吾妻の逆行 -斬-   作:ルイレツ

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亡者の軍勢

街の郊外に急行した博多藤四郎と吾妻父。

そこでは治安部隊が大量の亡者を相手に、防御柵を壁として必死に流入を防いでいる!

 

二人は亡者の群れを視界に納め、その軍勢に対し、自身の体を加速させ一気に飛び掛かった!

 

博多はその姿が霞む勢いで亡者の群れに飛び込み、亡者たちの隙間を縫って走る。

亡者に体を触らせもしない高速の動きで駆け回る。そして懐に備えていた短刀を抜き、愚鈍な動きしか見せない亡者たちの首に次々と斬りつけた。

 

一尺に満たないその短刀は、本来なら隙を見て相手に突き刺し、出血で命を奪う。それが主だった使い方である。

しかし、博多の持つその短刀は恐るべき切れ味を誇り、首を刎ねるにはまったく長さの足りない刀身で、次々と亡者の首を刈り取っていく。

博多の達人の域を超える技の冴え、亡者に一切捉えられない体捌き、何度相手を斬りつけても落ちることを知らない短刀の切れ味。

その三つの要素が博多の超人の如き剣捌きを可能にした。

 

 

吾妻父は防御柵の側面に周り、刀を上段に構え急激に加速した。その地を抉り散らす踏み込みは周囲に轟音を響かせる!

 

柵にへばりついた亡者たちは何事かと濁った目を轟音を鳴らした方角に向ける。そこには鬼のような形相で刀を振り上げ突っ込んでくる男が見えた!

亡者は対応しようと柵から離れようとしたが、既に遅すぎた。吾妻父は夜鳥のような甲高い奇声を上げて亡者たちに斬りかかる!

 

「ギィェェェェェイィ!!!!!!!!」

 

上段に構えた刀が袈裟切りに振り下ろされる!その一撃は亡者一体の胴体を斬り飛ばした程度では止まらず、二体、三体と纏めて切り飛ばす!

並べた竹筒を纏めて両断するかの如く、一太刀で五体纏めて亡者の胴体を泣き別れにした吾妻父。

その剛剣は博多と戦うことで更に磨かれたのだ。

そのまま視界に入った亡者を片っ端から撫で切りにした!

一刀斬りつけるごとに三体、四体が纏めて半分に切り捨てられる。

 

最早亡者どもは敵にならない。その数を瞬く間に減らしていった。

 

 

 

 

 

周囲の亡者は全て倒れ伏した。吾妻父が倒した亡者は再生する気配があったので博多が後始末をしている。直に終わるだろう。

 

吾妻父は現場の指揮を執っていた部下に状況を確認する

 

「各班の状況は」

 

「各班はいずれも戦闘継続可能!負傷者は3人いますが防衛に支障はない程度です!」

 

「そうか。班を纏め、再度町の警戒に当たれ。」

 

部下は、はっ!と返事をして各班員に指示を出すために動いた。

 

 

 

 

残党を処理した博多藤四郎が吾妻父の元に戻って来る

 

「皆無事っちゃ?」

 

「負傷者は3人出たが問題ない。」

 

博多は良かったと微笑むとこれからについて話し合った。

 

「これからどぉするばい?おうちかえる?」

 

「周囲をしばらく警戒して、何事も無ければ自宅に戻る。」

 

自宅ならば町の中央に近く、どの位置に襲撃があっても対応に向かいやすい。

わかったっちゃ。博多が言葉を返すと、不意に遠くから大きな音が聞こえる。

 

ボォーっと、大きな貿易船の汽笛の音のような声が聞こえる。しばらくして別の音も響いてくる。

チリン、チリン。鉄器でできた鈴を鳴らす硬質な音が響いた。

 

その音に合わせて町の中央付近に大きな魔法陣が表れる!

その魔法陣はいわゆる梵字を組み合わせて在り、黄色い光を放ちながら街にいくつも広がっていく。

梵字との組み合わせにより、ともすれば神聖なものかと考えた吾妻父だが、町に無秩序に飛来する光は寧ろ邪悪な意思を感じた。

 

「なんだあれは?」

 

吾妻父が魔法陣を警戒し眺める。部下たちが動揺する声が周りに聞こえた。

 

「まずいっちゃ!!!!」

 

博多が慌てて魔法陣に向かうよう進言してきた。

恐らく、町の郊外に亡者を発生させたのは陽動。

敵の本隊はあの魔法陣で転送されてくるのだと!

問題はその魔法陣の量。これほどの数は博多も見たことが無いという。

恐らく、九州全土に残った亡者たちをかき集めたのだろう。

 

「解った!すぐに出発する!」

 

吾妻父は部下に敵の本隊が表れる旨を伝え、各班に街へと急行するよう伝えた。

 

街には同僚の男を含め、治安維持部隊の本隊が残っている。

しかし、博多の言葉を信じるなら、敵の数は未知数だ。

気を引き締めて吾妻父と博多は町の中心に向かった。

 

 

 

 

 

 

時間は少し戻り、吾妻の自宅。

 

吾妻達四人は吾妻父と博多の帰りを待っていた。

その際ハットリはマァ坊の姿を見つけて飛び上がるほど驚いた。

マァ坊が先の戦でてっきり死んだものと思っていたらしい。

実際は死んで生き返ったのだが、マァ坊は詳しいことはお茶を濁して伝えなかった。

 

 

 

しばらく四人で談笑していたが、ふと、吾妻が外を眺めると、夜も暮れて大分立つと言うのに外が明るい。

それを他の人に伝えると、気になるのならば見てくるかと言うマァ坊。

吾妻は四人で外を確かめに行くことを提案した。

 

外に向かうと、自宅の近辺にいくつもの魔法陣が飛来している様子が目に映る。

それを見てハットリは動揺を抑えるために口を噛み締め、言った。

 

「これは例の亡者・・・それの襲撃の狼煙だな・・・この規模だ、もうすぐ奴らの本隊がこの周辺に送られてきます・・・」

 

そこまで言うとハットリは吾妻母に自宅に隠れるように伝え、マァ坊には自宅から武器を持ってくるように言った。

吾妻はなんでそんなことがわかるのかと問う。

 

「僕ぁ変わった仕事についていてねぇ、その仕事はぁ、こんな化物連中から被害が出ないように、全国を監視して回る仕事に就いているんだ。」

 

まさか監視している連中の本隊と戦うことになるとは思わなかったと話すハットリ。

そして、いつ戦いになってもいいようにと懐から回転式の拳銃を複数取り出した。

海外の主流の銃でかなり高かったんだよ。

そう胡散臭い笑みを浮かべたハットリは、その拳銃――シングルアクションアーミーと言う――に弾丸を一発ずつ装填した。

 

全拳銃に弾薬を装填したところ、マァ坊が自宅から武器を手に戻ってきた。

背中に大太刀と火縄銃、腰には脇差を、その手には先ほど川で戦った時に拾った古い槍が握られている。

甲冑などの防具は付けていないが、かなりの重装備だ。

 

「そんなにいっぱい持って戦えるのか?」

 

吾妻は疑わし気な目を向けたが、マァ坊は何のこともない風に答えた。

 

「阿呆ぉ。昔ん武士ばこれくらい担いで戦に出て戦ったんばい!!」

 

確かに行軍中に武装を纏めて持っていた武士も存在していただろう。

しかし、全ての武装を持った重い状態で戦場に挑んだ武士は少ないだろう。

目の前の男は武器の重さを感じないのか、平然としている。

 

「最近は体ん調子も良うなってな!こんくらい楽勝ばい!」

 

文字通り生き返った気分じゃあ!

はしゃぎ始めるマァ坊。全く緊張感が無い。

この男のふざけた調子は死んでも治らなかったのだな。

ある意味感心した吾妻であった。

 

そうじゃったと表情をキリ、と引き締めたマァ坊が白鞘に入った刀を手に持ち吾妻に渡した。

 

「ほれ、子ども部屋にあったん取ってきた。」

 

これは以前マァ坊と釣り上げた刀であり、父が鍛冶屋に頼んで研ぎだしてもらった脇差である。

だが、吾妻の表情は己の刀を見ても芳しくない。

 

「これは白鞘の刀だぞ。まともに戦えるかよ・・・」

 

白鞘は本来刀を保管しておくためのものであり、戦に使えるものではない。

仮に敵に斬りかかれば相手を負傷させることができても、刀身に負荷がかかり変形するか折れてしまう。

柄の厚みも戦闘用に考えてないものが多い。本来の刀装の半分も実力が発揮できないだろう。

ましてや吾妻の刀は研ぎに出して身も薄くなっている。そのような刀で斬りかかればあっという間に折れるだろう。

 

マァ坊もそれは分かっているようで、心配するなと言う。

 

「誰もおまぁに戦えと言っとらん。そりゃぁお守りばい。」

 

武士は刀に神仏の真言を入れてお守りとして戦場に挑んだという。

験担ぎの一種だろうか?吾妻は一応納得した。

 

 

 

空の魔法陣の光が消えた頃。

再び周囲は暗くなる。そして、その闇の中からこの世のものとは思えない邪悪なうめき声が響いてくる。

 

「お出でなすったなぁ・・・!皆!準備はええかぃ!!戦争じゃぁ!!!」

 

一人で気分を盛り上げていくマァ坊。

 

ハットリと吾妻はそのはしゃぎようについていけず、歯切れの悪い返事をした。

 

「・・・それじゃァ行きますか・・・?」

 

「・・・おう」

 

マァ坊は一人闇の中に突撃し、吾妻とハットリは気を取り直してその後に続いた。

 

 

 

 

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