吾妻の逆行 -斬-   作:ルイレツ

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続・益荒の雄叫び

「デハ、参ル。黄泉路ノ案内ツカマツル」

 

ズンッと地響きを鳴らし、大地を踏みしめ進撃する益荒鎧。

 

一体は何も武器を持っていないのだが、二体が手に持っているモノは一軒家ほどある巨大な槍と刀。

素手であっても叩きつけられれば死は逃れられないが、二体の巨大な武器の前では例え直撃を受けなくても風圧で押しつぶされるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

「どうすっかのぉ」

 

その巨大な怪物が三体。流石のマァ坊も愚直に突っ込めば死ぬと分かる。

どう攻めるべきか吾妻達三人が思考を巡らせていると後ろから吾妻達に退避を促す大きな掛け声が聞こえる!

 

「よしッ!鉄砲隊ッ!射撃開始せよッ!!!!」

 

吾妻父の同僚の掛け声が闇に大きく響く。そして、ドンッ!!と爆発音が断続的に流れる!

 

父の同僚は牽制を行うことで相手の出方を窺ったのだ。

鉄砲による斉射は周囲の建物を破砕し、地面を巻き上げている。至近距離であるなら人間に当たれば簡単に四散する威力だ。

しかし、怪獣の動きは全く止まる気配が無い。まるで痛みを感じないのか、気にする素振りすらみせない。

 

同僚の男は想定内だったのか射撃を止めさせる。そして身振りで次の指示を出した。

 

「通常の鉄砲ではダメかぁ・・・大筒隊、前へッ!!!」

 

大筒とは大口径の火縄銃で城門や城壁を破壊するための兵器である。

携行兵器と言うよりほとんど大砲であるそれは、三人一組で弾を迅速に込めて照準を合わせて撃つのだ。

治安維持部隊と言うよりほぼ政府軍である装備に吾妻はあり得ないだろとこぼす。

 

「よしっ!よく構えて・・・撃てぃッ!!!」

 

三組程しかいない大筒隊ではあるが、爆風だけで壁が吹き飛びそうなその威力は絶大だった。

 

ズドォワッ!と破砕する爆音が鳴り響き一発が直撃し、それで初めて益荒鎧は大きく仰け反った。

もう二つの弾丸は一発は大きくそれて地面を爆砕し、もう一発は木に当たり、その木はメキメキと音を立ててへし折れる。

同僚の男は次の指示の声を張り上げた。

 

「鉄砲隊ッ!左に集中斉射っ!!!初めぇッッ!!!!」

 

三体同時で効果が無いならと一体に集中して斉射させる。

集中砲火を食らった益荒鎧の一体は漸くその動きを鈍らせる。

効いているのかは分からないが、その動きは緩慢なものとなり、部隊には近づけない。

 

しかし、残り一体は完全に自由だ。斉射を止めさせようとゆっくりと歩みを進める!

 

同僚の男は声を張り上げた!

 

「すまん、足止めばぁ二体が限界ばいっ!!!残りぃ何かならんかぁっ!!!」

 

残り一体。その益荒鎧は無手ではある。とは言えその象のような巨体を吾妻、ハットリ、マァ坊の三人で、人間の腕でどうにかすることなど出来るのだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

「へへっ!ようやっと楽しかぁ相手が来たばい・・・」

 

今までの亡者は戦時の人間に比べると温い手ばかり使ってきたからか、物足りなかったマァ坊。漸く楽しめる相手が来たと純粋に喜ぶ

 

「・・・ここまで来たからには攻撃の隙くらい作らないとですねぇ・・・」

 

いくら最新の拳銃で貫通力に優れるからと言っても、火縄銃より口径が小さい拳銃でどうするのか?しかし、やるしかない。ハットリは覚悟を決める。

 

「・・・こんなガキでも、やるしかないな・・・!」

 

武器は一回使えばへし折れそうな白鞘の刀のみ。相手の前に立って攻撃を誘発させる程度しか出来ないだろう。化物の前に立つのはかなりの重圧だ。

 

「行くぞッ!!!俺が引き付けるッ!ハットリは俺を援護してくれッ!!マァ坊は隙を見て足を攻撃しろッ!!!」

 

そして吾妻は益荒鎧の前に駆け出した!その相手の巨体はそれだけを視界に入れていると距離感が狂うほどだ。

 

「おい!こっちだバケモン!!!」

 

その太い巨木を思わせる首に手ごろな石を投げつける。

首に付いた目に当たれば視界を遮れないかと言う魂胆だ。

益荒鎧はむず痒そうに腕を払うと吾妻の方向に視線を向ける。

 

「キサマ・・・何カ不快ナ気配ヲ漂ワセテイルナ・・・羽虫メ」

 

するとその益荒鎧は拳を握りしめ腕を構えると、吾妻に殴りかかった!

十分に距離が離れていると考えていた吾妻だったが、そのドゴンッと地割れを引き起こしながら飛び掛かってくる益荒鎧を見て認識が甘かった事を悟る。

 

「危ないですよ!」

 

ハットリが吾妻を抱えて距離を取る。その身のこなしは戦いに重きを置いていないとはいえ、子どもを抱えたにしては十分な速度で退避をした。

 

「助かった!」

 

「まだ助かってませんッ!」

 

ハットリにより回避できた吾妻だったが、攻撃を回避されたことに気が付いた益荒鎧は再度腕を振り上げ突進の構えを見せる。

何度回避を続ければいいのかと吾妻の気が重くなったが、そこでマァ坊が動く。

 

「オオオオオリャアアアァァァァァッッッ!!!!」

 

全力で振りかぶった槍の投擲を放つ!それは今までの体を捻った程度で軽く投げていた投擲とは違う。全身全霊の一撃だ。

空気を切り裂いてキュゥンと高音を発しながら高速で飛来する槍。

その槍は益荒鎧の胴体に直撃する。痛みを感じたのか、うめき声を上げると槍を引き抜いた。

 

「コレハ・・・」

 

そこで益荒鎧は自身の体の変化に気付く。

本来の己の体ならば人間の兵器など受けたところで即再生するのだが、今の男が投げた槍で受けた攻撃は再生しないのだ。

益荒鎧は納得がいったようすで語る。

 

「ナルホド、貴様"ミツルギ"ダッタノカ。道理デ我ラノ邪魔ガ出来ルハズダ。」

 

「ミツルギィ・・・?俺ん性は吾妻ばいっ!!!」

 

益荒鎧がなんか言っているけどそれは違うと思う。マァ坊も訳が分からないと言葉を返す。

 

 

益荒鎧の気がマァ坊に向いている隙に吾妻は白鞘を抜刀。相手の足に刀を突き立てた!

ドスっと深く突き刺さる刀。その時益荒鎧に変化が生じた。

 

「オオオオオオオオォォォ―――――!!!!」

 

雄叫びと共に暴れ始める益荒鎧。何とか刀は回収したが、暴れる度に周囲の家屋は大きな音を立てて粉砕されていく。

これでは近づくことは出来ない。距離を取って様子を見る。マァ坊も吾妻に合流した。

マァ坊は自身が吾妻に持たせた白鞘の刀に目を向けて得意そうにする。

 

「な。それぇ持ってきて良かったっちゃろ?」

 

「何が起こったんだ・・・?」

 

疑問に対しハットリが答える

 

「恐らく、その刀は負の力に対抗できる正の力を秘めているのでしょう。刺し続ければ有利になるはずです」

 

希望が見えてきましたねとニヤリと胡散臭い笑みを強めるハットリ。

勝ち筋は見えてきた。

 

マァ坊、ハットリで牽制を行い隙を見て吾妻が一撃を加える。

 

「貴様ラァァァァ!!!!!貴様モ"ミツルギ"ダッタカァ!!!!迂闊ッ!!!迂闊デアッタワッ!!!!」

 

良く分からないが多分違うと思う。

 

激昂の極みにある益荒鎧は吾妻目掛けてズンズンと地鳴りを鳴らし突進してくる。

 

三人は気を引き締め、気合の声を上げた!

 

「全ては我が理想のために・・・行くぞ皆!!」

 

「了解しましたよ!!」

 

「よっしゃぁっ!!!」

 

そして三人は益荒鎧に決着をつけんと駆け出した!!

 

 

 

 

 

マァ坊は背中の大太刀を引き抜くと上段に構える!

それは吾妻父と同じ流派の構えで、全身全霊で一太刀を加える斬撃を放つつもりだ。

 

ドンっと一息に益荒鎧の懐に正面から突っ込むと、その刀を全力で振り切った!

 

「アアアアァァァァッッッ!!!!」

 

その太刀は突進で振りかぶっていた巨大な腕を一息で切り落とした!!

吾妻は確かに掛け声がマァァァに聞こえるなと場違いなことを考える。

 

「羽虫ドモガァァァッ!!!!」

 

益荒鎧は懐に入っているマァ坊を踏みつけるべく足を持ち上げた!

全霊の太刀の反動で動きが固まっているマァ坊はヤバイと顔を引きつらせている。

 

そこにハットリが懐の拳銃を二丁構え全弾足に命中させる。

たいして動きを阻害できなかったが、野生児じみたマァ坊には十分だ。サッと懐から離脱する。

 

大きく足踏みした益荒鎧の踏みしめた足にマァ坊は再度斬りつける!

ザンッと小気味よく斬り抜いたマァ坊。しかし、足を切断するには至らない。

突進の勢いを加算出来なかったせいだろう。チッと舌打ちしたマァ坊。

 

益荒鎧はマァ坊の攻撃に怒りは臨界点を超えている。

マァ坊に釘付けなその様子に吾妻は好機と捉える。

 

益荒鎧の背後から刀で斬りつけるべく風を切って走った!

 

「オノレェ!叩キ潰シテクレルッ!!」

 

マァ坊に向けて爆風を巻き散らして拳を振るう益荒鎧!

台風のような風圧を伴う攻撃だが、マァ坊は何とか距離を取って回避する。

 

しかし、運悪くその攻撃が吾妻の体をカスってしまう。

その攻撃をほんの少し触れるだけだったにもかかわらず、吾妻の体はきりもみしてドスッと地面に叩きつけられてしまった!

 

「不味いッ!!!ハットリ!!!」

 

マァ坊の焦りをにじませる発言に、ハットリは即行動し、吾妻の元に向かう。

だが、益荒鎧の巨体の腕の長さに敵わず、相手は残った手で吾妻を捕まえてしまう。

 

「・・・ヨウヤク一匹カ、テコズラセル。」

 

そして掌で吾妻を握りしめるとその体を眼前に移動させた。

 

「矮小ナル命ヨ。ココニ貴様ノ命ハ潰エル。母ナル闇ニ還ガヨイ。」

 

その巨体に似合わぬ優しさすら感じる声で語り掛ける益荒鎧。

だが、吾妻は死ぬことよりも、情けを掛けんばかりの益荒鎧の声に誇りが傷付けられた。

 

「・・・なに哀れんだ顔で見ていやがるッ!!おれはまだ終わらんッ!!!!絶対にッ!!!!」

 

マァ坊は、吾妻が捉えられている腕を断ち切らんと鬼気迫る表情で突撃を仕掛けている。

しかし、距離は遠く間に合いそうもない。

 

ハットリは注意を逸らそうと益荒鎧の目を銃撃しているが効いた様子はない。

 

 

万事休すか。吾妻は最後まで益荒鎧を睨みつけた。

 

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