吾妻の逆行 -斬-   作:ルイレツ

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説明会・・・短く簡潔に行きたい


センカとこれから
新たな日常


 

吾妻の自宅に帰った三人。

 

母にセンカの事情を説明すると、この子が息子が大切にしていた刀?と疑問が生じていたが、今日の騒動でそんなこともあるのかと信用してくれた。

何より、息子の命の恩人をもてなしもせずにいる訳には出来ないと快諾してくれる。

 

遅くに帰ってきた父も、事情を説明したら納得してくれた。基本的に話の分かる両親なのである。

 

そして三人が遅い風呂に入った。

風呂上がりにセンカは母のお下がりの寝間着を着ていた。さすがに包帯を巻きなおして寝るということは無いようだ。

 

それぞれが自身の部屋に分かれて床につこうとしたが、センカは吾妻にくっついて子ども部屋まで来てしまう。

そこでこの少女に寝る部屋を割り当ててないことに気が付く。

 

「あー、お前は来客用の部屋を使えばいい。玄関から奥に行けばある」

 

「こっちでいい」

 

と聞く耳持たずに付いてくる。

 

とうとう吾妻の部屋に辿り着いてしまう。

 

どうすんだよコイツと視線を向けたが、少女はぼーっと立っているだけだ。

何かあれば話しかけてくるだろ。今日は疲れたとさっさと布団に潜り込んだ。

 

 

 

 

数分後。センカが動く気配が無い。

さすがに気になった吾妻は少女がいる所を探すべく目を開けた。

 

吾妻の視界には、少女の顔が超至近距離に迫っているのが見えた!

 

「うおっ!何してんでぃ!」

 

余りにも近い少女の顔に驚いて何故か江戸っ子の言葉が出た吾妻。

少女は覗き込んだ顔を戻すと自分の正座している足を叩いて言った。

 

「ここが私の場所」

 

確かに吾妻は寝るときに刀を枕元に置いていた。

その場所がそのまま少女の場所になったということか。

何とも優通が聞かない少女だと吾妻は呆れる。

 

「客間でも座敷でも布団を敷いて休め。いいな!」

 

そう言って布団で顔を覆い隠した。

だがセンカは躊躇せず吾妻の布団の中に潜り込んでくる!

 

「そう来ると思っていたよ・・・」

 

父に刀を貰ってしばらくは嬉しくて布団の中で一緒に寝ていた記憶がある。

恐らくセンカは当時の記憶があり、布団に潜り込んでくることは想定されていた。

 

吾妻はすかさず布団を巻き取りセンカを布団の中から放り出す。

 

「・・・どうして意地悪するの」

 

「お前はもう刀じゃないんだから別のところで寝ろ」

 

元服前に男女が同じ床にはいるものかよ

そう言うと吾妻は再度眠りの態勢に入った。

 

だが少女はそのまま動かない。

 

「いらなくなったんだ・・・やっぱりカラダだけの関係・・・」

 

「人聞きの悪い事いうなよ・・・」

 

刀のままならばその刀身(カラダ)だけあれば十分だったが、今は生身の肉体がある。以前と同じと言う訳にも行くまい。

今日だけだからなと念押しして、一緒に寝ることにした。

 

布団の中に入ってきたセンカ。自然に抱き着いてきた。

今度は蹴り飛ばしたりせず、吾妻は感想を述べた。

 

「・・・なんかお前冷たいな」

 

正直人間と思えない冷たさだが、今は夏場なので気持ちよく眠れそうな温度だ。

まあコイツ刀だしそんなこともあるかと、深くは考えなかった。

 

身をよじっても離れないセンカに、こいつは子どもだし気にすることもないかと自身の年齢を棚に上げて眠ることにした。

 

センカはもう寝たようで、幸せそうな寝顔(アホ面)をしている。

気にしても仕方ない。吾妻は目を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どぉもー。おはようございまぁーす!ハットリでぇーす!」

 

吾妻達が目を覚まして朝食をとった後、昨日言っていた通り大切な話を伝えるためハットリがやって来た。

そのわきには博多藤四郎もいる。

 

早速客間に上がってもらう。

母が吾妻たちと来客の七人分のお茶を用意し、来客の二人がありがとうございますと言うと早速話を切り出した。

 

「さて、昨日チラッと話しましたが、大切な話とは、僕の仕事に関わっている話です。」

 

そう前置きをするとハットリは話し始めた。

 

 

 

 

 

ハットリが務めている仕事とは、御華見衆観察方という。

隣にいる博多藤四郎や、センカのような刀が変化した存在、巫剣の所在を確かめる仕事なのだ。

 

吾妻父が成程と声を出す。博多藤四郎がその見目で尋常でない強さを誇る理由に納得したのだ。

 

基本的に、その巫剣との接触はご法度とされる。

巫剣は昨日現れた亡者の群れ・・・通称禍憑(まがつき)を滅せる唯一の存在なのだ。

 

「巫剣と不要に接触することはぁ、なんかまぁ穢れを寄せ付けないとかぁそんな意味があるらしいです。」

 

いわゆる仏教神道の観点から穢れの禍憑を祓う存在である巫剣に接触しないことで穢れを抑えるらしい。

 

「?なんだ?穢れるとなんかあるのか?」

 

吾妻が質問するとハットリは渋い表情をして答えた。

 

「穢れを蓄積させた巫剣は、錆付きという状態になりまして・・・破壊を巻き散らす存在になるのです」

 

ふーんと何だか分かったのか分からないのか曖昧な返事をした。

 

「んじゃあコイツとかも錆び付いているのか」

 

短気ですぐ怒るセンカを親指で指し茶化して言う吾妻。センカの顔がムッとしている。

 

「こらっ!そげんこといったらアカンっちゃろ!」

 

博多からお叱りの声がかかる。確かに無神経すぎた。

 

「すまん。」

 

センカに向かって謝ると、彼女はそれでいいとうんうん頷いた。

 

 

 

んん!と咳払いしたハットリが話を進めた。

 

巫剣は単独でも並ぶ者がいない剣の達人であるが、巫剣使いという、彼女たちを補佐する存在がある。

巫剣使いの力があれば、巫剣の力は飛躍的に上昇する。

 

「博多さんも巫剣使いの力で強くなっているのか?」

 

と言う吾妻の言葉に博多はウチは一人っちゃと答える。

 

なんと巫剣使いがいなくても十分な力を使えるらしい。

そこに巫剣使いの力が加わればどうなるのか。

吾妻は父を倒した博多がまだ強くなる可能性を知り驚いた。

 

「恐らくぅ、その巫剣使いに、吾妻の坊ちゃんがなっているとぉ!考えています。」

 

吾妻がセンカを呼び出した光から、そう推測したらしい。

その光がセンカに譲渡され、彼女を強化したことは非公式ながら稜威(いつ)と言うのだ。

 

「いつ?どんな漢字書くと?」

 

大分古い時代の言葉らしく、身内に知るものがいない。

ハットリ曰く、神聖なる存在が勢いを持って周囲を祓い清めた記述に使われた言葉らしい。

日本最古の書物である古事記や、杵築大社(今で言う出雲大社)の祝詞で表記がある。

 

「なんか急に難しゅうなったばい」

 

もっと簡単な言葉が無かったんかいと苦言を申すマァ坊。

ハットリが苦笑すると話を続ける。

 

 

 

 

 

 

その稜威(いつ)と言うものは信頼した巫剣使いと巫剣の間にしか使えないものなのだ。

センカとの信頼?の言葉に首を傾げた吾妻だが、余計なことは言わず話を聞く。

 

その巫剣使いは巫剣と同じく希少な存在で、御華見衆が発見した場合、組織に勧誘される。

 

「それでハットリは俺たちを勧誘しているわけか。」

 

「そうですよぉ。どうですか?給料いっぱい出ますよぉ!」

 

ウハウハですよと言うハットリ。相変わらず胡散臭い。

 

吾妻は疑問に思ったことを聞く。

 

「拒否したらどうなるんだ?」

 

そういうとハットリは微妙な顔をした。

あまり言いたくないのですがと前置きする。

 

巫剣を監視、統率する御華見衆は超国家機関とでもいう存在である。

巫剣たちを失わないように国中に根を張っている。

そして、巫剣使いにおいても同様である。

発見された巫剣使いは何かの職業や、組織に属していると栄転、あるいは左遷され御華見衆に配属されてしまうのだ。

 

そこで吾妻が気付く。宿敵聖十郎についてだ。

 

「・・・仮に、陸軍の士官学校から卒業したとしたらどうだ?」

 

「それはもぉ卒業と同時に即御華見衆に配属されちゃいますねぇ・・・」

 

推測は当たっているようだ。

陸軍卒業後、聖十郎は巫剣使いとして御華見衆に配属されたに違いない。

 

考え込んだ息子の様子をみて、父がゆっくりと言葉を紡いだ。

 

「心配するな。好きなようにしなさい。」

 

吾妻父が自分の好きなように生きろと言う。

この父は自分の息子の為ならば国すら叩き潰すというのか。正直コワイ。

母も頷いている。

 

吾妻の答えは決まった。

 

「父さん、母さん、決めました。俺は御華見衆に行きます。」

 

頷く父。母は行っても何か問題がないかと早計な息子に代わりハットリに伺っている。

 

「ちょっと仕事が辛いかもしれませんが、お父さんのところとそう変わりありません。」

 

待遇は国の官僚並ですよぉと盛り上がるハットリ。

 

吾妻は内心笑みを浮かべる。

こんなにも早く聖十郎を出し抜く機会がやって来たのだ。

しかも、化物連中・・・禍憑の対抗手段も敵対組織として得られそうだ。

そして国家の重要な位置に立つことで国の中枢に近づける。己の国家転覆の礎としてこんなにも適したところもない。

 

吾妻は満足げにハットリの話の続きを聞いた。

 

 

 

 

 

 

 

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