるドックから、東棟の執務室の方を見据えた。
だからワタシも同じように、いやそれ以上に、雑務でも色んなことをして、貢献する。それが今のワタシの生きがいである。
他の鎮守府の戦艦たちはワタシをみて嗤うに違いない。だけど、ワタシはそれでも、ワタシらしく気丈に、今の道を歩むまでだと、心に決めている。妹たちも、ワタシの進む道を肯定してくれている。今はただ、提督が認めてくれるまで、ワタシがワタシ自身を認められるまで鎮守府に最大限貢献するまでである。
「……あら、金剛。今帰ったの?」
ドックで暫く立ち尽くしていたワタシに声をかけてきたのは、陸奥サンだった。
「ハイ。陸奥サンも今、帰還したんデスカ?」
「そうね。私も今帰ったとこ。お疲れ様、金剛」
「陸奥サンもお疲れサマデース。ということは、今から入渠するところデスヨネ」
「今日はあまり戦闘はしなかったけどね。でも、汗も沢山かいたし、疲れを癒す為に入るつもりだわ」
「なるほどデス。では、ワタシは後に行きマース」
「……そう」
「ではワタシはここら辺でByeByeネー」
挨拶を済ませて踵を返して、3歩ほど出口の扉に向かって歩き出した、その時。
「ね。もしかして、今入渠してる皆のこと……気にしてるの?」
と、後ろから少し遠慮しながら、陸奥サンがそう問いかけてきた。恐らく、ワタシが今入渠しに行かないのは、他の皆の視線を気にしてるからではないか、ということだろう。
艦娘たちが、提督に本格的に危害を加え始めたのは、ワタシが発端だったことは周知の事実だ。ただ妹たちとの茶会を覗いていただけだった提督に、ワタシは世界で一番大切なこの時間帯まで、軍人は汚すのかと、ついカッとなって手を上げてしまったのだ。そこからは、余り自分から言いたくはないが、少なくとも一時期、日常的に暴力をしていた覚えがある。
そんな事実を提督の日記に目を通した多くの艦娘たちからすれば、当然、良い思いはしなかったのだろう。それからというもの、自然と、ワタシから距離を置き、中には陰口を言ってくる子が後を絶たなかった。結果的に今、ワタシは嫌われ者となってしまっている。
別に、自分もそのことについては納得している。当たり前だが、100%納得している訳ではない。悲しい気持ちももちろんある。ただ、このことについてはワタシに非があって、その報いを受けている。それだけのことだと思っている。
皆から忌避されている今の現状に、別に何も異論もないワタシに、陸奥サンのこの言葉だ。
「……確かにあなたが提督にしてしまったことは、到底許されないことだとは思う。ワタシもそうだけど、皆、日記の中見ちゃって……どれだけ途中まで無視してた私も、一時期苛まれたわ。でも、今の鎮守府があるのはあなたの活躍があったからこそよ」
「……」
「皆が皆、あなたを嫌っている訳じゃないと思うの。中には、接し方が分からずに悩んでる子だっているし……」
「……」
「それに、最近までずっとあなたは、一番の働き者じゃない……いくらなんでも働きすぎだし、その内倒れるわよ……ねぇ金剛、ちゃんと休んでるの?」
心配してくれている。最近は妹たちくらいからしか、心配されなかった。いつもありがとう、と。ワタシは返しつつも、気丈に振る舞っている。姉として、横須賀鎮守府の最古参の一人である自覚を持って。
「……大丈夫。ありがとう、陸奥さん」
この言葉だけに対しては、いつものエセ口調ではなく、素の自分ではっきりと応えた。
みんなの嫌われ者。当時提督がそうであったように、ワタシも耐えて、耐える。いつかこないであろう報われる日が来るまでは──
──ワタシは
◆ ◆ ◆
暗く、そして穏やかな海。ここは、夜の大海原の真ん中だろうか。空に広がるのは、燦然と輝く星たち。穏和な波音がそれらを装飾し、この空間にいる自分の心を大いに癒してくれた。
しかし、何故俺は船の上でもなく、大海原の真ん中で一人、水面に立っていられるんだろうか。
俺は漠然とした疑問を抱きながらも、既に水面を歩き始めていた。水の感覚はあるが、踏んだ時の確かな感覚があり、歩けることが出来ていた。不思議だ。不思議な、筈なのに。
──今はそんなことがどうでも良く感じられた。
水面をあるけるなんて真似、それこそ魔法でも使わなければ出来ない芸当なのにも関わらず、俺は別に特段気にならなかった。この世界の概念が、もはや『水面は歩けるもの』であるようにと勝手に自覚しているようだった。
目的地も何もなく、ただ、満月の月明かりに水面が照らされているミルキーウェイに向かって、歩き続けていた。
突然、夜のどこかの大海原で立ったまま目を覚ませば、とても綺麗な星空と満月が宵闇を支配する、神秘的なこの世界。水の上は歩けちゃうわ、普段より、とても明瞭な意識で且つ、頭の中が澄んでいる自分。何もかも、
──……し、……る
「……え?」
と、そんな時。どこから、この世に居ると思えないほどの、綺麗な声が聞こえた気がしたため、立ち止まる。
辺りを見渡しても、穏やかな夜の海が広がっているだけ。
しかし、またもや
──……し、て……る
「……!」
途切れ途切れだが聞こえてきた、どこまでも澄み切っていて、儚げで、綺麗な声。
心に、身体中に、その声が反響していく。ある種の楽器の音とも言ってもいい美声に、俺はまた、その声の主を探した。しかし見つからない。やはり辺りは大海原。誰一人としていなかった。
誰だ。一体、誰が俺に。
そう思いながら、瞬きをした次の瞬間
「──」
──あの穏やかだったはずの海が、火の海になっていた。
思えばここで初めて、夢の中であると自覚したのだ。
その他にも、鼻につく硝煙の臭いや、血肉が焼け焦げた独特の焦臭さが辺りに充満していた。思わず、鼻を摘む。あの綺麗だった星空も、今やまるで海戦後の海から放たれた多くの硝煙のせいで、真っ黒な雲に遮られていた。
突然移り変わった光景に絶句していると──
「……っ!? うわぁあ!!」
足に何か当たったと思えば──そこには指が中指と親指が欠損し、骨も剥き出しになっている手だった。そう、手だけである。切断部分からは今さっきだったかのように、未だに多くの血が当たりの水を生々しくも滲ませていた。
そして大きくのけ反って後ろを見ると、俺はまたもや驚愕する。
「……はる、な」
一番近くに変わり果てた姿で浮かんでいるのは、あの金剛姉妹の榛名だった。一言二言くらいしか話したことがなく、余り関わりも無かった。しかし、顔見知りではあった榛名のその姿は、目を背けたくなるほど悲惨だった。表情は恐怖に満ちた表情で、とても歪んだものとなっていた。これだけでも、胸が苦しいのに、服やあの綺麗な肌までも焼け爛れ、右腕が欠損しているのだ。それに、あの綺麗だった長い髪の多くが焼き焦げて、異様な臭いを放っていた。腹には二発の風穴が容赦なく空けられており、中から多くの血が今でも流れだしており、内容物までもが──
「──ウゥウ"オ"オォオ"オオオ"オオォオオエエ」
思わずその場で吐いてしまう。何故だ。何故こんな悲惨な状況になっているんだ。
周囲に浮かぶ多くの死体も、恐らく艦娘たちだったモノだろう。
近くに力無く浮かんでいた恐らく霧島、比叡も榛名と同じように、焼かれる中で何も抵抗も出来ずに、死んだようだった。
夕立も、あの吹雪も。多くの駆逐艦も、命を落としていた。全身から血を流している者もいれば、パニックになって溺れて息絶えた者も居た。もちろん、中には四肢が欠損している者もいた。
熊野、鈴谷も……こちらは眠っているようにすんだ表情だった。互いに身を寄せ合い、お互いの手には、砲塔が握られて居た。恐らく、二人して自害したのだろうか。証拠に、互いの脇腹に大きな穴が貫通していた。陸奥も、翔鶴も、みんなその表情は涙を流し、恐怖に満ちている。
そんな死体たちが浮かんでいる血の海には、誰のかも知らない手や足、指、肉片や内臓さえも生々しく浮遊していた。ある種の狂気が、心のうちに芽生え始めている。
「……も、う。や……て……くれ」
俺は無言のまま、暫くその場で凄惨な光景を見て呆けていた。やがて、俺は見つけてしまう。
「や、ま……と」
最強と謳われたあの戦艦大和。胸を大きな砲弾に撃ち抜かれており、そのまま心臓を持っていかれたのだろうか。俺は覚束ない足取りで傍まで行き、血みどろな美しい身を起こさせた。彼女から溢れ出てくる血が俺の抱える手に流れてくる。眦に涙を溜まらせた開いたままの瞳を、俺は優しく片手で閉じさせる。ふと、大和の右手に握られているものがあった。
「……!」
そこには、血で乾き乾いた間宮券があった。
大事そうに握られていた。死ぬ間際まで、大和は誰を思って、この間宮券を握っていたのだろうか。
俺はそこまで思って、思わず歯を食いしばる。自分が非力なばかりに、彼女たちを……失ったのだ。
もう耐えきれなかった。燃える海。黒い空。死体だらけの地獄。何もかも、俺にはもう耐えきれなかった。
「もう……やめでぐれぇえぇええぇ!!──」
ただ自分の無力感に失望した。何もかも失い、俺にはもう、残っちゃいなかった。
咆哮する。それも、蛇足な気がした。
──あいしています
今度は、あの美声が明瞭に聞こえた気がした。
「……っ!!」
突然、目が覚め、身体を起こした。
しかし、窓の外はまだ暗がりで、恐らくまだ深夜であった。何故この時間帯に起きたのかは分からない。しかし、起きなければ不味かったという、漠然とした感覚に襲われる。
「……な、んなんだ」
ふと、窓の外を再び見てみれば、穏やかな夜の海が見えた。微かに波の音が聞こえてくる。目覚めが悪い時、普段ならこうして外の海を眺めていれば落ち着くのに、今回はどうにも落ち着かなかった。いや、寧ろ、危機感が煽られていく。
不思議な感覚だ。不思議な感覚な、はずなのに。
何故か、俺は今の感覚をおかしいとは思えなかった。そして、漠然とした何かに、恐怖感を植え付けられている気もしてならなかった。
その刻は、刻一刻と近付いている。
今後、登場するとしたらどの艦娘が良い?(参考程度)
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球磨
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空母ヲ級
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ビスマルク(Bismarck)
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瑞鳳
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俺